論文紹介 坂本圭 2005.05.25 Large-eddy simulations of the wind-induced turbulent Ekman layer Zikanov, O., D. N. Slinn and M. R. Dhanak J. Fluid Mech. (2003) 495:343-368 1 Introduction 回転の下で、定常風によって表層に形成される流れ Ekman(1905)による「エクマン螺旋」 仮定:コリオリ力・粘性・圧力勾配のバランス、鉛直粘性係数一定 U(風方向) エクマン螺旋の ホドグラフ(破線) V 流速:深さとともに指数関数的に減少 流向:右へと回転、海面では風向に対して右に45度(北半球) 1 Introduction しかし、エクマン螺旋が現場観測によって発見されたことはない (Price and Sundermeyer 1999) 観測では、海面での流向と風向の角度は45度以下 (Price et al. 1987, Chereskin and Roemmich 1991, Gnanadesikan and Weller 1995) 原因:エクマンモデルでは無視された効果 •風応力の時間変動 •地衡流 •成層効果:表層成層の日周期変動によって、流れにも変動 (Price and Sundermeyer 1999) •海面重力波:ストークス・ドリフトとそれに伴う乱流の発生 (e.g. Langmuir 1938, Thorpe 1984, Skyllingstad et al. 2000) •浅海域における海底摩擦(Pond and Pickard 1993) 1 Introduction 本研究でとりあげる、エクマンモデルの問題点 •乱流粘性係数の変化 混合距離理論(Rossby and Montgomery 1935) 粘性係数を水深に比例(Madson 1977) →海面流の向きが45度以下に •地球回転ベクトルの水平成分(接平面成分) (Leibovich and Lele 1985, Coleman et al. 1990) 本研究の意義 •海洋表層で見られる乱流の一般的特徴を発見 •風の変動が小さい場合の沖合流に関するモデルを定式化 2 Problem formulation 対象:定常・水平一様な風応力による、水深10-100mの乱流 仮定: •非圧縮、中立成層 •水平一様な平均流 •海面リジッド・リッド条件 •分子粘性の効果を無視(レイノルズ数無限大) •下境界はfree-slip 支配方程式: サブグリッドスケール(SGS)乱流粘性 スキームの詳細はLilly(1992) コリオリ力 接平面成分 2 Problem formulation 無次元化:速さスケール 時間 長さ 無次元化によって、風応力の強さに依存しない方程式系となる x方向とする コリオリ接平面 成分の方向 L×1.5 L×1 L×1 グリッド:64× 64×120 横境界は周期 境界条件 3.2 Flow in the f-plane F面近似(地球回転ベクトルの接平面成分を0) 実験による水平平均流速(U,V) U(風方向) 数値実験のホド グラフ(実線) 28.5度 エクマン螺旋 V 3.2.1 Flow evolution 領域平均した運動エネルギー(KE)各成分 KE 乱流と平均流のKE 統計的に定常 u v 平均流 慣性振動ではない 乱流 W 時間 3.2.2 Velocity correlations 領域中央の点との流速相関分布 y 平均流シアー ベクトル シアーによる渦 の伸縮に対応 深さ0.04 等方的:シアー弱い 広い:擾乱のスケール大 深さ0.22 x 3.2.3 Vertical profiles 流速S V U エクマンモデルと差 流向α エクマンで は常に1 w v u 流速RMS 広い範囲に擾乱 ほぼ1 表層で ズレ SGS擾乱による エネルギー消失 歪み係数 粘性係数 海面付近では擾乱渦の サイズが小さいため、エネ ルギー消失は海面付近に 集中 3.2.4 Vertical stress and effectiveUviscosity 実線:SGS応力 点線:レイノルズ応力 x レイノルズ応力 が卓越 y Madson(1977) x軸に対する角度 実線:全応力ベクトル 破線:流速シアーベクトル 増大 よく一致 有効粘性係数Az 減少 エクマンモデル Madson(1977) 流速 Lz-z<0.2では、流速はほ ぼ対数分布 注意:Madson(1977)の議 論とは前提が異なる Lz-z Rossby and Montgomery(1935)の 混合距離 水深に対してゆっ くりと増大 彼らの結果と一 致せず 3.3 Solution for a piecewise-linear effective viscosity profile 有効粘性係数を区分的線形関数で近似 →解析解の導出 z 実線:実験結果 破線:エクマンモデル 2点鎖線:解析解 U V 3.4 Effects of latitude and wind direction λ:緯度 γ:南北方向に対する風向 地球回転ベクトル接平面成分Ωτ(fで無次元化) U(風方向) 実線:f面近似 V 低緯度→ズレ大 0<γ<90(南東風)→流れは右へ 180<γ<270(北西風)→左へ 3.4 流れのλとγに対する依存性 海面での流れと風の角度 低緯度→ズレ大 0<γ<90(南東風)→流れは右へ、流速大 180<γ<270(北西風)→左へ、流速小 海面での流速 流速が1/eπ減衰する深さD λ:緯度 γ:南北方向に対する風向 北西風では流速の減衰が緩やか 南東風では減衰が速い →乱流の発達が異なる 3.4 乱流の発達にΩτが与える影響 1.乱流による運動量鉛直輸送においてソース/シンクの役割を果たす 2.乱流運動エネルギーを各成分間で再分配する 乱流運動エネルギーの各成分と、乱流による運動量鉛直輸送の各成分に 関する方程式: OT:Other terms 本実験ではu’,v’ > wなので Ωτy 、Ωτyが負(北西風) → ソース Ωτy 、Ωτyが正(南東風) → シンク 3.4 0<γ<90(南東風)→鉛直輸送小 180<γ<270(北西風)→鉛直輸送大 v’w u’w 鉛直プロファイル 0 有効粘性係数Az 0 3.4 乱流KEの 鉛直成分 /水平成分 u’w < 0, 0 < v’wなので Ωτy 、Ωτyが負(北西風, 180<γ<270) →水平成分から鉛直成分へKE移転 鉛直成分へのKE移転 → 乱流KEの供給増大 γ:南北方向に対する風向 平均流運動エ ネルギーE 乱流運動エネ ルギーe 北西風 南東風 γ 3.4 有効粘性係数Az 近似したAz分布に対する解析解 U(風方向) f面 V 北西風では流れがより左にシフト、流速減少 →平均流構造をよく再現 4 Conclusion エクマンモデルの問題点を調べるために、LES数値実験を行った。 →エクマン螺旋とは大きく異なる平均流が形成 •乱流粘性係数Azの変化 実験でのAz(z)の分布:区分的に線形な関数 (乱流距離スケールの1/4の深さで極大) 近似したAzについて解析解を導出:エクマン螺旋より実験結果に一致 •地球回転ベクトルの水平成分(接平面成分) 北西風(南東風) → 強い(弱い)乱流鉛直輸送 解析結果は、Tritton(1978)が報告したメカニズムを支持 1.乱流運動エネルギーの水平成分・鉛直成分間での再分配 2.鉛直輸送のソース/シンクとしての働き Figure 1 Figure 2 Figure 3 Figure 4 Figure 5 Figure 6 Figure 7 Figure 8 Figure 9 Figure 10 Figure 11 Figure 12
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