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電柱
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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door
︻小説タイトル︼
in
︻Nコード︼
N0603BG
︻作者名︼
電柱
︻あらすじ︼
﹃インドア﹄。それは、人生に失敗した者、飽き飽きした者、
落胆した者、あるいは人生を歩むことをやめざるを得なかった者が
こぞって﹁ログイン﹂する﹁電脳世界﹂である。これは、そこで起
きた一つの大きな出来事、そしてそれに関わった9人の人間と2つ
の人外のお話。電脳系タクティカルアクションラブコメディー。
1
プロローグ︵前書き︶
初投稿になります。不備があったら許してちょんまげ。
2
プロローグ
プロローグ ﹃ここは⋮。うぅ⋮頭がぼーっとして⋮。⋮この人は⋮?なんでこ
っちを⋮見てるの⋮?わた⋮しは⋮?似て⋮いる⋮?﹄
△
▼
ボクは何処から来たんだろう・・・。みんな、他の場所から来たみ
たいなのに、なんでボクだけ覚えてないんだろ。また知りたいこと
が一つ増えちゃった。
△
▼
今日こそ、今日こそ告白するんだ。﹃結婚を前提にお付き合いして
下さい!﹄って。ふぅ、また緊張してきた・・・。イカンイカン、
もっと落ち着いて、この前みたいにならないように・・・。
△
3
▼
何時言おうかな、あんまり長くないのって。エヘヘ、多分困るんだ
ろうな、困ってくれるかな。でも、寂しいな。
△
▼
ここに来て何年が経つのだろう・・・。あの子のことを考えて存在
してきたけど、最近顔がぼやけてあまり思い出せなくなっきた・・・
。もうトシなのかな・・・。
△
▼
電脳世界、ねえ。そんな夢物語なものが・・・。いや、あの人なら
ありえるか。ま、バイトの足しにはなるか。それは置いといて明日
は三人で何処行こう・・・。
△
▼
フフフ・・・ついにワタシの夢が現実になる時が・・・!自分だけ
4
の楽園<ユートピア>を現実にし、そこで龍の血を引くイケメン執
事を侍らせて・・・グヘヘヘヘ・・・。
△
▼
まーた自分の妄想に浸ってる・・・。コイツは相変わらずうわの空
だし・・・。二人とも俺が居ないと生きていけないんじゃないか?・
・・まあ二人とも乗り気だし、俺もやるか・・・。
△
▼
ったくつまんないな・・・。せっかく人が手助けしてやったのにそ
れを犯罪呼ばわりして・・・。クッソ!僕の才能を認めてくれる人
は居ないのか!・・・ハァ・・・。
△
▼
どうしてこんなことに・・・。ただホモを探して放浪していただけ
なのにどうして・・・。誰か!ホモを、ホモ下さい!そうすれば生
きれるかも!
5
△
▼
最初は暇潰し目的だった。きっかけはよく覚えてないけど、そう、
暇を持て余した主任の一言だったんだ。金儲けに使おうとしていた
守銭奴や、本気でそこに住もうとした重度現実拒否症候群の人とか、
色んな人の思いから出来た物だった気がする。
少なくとも私は主任と同じ意義で同意したんだと思う。
最も、﹁主任﹂だったからなんだけど。
.
