第8章 食事はバランスよく摂取しましょう

第8章
食事はバランスよく摂取しましょう
慢性頭痛の食事上の注意点は、”偏食をせず”にバランスよく、必要な栄養素・ビタミン
・ミネラルをまんべんなく摂取することが重要です。
片頭痛はミトコンドリアの機能障害による頭痛です。
ミトコンドリアは「生命のエネルギー工
場」と呼ばれ、エネルギーを産生する重要
な場所です。ミトコンドリアの働きの悪さ
は、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の
低下を意味します。このエネルギー代謝を
円滑に行うためには、食生活でとくに栄養
素・ビタミン・ミネラルを過不足なくバラ
ンスよく摂取することが大切になります。
これまで、片頭痛の発作に度々襲われる
方々は、「食生活の問題点」がある方々の
ように私自身は感じています。”正しい食生活”とは、どういったものかを改めて考え直す
必要があります。食事内容・調理方法は先祖代々、親から子供へと無意識のうちに引き継
がれ、こうした食事のあり方の問題点が先祖代々継承されることによって、片頭痛があた
かも”遺伝的疾患”であるかのような印象を持たせた原因なのかもしれません。
ミトコンドリアは、糖と脂肪と酸素からエネルギーを生成する働きを持っています。
食べ過ぎるとミトコンドリアは、栄養が体に行き渡っているため、怠け始めます。
「過食」のメカニズムは少し難しいのですが、ポイントは AMPK(AMP 活性化プロテ
インキナーゼ)という飢餓状態で働く酵素です。満腹になると、この酵素の働きが抑えら
れます。ミトコンドリアは PGC1 αというたんぱく質が活性化されることで作られますが、
AMPK が働かないと PGC1 αの働きも抑えられ、ミトコンドリアが作られなくなってしま
います。
ミトコンドリアが働いてくれないと、体に入ってくる糖や脂肪はエネルギーに変換されに
くくなってしまいます。
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ミトコンドリアは、食事から摂取した栄養をエネルギーに変えてくれるからです。
余った糖は血液に流れ込み、分解されていない脂肪は細胞に蓄積し始め、肥満へと繋がり
ます。ミトコンドリアはエネルギーを作り出す時に酸素を必要としますが、この酸素が活
性酸素に変化して片頭痛の発作に繋がります。
ミトコンドリアを増やすには、空腹が最も重要です。
ミトコンドリアは、エネルギーが不足している時や、もっとエネルギーの需要が必要な
時に活性化して増殖します。
空腹になると、AMPK が働くことで PGC1 αが活性化され、新しいミトコンドリアが作
られます。つまり、カロリー制限でミトコンドリアの再生が促されるということです。実
際、カロリーを 25 %減らした食事を 6 カ月続けますと、筋肉中のミトコンドリアが増える
ことが確認されています。
このように、空腹になると、体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコン
ドリアを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
■お腹をすかせて若くなる「週末断食」のすすめ
鶴は千年、亀は万年!?
実はこれは理に適っているのをご存知で
しょうか?
亀は動きが遅く、エネルギーの消費が少な
い徹底した省エネライフスタイルのため活
性酸素の発生を大幅に抑えることができる
のです。そのため、細胞へのダメージが少
なく長寿でいられるのです。ちなみに鶴は、
ミトコンドリアの数が多く、非常に多くの
エネルギーを作るのに対して活性酸素の発
生が少ないためだと言われています。なる
ほど!だから亀は長生きなんです!!
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自由に食べ物を食べさせた猿とカロリーを 70 %に抑えた猿との二つの群に分け、20 年
間比較した研究がありました。カロリー制限した猿は、そうでない群に比べ、生活習慣病
や老年病で亡くなる数が 1/3 程度で、しわや白髪が少なく、目の輝きも違っていたといい
ます。猿は人間と最も近い動物ですので、カロリーを抑えると若々しく長寿になると考え
られます。
しかし、実際に 20 年もの間、3割も
カロリーを減らし続けるのは至難の業で
す。その後、研究は進み、総カロリーを
減らすよりもミトコンドリアを増やし長
寿遺伝子のスイッチをオンにすることが
大切なこと、そしてミトコンドリアを増
やすには、空腹感が最も重要であること
も分かってきました。
更なる実験の結果、20 年間カロリーを7割に抑え続けるのと、週2日、30 %のカロリー
にすることでは同じ効果があることが分かりました。カロリー制限に捉われるとストレス
に繋がりますが、毎日食事制限をしなくても、時々空腹感を味わう「プチ週末断食」をお
勧めします。空腹になると体はもっとエネルギーを作らなければと認識してミトコンドリ
アを増やし、エネルギーを作ろうとするのです。
難しく考える必要はありません。平日は普段通りの食事を摂り、週末の1~2日だけ3
割程度のカロリーにすれば良いのです。例えば朝は野菜ジュース、昼はざるそばなどの軽
食、軽めの夕食にする程度で十分です。経験者の方はいずれも体調が良くなったと言いま
す。但し、回復期が肝心ですから、回復期にはいきなり普通の食事をせずに徐々に普通の
食事レベルに戻していくようにして下さい。
「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を作らないために
「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだか
らといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などもありません。
「酸化ストレス・炎症体質」を形成させないためには、その根底にある次のような問題
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を解決する必要があります。
1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
2)腸内環境を整える
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをよくする
5)インスリン過剰を起こさない
これらを根本的に正さない限り「酸化ストレス・炎症体質」を形成させていくことにな
ります。ここからは、それぞれの正しくする方法について説明します。
1)有害物質となるものの摂取をしない
わたしたちは、知らないうちに「有害物質」を口にしています。「公害」は過去のもので
はなく、有害物質は海底などに堆積する形で残っていますし、単位面積あたりの農薬の使
用量の多さ、何でも焼却処分することから発生する大気汚染などはそのままです。
最終的に有害物質は、海の生物たちに蓄積され、それを最後に人間が食べています。
わたしたちのカラダには解毒機能が備わっているのですが、これらの有害物質は代謝さ
れませんので体内に蓄積されていきます。その量が限界を迎えると、さまざまな症状とな
ってあらわれます。
有害物質となるものは、添加物入りの食品や、農薬を使った野菜などです。食品には、
添加物を使ったものがたくさんあります。このような有害物質になるものを身体に取り込
まないことが大切です。現在は、無農薬野菜なども販売されているので、うまくそういう
ものを利用していくことが大切なのです。さらに、この有害物質となっているダイオキシ
ンなどは、しっかりと、水洗いすることや火を通す作業を行うことによって、かなりその
量が減少します。これが、環境ホルモンから守っていくためにできることのひとつです。
これらの有害物質は、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させるものです。有害物質ゼロ
が理想です。
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2)腸内環境を乱れさせないために
腸内環境は健康には欠かせません
腸内環境の大切さは、あなたもよく知っているはずです。毎日欠かさすヨーグルトや乳
酸飲料をとったりしているのではないですか?
