最近の中国経済の情勢 - 関西学院大学

中国経済の現状と課題
関西学院大学産業研究所
所長・経済学部教授
伊藤 正一
GDP 成長率(%)
25
20
GDP
第二次産業
第一次産業
第三次産業
15
10
5
04
20
02
20
00
20
98
19
96
19
94
19
92
19
19
90
0
GDPの増加要因

100%
80%
60%
純輸出
資本形成
最終消費
40%
20%
04
20
02
20
00
20
98
19
94
96
19
19
-20%
19
92
0%
固定資本形成の変化



中国の固定資本形成の加速的増加
国有部門の固定資本形成の加速的増加
基本建設投資の加速的増加
2
2
2
2
1
0
0
0
0
9
3
2
1
0
9
年
年
年
年
20 年
04
20 年
05
年
0
0
0
0
9
固定資本形成の変化
35
30
25
20
15
全社会
国有部門
基本建設投資
10
5
0
価格水準の変化



小売物価指数は、1998年以来マイナス
であった。
小売物価指数は、2004年、2005年にそ
れぞれ2.8%、0.9%上昇した。
この上昇は、2004年の食品価格(特に、
食糧価格)と燃料価格の上昇に影響され
ている。
小売物価指数の変化
(1995-2005)
20
15
10
小売物価指数
CPI
5
05
20
03
20
01
20
97
99
19
-5
19
19
95
0
財政赤字の拡大



財政赤字(中央・地方政府)は1998年か
ら2002年にかけて急速に拡大した。
財政赤字は、2003年、2004年と減少し
た。
しかしながら、財政赤字は、依然として高
水準である。
財政赤字(中央+地方政府)
(単位:億元)
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
199o 1998 2000 2002 2004
財政赤字
輸出入の急速な拡大




1990年以来、輸出入は大きく変動してき
た。
中国のWTO加盟以来、輸出入は急速に拡
大してきた。
輸出の急速な拡大は、2004年、2005年
にも継続している。
しかしながら、輸入の伸び率は、2005年
には大きく低下した。
中国の輸出入I(単位:億ドル)
8000
7000
6000
5000
輸出
輸入
貿易収支
4000
3000
2000
1000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005
IS バランスと貿易収支






貯蓄率 47% > 資本形成率 44.2%、2004年
(消費率: 54%)
政府財政赤字は、 1.47%、2004年
(S - I) = (G - T) + (Exp – Imp)
このことは、貿易黒字がGDP比1.33%、実際は、
2,86%。
ISバランスを所与として、財政赤字が減少しつつ
あるとする。そのことは、貿易黒字の拡大、そし
て、米国やEUとの貿易摩擦をもたらす。
貯蓄率が高すぎるのではないか?
中国の国・地域別輸出入
(単位:億ドル)
2000
1500
1000
輸出
輸入
貿易収支
500
0
-500
-1000
米国
香港
ASEAN
台湾
貨幣供給量と外貨準備額の
伸び率
60
50
40
外貨準備額
M2
30
20
10
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005
用途別不動産開発投資額の伸び率
50
40
30
住宅
事務所
商業施設
20
10
-20
-30
05
20
04
20
03
20
02
20
01
20
00
20
19
19
98
-10
99
0
地域別不動産開発投資の伸び率
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
東部沿海地域
華中
西部
2003
2004(
1-6)
2005
バブル抑制政策の影響



車両販売台数の変化
車両販売台数は、2004年3、4月から減
少した。
車両生産台数も同じ変化。
n.
Fe , 0 4
b.
M 04
ar
.
Ap 04
r.
M 04
ay
Ju 04
ne
04
Ja
車両生産台数I
70
60
50
40
30
20
10
0
その他
自動車
上海証券取引所総合指数
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
4
2006+1
7
10
4
2005+1
10
7
2004 03
上海証券取引
所総合指数
労働市場の変化
低い失業率: 4.3% (2003年)、4.2% (2004年),
4.2% (2005年第3四半期)
実質的に高い失業率
農村部から都市部への労働力移動
都市部労働市場の開放:
厦門の例、外部からの労働者に対しても現地
労働者に対する就業斡旋サービスと同じサー
ビスを提供
労働者の海外への派遣
中国のWTO加盟による産業へ
の影響I: プラス効果





中国の輸出に対する関税・非関税障壁の
減少
原材料・部品の輸入関税の減少
中国のWTO加盟に伴い期待される経済・
市場の改善
外国企業と容易にコンタクトがとれるように
なる。
繊維、アパレル、電気機械製品
中国のWTO加盟による産業へ
の影響II:マイナス効果





製造業の製品に対する輸入関税の減少にともな
い輸入製品の国内価格が下落する。市場は、よ
り競争的になる。
非関税障壁の撤廃、市場は、より競争的になる。
貿易権と流通分野が外資系企業に開放される。
国内企業にとってより競争的になる。
外資の直接投資に対する制限の緩和。
自動車、通信サービス、石油化学製品
自動車の生産台数
700
600
自動車生産台
数
500
400
300
200
100
05
20
04
20
03
20
02
20
01
20
20
00
0
化学繊維の生産(単位:万トン)
1800
1600
1400
1200
国内生産
1000
800
600
400
200
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005
カラーテレビの国内生産
(単位:万セット)
9000
8000
7000
6000
国内生産
5000
4000
3000
2000
1000
0
2000 2001 2002 2003 2004 2005
国有企業改革



