ヤンデレくんとヒキコモリ彼女 - タテ書き小説ネット

ヤンデレくんとヒキコモリ彼女
ポッケ
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うぞ。
︻小説タイトル︼
ヤンデレくんとヒキコモリ彼女
︻Nコード︼
N1097CE
︻作者名︼
ポッケ
︻あらすじ︼
ヤンデレ青年︵27︶とヒキコモリ彼女︵30︶がとても幸せに
暮らすお話し。
2話完結予定。
1
前編︵前書き︶
2話完結予定です。
続きは明日投稿します。
連載が煮詰ってしまいましたので、息抜きで書きましたm︵︳︳︶
m
2
前編
:::
朝の見送りを済ませると、リビングの監視カメラの前に“掃除をす
る”の意味のカードを置く。
ヒキコモリだからこそ快適な家に住みたい。そういった願いから始
めた日課。
かれこれもう2か月になる。
一緒に住んでいる彼は私が他の人と接触することを極端に嫌がる。
ホームクリーニングでさえ嫌がるだろうから、こうして毎日掃除に
勤しんでいるのだ。
もともと掃除は好きだったので苦に感じることはない。
彼以外とコミュニケーションを取らない分、精神的ストレスはフリ
ーとなり心身ともに健やかなのだ。やはり生きにくさの元凶は対人
ストレスであったということが分かる。
現代社会の問題の一部を痛感した。
灰色の町、同じ様な疲れた顔を浮かべ歩く人々。
窓際に置かれた紫陽花を撫でる。
みずみずしい冷たさを含む葉に生命を感じる。
ここでは季節を同じように感じられる。見つける余裕が心に生まれ
る。
うつろう色と共に地に足を付くこともできずに中途半端だった日々
を思い出す。
目を閉じ、再び開くと赤紫の紫陽花の端の白さが目に付いた。
愛おしくなり、指先でそれを確かめてから離した。
大丈夫と塞いでしまった日々はもうない。今はこうしてある。
3
もちろん、人間は人間とコミュニケーションを取ることで成長する
というが、彼以外と会うこともないのだし必要ないと、考えること
も止めた。実に楽である。
そんな日々を他の誰かに話すことはできない。
外へ出掛けることも、旅行することも難しい。
だけど、私はこの生活に満足している。
彼はヨーロッパ系︵どこだったか忘れた︶貴族の末裔で、日本人の
血が4分の1流れている。
見目はクウォーターにありがちな、目鼻立ちがはっきりしているの
に老けすぎない甘い顔。
日本人気質はいい意味で作用していた。
黄昏を思い出す金色の髪とターコイズブルーの瞳はいつも私の心を
切なく溶かしている。
そんな彼は、出会ったころ日本語が話せなかった。
祖母さんが日本人なのだが、小さい時に亡くなってしまったので教
えてもらうこともなかったとのこと。普段は英語やドイツ語だった
り、フランス語だったりと日本語は必要としなかったかみたいだ。
彼がどれくらいの国に言葉を話せるのか正確な数は知らない。
私が、初めて話しかけられた時は英語だった。
日本人が義務教育で習う言語が英語と聞いたかららしい。
実際の日本人のほとんどが、英語を勉強はしても実践できていない
ことを彼はもっと知るべきだった⋮。
そして、私も英語をちゃんと勉強しておけばよかった⋮。
互いに意味を取り違って始まった関係が今なのだ。
問題だけど、今は問題ではないのだけど。
彼は私と出会って1ヶ月で日本語をマスターした。
4
その辺の日本人と遜色ないくらいにである。
私と会話ができることをとても喜んで、今では仕事以外の日常会話
が日本語らしい。
﹁君とやっと言葉が通じ合えて幸せ﹂なんて、本当にごめんなさい。
他の国の言葉も勉強します。スペックの違いはあるにせよ私も彼の
国の言葉を勉強しなければならないと思いつつさっぱりしていない。
反省の日々です。
そんな彼はお金持ちで、実家は城持ちでありながら
俗に言うヤンデレだった。
たまたま日本で仕事があったので来たらしいが、私を見つけて出会
った次の日からこのマンションへ閉じ込めた。