6
プロローグ︵後書き︶
かなりむちゃくちゃな内容になっていますが、まだプロローグ段階
なのでこれでいいかなと。次の話は物語の一応の主人公、男子高校
生・リョウト君の日常のお話になる予定です。
7
男子高校生入山リョウトの慎ましき日常
男子高校生入山リョウトの慎ましき日常
﹁たでーまー・・・﹂
そう言ってドアノブに手をかける。幸いドアノブは鉄製であった
ため手をほんのりと冷やしてくれた。
しかし暑い、とにかく暑い。理由は簡単、現在の季節と、今着て
いる服にある。俺は学生であるため制服を着ることを義務付けられ
ている。そして現在の日時は五月二十八日の午後五時。つまり衣替
え直前であるこの時期の冬服はとてつもなく暑いということだ。暑
がりの学生︵特に自分︶にとって地獄の期間である。
﹃おかえりなさい!﹄
元気な声が聞こえてきた。その声が発信された場所は寝室のプライ
ベートルーム。最も、一人暮らしなためこのアパートの二〇一号室
は全てプライベートルームなわけだが。
﹃早く今日の学校での話聞かせてよー!﹄
そうせかされて冷蔵庫からはちみつレモン水を取り出しすぐさま寝
室へ向かう。まったく、寂しがり屋なんだから・・・。
﹃今日は暑かったねー。気温が二十六,五℃もあってその格好じゃ
熱中症で倒れちゃうよ﹄
﹁そんなにあったのか。まあ大丈夫だ、これでもタフガイだからな
!﹂
あまり筋肉の無い体でボディビルダーの真似をしつつ﹃パソコン画
面の中にいる一人の少女﹄に話しかける。
﹃どの体が言ってるのやら﹄
彼女は笑いながら言った。ああ、やっぱり可愛い。疲れもふっとぶ
ぜ!
8
﹁いいよなーお前は、疲れもしないで暑さも感じないで﹂
﹃私こそあなたのほうが羨ましいよ。学校にも行けて、自分の体が
あって﹄
そう彼女は少し悲しげに言った。
そう、彼女には自分の体が無い。彼女は会話をする一つの高性能
な﹁アプリケーションソフト﹂なのである。彼女がうちに来たのは
一週間前。とある出来事により一人の少女を失い、絶望のどん底に
ありこのまま朽ちてしまおうと思っていた俺のメールフォームに送
られてきたこのソフト。呆けた状態でソフトを起動し、俺その姿に
驚愕した。
それは、二度と見ることができなくなったその少女にとても良く
似ていた。いや、似ていたという言葉は陳腐すぎる。言うならば完
全に﹁コピーされた﹂姿と声、そして人格だった。その可愛らしい
ソフトは俺の生活を完全に復活させた。
しかし、今思ってみると完全に謎だな・・・ソフト名も﹃SAK
ULA﹄なんて偶然の一致にしては・・・。それに送り主も不明。
謎過ぎる。まあ今となっちゃ調べる手立てなんて何処にも・・・、
﹃聞いてる!?﹄
﹁えっ!?﹂
﹃あーもうまたそうやって人の話聴いてない!だから成績も伸びな
いんだよ!?﹄
﹁いや、ちょっと考え事してて・・・。それと成績のことは言わな
いで﹂
﹃何考えてたの?またどうせエロいことでしょ!﹄
﹁なっ違うし!ちょっとお前のこと考えてただけだ!﹂
﹃なっ・・・、うーまたそうやって恥ずかしいことを・・・﹄
﹁えっ、ああ、うん、ごめん﹂
まあいつものことだ。こうやってイチャイチャして時間が今の俺の
9
最高のものだ。傍から見ればただの二次元にハマりすぎた病的オタ
クにしか見えないだろうけど。
﹃ほんとバカなんだから・・・。・・・今日は学校で何かあったの
?﹄
声色を整えてSAKULAが聞いてきた。
﹁ちょっとした事件のお知らせがあったよ。なんでも、三年生の人
が行方不明になったとか﹂
﹃あれ?多分だけど、それニュースでやってたよ。同じ人かどうか
分からないけど﹄
﹁そうなの?ちょっと出してくれない?﹂
﹃いいよー﹄
SAKULAは俺のパソコンの全ての機能を抑えていると言っても
過言ではない。なのでネットを開くことも彼女の手によって簡単に
