王賊ZINと王女の心臓 - タテ書き小説ネット

王賊ZINと王女の心臓
パンター
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︻小説タイトル︼
王賊ZINと王女の心臓
︻Nコード︼
N5182S
︻作者名︼
パンター
︻あらすじ︼
王賊または盗賊王の異名を持つZINと相棒のジョン・シルバー
は大陸に知れ渡る大盗賊。今回狙うお宝は王女の心臓。これにはロ
イヤル・スキャンダルが絡んでいるようです。
1
その王国にはとても愛らしい王女がいました。
王女の美しさは王国に咲くどの花よりも艶やかで輝いていました。
またその性格は、慈愛に満ちいかなる階級の人間であっても分け
of
kingdom︶﹂と呼ばれるようにな
preciou
隔てない言動をするため、王宮の臣下だけでなく国民の誰からも王
女は愛されていました。
flower
そんな王女は何時からか﹁王国の貴花︵The
s
っていました。
国を象徴する気高く可憐な花として、王女は周囲の愛情を一身に
浴びすくすくと育っていったのです。
誰もが王女にはこの後続く生涯に幸福しかやってこないと確信し
ていたのです。
そんな王女が10歳の誕生日を迎える3日前の朝、王宮の城門扉
に一枚の張り紙が貼られていました。
王女の誕生日にハートを頂きに参上します。 王賊ZINと忠
実なしもべ
張り紙の内容に国民は一様に動揺しましたが、何より驚いたのは
やはり国王と王妃でした。
﹁まさか。吾の可愛い花の心臓を狙う賊がいるとは⋮﹂
国王は感情が高ぶりすぎて王座の上で権威の象徴の王錫を落とし
てしまうという失態を、臣下の前で犯してしまうほどでした。
﹁王賊とは一体何者です?知っている者はおりますか!﹂
王妃もヒステリックに謁見の間全体に響くほどの声で叫びました。
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﹁恐れながら﹂王座のそばにいた大臣の一人が口を開きました。
﹁近年大陸中の諸国で盗賊王または賊王と名乗る下賎の輩が暴れま
わっておるようです。
存在するものなら盗めないものはない。それが例え女神のブラジ
ャーだろうと盗んでみせるとうそぶいて、いかなる厳重な警護をさ
れた宝物庫の中からでも狙った獲物を盗み出すそうです。
実際名だたる貴族の中にも被害にあった者が一人や二人ではない
とか。大言壮語でなく本物の神出鬼没の賊だと恐れられております。
それで調子に乗りおって自らを王と名乗っているようですな﹂
﹁ああ。なんてこと!﹂さっきよりも大音量で王妃は悲嘆の声を上
げました。
﹁どうすればいいのだ。そんな盗賊に狙われては吾の最愛の王女の
心臓が奪われてしまう!そうなれば王女は死んでしまうではないか
!﹂
﹁そうですとも﹂と王妃。﹁心臓がなければ王女は生きていられな
いのですよ。よくもそんな残虐な行為ができる輩がいるものです。
そのような非道を成そうとする愚かな盗賊を何としてでも捕らえ、
王宮前の広場で断頭刑にして馘首を朽ち果てるまで晒し物にしてく
れる!﹂
その時何処からとなく声が聞こえました。
﹁怖い怖い。ギロチンはいやだな﹂
透明感のある若い男性の声が謁見の間に響いていました。ですが
謁見の間には若い男性などいませんでした。王と王妃、臣下の老齢
の大臣達、長らく王を警護してきた熟練の衛兵達のみでした。
﹁い、一体何処から聞こえてくる。何処にいるのだ﹂衛兵達が右往
左往して声の主を探したが見つかりませんでした。
﹁甘いなー。そう簡単には見つからないよ﹂若い男の声は翻弄する
のを明らかに面白がっていました。
﹁おれを見つけるのはそう簡単じゃないぜ。何せ、この城の見取り
図はおれの頭の中に完全に入っているのさ。王族しか知らない秘密
3
の抜け道とかね。知り尽くしているぜ﹂
﹁ええい。狼藉者がすでに王宮内に侵入しておるでないか!王宮全
ての兵を使って探しだせ!﹂
王は王座からすっくと立ち上がりつばを飛ばしながら号令をかけ
ました。完全に正気を失い目が血走っていました。
﹁やれやれ。王様、あなた身近の人間にすっかり騙されてますよ。
それを僕が教えてあげるというのに﹂
