下水道用施設管理ロボットの開発基礎調査 - 日本下水道新技術機構

1992年度下水道新技術研究所年報
下水道用施設管理ロボットの
開発基礎調査
1.はじめに
下水道施設の維持管理とは,常に各施設の本来の
機能が充分に発揮でき,かつ外的な制約や施設の老
朽化にも対応する等,機能維持を保証するとともに,
企業経営の理念(適正な投資運営と住民サービスの
質的向上)を達成するために,運転,操作,点検,
清掃,指導,監視,修理,記録,試験,広報・公聴
活動等の業務を運行することである。
維持管理業務は多種多岐にわたっているばかりで
なく,その作業環境から作業の安全確保が重要な要
件となっている。一方,下水道普及率が高まるにつ
れて業務最はますます増大している。また,これか
らの下水道事業においては,下水道施設の機能の向
上,付加価値を高めるための機能の拡大,業務の効
率化を目ざした情報管理のシステム化等が求められ
ている。このため維持管理業務の質の向上が重要な
課題となっている。
今後の就労見込みは,高齢化社会と低出生率によ
る人手不足が深刻となっており,平成10年以降の
23歳未満の人口は減少し,若年労働力の不足が明
らかな状況にある。
このような状況の中で,ともすれば「3K」の代
表と見られがちな下水道施設の維持管理要員の確保
はさらにきびしくなることが予想される。このよう
な事態は,特に長年維持管理に携わってきたベテラ
ン技術者の経験と知識を伝授できずに,技術の後退
を余儀なくされる恐れがある。
一方,最近のAI技術の進歩や労働力不足に伴い,
産業界にあっては,ロボットの開発が盛んに行われ
るようになり,一郎は実用化されている。
このような維持管理業務の現況の課題と社会的な
背景を受け,本調査研究では下水道維持管理業務を
適正かつ円滑に行うために,維持管理作業の一郎を
ロボット化することによって作業の安全性の向上及
び効率化を図ることを目的として基礎調査を行っ
た。
2.調査内容
平成4年度は以下の内容について調義を行った。
(日 下水運維持管理業務の現状と課題
(2)各都市におけるロボット化のニーズ
(3)産業界におけるロボット技術の現状と将来
(4)ロボットの開発目標と開発対象
3.調査結果
3−1下水道維持管理業務の現状と課題
(1)下水道維持管理業務の分類
ロボット化が可能な業務を抽出するため,先ず現
状の下水道維持管理業務を分類し,さらに,その作
業の内容について整理する。
下水道の維持管理業務は大別すると,下水道の運
営に関する経営業務,財産管理などに関する業務,
住民に対する広報公聴活動業務,指導,開発・研究
業務及び下水道施設の機能保持を図る維持及び保全
業務等に分類される。
これらの主要業務を分類すると表−1のとおりで
一43一
1992年度下水道新技術研究所年報
表−1 業務の分類
分
類
業
種
の
種
別
1. 経営 に係 る業 務
I 経
営
2. 人 事 に係 る業 務
3. 下水 道使 用 に係 る業務
Ⅲ
財
Ⅲ
広
産
管
報
公
理
1. 財 産管理 に係 る業務
1, 広 報 に係 る業 務
聴
2. 公 聴 に係 る業務
1 1. 台 帳 の管理
2. 巡 視 ・点検
3. 計 測 ・監視
管
路
4. 診 断
5. 清 掃及 び し ゅんせ つ
6. 補 修
7. 1改良
lV 施
設
維
1、 運 転情 報 に関 す る兼 務
持
2, 台帳 の管 理
鼠
巡視 ・点 検
4. 計測 ・監 視
処理場 ・ポ ンプ域
5. 診 断
軋
清掃 及 び しゅん せつ
7. 補修
8, 改 良
私
電 気 ・ガス設備 保全
V.
指
導
・
監
督
Ⅵ
.
