ミトコンドリアについて - 成和脳神経内科医院

ミトコンドリアについて
目次
はじめに
3
第1章
ミトコンドリアとは
第2章
活性酸素の問題
17
第3章
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因
21
5
1.マグネシウムの問題
21
2.睡眠不足の問題
36
3.有害物質・・活性酸素の問題
41
4.薬剤による影響
51
第4章
ミトコンドリアを効果的に増やすには
53
第5章
食事療法
57
片頭痛治療上の食事療法の基本とは
-1-
57
「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を作らないために
58
1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
58
2)腸内環境を整える
59
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
63
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをよくする
66
5)インスリン過剰を起こさない
75
食事療法でとくに注意すべき事項
84
1.マグネシウムの補充
84
2.鉄分の重要性と補充の必要性
90
3.抗酸化食品をしっかり摂取する
96
第6章
ミトコンドリアを活性化する9つの習慣
-2-
99
はじめに
片頭痛は全身的な”ミトコンドリアの機能障害”による疾患です。
片頭痛は 15 億年前の因縁?
1996 年に間中信也先生が開設されたネット上に「頭痛」の老舗ともいうべきHP「頭
痛大学」があり、ここに、この当時から、以下のような記載があります。
ミトコンドリアは、細胞のエネル
ギーを産生する「発電所」のはたら
きをしています。
それは約 15 億年前のことでした。
当時酸素が嫌いなノンビリやの単細
胞生物”A”がおりました。
当時増えつつあった酸素を利用し
てエネルギッシュな好気性生物”B
”もいました。”A”が”B”に提案
しました。
「Bさん僕と結婚しよう。僕のウチに住んでいいよ。そのかわり君のエネルギーを僕にわ
けて頂戴」。
プロポーズが成功して、”A”と”B”の同棲生活が始まったのでした。
片頭痛には、このミトコンドリアが関係しています。
片頭痛では、ミトコンドリアの”酸化燐酸化の障害”があり、これによる代謝の異常が、
神経機能障害を引き起こし、それが”脳過敏”を強めて片頭痛発作を発現させます。
ミトコンドリアの代謝機能を是正すれば、片頭痛にならないということになります。
ミトコンドリアの働きを助ける物質にビタミンB 2 があります。実際ビタミンB 2 をと
ると片頭痛になりにくいのです。
-3-
とすれば、15 億年前に細胞AとBが同棲しなければ、片頭痛という病気は生まれなか
ったかもしれません。
-4-
このミトコンドリアの一部が異常をきたし、機能低下する事で起こる”ミトコンドリア
病”があります。このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、片頭痛が存在します。
このようなことから、これまで片頭痛が”ミトコンドリアの機能障害による疾患である”
と考えられています。
すなわち、片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低
下によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると考えられています。
このように、片頭痛は全身的な”ミトコンドリアの機能障害”による疾患と考えられて
います。
第1章
ミトコンドリアとは
私達の体を構成する細胞の中には、多数のミトコンドリアという小器官があります。
ミトコンドリアは、ほとんどすべての生物(ヒト、動物、植物、菌類など)の細胞に在り、
酸素を取り込み、 生きる為に必要なエネルギーを作り出していて、 車のエンジンや発電
所の発電機のような働きをしています。
エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多くなります。
-5-
ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
60 兆個の細胞が活動することで人は生命を維持
片頭痛のひとつの要因として、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の低下があげられま
す。この代謝の低下を引き起こし、また、片頭痛を悪化させるひとつの要因と考えられて