出来る。エロ動画やエロ画像を保存したりしたら一発で分かられて
しまうという問題点もあるが。
﹃ほら、これ﹄
<天才ハッカー少年、行方不明に!>
﹁あー・・・三年生ってこの人のことだったのか﹂
﹃知ってるの?﹄
﹁ちょっとした有名人だからな。なんでも過去に企業の重要な情報
を盗んで一時期警察のお世話になったとか﹂
﹃めちゃめちゃ危ない人じゃん。もしかして今回のこれ、その企業
に攫われて行方不明に・・・﹄
﹁いや、その企業もう潰れたらしいよ。その三年の先輩が盗み出し
た情報が法を侵して大金を手に入れてたことについてのもので警察
にばれて解体されたとかなんだとか。ま、噂だからどこまで本当か
分からないけど﹂
ちなみにこの先輩、引き籠りだったりする。
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﹃ふーん・・・。今日はこの後どうするの?﹄
﹁ああ、サクラの家の掃除に行くよ﹂
﹃・・・そう﹄
少し遅れて、SAKULAの返事が来た。サクラというのはこのソ
フトに似た、現実世界に居る・・・現在では居たになるのかな。現
実世界に居た俺の幼馴染の名前である。
﹁そんな顔すんなって。すぐに戻ってくるから﹂
﹃・・・うん。じゃあ、頑張って﹄
SAKULAはバレバレの作り笑顔で言った。しゃーない、今日は
いつもよりはやく切り上げるか。
﹁じゃ、行ってくる﹂
残ったはちみつレモン水をバッグに入れ、寝室を出た。
﹃行ってらっしゃい!﹄
SAKULAの声は、少し寂しげで、﹁行ってらっしゃい﹂とは逆
の言葉を言われているような気がした。
俺は思っていなかった。今日を境に、この慎ましき日常が一八〇
度違うものになることを。
△
▼
﹃行ってらっしゃい!﹄
精一杯のつくった元気な声で私はリョウトを送り出した。多分ばれ
11
てるんだろうな。
﹃﹁サクラ﹂、か・・・﹄
﹁サクラ﹂。彼女のことはあまり知らない。リョウトが言うには私
にそっくりな人らしいけど・・・。
﹃まあいいよね﹄
そう言って自分に言い聞かせた。正直なところ、自分のことすらよ
く知らない。誰に作られたのか、どうして作られたのか、何故﹁サ
クラ﹂とそっくりなのか。覚えてることは、﹁リョウトは大切な人﹂
ということだけ。それ以外のことは記憶ではなく感覚としてあった
だけだった。
﹃・・・今日は衣替えについて調べてみようかな﹄
誰もいない部屋に、私の電子音だけが響いた。
.
12
男子高校生入山リョウトの慎ましき日常︵後書き︶
いやーやっとまともな話が書けました。今回は旧サクラ一筋、現S
AKULA一筋な高校生・リョウトと、謎の会話アプリケーション
ソフト・SAKULAがイチャイチャしてるだけのお話でした!や
べえ!想像してたのよりずっとのほほんとしてる!・・・次回は今
回ちょこっと出てきた﹁天才ハッカー少年﹂か﹁謎の幼女﹂のお話
になる予定です。どちらにしても今回のようなのほほんとした話に
なりそうですが・・・。
次回をお楽しみに!
13
腐人高津ミカゲのネタ探し
﹁ホモォ⋮﹂
前篇
最近スランプ気味です⋮。それでも体はホモを求めている⋮。否、
スランプ気味だからこそ、新しいネタを探しているのです!今日も
こうやって新刊のBLラノベを色んな本屋を回って買い漁り⋮って
あれは⋮。
﹁おーい!そこに歩いているお方はリョウトくんではありませんか
ー!﹂
クラスメートの入山リョウト君。彼はわたしにとって大事な存在で
す。ホモネタとして。なぜなら彼と彼の親友のヒロくんとの固い絆
はわたしの腐心をガッチリ⋮ってアレ?
﹁ちょっとー!なんで逃げるんですかー!﹂
彼は露骨に全速力で逃げていく。まるでチーターから逃げるシマウ
マのよう。フフフ、わたしから逃げようたってそうはいきませんよ!