腸内には、おもに小腸の粘膜部分などにいる「常在細菌」と、大腸で食べたもの(内容
物)に生息する「腸内細菌」の2種類がいます。常在細菌は母親から受け継いでいて、小
さい頃の食習慣や生活環境によって育まれ、少年・少女期にはほぼ「確定」し、あとは通
常、死ぬまでそのままです。
ところが、抗生物質を長期間とったり、大きなストレスを受けたり、糖質制限や無理な
断食なんかをするとダメになってしまい、一度そうなると復活しません。とても繊細です
から大事にして下さい。
なぜ大事にしたいかといいますと、常在細菌もトリプトファンからナイアシン(ビタミ
ン B3)をつくってくれるからです。常在細菌がナイアシンをたくさんつくってくれれば、
その分を体内でつくる必要がなくなって、脳内セロトニン用の材料となるトリプトファン
を余分に確保できるのです。
「腸内細菌のために、毎日ヨーグルトを食べなきや!」と思ったあなた、それちょっと
待って下さい!
腸内環境を悪くするのは、肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質
”たっぷりの食事です。ですから、ヨーグルトはむしろ逆効果なのです。
ヨーグルトで善玉菌を増やそうと思ったら、毎日数リットル単位で食べないと意味があ
りません。このようなことは土台無理な話です。
「ヨーグルトはカラダにいい」と信じている女性は多いと思います(男性も?)。でも、毎
日相当な量を食べないと効果は期待できないようです。なぜでしょう?
ヨーグルトの原料は牛乳。だから含まれる乳酸菌は動物性”で、これが日本人の体質に
はあまり合わないのです。
わたしたち日本人は長いあいた、西欧人とはちがって乳製品をほとんど食べない生活を
してきました。ですから、そもそも動物性乳酸菌とは相性がイマイチなのです。それに比
べると、お漬物などに含まれる“植物性乳酸菌”はすっと食べてきたものですから相性が
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よい。ラブレクラウトには「ラブレ菌」という植物性乳酸菌がたっぷりと含まれているの
で効果も出やすいというわけです。
「それなら、ラブレ菌の入った乳酸飲料を飲めばいいんじゃない?」と思うかもしれま
せん。でも、とり方も大事なんです。
腸内で細菌が生きていくには、仲間同士で集まって、他の集団と戦ったり共存したりす
る必要があります。この集まりを「細菌叢」といい、この状態をつくらないと細菌は生き
ていけません。
ヨーグルトや乳酸飲料の場合、乳酸菌たちが細菌叢をつくれず無防備な状態のまま、胃
酸や胆汁、免疫や他の細菌の攻撃を受けてしまうため、ほとんどが負けてしまって腸まで
届きません。
一方、ラブレクラウトの場合、乳酸発酵したキャベツ自体にラブレ菌が定住します。い
わば食物繊維にラブレ菌が守られているような状態です。食物繊維は消化されにくいので、
“船”のようにラブレ菌を腸まで運んでくれるのです。
腸内環境を整えるためには
1)肉の多い食事をやめる
腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を多く含む食品です。
ハンバーガーなどのファーストフードは悪玉菌が好む典型的な食事といえるでしょう。
悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。便秘や
下痢、肌荒れ、腸炎はもちろん、これらの物質が身体中に運ばれ、動脈硬化、高血圧など
の病気の原因にもなります。
肉類は悪玉菌の格好のエサです。この点を忘れてはなりません。肉食の多い欧米人の片
頭痛は日本人に比べ、強度なことは、ここに原因があります。
肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上が
ります。
2)食物繊維や発酵食品を摂取する
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食物繊維は、便の元となり腸を刺激して便通につながる「不溶性食物繊維」と、腸内で
水に溶けて有害物質を吸着し体外へ排出する「水溶性食物繊維」に分けられます。
不溶性と水溶性の食物繊維をバランスよくとることで、おなかの中をよりキレイにする
ことができます。
水溶性食物繊維を多く含む食べ物には、りんご、バナナなどの果物類、しいたけ、えの
きだけなどのきのこ類、わかめ、こんぶなどの海藻類があります。
不溶性食物繊維を多く含む食べ物には、大豆、いんげん豆などの豆類、ブロッコリー、
ごぼうなどの野菜類、さつまいも、さといもなどのいも類があります。
この二つをバランスよく摂取しましょう。
善玉菌を増やすにはヨーグルト、漬物、納豆、チーズなど発酵食品を食べることです。
3)適度な運動をする
運動不足になると、腹筋が弱まり、腸の蠕動運動が弱まって便秘になりやすくなります。
運動をすれば腸が揺れて動きが活発になるが、強すぎる運動は交感神経を興奮させます。
交感神経が興奮すると腸は動かなくなりますので、むしろ軽い運動がいいのです。
過度な運動は逆効果です。軽い腹筋運動や、ウォーキングなどの有酸素運動が効果的。
4)ストレスを貯め込まない
ストレスがたまると、自律神経のバランスが乱れ、腸の運動が悪くなって便秘が起こり
やすくなります。
健康な腸内細菌を持つ個体は、不安や心配などのストレスが少ないのが普通です。
腸の健康を保つためには、副交感神経が優位となる「リラックスして過ごす時間」をバ
ランスよく確保することが必要になります。
自分に合ったリラクゼーション方法を見つけて、腸内環境を良くしましょう。
5)腸内環境を整える「善玉菌」のヒミツ
女性の大半がかかえている便秘の悩みです。便秘になると、腸内に悪玉菌が増殖します。
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悪玉菌が増えることでさらに便秘は悪化し、負のスパイラルに陥ってしまいます。そこで、
腸内環境を整えてくれる『善玉菌』に注目しましょう!