いるのが、エネルギー産生能力の低下です。
私たちの体は、およそ 60 兆個にものぼる細胞
から成り立っています。これらの細胞は、私た
ちが日々生活を送るために必要なエネルギーを
つくり出しています。
心臓を例にとると、心臓を構成するひとつひ
とつの細胞がエネルギーをつくり出し、そのエ
ネルギーによって心臓を取り囲む丈夫な筋肉で
ある心筋は、24 時間休むことなく働き続けるこ
とができます。もしエネルギーが十分につくら
れなくなれば、心筋の働きは低下。息切れや動悸といった症状が現れることになります。
各細胞内では、食物から摂取した栄養素を酸素が燃焼させてエネルギーを生み出してい
ます。栄養素をきちんと補給してそれを燃焼させるというサイクルをしっかり回さなけれ
ば、細胞はエネルギーを生み出せなくなり、人は生きていくことができません。また、私
たちの体のほとんどの部分では、常に新しい細胞が生まれ、古い細胞と入れ替わっていま
すが、こうした細胞の入れ替わりのサイクルも、生命維持には欠かせない仕組みです。
細胞はひとつの生命体です。細胞自体がいつも元気に活動することでエネルギーが生ま
れ、新しい細胞もつくられていきます。(これを新陳代謝といいます)
細胞内のミトコンドリアがエネルギーを生み出す
エネルギーは、細胞内に存在するミトコンドリアという小器官の中で、栄養素が酸素で
燃焼されることによって生み出されます。ひとつの細胞に含まれるミトコンドリアは 50
から 200 ほどです。
-6-
ミトコンドリアによるエネルギー産出量は、私たちが必
要とする全エネルギーの 95 %にものぼるため、ミトコンド
リアは「生命のエネルギー工場」と呼ばれています。骨格
筋や心臓、肝臓、腎臓、脳などエネルギー代謝の盛んな臓
器・器官の細胞ほどミトコンドリアの数は多く、それだけ
たくさんのエネルギーをつくり出すことで、神経・筋肉を
動かしたり、心臓を働かせているわけです。
そのためエネルギーをつくり出す能力が低下すると、さまざまな形で人の活動は支障を
来します。筋肉を動かす力が衰えると、歩いているときに物につまずきやすくなる。心筋
の働きが低下して、すぐに息切れする。肝臓の働きが弱くなって、若い頃には酔わなかっ
たお酒に酔いやすくなる…。いずれもエネルギーをつくる能力が低下することが、ひとつ
の大きな原因になっていると考えていいでしょう。
こうしたことが起こらないよう、エネルギーを生み出す能力をできるだけ維持・向上さ
せることが大切になります。
エネルギー産生の元となる ATP をつくるうえで欠かせないコエンザイムQ(CoQ10)
エネルギー工場の働き手として欠かせないのが
CoQ10 です。
私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、
ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる物質が元とな
って生み出されます。ATP はミトコンドリア内で生
成されますが、ATP の生成に欠かせない物質が CoQ10
です。
CoQ10 は、体内の酵素の働きを助ける役目を担っ
ています。酵素は化学反応によって体内の物質を分
解したり合成するものですが、CoQ10 はこの酵素の
働きをサポートする「補酵素」としてミトコンドリ
ア内に存在しています。また、ビタミンと同じよう
な役割を果たすため、「ビタミン Q」との別名もあり
-7-
ます。ただし、ビタミンが体内で生合成されないのに対して、CoQ10 は体内でつくり出
すことができることから、正しくは「ビタミン様作用物質」のひとつです。
エネルギー工場であるミトコンドリアでは、数多くの CoQ10 が日夜エネルギーをつく
り出し続けています。CoQ10 はいわばエネルギー産生に欠かせない戦力です。この戦力
が休んだり足りなくなると、エネルギーは生み出されなくなります。
スムーズに効率よく、たくさんのエネルギー産生へ
ミトコンドリア内におけるエネルギー産生の仕組みを、もう少し詳しく見てみましょう。
「ミトコンドリア工場」では、酸素と三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)をエネル
ギーをつくるための主な材料として仕入れます。このうちもっとも重要なのが糖質(炭水
化物)です。ベルトコンベアに乗せられた炭水化物はすぐにブドウ糖に分解され、3 つの
工程を経て、エネルギーをつくる元となる ATP をつくり出します。
ATP は第一・第二工程で少量がつくられます。しかし、もっとも大量に生成されるの
が、第三の工程です。この工程=電子伝達系で必要不可欠な働き手が CoQ10 です。第二