・・・
﹁捕まえました!﹂
﹁⋮ハァッ⋮なんでっ⋮お前はっ⋮毎日ハァ毎日っ⋮絵書いてっ⋮
ハァとじこもってんのにっ⋮そんなに足っ⋮ハァはやいんっ⋮だよ
っ⋮エホッ﹂
﹁才能ですかね﹂
﹁自画自賛してんじゃっ⋮オエッ⋮﹂
彼は顔を青くし、むせつつもツッコミをした。
﹁ちょっ汚いです﹂
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﹁誰のせいだと思ってんだよ!﹂
﹁リョウトくんが逃げるからいけないんですよー。では早速ヒロく
んとの甘い蜜月のお話を⋮﹂
﹁俺とヒロはお前が望んでいるような関係じゃねえよ!つーかお前
過失100%だろ!果実か!﹂
﹁⋮今のツッコミ、﹃果実﹄と﹃過失﹄をかけたんですか?ちょっ
と寒いです﹂
﹁このっ⋮!自分では上手いこと言ったと思ってたところを⋮ハァ
⋮﹂
あっ、ちょっと今のは言い過ぎたかもです。
﹁まあ元気になったからいいじゃないですか﹂
﹁マジでお前と話すの疲れるわ⋮﹂
彼の顔色は戻ったにしても依然疲れを感じさせたままでした。
﹁帰宅部だからそんなに体力ないんですよー。マン研入ります?﹂
﹁入ったって同じモンだろ!﹂
むう、マン研をバカにして。その時、ふと彼の持ち物に目が行った。
あ、少し語弊です。今まで目に入ってたけどスルーしてました。
﹁ぶー⋮。⋮今日は雑巾とバケツを持ってどこへ行かれるんです?﹂
﹁ん?ああ、ちょっと、ここの家の掃除にな﹂
家の表札には﹁乃木﹂と書かれてあった。
﹁⋮あっ幼馴染さんの家ですか⋮。その度は御不孝に見舞われまし
て⋮﹂
リョウトくんはこの幼馴染さんを失ったショックで、ちょっと前ま
で学校を休んでいました。
﹁お前の口から慰めの言葉が出るとは⋮!﹂
﹁いえいえ。⋮天国の幼馴染さん、リョウトくんはたくましく生き
ています。そしてきっとヒロくんと結婚し幸せな家庭を⋮﹂
﹁ハハハ、今度そんなこと言ったら喉を潰すぞ﹂
彼の口調はとてもやわらかでしたがその目はクスリとも笑っていま
せんでした。
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﹁まあヒロくんとの家庭の話は置いといて⋮。ってもうこんな時間
じゃないですか!わたしも暇じゃないのでそろそろおいとまします﹂
﹁そっちが話しかけておいてその言葉は無いだろ﹂
﹁じゃあヒロくんとの馴れ初めはまた今度ー!﹂
﹁うあー﹂
彼はなんとも気の入らない返事をした。今度はヒロくんも混ぜてイ
ンタビューしてやります。
リョウトくんと別れて少し経って振り返ると、彼はまだ家の前に
立っていました。とても、寂しげに、悲しげに。その姿は、いつも
学校で見せるような、明るく元気なものとは正反対でした。初夏の
風は少し暑く、少し冷たい気がしました。
この時わたしは思ってもいなかった。彼が明日、﹁消息不明﹂に
なることを。
△
▼
あれからもう二週間なんだよな。時の流れは早いもんだな⋮。
しかしほんっと、アイツと話してると疲れてくるな⋮。なんでまだ