﹁な、何だと!誰が吾を騙していると?﹂
﹁宝物庫の秘宝、紅の⋮﹂
﹁賊にこれ以上無駄口を叩かせるな!﹂王妃もつばを飛ばしながら
話に割り込んで叫びました。
﹁そろそろ警備が厳しくなってきたから帰らせてもらうぞ。じゃあ
な﹂
その直後号令に従って城にいた全ての従者を総動員して捜索しま
したが、城のどこにも不審者を発見できませんでした。
それもそのはず。
バディ
クラウン
王城の中からから飛び出してきた一羽の鳥には誰も目もくれなか
ったからです。
その鳥こそ王賊ZINの忠実なしもべ、ではなく相棒である王冠
オウムのジョン・シルバーでした。
シルバーは城下町のはずれにある、旅人向けの安宿屋の二階のあ
る部屋の窓の際に降り立ちました。
﹁ZIN、戻ったぜ﹂
﹁ご苦労様。ご褒美ですよ﹂
十代後半の背は高いが痩せ気味な青年が待っていました。黒縁の
眼鏡をかけた、温和そうな笑顔を浮かべる学生風の彼こそZINで
した。彼はシルバーに新鮮な海老のむき身を差し出しました。シル
バーは美味しそうにそれをくちばしで咥え飲み込みました。
﹁ZIN。あと2尾の約束だぞ﹂
﹁はいはい。ちゃんと市場で一番新鮮な海老を購入してましたから
4
ね﹂
﹁おう。約束だからな﹂シルバーはさっきのZINの声真似の時と
違い中年の男性のような野太い声で答えました。
部屋の中にはZINの他に少女が一人椅子に腰掛けていました。
彼女はこの国の王女ほどではありませんが知的な美しさを備え、
周囲に隠しようのないやんごとなき方特有のオーラを放っていまし
たが、服装は下町の売り子のような質素もので表情に性格的な陰を
浮かべる、少し陰気な少女でした。
﹁こいつは、誰だ?﹂
﹁賓客ですよ。今回の王女の誕生祝いのね﹂
﹁そうか、あいつとの交渉は成功したんだな﹂
﹁ええ。彼女からあの手紙を拝借してあの男の伴侶にあれを見せる、
と一言。てきめん協力的になりましたよ﹂
﹁面倒くさい手順踏んでいるんだな今回は﹂シルバーは最後の海老
を食べようとしていました。
﹁今回の仕事は彼女の依頼ですから。対価も魅力的ですし﹂
﹁対価でお宝をもらったら盗賊じゃないだろ、ZIN﹂
﹁僕への譲渡を承諾しているのは彼女だけ。あちら方にして見れは
れっきとした略奪行為ですよ﹂
﹁おれは人間どもが混乱し泣き叫ぶ光景を見たいだけだがな。その
ためにお前に協力している﹂
﹁そんな姿になっても悪魔の本質は見失っていませんね。ですが悪
魔であるあなたが私に協力しているのは契約に逆らえないから、で
すよね﹂
﹁クソ。憎らしい。今すぐ貴様の魂を喰らってやりたいが、オウム
の中にいてはそれも出来ないわ﹂
﹁でしたら契約を履行すべきです。いずれはその中から出られるよ
うに成りますから﹂
﹁ふん。仕方ない。さっさと仕事をやり遂げるぞ﹂
﹁ええ。あなたも、それでいいですね﹂ZINは部屋の奥にいる少
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女に同意を求めました。
こくり。少女は小さく頷きました。
﹁で、段取りですが⋮﹂とZINが話し始めた時、下の階で男が大
きな怒声を上げて宿屋の主に詰め寄っている声が聞こえてきました。
﹁先ほど城内に不審者が侵入した。よって今城下町全地区で探索中
である。貴様の宿屋に不審者が泊まっていないか確認させてもらう
ぞ﹂
その直後部屋の扉を勢いよく次々と開けて中の宿泊客と悶着を起
こしている様子が聞こえてきました。
﹁警備兵が来たぞ。今は一階にいるが、すぐにここへやって来るぞ﹂
シルバーがZINに目配せしました。
﹁ですが、兵士のいる下の出入口から逃げられませんよ。それに今
僕達の顔を見られるわけには行きませんからね。
ではあなたは窓からその翼で外へ出てください。僕もすぐにあな
たの後を追って、翼を呼び出して彼女を連れて窓から逃げ出します
から﹂
﹁分かった。では先に行くぞ﹂そう言ってシルバーは窓の外へ飛び
出していきました。
﹁わ、私たちはどうするのですか?﹂怯えた少女はZINに尋ねま
した。
﹁しばしお待ちを。翼を用意しますから﹂ZINは全く動じる様子
もなく少女のに手を置きました。