工程で発生した電子を交通整理して、効率的・スムーズにかつ大量に第三工程に送り、ATP
をつくり出しています。
こうした役目を担うことから、CoQ10 はエネルギー産生に欠かせない物質と呼ばれる
わけです。
脂肪からエネルギーが産生される仕組み
-8-
体についた脂肪は、そのままでは燃えません。まず、燃えやすい遊離脂肪酸に変化し、
血液の中に流れ出します。そして、各細胞内のミトコンドリアへと流れていきます。ミト
コンドリアは、エネルギーを生み出す場所です。遊離脂肪酸を燃料としてエネルギーを生
み出すのです。こうして、脂肪は燃焼します。ところが、遊離脂肪酸は”L-カルニチン”
がないと、ミトコンドリアの中に入ることができません。つまり、L-カルニチンがミトコ
ンドリアの鍵を開けることで、はじめて遊離脂肪酸はミトコンドリアに入ることができる
というわけです。
L-カルニチンは遊離脂肪酸をミトコンドリアに運ぶ役割を果たしています。つまり、Lカルニチンが不足していては、体についた脂肪を燃やしてなくすことはできないのです。
L-カルニチンには、もう一つ重要な働きがあります。それは、健康な脳機能を維持する
ことです。L-カルニチンが不足すると、脳のアセチル-カルニチンが不足します。アセチ
ル-カルニチンが不足すると、脳の細胞が壊れやすくなり、痴呆症になりやすくなります。
このことは、数多くの臨床研究から
明らかにされています。L-カルニチ
ンは、ボケ防止にも役立つというわ
けです。
L-カルニチンは、ミトコンドリア
の中で脂肪を燃焼して肥満を防止
し、脳の中でアセチル化してボケを
防止してくれる、私達には欠かせな
い物質なのです。
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L-カルニチンのパワーは CoQ10 なしでは発揮されない!
肥満を解消したいからと、いくら L-カルニチンを摂っても、それだけでは効果はあま
り期待できません。その優れた体脂肪の燃焼効果を発揮させるためには、CoQ10 が欠か
せないのです。
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L-カルニチンだけがたくさんあっても、CoQ10 が不足していては、脂肪はうまく燃焼
されません。逆に、CoQ10 だけがたくさんあっても、L-カルニチンが不足していては、
脂肪はうまく燃焼されません。つまり、この二つの相乗効果で、片頭痛改善・肥満が解消
できるというわけなのです。
L-カルニチンは CoQ10 と一緒にしっかり摂ってこそ意味があるのです。
CoQ10 とミトコンドリア
CoQ10 は抗酸化作用、疲労回復、美容成分として知られる栄養素です。サプリメントや
化粧品の成分として広く利用されています。
もともとはビタミン(=必須栄養素)と考えられていましたが、体内で他の栄養素から
作り出せることから、名称を CoQ10 へと変更しました。
必須栄養素と考えられるほど体内では非常に重要や作用をする栄養素であるものの、体
内での合成量は 20 代をピークにどんどん低下していきます。
そのため、年齢が上がるほどその量が不足しがちとなり、 CoQ10 の摂取効果が高くな
ります。
加齢とともに体内の量が減少
健康維持には体内に十分な CoQ10 があることが重要ですが、年齢を重ねるごとに、そ
の量は減っていきます。酸化ストレスの増加などが原因で、体の CoQ10 を作る能力が低
下するためです。体の場所によって CoQ10 の量が減
少する比率は違いますが、特に皮膚では、70 代では 20
代の約1/3まで減ってしまうという研究結果もあ
ります。
加齢だけでなく、喫煙などの生活習慣、うつ病、
心筋症、片頭痛などの病気も体内の CoQ10 を減らす
原因として注意が必要です。
CoQ10 が減ることで、体内のエネルギー生産量が減り、細胞の活力がなくなります。
- 11 -
つまり、元気や健康を維持する力が失われ、老化が進んだり、病気になりやすくなるので
す。
女性の場合は、更年期を迎えると心身ともに不調を感じることが増えてきますが、それ
は女性ホルモンのエストロゲンだけでなく、CoQ10 も減少しているためと考えられます。
不定愁訴や更年期障害などで悩んでいる人も、CoQ10 を摂取することで、症状を軽くす
ることができるでしょう。
また、CoQ10 のもうひとつの働きに、抗酸化作用があります。活性酸素は毒物やウイ
ルスなどを分解する酸素ですが、増えすぎると正常な細胞まで傷つけてしまうことがあり
ます。抗酸化作用により増えすぎた活性酸素を無力化して取り除くことで、細胞が元気で
いられます。
還元型と酸化型の違いは?