発
・
研
究
L 指 導 ・監督
1. 企 画等 に関す る業務
開
2、 水 質管 理 に関 す る業 務
説
汚泥 等 の処分 に関 す る調 査 ・研究
1. 排 水設 備 に係 る業務
Ⅶ
そ
の
他
2. 排水 指導 に係 る業 務
3. 他企 業 との折 衝
ある。
(2)維持管理業務の今後の課題
1)下水道維持管理職員の動向
施設維持作業においては,機能の保持とともに,
するケースが増加し,減少の傾向にある。
一方,下水道施設及び処理水量の伸びは表−3に
示すように,管路延長が1.29,ポンプ施設数が
1.14,処理場数の変動はないが処理水量は1.06と
適正な管理により施設の耐用年数の増加を図らなけ
ればならない。ところが,昭和59年から平成元年
度迄の5カ年間における維持管理職員の動向は表−
2に示すとおりで,職員数は5カ年間で1.06と若
干増加している。現業職員は,維持管理作業を外注
−44
増加を示している。
この間に維持管理業務の効率化を図るため処理場・
ポンプ場施設については設備機器の開発,改良も進
んでいるものと考えられるが,一万において放流水
域の水質規制の強化,汚泥処分先の確保の厳しさ等
1992年度下水道新技術研究所年報
表−2 下水道従事職員の動向(東京都及び11政令指定都市)
1
l
l
年 事 務職 員
技 建設 部 門
度
人 数
1
職 員
現業職員
ト
維 持 管理
2,
0 52
平成元年 度
2,
0 60
元 / 5 9 年
1.
00
構成比
人 数
3,
38 6
0.
21
3,
58 7
0.
14
3,
3 06
0.
22
3,
8 15 1 0 ・
26
0.
98
構 成比
l
構成比
0.
13
0.
22
委託職員
合 計
数
構成比
人 数
昭 和 59 年 度
術 巨
58 8
4,
40 6
1.
06
人 数
構成 比
人 数
構成比
0.
28
2,
604
0.
16
16 ,
21 7
1.
0
0.
30
1,
23 4
0.
08
14 ,
82 1
1.
0
0.
96
0,
47
0.
91
l
(公共下水道統計)
衷−3 下水道施設及び処理水量動向(東京都及び11政令指定都市)
高遠 「 ㌦ ㌦ ・
㌦ 叫、㌦
l
昭 和 59 年 度
45 ,
7 12 km
30 7 個 所
90 個所
11 ,
28 7 千・
崩/日
平 成 元 年 度
58 ,
99 2
34 9
90
1 1,
92 7
元 / 5 9 年
1.
29
L Ⅲ
1.
00
1.
06
(公共下水道統計)
により維持管理業務の質と意も高まっている。また,
管路施設については老朽化した施設が多いこと,暗
渠の中には容易に人間が入れない施設があること等
と質を含めた機能の向上,ニーズに対応した機能の
拡大,情報化時代にマッチした情報管理化等が求め
られてくるため,業務の質と豪も拡大し,これに伴
い,職鼠の拡大と人材の育成が緊急の課題として挙
げられる。
労働省の雇用動向調査における産業別欠員率を示
すと義一4の通りである。
を考え併せると,維持管理職員の業務量は増加して
いるものと考えられる。
2)就業者の動向
これからの下水道事業においては下水遭施設の最
表−4 産業別欠員率
年
昭 55 年
調 査
産 業 計 −
鉱 業
建 設 業
電 気 ・ガ ス
・熱 供 給 ・
水 i董 業
製 造 業
運輸
・
通 信 業
卸 売 ・小 売
業,飲食店
不 動 産 業
サ ー ビス業
2.
2 %
1.
8 %
2 .8 %
2 .6 %
0 .1 %
1 .4 %
2 .1 %
2 .7 %
1 .8 %
60
2,
0
0.
6
2.
0
2.
