熱流体力学第5章 番外編

熱流体力学 第4章 番外編
熱力学的系
状態方程式
熱力学で扱う偏微分公式
熱力学の第一法則(工学系と物理系)
1.熱力学で考える,想定する系
・孤立系(isolated system):系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の交換はしない系
・閉鎖系(closed system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギの交換はするが,物質の交換
はしない系
・開放系(open system) :系の境界(外界)を通じて,エネルギおよび物質の両方を交換する系
Q:上の3つの系について,物質,エネルギを考えたイメージ図を書け。
2.熱力学的な系の状態
○系の状態は次の状態量(状態変数)(state variable)で与えられる。
・体積V,圧力p,温度T,化学成分のモル数nまたは質量G
○示量変数と示強変数
・示量変数(extensive variable):系の質量G,体積V,モル数n,エネルギU,エントロピSなどの
ように系の大きさに依存する量。二つの系があれば,系を合体させたとき足し算が可能な変
数。
・示強変数 (intensive variable) :温度T,圧力pのように系の大きさには依存せず局所の性質を
指定する量,二つの系を合体させたとき足し算ができない変数。
・示強変数は示量変数の偏微分で表わすことができる。
 U 
 ←添え字はこれを一定として微分することを意味する。
例:温度 T  

S

V ,n
Q:上の2つの変数(示量変数,示強変数)を理解するために,2つの箱(系)を考え,(体積,質量,
エネルギ,温度,圧力)について,系のイメージ図を書き,理解せよ。
○状態方程式
通常,物質の状態は体積V,圧力p,温度Tの関係を表わす次の方程式で与えら
れる。 f ( p,V , T )  0
・例えば,ボイル・シャールの法則:pV-nRT=0←状態方程式という。
☆次の量は状態量の関数,つまり状態関数(state function)であり,状態量はな
いので注意すること。
・例:内部エネルギ: U  U (T ,V , n) ←関数であることをしばしば熱力学ではこのよ
うに表わす。
または,U  U (S ,V , n) →他の示量変数でも表わされる。
・例:エントロピ: S  S (T ,V , n) ←関数であることをしばしば熱力学ではこのよう
に表わす。
または, S  S (U ,V , n) →他の示量変数でも表わされる。
3.熱平衡および非平衡系
☆熱平衡:外界から孤立した系では,十分長い時間が経過すれば,状態量(圧力,
温度,体積)が時間的に一定の状態になることを経験法則として知っている。こ
の状態を「熱平衡」という。
☆非平衡:最終的に熱平衡状態にたどり着くわけだから,そこへの非可逆過程の
経過状態を意味する。
4.熱力学でよく使う偏微分と公式
4.1 多変数関数の微分
エネルギUのように多変数T,V,nの関数では,関数Uのある変数に関する偏
微分は,その他の関数をすべて一定に保つことによって定義される。例え
2
ば, U  U (T ,V , n)  5 nRT  n
2
V
U  U (T ,V , n) の偏微分は熱力学では以下のように表記し,結果は
に対して,
次のようになる。
5
2n
 U 
n2
5
 U 
 U 

RT

;
;
・・・・(4.1)






  nR
2
n
2
V
 T V ,n
2

V ,T
 V  n,T
V
4.2 多変数関数の全微分
エネルギのような多変数関数の全微分は,
 U 
 U 
 U 
dU  
 dT  
 dV  
 dn ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4.2)

T

V

n

V ,n

T , n

V ,T
注)ただし,一定に保つ変数(添え字)が自明なときは省略することがある。
Q:立体的な3次元直交座標系を描き,式(4.2)意味を図解して説明し理解せよ。
多変数関数の2次変微分について,例えば, 2U T 2  , 2U V 2 
があり, 特に次に示すような交差偏微分  2U TV では,次の
2
2

U

U
公式が成

TV VT
立する。
(偏微分順序の入れ換え)・・・(4.3)
4.3 演習問題
(1)圧力pが3次元直交座標(x,y,z)の関数であるとき,すな
わち,p=p(x,y,z)であるときの等圧力面方程式を書け。
2
2
2
(2)a,b,cを定数として,関数 z  c  (ax  by ) について以下の
偏微分を求めよ。
 2 z 
 z 
 z 



z
ア)  x  ,イ)  y  ,ウ)   ,エ)  y 2 
2

オ)
y
 2 z 



y

x

 y,x

x
 x  y
2
・・ア)をyで微分,

x
 2 z 
カ) xy  x, y
・・イ)をxで微分
この結果,このようにzがx,yの滑らかな関数であれば,オ),カ)が一致
し,公式(4.3)が成立していることを確認せよ。この性質を完全微分とい
い熱力学では大切な性質である。
熱力学の第一法則
符号のとり方について
1.熱流体力学の講義では
dQ  0
dQ  0
対象システム
作動流体(ガス)
dW  0
dW  0
dU  dQ  dW
ただし, dW  pdV
2.物理学の講義では
dQ  0
dQ  0
対象システム
作動流体(ガス)
dU  d Q  d W
ただし, d W   pdV
d W  0
d W  0