ところで CoQ10 には、「還元型」と「酸化型」という2つの種類があります。
従来の CoQ10 は酸化型で、CoQ10 の基本構造に酸素がくっついた状態です。酸素と反応
して酸化しているので、体の中に入った時に、もともとの形である還元型に変換する必要
があるのですが、人によっては加齢などでうまく変換できず、あまり効果が実感できない
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こともあります。一方で、最近よく見かける還元型というのは、酸化作用を受けていない
ものです。技術の進歩で、人間の体内にある CoQ10 と同じ状態に開発されたものが、還
元型 CoQ10 です。
還元型 CoQ10 は、体内での変換過程を経ずにダイレクトにミトコンドリアに作用する
ため、素早く効きめを感じやすく、人による効果の当たり外れも少ないとか。
CoQ10 は若さと健康のキープに欠かせないだけに、加齢に伴い不足する分を意識的に
補うことが大切です。
イワシ、豚肉、オリーブオイル、ブロッコリーなど、CoQ10 を多く含む食品を積極的
に食べることです。忙しくてそ
れができない人は、還元型
CoQ10 の含量を強化したゼリー
やチョコレートなどの食品やサ
プリメントがお手軽です。還元
型 CoQ10 を上手に摂取して、
細胞レベルから元気になりまし
ょう。
CoQ10 と片頭痛
CoQ10 の経口摂取により、片頭痛の発生頻度と発生期間の減少に効果がある、との報
告があります。CoQ10 摂取により片頭痛を予防する効果を示唆する学術文献もあります。
それでは、なぜ CoQ10 が片頭痛に効果があるのでしょうか?
1.抗酸化作用・活性酸素除去
CoQ10 は抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果があります。
活性酸素が身体に悪いのは、細胞を破壊・損傷し、DNA の改ざん、老化など様々な悪影
響の原因となるためです。
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(※活性酸素の働きは全てが悪い作用ばかりではありません。)
人間にはこの活性酸素を除去するシステムがもともと備わっており、 その一つが CoQ10
です。
その他に、ビタミン A、ビタミン C、ビタミン E、αリポ酸などが抗酸化作用のある物
質ですが、これらがお互いに作用しあって活性酸素の除去を行います。
これらの中で CoQ10 はその構造から電子を放棄し、ほぼ完全に脂質の生成を防止し、
酸化を阻害します。
また、抗酸化に利用されたビタミン E を修復します。
大きくはこの2つの働きによって CoQ10 が活性酸素の除去に効果があるとされていま
す。
ある研究では、運動前に CoQ10 を摂取したところ、 酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の
増加を抑える効果があったとしています。
2.エネルギーの産生
CoQ10 は人間の活動の元となるエネルギーの産生に寄与します。
TCA 回路(クエン酸回路)からエネルギー(ATP)を作り出す最後の栄養素がこの CoQ10
です。
そのため、TCA 回路が適正に機能していても、CoQ10 がなければエネルギーが作られま
せん。
しかし、CoQ10 の体内での量は 20 代をピークにその量は減っていきます。
食事から直接摂取する量そのものが減ること以外に、チロシン、フェニルアラニンなど
複数の栄養素を摂取しないと体内で作られないため、バランスの良い食事をしていないと、
体内で作られる量も減ってしまいます。
サプリメントとして CoQ10 を摂取したところ、疲労感と憂うつ感の低下、活動度の増加
が認められたという報告や、 CoQ10 を 100mg、10 日間摂取したところ、69 %で疲労回
復の効果を感じられたとする報告もあります。
結局、ミトコンドリアとは?=“細胞のエネルギー生産工場”
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以上のように、ミトコンドリアは“
細胞のエネルギー生産工場”とも言わ
れ、グルコース(糖)・脂肪を原料と
して、“生体のエネルギー通貨”と呼
ばれる「アデノシン三リン酸(ATP)」
を合成しています。ATPは体内で日
に延べ 50 ~ 100 kg が作られています
が、そのうちの約 95 %はミトコンドリアによって作られています。また、ATPをつく
る過程では水がつくり出されており、その水は「代謝水」と呼ばれ、身体の水分保持にお
いて重要な役割を果たします。
ミトコンドリアが不調になると・・・
ミトコンドリアの機能が低下すると、ATPが不足するほか、ATPがうまくつくられな
いことにより活性酸素が増加し、その結果、身体にはさまざまな不調があらわれます。
めまい、動悸・息切れ、疲れ、肌荒れ、貧血、無気力、うつ状態等々・・・
身体を元気に健康に保つためには、ミトコンドリアを元気にすることが大切なのです。
ミトコンドリアの数が少なく弱ってくると、細胞が適正に活動するために必要なエネ
ルギー量が不足し、細胞や組織はその役割を充分に果たせなくなります。私達が元気で
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いられるのは、ミトコンドリアが充分エネルギーを供給してくれるからです。そのため、
ミトコンドリアの数が少なく活力が無ければ、そのヒトの活力もなくなってしまうとい
うことです。
片頭痛もミトコンドリアが弱ることで起きる病気ですので、ミトコンドリアをいかに元気に
することができるかが片頭痛を改善させる最大の“鍵“となります。
- 16 -
第2章
