広島市立大学国際学部 2004年度公開講座 持続可能な社会を築くために(II) 21世紀の環境と

広島市立大学国際学部
2005年度 国際研究入門Ⅰ
環境と開発:持続可能な開発をめぐる諸問題
地球市民の時代へ
(Ⅱ)
広島市立大学国際学部
吉田 晴彦
[email protected]
Ⅰ はじめに
前回のレポートから
• 「世界中の人々が同じ意識を持った『地球市民になる」
のは難しいのでは?
• 毎日の生活が精一杯の途上国に、環境と豊かさの両
立は難しいのでは?
• 地球市民という考えは、先進国の中でしか見られない
のでは?
• 地球「国民」ではなく「市民」なのはなぜ?
• 地球市民をまとめる機関は必要か?
• 先生自身は何か環境に対する配慮などしてますか?
伝統的な国際関係のイメージ
「トランスナショナル」って何?
A国
B国
中央
政府
中央
政府
地方政府、
企業など
地方政府、
企業など
一般市民など
一般市民など
狭義の国家間(International)関係
トランスナショナルな関係
A国
B国
中央
政府
地方政府、
企業など
一般市民など
中央
政府
狭義の国際関係
地方政府、
企業など
一般市民など
今回のお話
• Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
• Ⅳ 進化する地球市民
• Ⅴ おわりに
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
誰に世界を託すのか
主要全国紙NGO記事数の変動
• これまでは「国家」の外交
が国際政治を動かすという
イメージ朝日 読売
国境なき医師団
6000
5000
毎日
産経
4000
日経
記事数
3000
グリーンピース
2000
• 最近では、NGOなど「国家
以外」のアクターの重要性
が認識されるように
• 特に若い世代にそうした認
識が強まりつつある
1000
0
85年 86年 87年 88年 89年 90年 91年 92年 93年 94年 95年 96年 97年 98年 99年 00年 01年 02年
年
カンボジアこどもの家
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
NGOとは
• Non-Governmental Organization(s)
直訳すると「非政府組織」
• 必ずしも厳密な定義があるわけではないが、 一般に市民
の立場から地球的な規模の様々な課題(人権、環
境、軍縮、開発協力、緊急人道支援など)に取り組む、非
営利の組織を指す。
• ただ、政府以外というのは、とても曖昧…
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
国際ボランティア?
• 必ずしも「ボランティア」という言葉が馴染むと
は言えない
• 素人集団というよりは、むしろプロ集団
• 有給のスタッフを抱えるものも多い
※どちらかといえば、民間企業に近いイメージ
ただし、日本では「清く、貧しく」というイメージ、
マイナーな存在というイメージがつきまとう
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
国連憲章に登場していたNGO
憲章第71条
経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と
協議するために、適当な取極を行うことができる。この取極は、国際団体
との間に、また、適当な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議し
た後に国内団体との間に行うことができる。
Article 71
The Economic and Social Council may make suitable
arrangements for consultation with
non-governmental organizations
which are concerned with matters within its competence. Such
arrangements may be made with international organizations and,
where appropriate, with national organizations after consultation
with the Member of the United Nations concerned
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
有名な巨大NGOの例
• アムネスティ・インターナショナル(人権)
1977年ノーベル平和賞受賞
• 国境なき医師団(緊急人道支援)
1999年ノーベル平和賞受賞
• ICBL(対人地雷禁止国際キャンペーン)
1997年ノーベル平和賞受賞
• 赤十字国際委員会(医療支援、国際紛争調停など)
過去数回ノーベル平和賞受賞
• WWF(世界自然保護基金)
など
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
どうしてNGOに注目が集まったのか
• 国家レベル、政府レベルでは解決できない問題に
取り組む担い手として
• 国益という壁を乗り越えた利害関心
• 専門家集団としての能力の高さ
• もう一つの社会「参加」手段として:
背景には、大きくなり、硬直化しすぎた国家
• 支持者が関心を持ちやすい、特定の問題に取り組
むという強み
Ⅲ 地球市民の主役=NGOと私たち
意外と身近なNGO
• NGOだとは気づかれていない団体も
• フェア・トレード:買い物を通してできる
身近な国際協力も
• 広島にも、小さいながら数多くのNGO
が:NGOの連合体も発足
Ⅳ 進化する地球市民
Ⅳ 進化する地球市民
• 地球市民的な発想そのものは、必ずしも新し
いものではない
• 実際には、様々な試行錯誤を経ながら、発展
し続けている
• その傾向を、国際開発協力NGOの発展パタ
ンを参考に整理してみましょう
Ⅳ 進化する地球市民
第1段階「慈善」
• 困っている人々に対する同情心
• 問題の原因は「欠乏」
• 欠乏を補うため、外部からの「援助」
※依存を生み出しやすい…
Ⅳ 進化する地球市民
第2段階:自立支援、自助支援
• 「魚をあげるのでなく、魚の釣り方を教
える」
• 外部からの援助は、それがなくなること
を目的にしているはず
• 援助が終了した後、その社会が持続
的に自立可能になることが大切
※しかし、現実にはそれだけでは問題が
解決しにくい…
Ⅳ 進化する地球市民
第3段階:公正な社会への変革支援
• 自立的・自律的な発展を妨げる、様々な政
治的、経済的障害の存在
• 不公正な政治、社会のありかたは、現地の
人々だけで改善することがきわめて困難
• いかに開発/発展が可能な社会作りを支え
るか
Ⅳ 進化する地球市民
第4段階:ネットワークを築く
• 結局大切なことは、物的な支援だけで
なく、むしろ心の支え
• パートナーと「自分たち」という意識を共
有することの大切さ
• 移動、通信技術の発達が、国家を超え
たネットワーク作りを現実のものに
Ⅴ おわりに
持続可能な社会を築くために必要な
地球市民的発想とは?
• 決して無理をしない:
生活世界から生まれる発想を大切に
• 二分法的な発想にとらわれすぎない:
アイデンティティが異なるからといって、必ずしも対
立が生まれるわけではない
• 自分たちのあり方に責任をもつ:
自分自身の尊厳を大切にすること
黄金律に潜む罠を超えて
「相手の立場になって考える」
「相手と同じ視線に立つ」
• 無意識に相手と同じ立場まで、視線まで、降りようと
していませんか…
• そうした自分自身のあり方、私たちにとっての常識
のありかたを謙虚に見つめ直せたとき、そして、自
分自身と相手の双方の尊厳を素直に認めることが
できるようになったとき、私たち自身に何ができるの
か、その手がかりが見つかるように思われます。