熱流体力学 第4章 番外編 熱力学的系 状態方程式 熱力学で扱う偏微分公式 熱力学の第一法則(工学系と物理系) 1.熱力学で考える,想定する系 ・孤立系(isolated system):系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の交換はしない系 ・閉鎖系(closed system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギの交換はするが,物質の交換 はしない系 ・開放系(open system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の両方を交換する系 Q:上の3つの系について,物質,エネルギを考えたイメージ図を書け。 2.熱力学的な系の状態 ○系の状態は次の状態量(状態変数)(state variable)で与えられる。 ・体積V,圧力p,温度T,化学成分のモル数nまたは質量G ○示量変数と示強変数 ・示量変数(extensive variable):系の質量G,体積V,モル数n,エネルギU,エントロピSなどの ように系の大きさに依存する量。二つの系があれば,系を合体させたとき足し算が可能な変 数。 ・示強変数 (intensive variable) :温度T,圧力pのように系の大きさには依存せず局所の性質を 指定する量,二つの系を合体させたとき足し算ができない変数。 ・示強変数は示量変数の偏微分で表わすことができる。 U ←添え字はこれを一定として微分することを意味する。 例:温度 T S V ,n Q:上の2つの変数(示量変数,示強変数)を理解するために,2つの箱(系)を考え,(体積,質量, エネルギ,温度,圧力)について,系のイメージ図を書き,理解せよ。 ○状態方程式 通常,物質の状態は体積V,圧力p,温度Tの関係を表わす次の方程式で与えら れる。 f ( p,V , T ) 0 ・例えば,ボイル・シャールの法則:pV-nRT=0←状態方程式という。 ☆次の量は状態量の関数,つまり状態関数(state function)であり,状態量はな いので注意すること。 ・例:内部エネルギ: U U (T ,V , n) ←関数であることをしばしば熱力学ではこのよ うに表わす。 または,U U (S ,V , n) →他の示量変数でも表わされる。 ・例:エントロピ: S S (T ,V , n) ←関数であることをしばしば熱力学ではこのよう に表わす。 または, S S (U ,V , n) →他の示量変数でも表わされる。 3.熱平衡および非平衡系 ☆熱平衡:外界から孤立した系では,十分長い時間が経過すれば,状態量(圧力, 温度,体積)が時間的に一定の状態になることを経験法則として知っている。こ の状態を「熱平衡」という。 ☆非平衡:最終的に熱平衡状態にたどり着くわけだから,そこへの非可逆過程の 経過状態を意味する。 4.熱力学でよく使う偏微分と公式 4.1 多変数関数の微分 エネルギUのように多変数T,V,nの関数では,関数Uのある変数に関する偏 微分は,その他の関数をすべて一定に保つことによって定義される。例え 2 ば, U U (T ,V , n) 5 nRT n 2 V U U (T ,V , n) の偏微分は熱力学では以下のように表記し,結果は に対して, 次のようになる。 5 2n U n2 5 U U RT ; ; ・・・・(4.1) nR 2 n 2 V T V ,n 2 V ,T V n,T V 4.2 多変数関数の全微分 エネルギのような多変数関数の全微分は, U U U dU dT dV dn ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.2) T V n V ,n T , n V ,T 注)ただし,一定に保つ変数(添え字)が自明なときは省略することがある。 Q:立体的な3次元直交座標系を描き,式(4.2)意味を図解して説明し理解せよ。 多変数関数の2次変微分について,例えば, 2U T 2 , 2U V 2 があり, 特に次に示すような交差偏微分 2U TV では,次の 2 2 U U 公式が成 TV VT 立する。 (偏微分順序の入れ換え)・・・(4.3) 4.3 演習問題 (1)圧力pが3次元直交座標(x,y,z)の関数であるとき,すな わち,p=p(x,y,z)であるときの等圧力面方程式を書け。 2 2 2 (2)a,b,cを定数として,関数 z c (ax by ) について以下の 偏微分を求めよ。 2 z z z z ア) x ,イ) y ,ウ) ,エ) y 2 2 オ) y 2 z y x y,x x x y 2 ・・ア)をyで微分, x 2 z カ) xy x, y ・・イ)をxで微分 この結果,このようにzがx,yの滑らかな関数であれば,オ),カ)が一致 し,公式(4.3)が成立していることを確認せよ。この性質を完全微分とい い熱力学では大切な性質である。 熱力学の第一法則 符号のとり方について 1.熱流体力学の講義では dQ 0 dQ 0 対象システム 作動流体(ガス) dW 0 dW 0 dU dQ dW ただし, dW pdV 2.物理学の講義では dQ 0 dQ 0 対象システム 作動流体(ガス) dU d Q d W ただし, d W pdV d W 0 d W 0
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