掃除してないのにこんなに息あがってんだろ⋮。
﹁さて、さっそくやりますか﹂
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意気を上げつつ、乃木家の玄関の鍵を取り出した。その時、ふと乃
木家のポストに目が触れた。
﹁手紙⋮?﹂
おかしいぞ、なんで手紙なんて⋮。確認してみるか⋮。いやいや、
他人に送られてきた手紙を見るなんて⋮。
そう思いつつも俺の手はポストの中に入っていた手紙を取り出して
いた。
﹁インドア社⋮?﹂
その取り出した勢いのまま、手紙の封を開けた。
﹃五月十五日
乃木サクラ様 この度は﹁インドア:β﹂へのご登録、誠に有難う御座います。
﹁インドア:β﹂へのログインの際は付 属の機器を、説明書をよ
くお読みになってからをお願いいたします。インドア社はあなたの
﹁インドア:β﹂でのご健康な生活を心より願っております。
インドア社 人身管理部
部長 高津ヒナタ﹄
こう書かれてあった。
︱︱︱高津?ミカゲとなんか関係あんのか?︱︱︱それにインド
ア?聞いたことが⋮︱︱︱日付は⋮五月十五日︱︱︱サクラが死ん
だ翌日︱︱︱なんで今更︱︱︱
一通の手紙から一瞬で多すぎる疑問が浮かんできた、そして、﹁
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インドア﹂という言葉に関連した一人の親友が思い浮かんだ。そし
てすぐさま携帯電話を取り出した。
﹁ええっと⋮、ヒロの電話番号は⋮。っと、⋮⋮⋮もしもし?ああ、
うん。ちょっと聞きたいことがあってさ。お前、前に言ってたじゃ
んインドアがすごいとかそれに姉貴が関わってるとか。で、インド
アについて詳しく聞かせて︱︱︱
18
腐人高津ミカゲのネタ探し
前篇︵後書き︶
前回の﹁謎の幼女﹂とか﹁天才ハッカー﹂とかどこ行った。その
後編﹂か今度こそ﹁謎の幼女﹂の話
上半分がリョウト視点だっつーね。すみません。ええっと、次回は
﹁腐人高津ミカゲのネタ探し
になりそうです。
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異質人間ミカンの疑問
﹁今日の聞き込み終わり!﹂
そう言ってボクは帰路につく。道行く人に疑問を投げかけ、回答
してもらうのがボクの日課だ。とは言ってもボクは報道記者でもな
いし、インタビュアでもない。こんなことをして許されるのはボク
の見た目が﹁ショーガクヨネンセイ﹂だからだろう。ああ、それに
してもまた疑問が増えちゃったなあ。何でここに居る人はみんなし
て﹁あっちの世界の夕焼けの方が綺麗だ﹂とかいうのだろう?そも
そも﹁あっちの世界﹂とはどこなんだろう?
信号機は未だ赤のままなので足止めて、最近の疑問を少しまとめ
よう。
・﹁あっちの世界﹂とは何か?
・﹁ガッコウ﹂とは一体何をする場所なのか?
・アルファツリーの内部とは?
・この前見つけた扉の向こうとは?
・自分の両親の行方とは?