腸内をクリーンにしたら、次の
ステップとしては善玉菌を増やすことが重要なのです。ここでは、善玉菌を増やしてくれ
る食べ物をご紹介します。
・その 1:
『生きた乳酸菌』を含むヨーグルト
乳酸菌は悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。乳酸菌は体内に存在していますが、加
齢とともに減少してしまいます。しかも、ストレスの多い現代人は、乳酸菌の減量スピー
ドも速いのだとか。そのために、乳酸菌を含む乳製品を外部から摂取する必要があるので
す。ヨーグルトは朝食べることで腸が 1 日中活発になります!
乳酸菌と言えば、一番に思い浮かぶのがヨーグルトです。でも、ヨーグルトなら全て OK
というわけではありません。乳酸菌は胃酸などによって死滅しがちなので、しっかりと生
きて腸に届くものをチョイスする必要があるのです。
・その 2:
『植物性乳酸菌』を含む発酵食品
善玉菌の増殖をサポートしてくれる、発酵食品。いま流行りの発酵食品ですが、たとえ
ばキムチや漬物、味噌、コウジなどが挙げられます。
おなじみキムチなら手軽に植物性乳酸菌チャージ!
これらは『植物性乳酸菌』とよばれるものです。同じ発酵食品でもチーズなどの『動物
性乳酸菌』よりも、生きて腸まで届きやすいという特徴があります。
・その 3:
『オリゴ糖』を含む大豆製品
大豆製品には、食物繊維がたっぷり含まれています。特にオススメなのが納豆ですが、
納豆には善玉菌の増殖をサポートするオリゴ糖も含まれています。
納豆が苦手な方は、豆乳、おからなどでも OK です。
さらに、悪玉菌の増殖を阻害するのに役立つリノール酸も入っているので一石二鳥!
腸内をクリーンにしながら、さらに善玉菌を増やして健康な腸へと導いてくれるのでと
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ても効率的です。納豆は健康な腸づくりのためにはパーフェクトな食べ物と言えるかもし
れません。
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させるために
水を十分に補給しましよう
デトックスするうえで欠かせないのが水です。腸内の水分不足は便秘が起こる原因とも
言われています。「それなら水を飲めば解決できる」と安易に考えてはいけません。大腸に
届く水は、わずか飲んだ量の 10 分の 1 ほどです。便秘解消のためには、“1 日 1.5 ~ 2 リッ
トル”を目標にしましょう。特に、マグネシウムやミネラルを豊富に含むミネラルウォー
ターがオススメです。
冷たい水が苦手な方はぬるま湯でも OK です。
また、やたらと水をガブ飲みしても、体が冷えて逆にむくみなどのトラブルが起こること
になります。ポイントは、回数を多く、少量ずつ飲むことです。一度に水分を摂取するよ
り、数回にわけることで、常に腸にも水分がある状態になります。体の冷えが気になる方
は、冷たい水ではなく、ぬるま湯や常温の状態で摂るようにしましょう。
食物繊維を十分に摂取しましょう
食物繊維には 2 つの種類があります。海藻類などの腸の善玉菌を増やす『水溶性』と、
サツマイモや大豆製品などに代表される『不水溶性』。どちらもそれぞれ、違った効果を持
っています。
さつまいもはヘルシーなおやつとしてもピッタリ!