自国へそのまま帰国する予定も、日本を急に離れるのでは私が可哀
想だとしばらく滞在する事で見送られた。
監禁時に、スマートフォンは没収。
会社も退社届けが出されていた。
親へはPC画面越しで、彼と結婚の挨拶をさせられた。
あっという間だった。
私は彼以外、世界と引き離された。
小説で読んだことはあったが、実際目の前にヤンデレな彼がいると
逃げる気も起きなかった。恐怖感は不思議となかった。
きっと私も彼を好きになっていたからだと思う。逃げようとしては
駄目だ、ヤンデレはうけてたて!なんて犬じゃあるまいしな事を考
えて終わった。
初めのうちは寂しさを感じたが、あまりにもヒキコモリ生活が快適
なためどうでもよくなったのだ。
彼は私が退屈しないように、沢山の本︵本屋並み︶と温泉並みのお
風呂、DVD、CD、運動できるマシーン、植物などをそろえてく
5
れたからである。
だから不自由や退屈を感じたことなどない。
ましてや、眩しくてキラキラした美青年に﹁愛してる﹂なんて毎日
囁かれては、ここは天国ですか!?としか思えない。
一度、部屋の掃除をしているときに監視カメラの死角にいて大騒ぎ
になったことがあるので、何かをするときには必ずカメラの前に行
動の札を吊るす。
彼に飽きられたら?
それを今考えても杞憂だし⋮その時になったら考えればいいと思う。
掃除が終わり、運動を1時間して、本を読んで、お昼を食べて、お
昼寝して⋮
それじゃあ、今日の夕食は何にしよう。
かざ
外部との接触媒体は封じられていて、欲しいものや質問は紙に書い
てカメラに翳すこととなっている。
“夕食は何がいい?”
翳して1分もしない内に備え付けの電話が鳴る︵これも彼との電話
ひより
のみ通じます︶。
﹁日和が作ったものならなんでも美味しいよ﹂
お決まりの文句が綴られる。
それじゃさっぱり決まらないので、肉・魚・豆どれ!?と聞き返す。
﹁日和﹂
⋮らちが明かないなぁ。安定の甘さと馬鹿さですな。
私はいつものように電話を切り、メニューを紙に書き、必要食材を
6
買う様にカメラの前に吊るした。
これで帰りに買ってきてくれるはず。
日々、同じやり取りが繰り返されると分かっておりながら、こうし
て聞いてしまうのは私が彼に甘えているからかもしれない。
絶対に言葉にしないけどね!
︵身体の保身のために︶
:::
低気圧に泣きそうな空、足元から葛のツタが絡まるように引き寄せ
られる思考。
2か月前、私は酷く人生に疲れていたのだ。
30年という人生は、私の心を内に内へと向かわせた。
困窮なんて状態ではないし、多少の不備はあるものの身体は動く。
小学1年生のお道具箱の様に揃った人生。
仕事だってある。
歪ませたのは“人”であった。
足を引っ張り、引っ張られ、かといって助け合い。なんだかよく分
からない矛盾に満ちた人間関係をとりなすのに疲れたのだ。
﹁もう嫌だ。帰りたい。引きこもりたい﹂
が最近の口癖にもなっていた。外に出たくない。誰とも会いたくな
い。
しかし、
仕事をしなければ生きていけない。
7
子供時代に面倒だと思った足枷は無くなりこそしたが、大人として
の責任が世界を重くさせた。
生きる上で必要なこと、生き方を楽にするために身に着けた教養た
ちも心の疲弊で色褪せてしまった。
このまま布団に入って、目覚めることなく夢の世界で生きられたら
とも思う。
本当に疲れていた。
:
友人に教えてもらった隠れ家的バー。
いつものように、ジンバックで唇を濡らす。
淡く光を弾きながら消えゆく泡に目を細めた。
パチパチと音が聞こえてきそうな寸前で、飲み友達の一人が、見目
麗しき青年を連れて来た。
友人を介して青年と会話をする。
夕焼けの光を取り出して染めたような金色の髪、エキゾチックな眼
差しを強調するようなターコイズブルーの瞳。背は私よりも20c
m以上高い感じだ。何より、カジュアルな装いに拘らず品がにじみ
出ていた。20代半ばくらいかな⋮一体どこのお坊ちゃまだ?