うーん、こんなもんかな。最近気になってるのは﹁アルファツリー﹂
と﹁あっちの世界﹂のことかな。アルファツリーの内部にはまだ誰
も入っていないようだし、すごい気になるな。でも今一番﹁あっち
の世界﹂だなー。はエンジ君も﹁あっちの世界﹂から移住?してき
たみたいだし⋮。あっ青だ。
ボクは歩きつつ、自分の考えを整理する。
エンジ君は﹁ガッコウ﹂とやらいう施設に﹁通いたかった﹂らし
かったけど、﹁ビョウキ﹂で通えなかったらしい。気がついたらこ
こ、インドア:αに居て、知り合いはボク一人らしい。ふふ、寂し
20
がり屋なエンジ君にはボクしか居ないのだ。明日も遊んであげよう
!エンジ君が十歳なのに対してボクがまだ二歳と少しなのが気にな
るけど⋮。
⋮それにしても最近変な視線を感じるなー。まあボクの見た目が
こんなにも可愛いのならそりゃあ世の人は注目するだろうね!ふふ
ふ⋮。
そんな事を考えながら、無事に家についた。
﹁ふー疑問ノートも結構な数になってきたなー﹂
一休みをし、﹁疑問ノート﹂がズラリと並べられてある本棚を見
る。このノートはボクが思いついた疑問とそれに対する答えが書い
てある。順々に読み返そうと思い、その中の一冊目を取り出した。
﹁一番最初の疑問⋮あははっ、﹃ハクサイ﹄とは何かだって。なん
だこりゃ﹂
ボクがこのノートをつけ始めたのは一年前。もともと何に対しても
疑問を持っていたので、まとめることにして書き始めたんだけど⋮
まさかこんな量になるとは⋮。
﹁昔のボクはこんなことを⋮。﹂
暫く楽しい気分でいたが、いつまでたっても埋まらないひとつの疑
問に目がいき、気分が沈んだ。
﹁ボクの両親は⋮。ボクはどこから⋮﹂
ずっとだ。ずっと分からない。自分の家族について、自分がどこか
ら来たのかについて︱︱。
二年前、ボクは気がついたらこの家に居た。何故かは勿論分から
ない。その時は何一つ分からなかった。何も記憶が無かった。これ
も埋まらない疑問の一つだ。それから色々な人を頼り、ここが一体
なんなのかをまず調べた。その結果、ここは﹁インドア:α﹂とい
う世界という結論に辿り着いた。そして、この世界に居る人たちは
全員﹁あっちの世界﹂という別の世界から来ているのだということ
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を知った。でも、ここに居る人たちは﹁あっちの世界﹂についてあ
まり語らない。﹁あっちの世界﹂の話をすると、みんな沈んだ表情
をする。ただ、ほとんどと言っていいほど人が、自分の﹁家族﹂や
﹁友人﹂に対して謝罪をしていた。﹁あっちの世界﹂とはそんなに
も恐ろしいものなのかなあ⋮。
﹁それでも、知ってみたいよね﹂
ボクは知りたかった。﹁あっちの世界﹂を。もしかしたらそこに、
自分の大切な家族が、大事な友人がいるのかもしれないと、淡い思
いを抱いて︱︱。
・・・
﹁んん⋮?ふあぁ⋮﹂
あれ、いつの間にか寝ちゃってたみたい。うーむ、今日も聞き込み
しますかー。
ボクは疑問ノートと鉛筆をバッグに入れ、家を出た。
さて、今日はどこで聞き込みしようかなーっと︱︱
﹁ちょっと君﹂
﹁えっ?﹂
声をかけられ、振り返ってみると、若い男の人が立っていた。この
人⋮何か、違う。これまで会ってきた人と、雰囲気が全然違う。
﹁あ、怪しい人じゃないよ?ちょっと聞きたいことがあって﹂
﹁はぁ⋮なんでしょう﹂
とりあえず返事はした。
﹁君、自分がどこから来たか知ってるかい﹂
﹁えっ!?﹂
自分の素性を当てられ、うろたえた。
22
﹁その反応⋮。やっぱりなんかの不具合かな。ちょっとあそこまで
来てくれるかな﹂
男の人はそう言って、アルファツリーを指差した。少しだけ好奇心
が擽られたけど、それよりも︱︱
﹁いや、なに、ちょっとだけ検査するだけぶばらぁ!?﹂
﹁結構です!﹂
ボクは男の人の股間を蹴って逃げ出した。本能で感じた、この人は
ヤバイ。そして、あのアルファツリーもヤバイ。
﹁ぐっ⋮。このクソガキ⋮!﹂
男の人は幸いグロッキーのようだ。よし、なんとか逃げれそう⋮!