≪水溶性食物繊維の効果≫
・血糖値の上昇を防ぐ。
・コレステロールの上昇を抑え、生活習慣病を予防する。
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・海藻類に含まれる『アルギン酸ナトリウム』には整腸作用もあり。
≪不水溶性食物繊維の効果≫
・腸の運動を促進し、便秘を解消させる。
・大腸を刺激し、スムーズな排便を促す。
デトックスからみた食事
デトックス効果が高い食べ物
排泄をスムーズに行うこと、デトックスを助けてくれる食べ物のことについて述べます。
食物繊維には不溶性と水溶性の二種類がありますが、特に水溶性の食物繊維はネバネバの
ゲル状になって体内の毒素を吸着して排出する効果が高いです。不溶性食物繊維は大きく
膨張して腸の働きを活発にして排便をスムーズにしてくれます。
「脂溶性が毒素を吸着する」「不溶性が便をスムーズに排泄する」、この二つの特徴がデ
トックスに役立つのです。
■腸内で毒素を吸着して排出する食材 としては
ごぼう、オクラ、レンコン、こんにゃく、トマト、海藻、玄米
などがあります。
キレート効果
また、包み込むだけなく、外に出したい毒素と化学的に結合して、体外への排出を促し
てくれる、「キレート作用」がある食品もあります。
包み込むだけだと、またもとに戻ってしまうこともありますが、キレート結合された有害
ミネラルは体内で再吸収されることなく尿や便などから排出され、効果的なデトックスが
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できます。
たとえば、魚介類や緑黄色野菜に含まれる亜鉛やセレンは 水銀 や ヒ素 に対してのデ
トックスを促進しくれることでよく知られますが、ビタミン A、C、E、や含硫アミノ酸(に
んにくやたまねぎに含まれるイオウを含んだアミノ酸)などもデトックス効果が高いと言
われます。
■血液中の毒素をキレートする食材
にんにく、アスパラガス、ブロッコリー、ねぎ、ほうれんそう、大豆、りんご
などが
あります。
■肝臓での解毒機能を強くしてくれる食材
たまねぎ、キャベツ、ブロッコリー、にんにく、ダイコン、わさび など
デトックスを考えるとき、何を食べるかということはとても大切なことです。
一つには、なるべく毒素を身体に入れない食事をする。という考え方が大事です。食品
添加物の多そうなもの、加工食品やコンビニのお弁当や、そういったものはなるべく少な
く済ませられるようにするとか、また、残留農薬などが少なくなるよう、野菜はよく洗っ
て食べるなど、毒素が身体に入らない配慮をすることは大事です。なるべく毒素を身体に
入れないという内容は以前に詳しく書きました。
しかしあまり神経質になりすぎることもよくないです。上に書いてあるような食物繊維
が多い食材、キレート効果のある食材を、なるべく増やすようにする、水分補給をしっか
りするなど、できる範囲の努力をしましょう。
活性酸素を除去する食物
片頭痛やさまざまな病気には、活性酸素が深く関わっています。体内で活性酸素が過剰
に発生して体がサビついた状態になることを「酸化ストレス」と呼び、その抑制は片頭痛
改善のために不可欠な要素と考えられます。
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フリーラジカルスカベンジャーは、活性酸素の毒消しをする物質です。これを増やすこ
とによって、人体に蓄積された有害な活性酸素を無害化することができます。
活性酸素とは、人間の身体に取り込まれて燃焼した酸素からできたものです。本来は殺
菌や消毒作用がある有益なものですが、増えすぎると体内物質を酸化させ、老化や病気の
原因になってしまうのです。
抗酸化作用のある食品
活性酸素が病気を引き起こすということは、鉄などが酸素と結合して錆びるのと同じこ
とです。このサビから身体を守ってくれる最も代表的なものとして、ビタミン C、ビタミ
ン E、カロテン類を豊富に含む食品があります。
この他、フラボノイド、カテキン、タンニン、ケルセチン、アントシアニン、イソフラ
ボンなどに代表されるポリフェノール類、セサミノール、ショウガオール、アスタキサン
チン、セレニウム、フィチン酸など含む食品も抗酸化作用があります。
ビタミンC
・野菜類…赤ピーマン、芽キャベツ、黄ピーマン、パセリ、青ピーマン、ブロッコリー、
カブの葉、さやえんどう、キャベツ、ミニトマト、かぼちゃなど(多い順)
・果物類…アセロラ、ゆず、レモン、柿、キウイフルーツ、イチゴ、パパイア、はっさく、
グレープフルーツ、温州ミカン、パイナップル(多い順/アセロラは群を抜いて多い)
・イモ類…ジャガイモ、サツマイモ
・海藻類…のり
・その他…ハム、ベーコン、たらこ
※ビタミンCの含有量は多くても、パセリや海苔、ゆずなどは一度にたくさん食べられる
食品でありません。その意味では重量的にたくさん食べられる、キャベツ、ブロッコリー、
かぼちゃ、イモ類、柿、ミカン類などはビタミンCの強力な補給源となります。
ビタミンE
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・油脂類…ひまわり油、綿実油、サンフラワー油、大豆油、マーガリン油、菜種油(多い
順)
・種実類…アーモンド、ヘーゼルナッツ、ヒマワリの種、落花生(多い順)
・魚類…すじこ、いくら、ウナギ、たらこ(多い順)
・その他…小麦胚芽、煎茶(茶葉)
カロテン(カルテノイド)類
・βカロテン…シソの葉、モロヘイア、にんじん、春菊、ほうれんそう、かぼちゃ、大根
の葉、にら、小松菜、かぶの葉、チンゲン菜(以上、多い順)、茶類、海藻類
カロテン類の種類は数百種といわれますが、その代表的なものがこのβカロテンで、体
内に入ってビタミンAに変換されます。ビタミンAには目の明暗の識別や皮膚や粘膜を正
常に保つなど、さまざまな働きがあります。
・リコピン…トマト
トマトの赤い色素成分がリコピンで、βカロテンよりも抗酸化作用が強いことで注目さ
れています。
ポリフェノール類
・フラボノイド…野菜・果物全般
フラボノイドは野菜や果物などほとんどの植物に含まれる色素の総称で、ポリフェノー
ルの一種です。ポリフェノール類の大半はフラボノイドで、それぞれの関係が混乱しやす
いのでご注意ください。次に示すルチン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン、イソ
フラボンは皆、フラボノイドに含まれます。
・ルチン…そば、イチジク、かんきつ類、ベリー類
フラボノイドの一種で、抗酸化作用の他に、血流の改善効果があります。
・カテキン(タンニン)…緑茶(渋みの成分)
・ケルセチン…玉ねぎ(特に外皮)、リンゴ、緑茶、ブロッコリー、モロヘイアなど
・アントシアニン…ブルーベリー、さつまいも、なす、いちご、ぶどう、黒豆、黒ゴマ
アントシアニンといえば「ブルーベリー=目に良い」というイメージが独り歩きしてい
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ますが、植物に含まれる青紫色の色素で、抗酸化作用があるフラボノイド類の一種です。
・イソフラボン…大豆、大豆製品