5
0 .0
0 .8
2 .1
0 .7
2 .1
61
1.
4
0.
3
2 .1
1.
6
0.
0
0.
9
1.
3
1 .2
1 .0
62
1 .7
0.
9
3.
7
1.
6
0.
0
1.
7
1.
9
0.
2
1.
0
63
2 .0
0 .6
2 .0
2 .5
0.
0
0.
8
2 .1
0.
7
2 .1
平 成 元 年
4 .8
1 .6
8 .1
5.
4
0 .1
3 .2
5 .2
1.
0
3.
6
2
5 .4
2 .9
1 0 .8
6 .5
0 .1
3 .6
4 .7
0 .7
4 .1
3
6 .1
3 .4
1 1 .8
6 .4
0 .7
5 .1
6 .5
1 .4
4 .5
4
4 .
7
4 .1
1 1 .7
4 .6
0 .1
4 .5
4 .0
1 .0
3 .6
注)欠員率=
未充足求人数、ノ、nn (労働省「雇用動向調査」)
×100
在籍労働者数
ー45
1992年度下水道新技術研究所年報
表−4より下水道事業と関連の深い建設業と水道
業の内,欠員率が建設業で平成2年以降,毎年10
%台を示しており,人手不足が他の産業に比べ深刻
であることがわかる。
今後,高年齢層人口は引き続き増加に向かうが,
若年人口は減少傾向に向かい,人手不足は一層深刻
になることが予想されており,下水道職員の確保も
きびしくなるものと考えられる。
3)下水道維持管理業務と作業環境
る。災害の発生状況を労働省の資料より整理すると
表−5に示すとおりで,毎年死亡事故が発生してお
り,危険な作業環境にあることがわかる。
4)維持管理業務の改善
1)∼3)に示したように;これからの維持管理業
務においては,作業環境の改善,災害防止の徹底を
図ることなど保守管理の効率化を行い,快適な作業
の創出が今後の重要な課題として挙げられる。また,
快適作業の形成によって,作業員の確保が容易とな
労働白書(平成5年度)によると近年,専門的知
識,技能を要する職種等で人材不足が続いているが,
人材の確保の問題は労働条件等に深くかかわってい
るものと指摘されている。
また,労働省の「労働環境調凌」(平成3年)によ
ると快適な職場環境の重要事項として,「作東空間
の適正化」「荷物運搬,中腰作業等肉体疲労度が高
い作業の軽減ul「単調繰り返し作業の解消」「儲瀾魔
境の改善」等が上位に挙げられる。
下水道維持管理兼務では,機器監視,場内巡軋
採水等の単調繰り返し作業及び管楽内点検,清掃作
業,し漉搬出作業,汚泥処理作業等の非衛生的でか
つ,危険を伴う劣悪環境での作業が多くある。特に
下水管楽内の点検,清掃は,狭あいした作業空間で
中腰作業が含まれているので作業劇の疲労度が高
る。
い。
また,平成5年度の全国下水道主管者会議におい
て,ド水道整備の拡大とともに維持管理作業中にお
ける事故が増加しているので,今後一層事故防止に
努める必要があると指摘されている。
労働省編集の「安全の指標」によれば,下水道並
びに下水道に類似した廃水処理清掃等の作業におい
て,酸素欠乏,硫化水素等による災害が多発してい
快適な作業を目指すためには,作業環境の改善と