そしてZINはベットの横においてあった革のボストンバッグか
ら一冊の本を取り出しました。
グリモア
﹁それはなんです?﹂と少女。
﹁契約の書。僕の一族が契約した悪魔の﹃名﹄を記した本。今から
悪魔から翼を借ります﹂
そう言ってZINは悪魔の﹁名﹂を告げました。
﹁黒き翼の猛禽ザロウ﹂
すると本が勝手に開きページが捲れていきます。
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そこにはフクロウ顔のコウモリが描かれていました。これがザロ
ウです。
ここに契約の言葉が書かれているのです。ZINはその言葉を詠
唱していきます。
﹁⋮によってこれが契約の言葉である。それに基づく契約の拘束に
従って、ザロウよ吾に翼を貸し与えよ﹂
するとページの中から黒いもやが立ち始め、ZINの背中のあた
りに集まって行きました。そして左右の二つに分かれて黒い翼のよ
うなものに形作られていきました。
これがザロウの漆黒の翼です。
﹁これが、翼なの?﹂
メフィニスト
﹁はい。僕は悪魔の翼を契約の拘束力で借り受ける事ができるので
す﹂
﹁あなた悪魔契約者、なのですか﹂
﹁僕の一族がそうです。一族で契約しているのです。それよりも、
急ぎましょう﹂
ZINは窓を乗り越えて外へ出ました。
﹁あっ。ZIN様!﹂
しかしZINは空に浮かんでいます。背中の翼を羽ばたかせてい
るのです。
﹁さあ、手を出してください。大丈夫ですから﹂
少女は恐る恐る手を伸ばしました。その手をZINはしっかりと
掴み外へ引っ張り出しました。
﹁あ!﹂少女の視界の下方に街並みが、上方には青い空が広がって
います。
さらに体を下へと引っ張る力が働いているのをZINと繋がって
いる唯一の手の平に集中しているため、とても腕が痛いと感じてい
ました。
﹁ほんの少し我慢してください。今は逃げます﹂
下の人間が空飛ぶ人間に気づいて騒ぎ出す前に、二人は一旦城下
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町と外界を隔てる城壁の外へと逃避行しました。ひとまず身を潜め
て王女の誕生日まで待機するつもりだったのです。
王女の誕生日当日。
朝から城下町には花火が上がり、路地には人が溢れかえっていま
した。このお祭り騒ぎを見にやってきた旅行者やさらにその客目当
ての行商人を含めると、城下町の人口は3割増になっていました。
この日は、国事の際国王が民衆に城のテラスから演説する広場に
つながる第一城門が開かれ、テラスに現れる王女に祝辞を直接言え
るイベントがあります。それ目当てに人々は集まってきたのです。
ですが先日の侵入者騒ぎで警備は厳重になっていました。警備の衛
兵の数は2倍増。どうやってZIN達は侵入するのでしょうか。
﹁簡単だったなZIN﹂
﹁ええ。何せ公式に招待されていますから、我々は﹂
﹁あれだけ予告をすれば、当日に武装したアホが襲撃してくると思
うわな﹂
﹁逆に公式に城へ来場する者への警備は緩くせざる得ない。招待さ
れているのは王侯貴族とその子息、大使ですから一応安心ですから
ね﹂
国王一族のプライベート空間に続く第二城門を抜けたZIN達は、
近隣諸国の王侯貴族に負けない華美な衣装を着て豪華な食事が用意
された大庭園に案内されました。
少女が公女ZINは従者、シルバーはペットとして大陸北西の小
国ノルエの現国王の代理として王女に祝辞を述べるためにやってき
た。という建前になっています。ノルエ国王を脅迫して大使に仕立
ててもらったわけです。
その取引に使ったのは。
貴族たちは夜の舞踏会がメインの行事で、日中は大庭園で用意さ
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れた食事や酒を飲み食いして時間を潰しています。ですが折角諸侯
が集結している場ですから自然と非公式な外交交渉の場になるよう
です。
ZIN達はこの間を利用して城内に忍び込みました。
日中は民衆向けにテラスで国王一族が民衆に挨拶しています。
城下町の有力商人やギルドマスターからの祝辞を聞く時間なので
す。彼らの支援がなければ、資金物資調達や情報収集は難しいので