大豆に含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモン「エストロゲン」と似た化学構造を
持ち、同じような働きをすることで、美容界で脚光を浴びています。でも、抗酸化作用が
あるということのほうが重要で、本命でしょう。過剰摂取は美容に逆効果もあるので要注
意です。
その他
・セサミノール…ごま
ごまには、この他にカルシウム、ビタミンB1、鉄分、食物繊維、たんぱく質、リノー
ル酸が豊富で、昔から「不老長寿の秘薬」と言われました。ただし、たくさん食べられる
食材ではなく、あくまで脇役。いろいろと料理を工夫して毎日少しずつ摂るとよいでしょ
う。
・ショウガオール…ショウガ
ショウガの辛味成分。ショウガにはこの他に殺菌効果や、体を温めて免疫力を高める効
果などもあります。
・アスタキサンチン…鮭、イクラ、エビ、カニ
赤い色の部分がアスタキサンチンです。食事だけで十分な量をとるのは難しく、サプリ
メントがあります。ただし、抗酸化作用のある成分はアスタキサンチン以外にもたくさん
あることをお忘れなく。
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・セレン(セレニウム)…小麦、肉類、魚介類、鶏卵、牛乳
セレンは有害ミネラルの解毒にも有効とされています。ただし、セレン自体にも毒性が
あるので大量摂取には要注意。通常の食事でセレンが不足することはありません。
・フィチン酸…米ぬか、ごま、小麦、インゲン豆、トウモロコシなど
フィチン酸は穀類の外皮(ふすま)に多く含まれ、多くは精製の過程で失われます。米
の場合は玄米に多く含まれますが、ミネラルと結合して吸収を阻害するマイナス面もあり
ます。
■体内の活性酸素を除去する食材をまとめてみますと・・
ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、卵黄、牛乳、バター
ビタミンC : ブロッコリー、小松菜、ピーマン、トマト、イチゴ、緑茶、ジャガイモ
ビタミンE:大豆、落花生、しじみ、うなぎ
βーカロテン : ニンジン、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、ニラなど
ポリフェノール : 赤ワインなど
リコピン : トマトなど
スルフォラファン : ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなど
メラノイジン : みそ、しょうゆなど
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強力な抗酸化作用を発揮する CoQ10。
抗酸化酵素だけでは生体脂質の酸化を防ぐことはできません。そこで登場するのがビタ
ミン E、CoQ10、ビタミン C、カロテノイド、ポリフェノールなどの抗酸化物質です。
脂質の酸化を防ぐために生命が創り出した物質がビタミン E ですから、これが一番重要
です。しかし、条件によってはビタミン E はかえって脂質の酸化を促進することがわかっ
ています。これを防ぐには、酸化抑制の過程で生成するビタミン E ラジカルを還元する必
要があり、ビタミン C と CoQ10 がその役を担っています。とくに、同じ脂溶性の CoQ10
の重要性が最近の研究から明らかにされてきました。結局、生体脂質の酸化を抑制するた
めには、ビタミン E と CoQ10 とビタミン C がよいチームワークを組む必要があるのです。
生体が酸化ストレスにさらされたときに最初に減少するのがビタミン C と CoQ10 であ
ることは強調しておきたいと思います。ご存じのように私たちはビタミン E とビタミン C
を体内で合成することはできませんから、食品等から摂取する必要があります。一方、CoQ10
は体内で合成できますが、肉・魚などの食品に含まれていることも確かです。
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをとるために
悪い植物油(市販のサラダ油など)や加工油(マーガリンなど)をとらない
脂質のとり過ぎが活性酸素の発生原因に!
「酸化ストレス・炎症体質」の人は、体内で過
酸化脂質が生成されやすく、これが活性酸素を過
剰に発生させる原因物質となっています。
過酸化脂質というのは、コレステロールや中性
脂肪が活性酸素によって酸化されてできたもので
す。これらは体内で作られるのですが、それ以上
に、過酸化脂質を多く含む加工食品などを過剰に
とる食習慣のほうに問題があると考えられます。
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ポテトチップスなどのスナック菓子、インスタントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、
マグロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い油分には注意が必要です。また、新しい
ものでもチキンフライなどの揚げ物を電子レンジで加熱すると、とがった部分や角の部分
が過酸化されることがあります。
ところで、精神的なストレスを受けて
アドレナリンが分泌されると、血糖値(血
液中のブドウ糖濃度)を高めるために体
脂肪が分解されます。このとき、体脂肪
から遊離脂肪酸が生成され、血液中に溶
け出して全身に送られます。
通常、体脂肪は空腹時のエネルギー不足を補うために分解されます。ところが、精神的
なストレスからアドレナリンが分泌されて遊離脂肪酸が生成されますと、エネルギーとし
て消費されることがほとんどありませんので、その後ストレスから解放されると、血中の
遊離脂肪酸濃度だけが高くなった状態になってしまいます。この遊離脂肪酸は、血小板の
凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりしますから、これが活性酸素を発生させる原因と
なってしまいます。
遊離脂肪酸には細胞を傷つける性質が強いという特徴があります。通常は血液中のアル
ブミンというタンパク質成分と結合して毒性が弱められた状態で存在しているのですが、
遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、アルブミンとの結合可能な限
界量(閥値)を超えてしまっているということです。
このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣なのです。特に、植物油(リノ
ール酸)やトランス脂肪酸を多くとり過ぎると、体内での
脂質代謝が充分に行われず、血液中の遊離脂肪酸濃度が高
い状態になることがわかっています。
このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺激
であっても、片頭痛の引き金となる脳血管内の血小板凝集
が起きてしまいます。
低血糖にも注意が必要
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ところで、皆さんは甘い清涼飲料水やお菓子をよく召し上がりますか?