日本では目立ちすぎる風貌に胸焼けしそうになる。
青年はニコラウスという名で、”ニコ”という愛称で呼んでほしい
と言った。
まちや
ひより
姓は発音が難しくて忘れた。舌を噛みそうな音だった気がする。
﹂と呼ばれた。
私は街谷 日和と名乗った。好きに呼んでいいと言ったら、目尻を
赤く染めながら﹁Hiyori
⋮なにこの子もう酔ってるのかな?外人ってアルコール強いんじゃ
ないの︵偏見︶??
ニコは英語で会話を進めた。
8
友人によると何か国語か話せるらしいが、日本語は話せないらしい。
このニコ様はすごい人との事。
今日限りだろうし、あまり興味もないが⋮。
適当に受け流しながら会話を進める。
ニコはらんらんと私に話題を振っていた。
wondering
if
you
See
had
ha
an
more︵ハート
seems
to
色々と聞かれるわけで、ただただ答える。なにこれ尋問?
was
時々よく分からない質問も含まれる。
﹁I
−
Mine
stolen.
heart.
been
extra
ve
を余分に持っていませんか?どうやら僕のハートは盗まれてしまっ
たみたいで⋮︶﹂
﹁とりあえず、私も1つしか持ち合わせがないので、心臓移植して
ください。﹂
日本語で返すと、通訳していた友人が大げさに顔に手を当てて、﹁
can't
keep
my
eyes
off
of
y
オッフゥ∼﹂などとジェスチャーしいている。あなた日本人だよね?
﹁I
ou.︵君から目が離せないよ︶﹂
﹁もう一度目を付け直してあげましょうか?﹂
通訳兼友人の反応は鬱陶しくなるばかりである。
この人︵友人︶勉強と仕事できるはずよね?意味の分からない問い
に普通に返しているだけなのに訳が分からない。外国独自のジョー
クというもので、返答にも模範回答があるのかしら。
だとしたら、いい加減教えてほしいものだ。
そんな返答を繰り返していると、
友人は2人で頑張れなどと言い残してどこかへ行ってしまった。
9
:::
10
後編︵前書き︶
※少しR18です。苦手な方、ご注意下さい。
11
後編
:::
頑張れと言われても、私は英語に明るくないので、通訳なしでは会
話などできるわけがない。
⋮視線を感じる。
これは私に何か期待でもしているのであろうか。
日本に来たイケメン外国人。
期待するだけ無駄だと言いたいが、言葉が浮かばない。
自分のボキャブラリーの貧困さが恨めしい。
spend
s
you.
you
time
if
to
with
そうだ、昔同級生が外国人との会話は中学英語程度を理解していれ
to
to
happy
listening
ば大体OKと言っていたような気がする。
want
思い出せ!中学英語!!
﹁I
﹂
⋮?
呟きのような言葉。
早くてよく聞き取れない。
used
not
﹁I'm
Ill
slowly.﹂
be
English.
peak
“英語が分からないからゆっくり言って?”
何とか言葉を捻りだし、問うた。
12
すると、ふわりといい匂いが近づく。
、want
to、
spend、
time
you.
with
with
time、
それが彼自身だと気付くには神経が耳に集中しすぎてしまった。
﹁I
you.﹂
spend
もう一度、今度はゆっくりと耳元で囁かれた。
to
声は低くて甘い。
want
息をのんだ。
“I
”
これって“あなたと一緒に時間を過ごしたい”て言う意味だよね。
英語に疎すぎてもなんとなく分かる。
なるほど、一夜の関係を求める口説き文句か。
引き込まれるほどの彼の魅力に、
こんな美青年なら一晩くらい遊ばれたっていいやという好奇心。
とりあえず、
﹁Yes﹂
とだけ答えよう。人生のいい思い出にもなりそうだ。
バーの照明の下、ニコの瞳が光で揺れてキラキラとした。
綺麗⋮。
覗き込んだら、とろける様に微笑まれた。
私、死んでもいい!︵二葉亭四迷︶
イケメンの笑顔の破壊力はすごすぎる!!