活性酸素の問題
ミトコンドリアは細胞のなかにある小さな器官で、糖と酸素を利用してエネルギーをつ
くり出す、いわばエンジンのような役割を果たしています。ところが、このミトコンドリ
アは、エネルギーを出すとき、同時に排気ガスのような「活性酸素」を発生させます。自
動車に例えるとわかりやすいと思います。ガソリンを使ってエンジンを動かしたら、排気
ガスが出ます。同じように、ミトコンドリアも、エネルギーを作り出したら、排気ガスと
同じようなものが出てしまうので
す。それが、活性酸素です。
例えば、360cc の軽自動車をブ
ンブンふかしていたのではダメ
で、エンジンを大きくして(=ミ
トコンドリアを増やして)少ないガソリンで効率よくエネルギーを出し、排気ガス(活性
酸素)の少ない良質なエンジンを積んでおくことが重要になってきます。生活環境の影響
や年齢を重ねると、このミトコンドリアの数が減少していき、さらにミトコンドリアの働
きも低下していきます。ガソリンばかり食ってあまりエネルギーが出ないような質の悪い
エンジンになってしまうわけです。
ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミト
コンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する
機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰
の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪
- 17 -
循環が始まります。
身の回りの活性酸素を生み出す要因
活性酸素は、「呼吸をする」、「食事をとる」、
「運動をする」など、ごく普通の生活をしてい
るときにも発生します。酸素を取り込み、エネ
ルギーを作る過程で必ず発生するからです。そ
のほか、白血球が細菌を殺傷するとき、生理活
性物質が作られるとき、有害物質(過酸化脂質、
残留農薬、食品添加物、抗がん剤、アルコール、
タバコ、大気汚染物質、医薬品など)を解毒す
るとき、止まっていた血液が再び流れ出すとき(再濯流)、紫外線や電磁波(レントゲン
など)を受けたとき、強い精神的ストレスを受けたときなど、さまざまな要因により発生
します。
- 18 -
もちろん活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。
そのため、私達の体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
酸化ストレス
ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”抗
酸化作用(抗酸化力)”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。
このため、平素から活性酸素を消去する抗酸化食品を積極的に摂取する必要があります。
「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう
状態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こして
しまう状態のことをいいます。これが片頭痛を形作る根本的な原因になっています。
このように、片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、”環境因
子”として、生活習慣(特に食生活)が原因で、エネルギーを生み出す際に生する活性酸
素によって自分のミトコンドリアを傷つける
ことによって「さらに、ミトコンドリアの働
きを悪く」させて「酸化ストレス・炎症体質」
を形成することにより、引き起こされる疾患
(頭痛)と考えられています。
「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活
習慣などにより起こり、特効薬を飲んだからといって直ぐに治るようなものではありませ
んし、また特効薬などはありません。
- 19 -
「酸化ストレス・炎症体質」を改善するためには
「酸化ストレス・炎症体質」を改善するためには、その根底にある次のような問題を解決
する必要があります。この改善策については後編で述べます。
1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
2)乱れた腸内環境を整える
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスの乱れを正す
5)インスリンノ過剰分泌を抑える
これらの根本的原因を解決しない限り「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質ともい
います)を改善することはできません。
生活環境により、さらに毎日食事とともに摂取される有害物質、さらに食事の摂取のし
かたから、腸内環境が乱され、さらに有害物質が体内に蓄積することにより「酸化ストレ
ス・炎症体質」が作られてくることになります。このため、腸内環境を整え、デトックス
を日々意識して行っていく必要があります。
この部分を解決しないことには、片頭痛を根本的になくしてしまうことは不可能です。
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第3章
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因としては、以下のようなものがあります。
1.マグネシウムの問題
2.睡眠不足の問題
3.有害物質・・活性酸素の問題
4.薬剤による影響
1.マグネシウム不足
マグネシウムの役割について