これらに含ま
れる糖質は、私たちの体が短時間に分解・処理可能なレベルを超える量が含まれているも
のが数多く見受けられます。
体内でどのような変化が起きるかを見てみる
と、清涼飲料水やお菓子を過剰に摂取すると急
激に血糖が上がり、その上昇を抑制するために、
膵臓からインスリンが分泌されます。インスリ
ンには血中のブドウ糖濃度を調整してくれる働
きがあることはご存知のとおりです。清涼飲料
水などの消化吸収のよい糖質を短時間でとると、
体はたくさんの糖質が摂取されたと認識してインスリンを過剰に分泌します。その結果、
血糖値が必要以上に下がり過ぎるという現象が起きます。これが低血糖です。
急激な血糖値の低下も、体がストレスを感じている状態です。そうなると、今度はそれ
を適正なレベルにまで戻そうと体が働き、アドレナリンなどのホルモンが分泌されます。
すると、体脂肪が分解されて遊離脂肪酸が血液中に放出されて濃度が高まり、これが活性
酸素を発生させて片頭痛の原因となるわけです。
スポーツドリンクや清涼飲料水などを大量に飲み続けることにより引き起こされる「ペ
ットボトル症候群」という現代病もこのようにして発症します。体がだるい、のどか渇く、
トイレに行く回数が増えるなどの急性糖尿病的な症状や、ひどい場合には血液が酸性にな
り昏睡状態に陥ることもあります。
清涼飲料水やお菓子のとり過ぎ以外にも、過激な
運動や無理な絶食なども血液中の遊離脂肪酸の濃度
を高めることにつながります。ご注意ください。
精製・加工処理された植物油をとらない
片頭痛にはいろいろな症状の違いがあり、発症の
原因もさまざまです。でも、どのようなタイプの片頭痛の人にも共通した発症要因が「酸
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化ストレス・炎症体質」です。
「それはなぜ?」はのちほど説明することにして、とりあえずここでは。どうすれば改
善できるのかを解説することにしましょう。その筆頭に挙げたいのが食習慣の見直し、
その中でも特に「食用油に気をつけること」です。
皆さんの中には、「植物油は健康によい」と思
っている方も多いのではないでしょうか?
もし
あなたが「植物油は健康によい」と信じているの
であれば、「植物油のとり過ぎが、じつは健康を
害する最大の原因である」と認識を変えてほしい
のです。
もちろん、植物油の中にも「よい植物油」と「悪い植物油」があるので一概にはいえな
いのですが、悪い油のとり過ぎが、片頭痛発症の引き金となる「活性酸素」と「遊離脂肪
酸」を発生させることにつがなっていることは確かです。よいものと悪いものを見極める
目を持つことが大切です。
私かお勧めする植物油は、昔ながらの製法「低温圧搾」で造られたシソ油(エゴマ油)
や亜麻仁油などのオメガー3系脂肪酸を多く含む植物油と、エクストラバージンオリーブ
油、低温圧搾で作られたゴマ油やナタネ油などの植物油です。これら以外の市販されてい
るサラダ油など多くの植物油は、いずれも「悪い油」とい
ってもよく、多くとってはいけないものばかりです。また、
マーガリンやショートニングなどの脂もダメです。
こうした「悪い油」を原材料とするマヨネーズやドレッ
シング、植物性ヨーグルト、ケーキ、ビスケット、クッキ
ー、チョコレート……なども、できるだけ避けたい食品と
いえます。加工食品の成分表を見ればわかるのですが、植
物油が加えられていない加工食品はまれにしかありません。これらの植物油のほとんどは
悪い油です。注意してください。
危険な「トランス脂肪酸」について
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悪い植物油というのは、工業的に精製・加工されたもので、その製造過程で副産物とし
て生成されるトランス脂肪酸という非常に危険な有害物質を含んでいます。トランス脂肪
酸は悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らす働きがあることがわかっ
ていて、動脈硬化や心臓病につながるなど、健康被害の原因となります。海外では、加工
食品にトランス脂肪酸がどれくらい含まれているかを表示する義務や含有量の制限がある
国もあるほどです。
このトランス脂肪酸をとることと、植物油の主成分であるリノール酸のとり過ぎが、片
頭痛やさまざまな生活習慣病を発症させる原因となる「酸化ストレス・炎症体質」の最大
の誘発因子となっています。ですから、悪い植物油を料理などに極力使用しないこと、こ
うした植物油を使って作られた加工食品を極力とらないことが大切です。
ところで、今でもマーガリンが「健康によい」と信じている人は結構多いようです。
もし、料理にマーガリンを使う必要があるのであれば、ただちにバターに切り替えてく
ださい。バターのとり過ぎも体にはよくないのですが、それでもマーガリンよりは健康上
の問題は少ないといえます。
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マーガリンやショートニングを使用している市販のケーキやクッキー、お菓子類なども
極力とらないようにすることが、
「酸化ストレス・炎症体質」に至らないためには大事です。
市販の揚げ物を食べてはダメ’・
市販の揚げ物にも、油の”持ち”をよくするために、トランス脂肪酸を多く含む硬化油
という植物油が使用されています。硬化油を使用した鶏の唐揚げやポテトフライなどの揚
げ物類も極力とらないようにしたほうがよいでしょう。揚げ物を食べたい場合は家庭で作
るようにしてください。その際には、圧搾製法で造ら
れたナタネ油やゴマ油、またはオリーブ油を使うよう
にしましょう。
また、悪い植物油はドレッシングやマヨネーズをは
じめ、多くの加工食品に使用されています。ですから、
加工食品を手にとったら、必ず成分表を見るようにし
たいものです。「植物油使用」と書かれているものは、いずれも悪い植物油が使われている
と思ってください。
マヨネーズやドレッシングは、エクストラバージンオイルやシソ油
を使った自家製のものにすると、健康にもいいし、美味しく安心していただくことができ
ます。
日常の調理には加熱用としてエクストラバージンオリーブ油を使い、ドレッシングやマ
ヨネーズなどの非加熱用途には、シソ油(エゴマ油)またはエクストラバージンオリ-ブ
油を用いるとよいでしょう。
また、穀類、種実類(ナッツ)、豆類、芋類など、天然の植物に含まれる油分にはリノー
ル酸が多く含まれていますが、これらはよい油分であり、有害なトランス脂肪酸は含まれ
ていません。