す。ここで顔を立てて協力体勢をより強固にしておきたかったので
す。逆に商人やギルドにしてみれば王のお墨付きは外国での信用度
は格段にあがり交渉などが有利に進められているのです。
持ちつ持たれつという関係でした。
いよいよ午前最後のメインイベントです。王女が民衆の祝辞に答
えてお言葉を述べる機会がやって来ました。
王女はいつものような屈託の無い笑顔を浮かべてテラスの手すり
直前までやって来ました。
下の民衆からの歓声が地響きとなって伝わってきました。
しかし王女が静かに手を挙げると、歓声が驚くほど波が引くよう
に鎮まっていきました。
わたくし
しんとした所で王女が語り始めます。
﹁私の誕生祝いにこれほど多くの方々が来て下さり感謝しておりま
す。この国の王族の端くれにいるものとして、高貴なる者の使命を
果たしていきたいと思います﹂
おおおおおおおお!
わたくし
再び地響きのような歓声が広がりました。
﹁私オリヴィエ・ラ・ヴァロワの名において⋮﹂
﹁ちょっと待った!﹂
王女の後ろから誰かが王女の話を止めました。
王女の後ろに並んで座っていた国王、王妃の三人とさらに後ろの
臣下達が一斉に振り返りました。
そこには衛兵の格好をしたZIN。その肩にはシルバー。その後
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ろには。
﹁オリヴィエ!まさかここにいるはずが﹂
その少女の存在に目を大きく見開いて驚嘆したのは王妃でした。
彼女はZIN達が連れ回していた少女でした。
﹁そうですよ、王妃様﹂ZINが少女の背中を押し前に押し出しま
した。
﹁あなたの本当の娘、オリヴィエ・ラ・ヴァロワですよ。もっとも
彼女はなぜか北方のノルエ王国にいましたが。しかも第2王女お付
きの侍女としてね﹂
﹁何を馬鹿な事をいうのだ。我が王女ならここに居るわ﹂国王がこ
めかみの血管を浮かべて怒鳴りました。
﹁あの人形が、ですか?﹂ZINはニヤリと笑みを浮かべて一瞬で
テラスの王女のところにやって来ました。
これも悪魔の力でした。俊足の悪魔の力を自らの足に付加したの
です。
﹁国民の皆さーん。この王女は偽物でーす。しかも魔法で作られた
人形でしたー﹂
ZINは王女の真後ろに立ち、あろうことかドレスを引き裂いて
上半身を露にしたのです。
﹁何だと!﹂王様と臣下達は一斉に叫びました。
偽物の王女の体には球体関節があったのです。間違いなく彼女は
人形でした。
﹁この事を知っていたのは王妃と彼女に言い含められた侍女の一部
でした。彼女らは始めから人形を王女だと王様達を欺いていたので
すよ﹂
﹁お、おい。これは一体どういう事であるか。説明せよ、王妃﹂明
らかに事態をまだ掌握しきれていない国王は動揺を隠し切れずにい
ました。
﹁それは、その⋮﹂王妃も歯切れの悪い口調で、口ごもっていまし
た。
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﹁それは私がお答えしますわ国王様。我が母と現ノルエ国王との不
義によって生まれた私が﹂
本物のオリヴィエ王女が話しだした真実は王宮の男性陣にとって
衝撃的な内容でした。
10数年前。王子だった彼はこの国に留学生としてやって来まし
た。丁度その頃国王は王妃と婚姻したばかりでしたが、結婚生活は
すでに冷め切っていました。所詮は政略結婚で結びついた同士だっ
たのです。しかも王妃はノルエの隣国の貴族の出でノルエの王子と
既に恋仲だったのです。
この国で再会した恋人達は再び色欲の炎をたぎらせて結びつきま
した。この時オリヴィエを妊娠したのです。
オリビエは国王の娘ではなかったのです。それはノルエ国民の人
種的特徴である紺碧色の瞳に表れていました。本物のオリヴィエの
瞳はきれいな紺碧色をしていました。
これは王妃にとって大変な失態でした。不義を国王に知られれば
宗教的戒律の厳しいこの国では極刑でした。つまりギロチン刑です。
そこで王妃は生まれた赤子を王子に預けて、国で一番の魔法人形
士に赤子人形を作らせました。その人形の心臓に、無機物に擬似生
命を与える魔法石で国の秘宝である﹁紅の心石﹂を使ったのです。