国有企業の利潤額の改善:解雇による雇
用削減効果
赤字企業に対する政府の補助金の低下傾
向
しかしながら、非国有企業と比べて競争力
は遅れている。
不良債権問題


不良債権比率は、低下しつつある。
2004年3月16.6%, 2004年6月
13.32%
2005年3月12.7%, 2005年6月8.7%
中国人民建設銀行と中国銀行を香港証
券市場に上場するために不良債権問題を
改善する必要があった。
民間金融機関の創設の必要性 ?
政府の財政赤字問題



財政赤字は、深刻化してきた。
2002年以後、状況は改善してきた。
OECD はかつて財政赤字を維持可能な範
囲に抑えるための3条件を提示した:1)政
府支出の拡大に伴い税収を増加させる、
2)維持可能な社会保障制度を確立する、
3)健全な融資条件を維持し、不良債権を
抑制する。
都市部の失業・解雇問題と社会
保障の問題


これらの課題は時間とともに解決されるが、
問題はその解決に要する時間が重要であ
る。
上述のように、維持可能な社会保障制度
を確立する必要がある。
所得格差: 農村・都市間

一人当たりGDP (2004年)
上海: 貴州=13.1:1
賃金労働者の平均賃金(2004年)
上海: 江西=2.5:1
農家一人当たり純所得(2004年)
上海: 甘粛=3.8:1
都市・農村間所得格差縮小の
ための方法



農民の農業から非農業部門への移転 (都
市部での雇用機会、農村私営・個人企業
での雇用機会)
農業生産の改善
農民に対する様々な負担をいかに軽減す
るか?
中国人民元のさらなる切り上げ

管理為替相場制度からバスケット為替制
度への変化
$1=8.2765 元 (2005年6月)
=8.2369 元(2005年7月)
=8.0500 元(2006年2月)
=8.0170 元(2006年3月末)
=7.9976 元(2006年6月16日)
潜在的インフレの可能性



中国人民元の為替制度
中国人民元のさらなる切り上げ期待
人民元切り上げを避けるためのドル買い
介入は外貨準備高の急速な蓄積をもたら
し、貨幣供給量を増加させる結果となる。
エネルギー問題






エネルギー生産量は、1996年から2000年にかけて減
少した。
エネルギー消費量は、1997年から1999年にかけて減
少した。
エネルギーの生産量に占める石炭の割合は、1995年
から2000年にかけて減少した。(空気汚染の問題)
エネルギーの生産量に占める石炭の割合は、2000年
以来増加してきた。(エネルギー需要の拡大に対応して)
石炭の使用効率性を以下に高めるか?
非石炭エネルギー源を増加できるか?
エネルギー生産の成長率
20
15
10
エネルギー生
産量
石炭
5
-10
-15
-20
05
20
04
20
03
20
02
20
01
20
20
19
99
-5
00
0
石油
エネルギー生産と生産構造
(単位:100万トン標準炭、 %)
1995
原油 天然ガ 水力発
エネル 石炭
ス
電
ギー総
生産量
1290 75.3
16.6
1.9
6.2
2000
1070
66.6
21.8
3.4
8.2
2004
1846
75.6
13.5
3.0
7.9
エネルギー消費量と消費構造
(単位:100万標準炭、%)
1995
原油 天然ガ 水力発
エネル 石炭
ス
電
ギー総
消費量
1312 74.6
17.5
1.8
6.1
2000
1303
66.1
24.6
2.5
6.8
2004
1970
67.7
22.7
2.6
7.0
石油の供給(単位:1万トン)
20000
15000
10000
国内生産
輸入
輸出
5000
-5000
03
20
02
20
01
20
00
20
99
19
95
19
19
90
0
水不足の問題






中国北部と南部で水資源が不均等に分布
水に対する需要の拡大
水汚染問題
水資源を中国南部から北部に送る
節水政策と水汚染の抑制政策の促進
水使用に市場メカニズムを導入する可能性が考
えられるのではないか?
食料・食糧生産の減少





中国の食料・食糧のピーク年は、1998年で、食料(5.1
23億トン)、食糧(4.562億トン)
2003年の中国の食料・食糧の生産は、4.307億トンと
3.743億トン(-16%、-18%)であった。
食糧の生産量は、2004年に増加した。その理由は、
米・小麦の買付価格が40-50%、大幅に上昇したこと
である。
2006年2月の対前年同期比米の価格指数は、2.6%
増で、米・トウモロコシ・大豆の価格指数はそれぞれ
7.6%、2.4%、6.0%下落した。
中国で食糧生産がまたもや減少し始めるかもしれない。
ご清聴ありがとうございます!