重作業の省力化が必要不可欠と考えられる。
例えば建設業界では重労働で単純繰り返し作業で
ある鉄筋組立作業,コンクリート床ならし作業等に
ついては,自動配筋ロボット,コンクリート床仕上
げロボット等が実用化されている。その他海底での
ならし作業は従来潜水夫が行っていたが,劣悪環境
でかつ危険を伴う作業であるため,これらの作業を
ロボット化することによって危険作業を回避してい
る。
また魔力業界では,発電所放水路及び冷却水路に
付着する梅生物を除去するため定期的に作業段が点
検,酒掃作業を行っていたが,劣悪な環墟で危険作
業であるためロボットの開発が進められ,現在では
実用化されている。
以上のほか度数界の多くでは,労働環境の改善,
単純繰り返し業務の回避,配管設備の自動劣化診断
による精度の向上及び省力化による経済性の向上を
目指して各種のロボットが窺用化されている。
一方,下水道維持管理作業にあっては,ロボット
化がほとんど進んでいない。
下水道維持管理作業の中には,
表−5 年度別災害発生状況(酸素欠乏,硫化水素)
被 災 者
被 災 者
年 度
発生 件数
年 死 亡
度
発生件数
そ 生
死 亡
そ 生
昭 和 5 7 年
8
6
6
昭 和 6 2 年
5
2
7
昭 和 5 8 年
8
8
1 2
昭 和 6 3 年
5
−
7
昭 和 5 9 年
9
1 0
1 2
平 成 元 年
5
3
4
昭 和 6 0 年
1 0
4
1 5
平 成 2 年
3
2
7
昭 和 6 1 年
7
5
7
平 成 3 年
2
1
1
(「安全の指標」,(労働省編))
−461
1992年度下水道新技術研究所年報
① 劣悪な労働環境の中での作業
② 危険を伴う作業
③ 単純な繰り返し作業
④ 運転管理の事故を防止する作業
等がある。
これらの作業については,快適な職場を目指すた
めロボット化を図る必要がある。
以上の観点から,さきに示した表−1の業務につ
いて検討すると,経営業務や対住民サービス業務,
他企業対応業務等については,交渉や高度な判断等
を必要とするためロボット化が難しい業務であり,
逆にロボット化に適する業務としては,巡視・点検,
計測・監視,診断,清掃及びしゅんせつ,補修,改
良が挙げられる。
3−2 ロボット化のニーズ調査
ロボット化について現場の実態を把握するため,
東京都及び11政令指定都市に対して,管路,ポン
プ場,処理場施設の維持管理と,今後増加すると予
想される大深度施設に対する維持管理作業に関して
ロボット化のニーズ,及びロボット化の現状と課題
に関するアンケート調査を実施した。その結果は次
のとおりである。
(1)作業項目別,施設別ロボット化のニーズ
作業項目別,施設別にロボット化のニーズをまと
めると表−6及び図−1∼3のようになる。作業項
目別では点検,診断,清掃及びしゅんせつのニーズ
が高く,施設別では管路,処理場,ポンプ場の順に
なっている。
義鵬6 作業項目別,施設別ロボット化要請都市数
㌃
肯
∼ .
h∼ ㌦ −
h・
・
・
h∼ ・
“
・
h・
“・
勲
・
点 “
.
.
聖.