この出来事が先の私の人生を変えてしまうなんて、その時の私は考
えもしなかった。
13
::
某高級ホテルの一室。
私でも分かる有名所。
エレベーターでカードを差し込んだので、お高い部屋なのだろう。
あぁ、本当にお金持ちだったんだと少し動揺。
バーから繋がれた手は、どさくさに紛れて離そうとも離れなかった。
手汗が気になる。気になるとさらに汗が出るのはどうしてだろうか
⋮。
ドアを開けると空気が切り替わり、心臓が持ち上がるようなくらい
の衝動を含んだ甘さになる。
私はこの空気が苦手だ。
どうしたらいいか分らなくなる。
手を引かれて導かれた部屋はベットルーム。
優しく押し倒される。
抱きしめられ、スンと首筋の匂いをかがれた。
﹁⋮ふっ﹂
びっくりして声が出た。
回された腕の力が強くなった。
私も彼を確かめたくて、広い背中に手を伸ばす。
シャツ越しに感じる温度に安心と自分の欲を感じた。
やがて腕が緩められると、ニコは起き上がって上着を脱いだ。
シャツを脱ぐにしても色気があって、心が余計に乱される。
少し明るすぎるルームランプはまるで彼の髪色を溶かし込んで、動
くたびに煌めかせた。
14
こんなに美しいものが存在するのか。
世界はまだ知らない事ばかり。もっと知りたいと思う欲求は知らな
い世界へか、または彼に向けられたものか。
手を伸ばせば届く距離に、胸が鳴る。
緊張のためか喉が渇く、唇を舐めたら舌ごと絡め取られた。
お風呂に入るのも惜しいくらいに互いに求めすぎていた。
身体の奥から高ぶる何かを抑える理性など部屋に入るときに落とし
てしまったようだ。
今が欲しい。
﹁ふぅ、あ、んんっ﹂
自分でも信じられない声が出た。
滑らかに絡む舌をせがむ様に鼻にかかる媚。
彼の興奮が太ももに触れると、心臓がぎゅっとなって血が巡り、煽
るように膝を立ててしまった。ニコから苦しそうな声が漏れる。
上がる2つの息。
切りそろえられた爪、形の良い指先が私のワンピースのホックを外
していく。
ゆっくりと。
サイドにあるソレは私の肌を露わにしていく。
そしてパサリとベットサイドに力なく落ちた。
サーモンピンクの下着はレースの上品さが甘さを抑えているので、
お気に入りの1つでもある。
今日着ていて良かったなどと考えていると、首筋を噛まれた。
痛くて彼を睨むと、“自分だけを見て”と訴える瞳に対峙してしま
い怒れない。
15
仕方がないと、不安げに開いた彼の唇に自分のを重ねた。
思った以上に柔らかくて、食んだらやり返された。
なんだか可笑しくなって笑うと、彼も笑って私に沢山のキスの雨を
降らせてきた。
額、瞼、鼻、頬、唇⋮
ついばむ様に優しいキス
耳、喉、鎖骨
くすぐったくて身をよじったら、“ダメ”と肩を甘噛みされた。
まるで恋人のような行為。
一夜だけにしても心が満たされる感じがする。
肌に触れる彼の温度に愛おしくなった。
出会ったばかりなのにどうしてだろうか。