・・・
﹁どうしてこんなことに⋮﹂
ボクは窮地に立たされていた。数十分前、謎の男性の股間を蹴りあ
げて逃げ出した後、ボクは何故か捜索されていた。
﹁おいまだ見つからないのか﹂
﹁なかなかすばしっこいな⋮。そっちは?﹂
﹁見つけたんだが、すぐに裏路地に入られて見失った﹂
﹁まだそこらへんに居るんじゃないの?﹂
数人の男達の会話が通りから聞こえてきた。うっもうここも時間の
問題か⋮。裏路地から通りの様子を伺いつつ、絶望した。
﹁おい何やってんだ?﹂
﹁!?﹂
﹁そんな驚くなって⋮。個人的に聞きたいことがある。ちょっとこ
こに逃げ込め﹂
いきなり声をかけてきた若い男性は手まねきをし、裏口のドアから
顔を出している状態だった。
23
﹁えぇと⋮﹂
正直迷っていた。何か裏があるのかなと。でも、この人、また他の
人とは違う⋮?なんていうか⋮懐かしい感じ⋮?
﹁怪しむなら別にいいが⋮。ありゃ、アイツらこっちに来て⋮ちょ、
バレるバレる!﹂
﹁きゃっ!?﹂
強引に手をひっぱり、路地裏から古びたビルの中に入れさせられた。
﹁ちょっと、いきなり何するんですか!?﹂
﹁あーゴメン。焦ってたもんで⋮﹂
男性は頭をかきながら謝った。ホッ⋮優しそうな人でよかった。
﹁あーっと自己紹介がまだだった。俺の名前は篠藤ソウジ。お前を
追っていたやつらと同じ組織に入っている⋮って逃げ出そうとすん
な!俺はアイツらとは違う!﹂
﹁何か怪しいと思ってたけど、そういうことだったんですね!グル
だったんですね!同じ苗字で親近感が湧いてたのに!﹂
﹁え⋮やっぱり、か⋮﹂
﹁え?﹂
ソウジさんの﹁やっぱり﹂という言葉を疑問に持った。
﹁さっき言ってた﹃聞きたいこと﹄なんだが、単調直入に言おう﹂
え、何ですかいきなり。
﹁お前の下の名前、﹃ミカン﹄だろ?﹂
﹁!?﹂
一体今日はどれだけ驚くんだろうか。
﹁そしてここからが本題だ。多分だが︱︱
俺とお前は、兄妹だ﹂
その言葉は、今日一番の驚愕した疑問だった。
24
△
▼
今日は楽しかったな。やっと同年代の友達が出来たし。まだこっ
ちにきて一日しか経ってなかったけど、なんとかやっていけそうだ。
それにしても、サクラねーちゃんにお別れ言いたかったなあ。
﹁僕、死んじゃったんだよな﹂
まだ分からないなあ。死んだってことを。
﹁でも、こっちの方がいいかも﹂
そう、こっちの方が断然いい。あっちの世界は苦しくて、毎日が苦
痛だったけど、こっちはそれが無い。そして、友達が居るんだ。こ
っちには。
﹁ミカンちゃんか⋮。可愛かったなあ﹂
明日も遊ぶ約束もした⋮し⋮ってアレ?⋮急に⋮ねむた⋮く⋮。
・・・
﹁おいガキが外で寝てるぞ、どうする?﹂
﹁ちょうど実験材料が足りなかったんだ。コイツには悪いが、アル
ファツリーに行ってもうらおうや﹂
﹁まだこっちに来て数日も経ってないようだが⋮まあこの歳でこっ
ちにくるとはロクな現実じゃなかったことは確かだな﹂
﹁可哀そうに⋮。ま、理不尽なのはこっちでもあっちでも同じだっ
てことを学ぶんだな﹂
25
.
26
異質人間ミカンの疑問︵後書き︶
やっとインドアの中の話に入りました。いやーこの話は苦労しま
した。まずミカンちゃんの設定がイマイチあやふやだったのと、キ
ャラが思い浮かばなかったことですね。色々考えた結果、自分の中
の﹁小学四年生﹂のキャラになりました。それにしては少し大人び
過ぎた感じですね、ハイ。次回は⋮まだ構想すら練ってません⋮。
感想の方を、どうか宜しくお願い致します。
27
PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n0603bg/
in door
2012年10月18日10時28分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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