ル
管 路施 設
ポ ンプ 域 施 設
処 理 場 施 設
小 計
検
1 2/ 1 2
7/ 1 2
1 0/ 1 2
2 9/3 6
視
7/ 1 2
3/ 1 2
3/ 1 2
1 3/3 6
断
1 0/1 2
9 / 1.2
9/ 1 2
2 8/3 6
酒 掃 及 び し ゅん せ つ
1 2/1 2
7 / 1・2
9/1 2
2 8/3 6
補 1 0/1 2
6/1 2
9/1 2
2 5/3 6
5 1/ 6 0
3 2/6 0
4 0/6 0
計 測 ・ 監 診 小 修
計
1 −
㈱要諦都市数/全都市
図−1管路施設作業項目別
ロボット化必要有グラフ
図−2 ポンプ場施設作業項目別
ロボット化必要有グラフ
12 1二l
47一
1992年度下水道新技術研究所年報
図−3 処理場施設作業項目別
ロボット化必要有グラフ
ることがわかる。
ロボットに対して要求する機能は,ロボットが自
己判断を行い,その判断に基づいて表−7のような
作業を行う知能ロボットが挙げられている。
(2)大深度施設に関する調査
今後は地下空間の有効利用を図るため大深度施設
が増加してくるものと予想されるが,大深度施設は
現在の下水道施設の単なる延長とは考えにくいもの
があり,そのため,従来の維持管理作業と同一視で
きないものと考え,各都市の意見を調査した。
点検 計測監視 診断 清掃 補修
しゅんせつ
表−8 作業上の問題及び,ロボット化が
望まれる範囲と理由の分類コード
また,維持管理作業上の問題点,及びロボット化
が望まれる範囲と理由を義一8の分類コードで,ロ
ボットに要求される機能を衷−9の分類コードで分
類し,すべての都市でロボット化のニーズがある管
楽施設の点検,清掃・しゅんせつについてあてはめ
ると義一7のようになった。
義一7より,管路施設の維持管理作業で問題となっ
ている点は,危険作業,非衛生的作業が挙げられて
おり,これを回避するためにロボット化を望んでい
分類 コー ド
A
作 業 内 容
危 険 作 業
】 B
非 衛 生 的 作 業
C
重 労 働 作 業
D
単 純 E
そ 作 の 業
他
衷−7 維持管理作業上の問題とロボット化を必要とする範囲と理由
及びその機能の概要(管路施設)
作:
淑
⊥白日
作 業 上 の 問題 点
コー ト 回答数
分 類
A
11
B
10
C
−
D
E
点
検
特 言己事 項
ロボ ッ ト化 が望 まれる範囲 と理 由
コー ド 回撒
分 梅
・流風 流速 の大
きい管渠及 び有
.
毒 ガ スの発生 し
やすい個所 は点
検が困難。
A
B
l
特 紀 事 項
し
ゆ
ん
せ
・危 険 作 業 , 非
衛生 的作業 の
10 回避 。
つ
a.
岬
b
−
・全 て の 管 径 で
作 業 員 が, 大
C
−
D
孔 に入 らない
d
…
1
E
で点検 で きる
ロボ ッ ト。
e
10
f
2
2 l
・大 口 径 の 管 渠
は人力作 業 と
12
B
9
C
1
・流量, 流速 の大
D
−
きい管渠及 び有
毒 ガスの発生 し
2
な る。
やす い個所 は清
掃が困難。
A
12
B
9
・大孔問距離 が長
くて も対応 で き
るもの。
− 1
3
’誓 罠蓋 喜崇喜買
b
の。
C
d
5
e f
48−
・管内情報を地上
へ正確 に伝達。
・滞積物 の性 状 ,
量 に応 じて機能
を発揮 で きる も
a
回避。
E 特 記 事 項
l
C
A
E
コー ト
回答数
分 類
11 l
清
掃
要 求 され る機 能
6
! 6
1992年度下水道新技術研究所年報
表−9 要求される機能分類コード
分類 コー ド
用 語
意 a
マ ニ ピ ュ レ ー タ ー
b
固 定 シ ーケ ン ス ・ロ ボ ッ ト
C
可 変 シ ー ケ ンス ・ロ ボ ッ ト
味
人 間 が 操 作 す る マ ニ ピ ュ レー タ ー。