マグネシウムの大きな作用には次の 3 つがあります。
1. PMS(月経前症候群)や慢性的な疲労を緩和する
2. インスリンの感受性を正常に保つ、血圧を下げる
3. 代謝を上げ、ダイエットに役立つ
細胞にはカルシウムを出し入れするポンプがあり、
マグネシウムはこのポンプがカルシウムを汲み出すと
きに欠かせません。カルシウムの量が増えると筋肉が
緊張(収縮)し、カルシウムの量が減ると筋肉が弛緩
します。
マグネシウムが不足すると筋肉が収縮した状態を解
消できなくなります。神経も過敏になるために痛みも
感じやすくなります。
マグネシウムは「抗ストレスミネラル」と呼ばれ、ストレスによって激しく消費されて
しまうので、イライラ感が増したり、怒りつぽくなったりもします。
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寝ているあいだに足がつる、まぶたがピクピクとけいれんするといった症状も、筋肉が
緊張した状態が続くために起こります。こういう症状があらわれやすい人はマグネシウム
不足です。
また、片頭痛の前兆として「肩がこる」という人もたくさ
んいますがこれも同様です。
マグネシウムの不足によって緊張型頭痛を起こすという研
究報告もあり、不足したマグネシウムを補うことで頭痛を改
善に導いてくれます。
マグネシウムが役に立つのは、肩こりなど筋肉の緊張から
来る緊張型頭痛です。マグネシウムは、筋肉の緊張を解いてくれます。また血管の筋肉を
リラックスさせることで血流が増え、血行が良くなるからです。
マグネシウムを大量摂取することで血液の循環がよくなり、
また筋肉の収縮も抑えるので、緊張型頭痛にも効果があります。
マグネシウムが不足すると、筋肉などの細胞中のカルシウム
濃度が高まり、細胞が“緊張状態”になります。この状態が続
くと、血圧が上がったり、筋肉が動かなくなったり、細胞内の
ミトコンドリア(エネルギーをつくる)が死んでしまったりと、
かなり“マズイ状況”になります。
そのため、カラダを守ろうとする仕組みが働いて、細胞内に水分を取り込み、カルシウ
ム濃度を下げようとするのです。これがいわゆる「水ぶくれ(水太り)」の状態です。
このとき、マグネシウムが適正に補給されれば、細胞から余分な水分が排出されて正常
な状態に戻ります。
「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、マグネシウム不足が加わると・・
マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造
において膜の安定性を保つ役割をしています。
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細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さ
な「穴」があり、これを使って必要なミネラル
を自在に出入りさせることで細胞内のミネラル
イオン濃度の調整しています。ミトコンドリア
には、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に
調整する作用があります。
マグネシウムイオンが不足すると細胞内小器
官(ミトコンドリア)の”膜構造ならびに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱くなり、
細胞内小器官であるミトコンドリア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリア内に入り込ん
だカルシウムイオンは、ミトコンドリア外へ出ていけません。カルシウムはミトコンド
リア内に少しずつ蓄積してきます。ミトコンドリア内カルシウムイオンの増加が起こり
ます。先程述べたように、それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態になり
ます。
細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎますと、ミトコンドリアの調整
機能は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
ミトコンドリアのエネルギー産生やミ
トコンドリア自体の生死には、ミトコン
ドリア内のカルシウムイオン濃度が強く
関係していて、カルシウムイオン濃度は
片頭痛の発症にも非常に大きな原因とな
ります。
このようになった細胞に、適量のマグ
ネシウムが供給されると、溜まっていた
カルシウムイオンなどが排出され、それ
につづき、水分も排出されますが、この
水ぶとり状態も限度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要と
なり見捨てられます。そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけ
が残されます。これが石灰化した細胞のことです。結果的に、この細胞は死滅してしま
います。
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細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカ
ルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くこ
とになります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内の
カルシウム濃度の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもた
らす結果でもあるのです。
このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナ
トリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招
きます。このようにして、細胞は興奮しやすくなります。これが「脳過敏」を引き起こし
てきます。 このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの代謝異常をき
たして、神経細胞を興奮しやすくすることになります。
これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。
片頭痛では、ミトコンドリア機能障害が生まれつき存在するために、ミトコンドリア
はマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグ
ネシウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているので
す。神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコン
ドリアの機能障害の結果として生じているものです。このようにして、「脳過敏」が形成
されることになります。
片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」
ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。
そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせる
ことに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。
このことは、片頭痛治療上、極めて重要な点です。マグネシウム補充が治療の要です。
不足しやすいマグネシウム
こうした大切な栄養素であるマグネシウムですが、日
本人には慢性的にマグネシウムが不足しています。その
原因は、昔と比べ欧米化した食生活にあります。
厚生労働省「平成 21 年国民健康・栄養調査」による
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と、マグネシウムの平均摂取量は 20 歳以上の男性では 264mg、20 歳以上女性では 234mg
です。食品からの摂取量だけで男性では 100mg 前後、女性では 50mg 前後のマグネシウム
が毎日不足していると推定されます。
日本人のマグネシウム不足の原因として「食生活の“欧米化”」と「精製塩の過剰摂取」
を挙げられています。粗塩にはマグネシウムをはじめとするミネラルが多く含まれます
また、塩分の過剰摂取により、体内
からのマグネシウムの排泄が増える
と、マグネシウムは不足気味になりま
す。その他、マグネシウムはストレス
が加わると尿中にたくさん排泄され、
さらに不足傾向になります。ストレス
にさらされる現代人は、マグネシウム
が不足しやすい生活になっているので
す。
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マグネシウムは代謝に関係する酵素の活性化や、糖をエネルギーに変換する働きがあり
ます。また、体内の水分を腸に集める働きがあり、腸に残っている宿便が、体外に排出さ
れやすくなると言われています。このため、ダイエットで不足しがちになります。
PMSと呼ばれる月経前症候群がある女性の血中マグネシウム濃度は、月経前症候群が
ない女性に比べ低いと報告されています。
これにより月経前症候群の緩和にマグネシウムが役立つと言われています。
また、妊娠中に起こる「こむらがえり」の原因の1つにマグネシウム不足あげられてい
ます。
それではマグネシウム不足の原因はなんでしょうか?
次のような身の回りの生活環境は、容易にマグネシウム不足を起こしてきます。
・アルコールの飲み過ぎ
・毎日の牛乳摂取
・ストレス
・激しい運動や暑すぎる環境
・食材のマグネシウム含有量が低い
・白米、小麦粉など精製食品の摂取
・白砂糖の摂取
・加工品や清涼飲料水の摂取
・食品添加物や農薬等の摂取
・エストロゲン過剰(環境ホルモン含む)
・食の欧米化
・生理時には減少・・
このように、私達の生活環境は容易にマグネシウム不足を来しやすい環境にあります。
繰り返しますが、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪
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くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。
そして先程の「マグネシウム不足の原因」でも述べましたように、いろいろな状況
で容易にマグネシウム不足が引き起こされてきます。特に、女性の場合はこの傾向
が著しく、月経時の片頭痛をいつもの片頭痛よりも激しくさせる根源ともなってい
ます。
現在、
普通の人でもマグネシウムが不足しやすい生活環境にあります。とくに先程も述べまし
たように、片頭痛の方々はマグネシウム不足が指摘されています。このため、日常的に「マ
グネシウム」を摂取することを意識する必要があり、油断すればすぐに不足してしまうこ
とになります。
このマグネシウムの摂取量は、それぞれの年齢によって推奨摂取量があります。これを
満たすように、毎日摂取することが大切です。マグネシウムの補充は片頭痛治療の”要”
となっていますので、このことを常々念頭におく必要があります。
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”生理時にいつも片頭痛が起き、激しい”といった場合は、マグネシウム不足を疑うく