なお、リノール酸は必須脂肪酸です。摂取不足が気になるところですが、通常の食事(穀
類や豆類を含む)をしているかぎり、あえて植物油や植物油を含む加工食品をとらなくて
も摂取不足を起こすことはありません。
また、穀類や豆類を中心とした通常の食事では、リノール酸のとり過ぎを起こすこと
もありません。知らず知らずのうちに加工食品から摂取されるトランス脂肪酸やリノー
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ル酸のとり過ぎ、ドレッシングやマヨネーズ、唐揚げなどからの直接的な植物油のとり
過ぎが問題です。
脂肪酸の種類
たとえばビタミンにもいろいろな種
類があるように、脂質(油脂)にもい
くつかの種類があります。これらは、
分子構造上・脂肪酸として次のように
分類できます。
I.飽和脂肪酸……酸素などと反応し
やすい「二重結合」を持たないもの
(ヤシ油や牛乳・バターに多く含
まれる)
Ⅱ.一価不飽和脂肪酸……「二重結合」がひとつだけあるもの
(オリーブ油の主成分であり、ナタネ油や牛脂に多く含まれるオレイン酸など)
Ⅲ.多価不飽和脂肪酸……複数の「二重結合」を持つもの
(シソ油に多く含まれるα-リノレン酸や植物油に含まれるリノール酸、青魚に含ま
れるEPA・DHAなど)
飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸は、おもに体を構成する細胞膜に使用されたり、中性脂
肪として体に必要なエネルギーとなったりするものです。ただし、体をコントロールして
いる生理活性物質(私たちの生理活動に影響を与えるホルモン様物質)の合成に使用され
ることはありません。
一方の多価不飽和脂肪酸には、細胞膜の構成やエネルギーの供給源となるほかに、「酸化
ストレス・炎症体質」を決定する生理活性物質の原料になるという重要な役割があります。
最近注目されているのが、多価不飽和脂肪酸の中の「オメガー3系脂肪酸」です。シソ
油(エゴマ油)、亜麻仁油の主成分であるαーリノレン酸をはじめ、青魚に含まれるEPA
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(エンコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが代表です。サプリメン
トとしても発売されていますから、皆さんもご存知のことでしょう。
多価不飽和脂肪酸には、このほかにもリノール酸やアラキドン酸などのオメガー6系脂
肪酸のグループがあります。体内でEPAやDHAはα-リノレン酸からも合成され、ア
ラキドン酸はリノール酸からも合成されます。このように、同じグループ内の脂肪酸は体
内で必要に応じて作りかえられるのですが、オメガー6系からオメガー3系などグループ
を超えての合成は決して起こりません。
大切なのは「オメガー3系脂肪酸」
一般にオメガー6系脂肪酸をとり過ぎると「酸化ストレス・炎症体質」を形成し、逆に
オメガー3系脂肪酸は「酸化ストレス・炎症体質」の形成を抑制する働きがあります。
今日の食生活では、オメガー6系脂肪酸はとり過ぎとなり、逆にオメガー3系脂肪酸は
不足しがちです。これは近年急激に摂取量が増えた植物油に、リノール酸などのオメガー
6系脂肪酸が多く含まれること、さらに私たちが主食とする米をはじめ、小麦やトウモロ
コシ、そばなどの穀類の油分にもオメガー6系
脂肪酸が多く含まれるからです(オメガー3系
脂肪酸の 15 ~ 30 倍)。
当然、片頭痛にならないためには、オメガー
3系脂肪酸を含む食べ物を積極的にとるようお
勧めするわけですが、なかでもEPAやDHA
を多く含む青魚が有望です。
ただし、ここで注意しておきたいことがひとつ。青魚のうち、ブリやマクロなどの大型
魚には、メチル水銀やダイオキシン類といった環境汚染有害物質を多量に含むものが多い
ということです。小さければ小さいほど、こうした有害物質をわずかしか含みませんから、
目安としては「手先から肘までより小さな魚」であるイワシやアジ、サバなどの小型の青
魚がお勧めです。
また、オメガー6系脂肪酸とオメガー3系脂肪酸の摂取比率は、体質改善当初は[1:
1]、改善後は[2:1]が望ましく、私はシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油を日常の食生活
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に取り入れることを勧めています。
ところで、もしあなたが花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギ
ー疾患で悩んでいるのであれば、これまで述べてきた植物油にかかわる注意事項を忠実に
守るだけで、その悩みは解消に向かうことでしょう。
片頭痛の場合には、残念ながらこれだけでは充分な改善効果を実感することはできない
のですが、まずはこの植物油の問題をクリアすることが、片頭痛体質にならないための第
一歩です。ぜひお試しください。
5)インスリン過剰分泌をさせないためには
いわゆる「酸化ストレス・炎症体質」は食事法によっても形成を阻止することができる
ということです。そしてこの食事法は、片頭痛体質の形成阻止だけでなく、生理痛、糖尿
病、肥満、花粉症・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患、高血圧・癌などさまざま
な生活習慣病の体質改善や健康・美容を維持するための最も共通した基本となる食事のと
り方だということができます。
そこで、誰にでもできる“正しい食事のとり方”をご紹介しましょう。
その“鍵”となるのが「インスリン」です。「インスリン」は「糖質」や「タンパク質」
をとった際に分泌されます。「脂質」はインスリン分泌を促しません。
タンパク質の刺激によるインシュリンの分泌は、糖質の時のように“一度にドッと”と
いう分泌の仕方ではなく、消化が終わるまでダラダラと長く続きますので、無駄な分泌は
少なく、食事量に見合ったインスリンが分泌されます。
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なお、インスリンは血糖値が高くなった時に血糖を下げる唯一のホルモンですので、血
糖を必要以上に上げすぎないことが改善のポイントとなります。
そこで、
“一度にドッと”分泌し過ぎないためには、次のように食事を心掛けることです。
ⅰ、単品に近い食事のときは血糖上昇の緩やか食品を選ぶこと、複数の食品の食事では