設 定 され た 順 序 と条 件 等 に従 っ て 動 作 を 進 め て い くマ エ ビ ュ レ ー
タ ー で , 設 定 情 報 の 変 更 が 容 易 で な い も の。
固 定 シ ー ケ ン ス ・ロ ボ ッ ト と 違 っ て 設 定 情 報 が 容 易 に 出 来 る
もの 。
人 間 が マ ニ ピ ュ レ ー タ ー を 動 か して 教 示 す る こ と に よ り, 順 序 ,
d
プ レイ バ ッ ク ・ロ ボ ッ ト
位 置 及 び そ の 他 の 情 報 を 記 憶 さ せ , 必 要 に 応 じて 読 み 出 す こ と に
よ り作 東 が 行 え る マ エ ビ ュ レ… タ 一 。
e
数 値 制 御 ロ ボ ッ ト
f
知 能 ロ ボ ッ ト
順 序 , 位 置 等 の 情 報 を, 数 値 に よ り指 令 さ れ た作 業 を 行 え る マ エ
ビ ュ レ 一 夕 一。
感 覚 機 能 及 び認 識 機 能 に よ って , 行 動 決 定 の 出 来 る ロ ボ ッ ト。
注)マニピュレータ榔:人間の上肢の機能に類似した機能をもち,対象物を空間的に移動させるもの。
(JIS規格による。)
衷−10 大深度施設に関する調査結果
ー49一
1992年度下水道新技術研究所年報
その結果は表−10に示すとおりで,既に20m程
度の深さを有し人力で管理されている都市もあるが,
現状の維持管理作業で対応が困難な施設としては概
ね20mから30m以上をあげた都市が多い。また,
維持管理作業に対する意見については各都市とも自
動化,ロボット化が不可欠との意見が多数を占めて
いる。
(3)ロボット化の開発状況と,開発ロボットの問
題点
各都市のロボット開発状況と,開発されたロボッ
トが実作業でどのような問題を抱えているかを調査
した結果,次のことがわかった。
表−11分野別開発ロボット構成比
分
野
開 発 ロ ボ ッ ト数
構成 比
鉱
業
2
0 .0 1
建
設
7 8
0 .5 1
電
気
4 1
0 .2 7
ガ
ス
6
0 .0 4
サ
ー
ビ
ス
1 6
0 .1 1
9
0 .0 6
1 5 2
1 .0 0
そ
の
計
他
注)産業用ロボット導入便覧(非製造業)(1992年)よ
り集計した。同便覧に掲載されている研究段階と
実用化されている全てのロボットを開発ロボット
として集計した。
① 実用段階ロボットは,中小口径用の点検ロボッ
トが挙げられ,作業上の問題として管内水深が
大きい場合,段差が大きい場合,屈曲している
場合に作業が不能となることが挙げられてい
る。
② 試作段階ロボットは,中小口径用の診断ロボッ
トと大口径用の清掃及びしゅんせつが挙げられ,
問題点として,固結した堆積土砂への対応,水
没時の対応,小型化,軽巌化,流速への対応等
が挙げられる。
3 :1産業糾こおけるロボソト技術の現状と精米
(1)ロボットの開発状況
ロボットの採用は製造業分野で著しいものがある。
これは,ロボットを採用することにより,現状の労
働力不足を補い,加えて生産性向上を図ること,並
びに高学歴化による技能労働者不足を補い,また,
労働災害,労働環境の改善を目的としている。
製造業分野で使用されているロボットは,複合作
業を行うものより,むしろ単一作業に限定したもの
が多く,生産ライン上を作業対象物件が移動し,ロ
ボットは移動機構を有しない固定式が大半である。
一方,非製造業分野におけるロボットは,製造業
用ロボットとは逆に,作業対象物が固定されており,
むしろロボットがその対象物へ移動して作業を行う
場合が多い。したがって,今回開発目標とするロボッ
トは非製造業用ロボット(移動式)に近いものと判
断し,当該分野で実用化並びに研究開発中のロボッ
トを調査した。
その結果,当該分野別の開発ロボット構成比は表一
日に示すとおり’であり,非製造業分野では建設分