日々のストレスで人恋しくなっているだけだろうか。
どちらでもいい。
ブラジャーのホックを取られ、胸が露わになる。
二つの柔らかな膨らみ。
反応して尖ったその先。
﹁⋮あ!﹂
あてがわれた唇と舌の濡れた感覚に声が漏れた。
舌が蠢くたびに声を上げてしまう。
﹁あ、あ、あっ﹂
16
もう片方も指でいじられ、気持ちよさに更に支配される。
わざと音を立てる様にちゅぅと吸われると、お臍の下の辺りがじわ
りと痺れた。
耐えきれずに膝をこすり合わせ、腰が揺れたのを彼は見逃さなかっ
た。
胸から臍を通り辿り着く。
既に蜜で濡らし誘うソコ。
慣らすために差し込まれたニコの指はすんなりと受け入れられた。
きゅうきゅうと絡みつくのが分かる。
羞恥に目を閉じる。
きっと私、変だ。
彼のズボンのジッパーを引き下げて、
固く育ったそこを握りこんで、“欲しい”と懇願する。
熱を持ち、露を零す先端。
予想以上の大きさに不安にもなるが何とかなるだろう。
ニコが息をのむのが分かる。
﹁Hiyori⋮﹂
掠れた声で名を呼ばれる。
そして、
限界まで開かれ、挿れられる熱の塊。
熱くて、苦しくて、でも満たされて、様々な感覚に翻弄される。
絡め取られた指。
17
熱い息が上がる。
打ち付けられるたびに、仰け反り腰が上がる。
ひどく気持ちがいい。
﹁あ、ひゃっ⋮ニ、コっ!ああぁぁぁっ!!﹂
言葉にならない声で呼ぶ。
行為の最中、ニコは沢山の言葉を私に囁いた。
時に息を弾ませ、熱を孕み、甘く、低く⋮
love
you.︵愛してる︶”というお
私は何を言っているのかさっぱり分からなかった。
聞き取れたのは“I
決まりの言葉だけだった。
そして、外人はするときの喘ぎ声も違うということが分かった。
あまりにも色っぽくて興奮してしまったとは言えません。
貪欲に求め合い、目覚めた朝。
そこはホテルではない、見たこともない場所。
現在のマンションでした。
いつの間に用意したの!?︵心の叫び︶
::
18
ニコは私に“一目惚れだった”という。
私しかいないという。
この執着も全て、私を好きすぎてどうしようもない衝動から来ると
いう。
この美しい人は何を言うのだろうか。
あえて言わせてもらえば、⋮⋮私もです。
はじめのあの瞬間から捕らわれました。
だけど、手に入れられないだろうと思い、敢えて感情に蓋をしまし
た。
君の言う“一目惚れ”でした。
本当に今更いえませんがね。
3回鳴らされるチャイム
それはニコが帰ってきた合図。
﹁おかえりなさい﹂
たった半日だというのに、会えて嬉しくなる。
私が笑うと、彼も笑んだ。
それだけで今日も幸せだ。
いつもありがとう。
ちゃんと大好きだよ。
ニコ
19
おしまい
20
後編︵後書き︶
お読み頂きましてありがとうございました。
短編のつもりで書いたら、文字数が大変なことになって前後編にし
ました。
⋮しかし!ここで終わらないのがいつもの話!!