これを使用することで何と人形は擬似成長するのでした。ですが関
節などに人形の痕跡が残ってしまい嘘が発覚することを恐れた王妃
は王女の世話係りの侍女をを自身の息がかかった者で固めて秘密を
守ってきたのでした。
その嘘が発覚したのはZINがノルエ王国の王宮に侵入して宝物
庫の宝を盗みだそうとした時でした。
﹁あなたが王賊ZIN?﹂
宝物庫で待っていたのは侍女に身をやつしていた本物のオリヴィ
エ王女でした。
いきなり異国に連れられていったオリヴィエには二つの選択肢し
かなかったのです。
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王宮で正体を隠して侍女として生きるか、王宮を着の身着のまま
に出て路頭に迷うのか。
オリヴィエは唇をかんで服従の道を選び、何時か故郷の国の地を
踏んで母親に復讐する機会を伺っていたのです。
﹁私を連れていって欲しいの母の国へ﹂
﹁と言っても僕たちは盗賊ですからね。何の徳にもならない人助け
はしませんよ﹂
﹁でしたら、母の国の宝を差し上げます。人形の心臓に使われてい
る魔法石を﹂
﹁へえ。それらならば、まあ手伝ってあげてもいいかな。復讐の手
助け﹂
まず準備段階としてノルエ国王を脅迫して大使の権限を得てこの
国にやってきたのでした。ノルエ国王は大変な恐妻家で不義の子を
王宮で使っている事実を知られると、王妃は怒りに身を任せ実家に
告げ口し、それを聞いた大公は国王との戦争をしかねないほど緊張
状態になることは必至でした。それほど大公は娘を溺愛していたの
です。
真実を聞いた国王は唇を震わせてただ王妃を指差してただ一言。
﹁連れていけ﹂
王妃は両腕を衛兵に掴まれて地下牢へと連れて行かれました。
﹁じゃそういう事で、僕はお宝をいただくとしましょうか﹂
ZINは人形の胸を拳で叩き割ると、中から魔法石﹁紅の心石﹂
を取り出しました。
人形は目から光を失い。ぐったりと全身の力を失って床に倒れま
した。
ZINの手には成人女性の拳大の宝石がありました。内部でまる
で炎が燃えているような輝きを自ら放っていました。
﹁あとは親子︵義理だけど︶の問題なので僕は去らせていただきま
すね﹂
ZINは背中に黒い翼を付加し大空へと飛び立ちました。
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﹁王女の心臓は間違い無くいただきました。では!﹂
そう言ってZINとシルバーは騒然とした城内を悠々と後にしま
した。
この後のこの王国の話を少し。
失意の国王は1年以上自室に籠っていました。執政は大臣たちに
よって代行されましたが、それが国の腐敗を加速させました。
オリヴィエは一応血縁者であることが発覚してしまった関係上、
王妃の実家である伯爵家に引き取られました。かつての娘の面影を
残すオリヴィエに伯爵はかつての娘に劣らないほどの愛情を注ぎま
した。
オリヴィエは貴族としての教育を受けながら政治学経済学にも才
覚を発揮し、20数年後反国王派の貴族を束ねて王座をを簒奪しこ
の王国初めての女王に即位するのですが、それはまた別の物語とい
うことで。
王賊ZINとジョン・シルバーの旅の物語は続きます。その生命
が終わる時まで。
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︵後書き︶
王ド⃝ボウに少しインスパイアされていますが、ストレートなファ
ンタジー作品です。
なんかマトモすぎてひねりが欲しいかな。
ただこういう作品の読者の反応が鈍いようなので才能がないのかも。
と思いつつもよろしけれ笑読していただければ嬉しいです。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n5182s/
王賊ZINと王女の心臓
2012年9月6日08時08分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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