野でのロボット開発が最も多く,次いで電気分野と
なっている。
ー50−
(2)下水道維持管理用臼ポットに関係ある日ポッ
ト技術の現状
① 環境認識技術の中では,潮水中の視覚技術
(rrVカメラ)については未開発であるが,酒
水中については高感度カメラ,赤外線カメラ
の発達により開発が可能と考えられる。
② 段差及び障害物乗り越え等の移動技術は実
用化が進められており,脚式及び脚式と車輪
式を組み合わせた方式が採用されている。し
かし,流速をもった水中における移動技術は
未開発である。
③ 発電所の長大暗渠水路の点検,計測用ロボッ
トは実用化されているが,流水中での作業は
流速1.5m/秒以下である。当ロボットは大
型で,下水管路施設には改良が必要である。
④ 地上部の状況を把握する巡視,点検,計測・
監視及び機器の過熱,絶縁劣化等の異常感知
ロボットは変電所等で実用化されている。
⑤ 補修作業用ロボットは未開発である。
(3)ロボット技術の将来の開発動向
① ロボットが自己認識して,次の作業を行う
人工知能を搭載した知能ロボットについては,
まだ開発途上である。
② 工業技術院の大型プロジェクトで,極限作
業を代替する知能ロボットの実証機が開発さ
れている。また,平成3年度より自律型のマ
イクロマシン(微小な機械)技術の研究開発
が進められている。
③ 自律型のロボットの実現を目指して,立体
1992年度下水道新技術研究所年報
表−12 開 発 目 標
現
状
作
業
準 備作 業
開
発
目
標
① 原 則的 には作業 員 が マ
必要な ロボ ッ トの機能
① 管 内 の状 況監 視機 能
① 安全 確認 (ガ ス検 知)を行 う。
ンホ ール に入 らな い で
② 管内 の強 制換 気 を行 う。
通水状態の調査 点検 ,
③ 作業 員が 管内 に入 り止水 作業 を行 う。
診 断,清掃 , 凌 藻 , 補
③ 滞 積土 砂厚 測定機 能
修 が行 え る ロ ボ ッ トの
④ 不 陸 測定機 能
開 発 を 目標 とす る。
⑤ 健全度 測定 機能
本 作 業
作 業員 が管 内 に入 り,
② 流量 ,水 質, 有 毒 ガ ス
測定 機能
⑥ 滞積 物除去 及 び 回収 機
① 管 内状 況 を 目視点 検 を行 う。
能
② 滞積 土 砂厚 の測 定 を行 う。
⑦ 管楽 損傷部 補修 機能
③ 管 楽 の健全 度調 査 を行 う。
④ 清 掃器 具 の先端 操作 を行 う。
⑤ 清掃 器 具 で 除 去 で きな い 聞着 物 等 の除
去 を人力 で行 う。
認識,色認識,音声認識の開発と学習機能の
研究開発が進められている。
3 4 ロボットの開発目標と開発対象
(1)開発目様
開発目標は,現在作業劇が行っている維持管理の
一郎または全都をロボットが作業員に代わって作業
を行う機能を備えたものとし,アンケートの調査内
容及び現状の維持管理作業の内容から開発目標を設
置すると表∵12のようになる。
(2)開発対象
作業員が管内に入れない㊥700以下の施設につい
ては,完全無人化とはいかないまでもかなりの自動
化が進んでいる。
また,㊥800以上については,基本的には作業員
が管内に入って作業を行っている。特に㊥800∼
㊥1500については作業を中腰で行わなければなら
前述までより,ロボットの開発対象とする施設は,
① 下水道管理者から開発の要望が高い。
③ 管理のひん度が高い。
③ 首級,危険を伴う作業である。
等から申,大日径管粟(⑧800以上)とする。
4.まとめと今後の予定
ないため,マンホール間距離が長い場合には非常に
苦渋な作業で,管内で休憩を取りながら作業を行っ
ている。
また,㊥1650以上については管内がドライに出
来れば作業状態は㊥800∼㊥1500に比べ苦渋作業
は軽減されるが,現状では水量も多く,流水中で作