なんか、彼視点の話も浮かんだので今書いてます。あ、すみません。
いつも。
︳︶m
近々、更新致しますのでよろしかったらどうぞよろしくお願い致し
ますm︵︳
21
ヤンデレくん視点
前編︵前書き︶
※文字数が半端に長いので、前後編に分けました。
22
ヤンデレくん視点
:::
前編
祖母には1度だけ会った記憶がある。
周りにいない、日本という国の人。
小さな身体に黒い髪と瞳、笑んだ時のえくぼが印象的だった。
優しい雰囲気の人だった。
﹁“一目惚れ”っていうのがあるんだよ﹂
どことなくぎこちない言葉。
日本語の部分だけ、不思議な音を刻む。
﹁ヒロメボォレ?﹂
﹁“ヒ、ト、メ、ボ、レ”﹂
幼い俺に1つだけ教えてくれた日本語は“ヒトメボレ”だった。
祖母は祖父に“ヒトメボレ”というものをされて、はるか遠くまで
嫁いだらしい。
俺の家は世界大戦前、貴族で国の体制を危ぶんだ祖父は他国で貿易
関係の会社を作り、成功させた。
その時に日本で祖母に出会い、“ヒトメボレ”したらしい。
自国まで祖母を連れ帰り妻とした。
そして会社を引退後、祖父は大金持ちが道楽で改築したという山奥
の城を買って祖母と二人暮らしをしていた。
一人娘である母は、祖父の企業に勤めていたドイツ人の父と結婚し、
俺と弟を産んだ。
母が言うには、祖父と祖母はとても仲が良すぎて、ちゃんと構って
もらえた記憶があまりないとの事。だからか、俺と弟はとても母に
23
大事にされた。
俺が祖母と1度しか会ったことがないのも、祖父の祖母への執着が
理由らしい。
祖父には何度か会ったことがあるが、髪と瞳の色が俺と全く同じだ
った。
母は祖母に似ていたので、俺が祖父の性質を受け継いでいないかと
ても心配していた。
ちなみに弟は母に似ている。
自分としてもそこまで興味のある女性に出会ったことなどないし、
祖父は祖父、俺は俺だから違うなどと思っていた。
なのに、まさかこんなことになるとは考えもしなかった。
仕事で日本支社の視察へ行くことになった。
祖父の作った会社で働き、仕事の関係上他国へ行くのはよくあるこ
とだが、日本は初めてだった。
飛行機を降り、ターミナルから迎えの車で会社まで1時間。
日本の首都は湿度が高く、ごみごみと人がひしめき合っていた。
頭も黒いし、服まで黒い。
不思議な場所だと感じた。
秘書のジョーイはしかめっ面でネクタイを緩めていた。
湿度でくせ毛の髪がまとまらず、いらいらしている。
会社で通訳をしてくれている社員が街中を案内してくれるという。
ジョーイはスケジュールなどの調整をするために会社へ残った。
移動は車を進められたが、距離を聞いて歩くことにした。
小さな箱に無理やり詰め込んだような街。
24
時折ある緑は義務的なものに感じた。
むわりと生温い風が、往来の人々で混ぜられ湿度を上げ、余計な暑
さを感じさせる。
今は6月梅雨の時期、一番湿度が高いとの事。
そういう理由ならば仕方があるまい。
異国にある季節は、どこか謎めいた部分を残し面白さを含む。
それは日の長い季節の夕方に仲間と飲むことに似ている。
いつもと違う、落ち着かなさがある。
そして、俺の人生を変える出来事が起こる。
行きつけのバーだと紹介されたそこは、なるほど雰囲気も良かった。
流れる音楽のセンスも良く、お客は大人の楽しみ方を知るものばか
りだった。
しかし、俺はある一点に全てを奪われた。
店奥の1人用テーブルに座る女性。
黄色人種特有の黄が混じる肌は、自然な白で滑らかに光を集める。
唇はまるで朱を溶かしたように色を持ち。
ダークブラウンの瞳は、長いマツゲに縁どられ影を落としている。
骨格も華奢で、足首などは片手で回りそうだ。
長く、美しい黒髪がさらりと頬にかかった。
青天の霹靂だった。
25
身体の中心から広がる切なさに似た感情。
彼女が欲しい。
彼女だけが欲しい。
他は何もいらない。
その突き上げるような衝動。
この時一つの言葉が声と共に落ちてきた。
“ヒトメボレ”
これがそうだというならば、祖父の気持ちがよく分かった。
そのまま彼女を浚って閉じ込めて2人だけの世界でを望む。
通訳の社員が彼女と知り合いらしい。
どんな知り合いかと問い詰めたかったが、彼女を手に入れる方が先
だった。
紹介してほしいと頼み、会話を繋いだ。
彼女は、街谷日和という名だった。
鈴音の様に美しい彼女の声に聴きほれていた俺は、なんとか名前だ
け拾った。
日本人の名前の音は難しい。
﹁Hiyori﹂と呼ぶと、笑まれた。
これだけで心臓が壊れそうになった。
26
会話中、何とか彼女を口説こうとしたが意図を理解してもらえず、
文化の壁を感じた。
気を利かせた通訳の社員が﹁はっきり伝えないと彼女は分からない
かもしれない﹂といった。
to
spend
time
with
you
s
to
you.