血糖が上がりにくい組み合わせにする(インスリンを過剰に分泌させない)
ⅱ、食品の消化・吸収の速度が早くなりすぎないように食事をとる(滞胃時間、食べる順
そしゃく
番、咀嚼時間などで調整する)
ⅲ、血糖を上げない甘味料(難消化性糖質、オリゴ糖など)などを使用する
ビタミンB2を摂取する
ミトコンドリアは、細胞の中で呼吸し、エネルギーを生産している工場の役割を担って
います。ミトコンドリアの働きが低下したり、異常をきたす病気を「ミトコンドリア病」
といい、この病気を持つ人のほとんどが、片頭痛を持病として持っています。
このミトコンドリア病を持つ人々にミトコンドリアの機能をよくするビタミンB2を摂
取させると、片頭痛が改善されることが分かりました。逆に、片頭痛もちの人たちもビタ
ミンB2を摂取することで、7割近くの人の頭痛が改善することが分かっています。
1998 年に Shoenen ら 83)によって発表された論文によりますと、ミトコンドリア病の患者
さんに1日1回 400mg のB2を服用させた所、ミトコンドリアが元気になりミトコンドリ
ア病が改善しました。このミトコンドリア病の主症状が片頭痛です。この事にヒントを得
て、ミトコンドリア病に限らず片頭痛の患者さん 55 人に1日1回 400mg のリボフラビン
(ビタミンB2)を3ヶ月服用させた所、片頭痛の起す割合が半分に減った患者さんが 37
名だったと言う事でした。
その理由は、ビタミンB2がミトコンドリアの電子のやりとり(電子伝達によりエネ
ルギーを産生する)を円滑にしたことにより、ミトコンドリア代謝機能を向上させたか
らだと考えられています。また、ビタミンB2には体内で生成される過酸化脂質を分解
する作用もあり、この作用によって片頭痛が軽減された可能性もあります。いずれにし
ても、ビタミンB 2 が片頭痛患者の半数以上に改善効果を与えたことは事実ですから、
ビタミンB 2 を積極的にとりたいものです。
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ビタミンB2を多く含む食品としては、牛、豚、鶏のレバーやハツ(心臓)、うなぎ、
うに、すじこ、サバ、ズワイガニ、納豆、いくら、タラコ、卵黄、まいたけ、モロヘイ
ヤ、のり、煎茶の茶葉、唐辛子などがあります。
マグネシウムの補充
通常、食事で摂取されたマグネシウムの 20 ~ 50 %が小腸で吸収され、残りは便として
排泄されてしまいます。マグネシウムは細胞の中に蓄えられ、血液中には微量です。
一度にたくさんのマグネシウムをとっても、血中のマグネシウム濃度は上がりませんし、
細胞内のマグネシウム不足が解消されることもありません。恒常的に充分な量をとる食生
活をし、マグネシウム不足を徐々に改善していくことが必要です。
マグネシウムを一度に多くとり過ぎると下痢の症状があらわれます。しかし、他のミネ
ラル分と比較すると、食事ごとの摂取可能量の見極めは容易であり、片頭痛の人は下痢を
起こさない範囲内で、できれば1日に200~400ミリグラムのマグネシウムを追加的
にとるようにすることが勧められます。(マグネシウム液による)。
ちなみに、マグネシウム不足になると瞼がピクピクする、足がつるといった症状が出ま
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す。こんなときは200ミリグラム程度のマグネシウムをとると、翌日にはほとんど改善
されます。
片頭痛では、ミネラルの1種であるマグネシウムの不足が知られています。頭痛発作中
の患者の脳内マグネシウム濃度を調べると、30%から50%の人が、通常より低いこと
は実験によりわかっています。
マグネシウムは、血管の収縮を抑えたり、血小板が凝集するのを防ぐなど、血液の循環
機能を整えます。そのため、マグネシウムが不足すると血管が痙攣しやすくなり、痛みに
敏感になるので頭痛がひどくなってきます。
マグネシウムを大量に摂取することで血液の循環がよくなり、また筋肉の収縮も抑える
ので、片頭痛にも緊張型頭痛にも効果があります。
トリプトファン
脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、
聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応し
てしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。
この「脳内セロトニン低下」も「脳過敏」を引き起こす要因となっています。
“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば益々「脳
内セロトニンが低下」することになります。さらに生活習慣の不規則・ストレス・生理周
期により「脳内セロトニンの低下」の要因が追加されて、「脳過敏」を増強させてきます。
このため、痛みを感じやすくなり、慢性頭痛を起こしやすくしてきます。
そのため、頭痛を軽減するにはセロトニンを増やすとよいのです。
また、セロトニンの前状態であるトリプトファンを食品から摂る方法が大切になってき
ます。
トリプトファンを含む食品:
小麦胚芽、しらす干し、大豆、タラコ、ごま、かつお、卵黄、牛乳・乳製品
(牛乳・乳製品の取りすぎはよくありません)
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この点は、「セロトニンを増やす」で詳しく述べましたので省略します。
以上のように、食事の問題は慢性頭痛を引き起こす最大の要因になってきます。
とくに、片頭痛へ移行させないための必須の項目になります。
分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の提唱される「万能健康ジュース」「ラブレクラウ
ト」の方法があります。
この点は、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生が「お医者さんにも読ませたい 片頭痛
の治し方」
(健康ジャーナル社)で詳しく説明されておられますので、こちらをご覧下さい。
これは、東洋医学で重要視される”薬膳”に匹敵するものと私は思っております。
食事療法のすべてを、満たすものと思っております。食事療法についての細かなことが
面倒に思われる方々にとっては、これがすべてを集約されたものになっていますので、単
純に、まず、これを実践すべきと思っております。
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