水圏地球物理学ゼミナール 論文紹介 2006.11.1 Direct numerical simulation of turbulent channel flow under stable density stratification Iida, O., N. Kasagi and Y. Nagano Int. J. Heat and Mass Trans. (2002) 45:1693-1703 1 先行研究 ○乱流に関する安定成層の効果 1.乱流を抑制 →再層流化の場合も 2.内部重力波(IGW)の励起 (Tritton 1988, Gossard and Hooke 1975,Hooke and Jones 1986) IGWは運動量を輸送する しかし、線形の範囲では、鉛直流速(v)と擾乱水温(θ)の位相差がπ/2 →熱は輸送しない (Stull 1988, Webster 1964) ○成層の下での境界層乱流に関する多くの水槽実験と観測 勾配リチャードソン数Rigによって流れの状態が決定 0.25以下の領域:Kelvin-Helmholz不安定による間欠的乱流 (Tritton 1988, Turner 1973) 0.25以上の領域:IGWが支配的 2つの領域間で相互作用 圧力相関項を通して、IGWが乱流境界層からエネルギーを運び出すと示唆(Stull 1988) ただし圧力擾乱の測定は困難 → 数値実験の必要性 1 目的 Channel(平行平板間)乱流について一連の直接数値実験(DNS)を行い、 安定密度成層が境界層乱流に与える基本的な効果を調べる 特に、乱流とIGWの相互作用、 再層流化に注目 目次: 2 数値モデル 3.1 乱流熱・運動量輸送 3.2 乱流構造 3.3 乱流運動エネルギーと乱流熱フラックスの収支 2 Computational conditions of DNS 粘着壁、温度T1 y 粘着壁、温度T0 X (cyclic) z (cyclic) 一定の圧力勾配 支配方程式: ブシネスク近似の下での通常 の流体力学方程式 実験ケース: バルクのリチャードソン数:0~0.54 3.1 抵抗係数、Nusselt数 3.1節:乱流熱・運動量輸送に対する安定成層の効果 中立成層実験に対する比 バルクリチャードソン数 解像度は十分 水槽実験とも一致 Rib大 → Cf,Nu低下 3.1 相関係数(uとv,vとθ) 成層強(Rig大) → 相関低下 (乱流運動量・熱輸送低下) 実験(×):ばらつきがあるが傾向は一致 先行研究とよく一致 Rig<0.1でばらつくのは粘性の影響 3.1 平均流速U、温度T分布(対数軸) ( )+:摩擦速度、摩擦温度、粘性係数によ る無次元化 y+ > 10: 成層強→平均流速大 対数領域小 変化は平均流速と似ている y+ > 10: 成層強→温度勾配大 channel中央で変化最大 3.1 レイノルズ応力、乱流熱フラックス 壁近傍を除く、全領域で低下 channel中央で大きく減少 →Tの大きな変化 3.1 等温度面(瞬間場) Rib=0 大きく波うつ →混合大 Rib=0.35 乱流混合が抑制 3.2 流速ベクトル、圧力(瞬間場) 3.2節:乱流構造に対する安定成層の効果 Rib=0.35 黒:低圧 壁 壁 streamwise vorticeに対応 (Kasagi et al. 1995) 青:低圧 壁 壁 低圧部:水平に広がる 3.2 流速、温度の分散 壁近傍では乱流維持 dU/dz大→u大 u 成層による抑制→v小 v,w IGW u,v,w (成層強) Rib=0.54で再層流化 θ 変化最大 ←浮力の 影響大 3.2 擾乱流速のスペクトル 成層: 中央を除いて、低波数帯で低下 →大スケール擾乱の弱化 ←v+2を低下させる浮力拡散項vθ のエネルギーは低波数に集中 中央ではk=1~4の範囲でエネル ギーが増加 ←IGWの発生 3.2 vとθの位相差 vとθの位相差:π/2 → IGWと言える y+=10,100では位相差~0 →IGWではなく乱流が支配 3.2 勾配リチャードソン数 流れの構造(乱流かIGW)はRigで判断可能 乱流 IGW 3.3 TKE収支 3.3節:TKEと乱流熱フラックスの収支に対する安定成層の効果 浮力の直接の影響 主に生成と散逸でバランス 浮力散逸は小さい 生成項減少 →散逸項とバランス 生成項増大 (dU/dy大) →乱流拡散とバランス 逆では? Viscous diffusion以外 3.3 TKEz成分の収支 乱流拡散→0 圧力拡散→中央への エネルギー輸送 :IGWの効果 逆では? 浮力散逸項 →圧力歪み相関項の増大と バランス (u→vのエネルギー移転) Viscous diffusion以外 3.3 乱流熱フラックス収支 支配的な項 Gain / Loss Pressure Scrambling / 圧力拡散 生成 / Pressure Scrambling 生成 / 浮力散逸 壁近傍と似た分布 →成層が仮想的な壁と して働く 圧力拡散: 中央から壁側への熱フ ラックスを輸送 (v2とは逆方向) Fig.8で示した低圧部を 伴う渦の働きだろう 4 Conclusions 安定成層の平行平板間乱流に関するDNSを行い、基本的な乱流統計量、それら の収支、乱流構造から、成層の影響を調べた。次のような結果が得られた。 1.抵抗係数・Nusselt数は低下 2.Rig>0.25の中央領域ではIGWが支配的 成層が仮想的な壁のように働く 3.Rig<0.25の領域では乱流が支配的 4.圧力拡散を通じて、TKEは乱流領域からIGW領域へ、乱流熱フラックスは逆方 向へ輸送される 5.低圧部を伴う渦が、この相互作用に寄与しているだろう 6.低波数の乱流が減衰 → 再層流化 計算領域を狭めるのと同じ効果 Table 1, Figure 1 Figure 2 Figure 3 Figure 4,5 Figure 6 Figure 7 Figure 8 Figure 9 Figure 10 Figure 11 Figure 12 Figure 13 Figure 14 Figure 15 Figure 16 Figure 17
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