そうか、はっきりと伝えないといけないのかと、言葉を探す。
want
それは、
﹁I
﹂
“あなたと一緒に時間を過ごしたい”
ずっと⋮
という言葉になって口を出た。
if
listening
happy
to
日和はその一部の音を拾ったみたいで、聞き返してきた。
used
not
﹁I'm
Ill
slowly.﹂
be
English.
peak
“英語が分からないからゆっくり言って?”
拙い彼女の発音に、理性が溶けそうになった。
どうしてこんなにも日和の一言、存在全てに心を奪われてしまうの
か。
苦じゃない。好ましすぎるくらいの甘さで、彼女に酔っていく。
どうしたらいい。
早く、日和が欲しい。
27
、want
to、
spend、
time、
俺は彼女の耳元に唇を寄せ、ゆっくりと伝えた。
﹁I
you.﹂
ピクリと跳ねた彼女の肩。
耳が赤く染まる瞬間を見た。
﹁Yes﹂
“いいよ”
with
との答えに、ありえないくらいの歓喜が俺の胸を襲った。
もう離さない。
え、ここからの話が聞きたい?
無理。
この夜の日和の可愛さは俺だけのものだからね。
:::
28
ヤンデレくん視点
後編︵前書き︶
※手直しが終わりましたので投稿します!
29
ヤンデレくん視点
後編
祖母が亡くなると共に、祖父も亡くなった。
本当に後を追うようにだ。
その時の遺言として祖父から城の権利を渡された。
当時、祖父が何を意図したのか分からなかったが今ならよく分かる。
“ヒトメボレ”した女性と2人だけで暮らせるように取り計らって
くれていたのだ。
感謝しきれない。
今は日和のために日本で暮らしているが、ゆくゆくは祖父の城で暮
らそう。
そうすれば、日和はずっと俺の傍にいる。2人だけの生活。
なんて素晴らしい!
街中の喧騒遠く、目下それぞれの道行く人々をガラス越しに眺める。
﹁仕事してください﹂
有能な秘書の一言。
ジョーイは大学の後輩でもあるので、気の置けない仕事仲間でもあ
る。
赤銅色の癖っ毛、背は高く中々の良い男だ。
そして、見かけによらず有能だ。︵そういうと怒られる︶
確認の終わった書類をジョーイの机に積み上げると、苦虫を噛み潰
30
した顔をされた。
仕事はしている。
ただ、今はそれよりも大切なものがあるだけ。
現在進行形のカメラの映像を眺める。
さっきも夕飯について可愛い質問をされた。
もちろん質問の回答については本気だ。
早く帰って生の日和に会いたい。
﹁⋮ナンデスカその分厚い本﹂
PCの前にめくったままにした雑誌。
﹁日本人が一番合うドレスが載っているだろう?﹂
ゼ●シィを訝しげな表情で奪われた。
何ページかめくって、ジョーイの眉間のしわが深くなった。
﹁一体どこで手に入れたんですか?﹂
﹁アマゾった﹂
﹁⋮⋮﹂
大方、日本の変なところばかり覚えてくる、なんて顔している。
日和が生まれて育った国の文化はなるべく取り入れたい。
そして、いつも思う。
﹁日和が可愛くて仕方がない﹂
﹁のろけですか?﹂
﹁事実だ﹂
“リア充爆発しろ”なんて呟きが聞こえた。
なんだ、お前も日本に馴染んでいるじゃないか。
﹁どうされるんですか?﹂
﹁ん?﹂
﹁ご結婚﹂
なんだかんだでジョーイは心配性だ。
その心配性がたたって、この間も彼女と喧嘩していた。
31
そんなに心配なら閉じ込めてしまえばいいのに。
そうすれば、彼女はお前しか見なくなる。そうだろ?