業が行われるため,危険,非衛生的作業を伴う。
−51一
平成4年度調査結果をまとめると次のようになる。
①l これからの下水道維持管理作業においては
快適な作業環境づくりと人材の確保を目指し
て,危険作業,非衛生的作業等を伴うものは,
ロボット化を進める必要がある。
(塾 施設別にロボット化のニーズを調べた結果,
管楽に関するものが一番多かった。
③ 他の産業界では人手不足に対処するためと,
快適職場を目指して,単純繰り返し作業,重
労働作業,危険,非衛生的作業については,
積極的にロボット化を図っている。
④ これらのうち,発電所の管渠の点検,清掃
作業用として水中ロボットが数社で開発され
実用化されているが,同ロボットはいずれも
大型であり,下水への適用にあたっては改良
が必要である。また,これらのロボットの開
発期間は,3カ年程度を要しており,開発費
1992年度下水道新技術研究所年報
は3∼10億円程度を要している。
⑤ 今までに試作された下水管渠用ロボットを
<参考文献>
1)(社)日本下水道協会 「下水道維持管理指針」
調べた結果,今後開発するロボットは,小型,
軽量化,水没,屈曲,段差,流速対応型で,
かつ清掃ロボットについては,固結土砂の除
去対応型とする必要がある。
一1991年−
2)下水管路維持協会 「下水道管路施設維持管理マニュ
アル」 一平成3年−
3)(杜)H本産業用ロボット工業会「20年のあゆみ」−
⑥ ロボットの開発対象は,現状の維持管理体
制,ロボット化の要請度及び作業環境等から
判断して,管菜の点検,清掃・しゅんせつ作
業用のロボットが当面挙げられ,長期的には
各施設の管理用知能ロボットが挙げられる。
また,管巣の点検,清掃・しゅんせつロボッ
トの開発対象施設規模は現状作業が人力主体
で行われている㊥800mm以上の口径とする。
平成4年一
4)(杜)日本産業用ロボット工業会 「産業用ロボット
導入便覧」(非製造業)−1992年−
5)極限作業ロボット技術研究組合 「工業技術院大型
プロジェクト極限作業ロボット研究開発報告書」
…平成2年−
6)(杜)海洋産業研究会 「平成3年度水中作業機械化
システム研究報告番」…平成4年−
⑦ 管楽点検,清掃用ロボットの開発に当たっ
ては,既存のロボット開発の中で各種の要素
技術が開発されており,これらの技術の改良
等により対応が可能と考えられるが,蘭水中
7)(社)日本産業用ロボット工業会 「下水道・自走・
ごみ収集作業安全自動化モデル策定報告書」…昭和
62年度…
で直接物体を透視する技術は今後開発が必要
と考えられる。
また,悪質下水車での耐久性及び機能の信
頼性については,今後の大きな課題である。
③ 管楽施設の開発ロボットは投入口の寸法を
考慮すると,全ての機能を1台のロボットに
備えるのではなく,ロボット本体と支援ロボッ
トに分割するのが有利と考えられる。
今後は,
① ロボットの作業機能の検討
② 現場の作業環境と作業条件の設定
③ ロボット化に伴う施設構造
④ 開発ロボット仕様作成
等を行う予定である。
● この調査に関する問い合わせは
8)(杜)日本下水道協会「公共下水道統計」…昭和59
年…,…平成元年,平成2年…
9)(社)日本下水道協会 「下水道協会誌」…1977年日
月…
10)月刊下水道「管路の維持管理」…1986年6月…
11)月刊F水道「ロボ・ソト技術は卜水道に応用できるかj−
1986年12月…
12)月刊下水道「下水パイプの維持管理と健康診断」…
1989年5月一
時「施設省都市局下水道部「全国下水道主管課長会親」
し第1回主−1平成5年・1月1−1
14)(社)日本下水道協会「下水道施設維持管理積算要領」
(管路施設編)…1993年…
研究第二部長 藤田 呂一
研究第二部主任研究員 阿久津 忠
研究第一部主任研究員 鈴木 茂
研究第一部研究員 森 正治
研究第二部研究員 細洞 克己
−52−