﹁ああ、すぐにでもと思ったんだが、あっちで落ち着いてからにす
るよ﹂
それには理由がある。
結婚によって国籍を移動してしまえば、もっと俺に頼らざるを得な
いし、逃げにくくもなる。
﹁日程決まりましたら早めに教えてくださいね。⋮この間のマンシ
ョンの手配は大変でした。いきなり夜中に電話で“朝までにセキュ
リティーがしっかりしているマンションをワンフロア用意しろ”な
んて、俺コンシェルジュかっての!﹂
﹁すまない。けど、日和が喜んでくれているから感謝している。あ
りがとう﹂
﹁ずるい、もう嫌この上司﹂
﹁まぁね﹂
そう言い返し、時計を見ると定時だ。
日和が待っているし帰ろう。
﹁あと、日和と関わりのあった男のリスト。早めにくれ﹂
﹁分かってますよ。犯罪だけは起こさないで下さいね﹂
﹁⋮場合による﹂
ジョーイが何か叫んだが無視をした。
もう時間外だ。
仕事は決められた時間内に終わらせるように努めた方がいい。
::
32
﹁ただいま﹂
﹁おかえりなさい﹂
玄関の扉を開けると、愛おしい彼女が出迎えてくれる。
後ろ手でカチリと鍵をかける。
その鍵が幾重にも重なって、
逃げられなくなるようにと日々俺は願うばかりだ。
夕飯の材料を渡し、そのまま料理に励む日和を眺める。
以前、後ろに引っ付いて見ていたら、邪魔で集中できないと包丁を
突き付けられたのでダイニングチェアから見ることにしている。
日和は可愛い、ずっと見ていても飽きることはない。
視線が気になったのか、顔を赤くして﹁見ないで!﹂と言われるが
照れているだけだろうと無視した。
サラダうどんなるものが夕食だった。
ポン酢と大根おろし、梅干し、大葉、ぶたしゃぶ、レタス、トマト
と具沢山だ。
花ふ入りのお吸い物は優しい味がした。
まるで、日和みたいだ。
日和が今日読んだ本の感想を話す。
本を読んで、どんなことが面白かったかどう思ったか。
くるくる変わる表情。
俺はそれを眺めながら話を聞く。
今日は恋愛小説だった。
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一目惚れした男女が山あり谷ありで幸せになるという。
ふと、思い立って祖父母の話をしてみた。
祖父が祖母に“ヒトメボレ”して、2人でお城に住んで幸せに暮ら
したと。
その祖父と自分は似ていて、日和にヒトメボレしたと。
﹁俺は初めて会った時から日和が大好きなんだ。だから君といる為
にならなんだってする﹂
君を僕以外の世界から切り離すのも、
初めのあの日以外、愛を確かめあうときにわざと子供ができる様な
方法をとることも、
その理由を作るため。
日和は目を丸くしてから、ふわりと笑んだ。
﹁あなたと似た人なら、おばあ様は幸せだったと思う﹂
祖母の話?
急に今の話からそこに戻る理由が分からない。
そして、祖父が幸せなのは分かるが、どうして祖母の気持ちもわか
るのだろうか。
﹁どうして?﹂
疑問を問い返す。
﹁だって、私幸せだもん﹂
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﹁キュン!!!﹂
食事中だったが、思い切り日和を抱きしめた。
愛おしさが止まらない。
﹁俺も幸せだよ﹂
そういって口付けると、麦茶が倒れると怒られた。
そんな君も大好きだよ。
何よりも。
日和
おしまい
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ヤンデレくん視点
これにて完結です。
後編︵後書き︶
お読み頂きまして、ありがとうございました。何だかんだで4話⋮。
でもヤンデレくんは新鮮で書いていて楽しかったです!
ちゃんとヤンデレなってたかしら⋮︵不安︶
そして、ご感想を頂けてとても嬉しかったです。
いつも拙い文章すぎて反省を重ねる私には飛び上がる位の驚きと感
激ですm︵;∇;︶m
未完結連載の方も頑張ります!
ありがとうございました!
ポッケ
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PDF小説ネット発足にあたって
http://novel18.syosetu.com/n1097ce/
ヤンデレくんとヒキコモリ彼女
2014年7月2日18時05分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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