らいに大切なことです。こうした場合は、必ず、是正に努めて下さい。
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細胞内のカルシウムイオン濃度の異常
先程も述べましたが、細胞の代謝には、細胞内外に存在するカルシウムやナトリウム、
カリウムやマグネシウムといったミネラルイオンが大きくかかわっています。
皆さんは高血圧の治療薬として用いられる
「カルシウム拮抗薬」というのをご存知でし
ょうか? 細胞膜にはミネラルイオンが通過で
きる小さな「穴」があり、透過できるイオン
の種類によって、「ナトリウムチャネル」とか
「カルシウムチャネル」といった名がつけら
れています。これを使って必要なミネラルを
自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整をするのです。カルシウム
措抗薬にはカルシウムチャネルをふさぐ働きがあり、カルシウムイオンが細胞内へ流入す
るのを防ぎます。
ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。
ところが、細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎると、ミトコンドリアの
調整機能は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまうの
です。
このように、ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には細胞内
のカルシウムイオン濃度が強くかかわっており、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症に
も非常に大きな原因となります。
マグネシウムとカルシウムの関係
カルシウムには筋肉を「収縮させる」作用があ
ります。マグネシウムは筋肉細胞内のカルシウム
をポンプで汲み出すように排出することから、収
縮した筋肉を「緩める」作用があります。カルシ
ウムとマグネシウムは、このように常に相反的に
作用し、通常はカルシウムイオン濃度が適正に維
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持されています。
しかし、細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出
するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続
くことになります。その結果、こむら返りを起こしたり、瞼がピクピクと痙學したりする
などの症状があらわれます。
さらにマグネシウムの不足が進むと、筋肉細胞内のカルシウム濃度が高くなり過ぎて筋
肉の伸縮ができなくなります。もしそれが心臓で起きれば、心臓の機能停止(死)といっ
た重篤な状態に陥ることになるわけです。
片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度
の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果でもある
のです。
マグネシウム不足の原因は先程も述べました。 その原因としては、利尿剤などの薬剤
の服薬、食事からのマグネシウム摂取量不足、胃腸の吸収障害(下痢など)があり、その
ほかにも多くの生活習慣に原因があります。
たとえば、インスリンはブドウ糖とともにリンを細胞内に移動させる作用がありますが、
暴飲暴食などによってインスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り
込まれて血液中のリン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグ
ネシウムは腎臓から尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌も
マグネシウム不足を起こす原因となります。
また、マグネシウムは「抗ストレスミネラル」と呼ばれるように、ストレスが多いとき
ほど多く消費されます。片頭痛の人は精神的ストレスを受けやすく、ほとんどの人がマグ
ネシウム不足であるといっても過言ではないと思います。
その他、激しい運動、過労、過食など、マグネシウムを消耗する要因は、現代の生活環
境の中に満ちあふれているのです。
肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎの弊害
私たちの健康にとって、カルシウムは非常に重要なミネラルです。しかし一方でカルシ
ウムのとり過ぎが「マグネシウム不足を引き起こす」ということはあまり知られていませ
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ん。特に食が細い(小食)にもかかわらず、肉類
や乳・乳製品が好きという人は要注意です。
牛乳は、カルシウムを多く含む食品としてよく
知られています。でも、牛乳をとり過ぎると、カ
ルシウムは腸から充分に吸収されることなく、そ
のほとんどが糞便とともに排泄されてしまいます。
このとき、カルシウムだけではなく、体に必要な
マグネシウムなどのミネラルや栄養素も一緒に引
き連れて排泄されてしまうのです。
では、もし牛乳に含まれるカルシウムを充分に吸収したとするとどうなるか? 血液中
のカルシウム濃度が急激に高まります。これがまたよくないのです。
体にはホメオスタシス(恒常性維持機能)という、バランスをとって正常値に近づけ
ようとする働きがありますから、余分なカルシウムは尿としてただちに排泄されることに
なります。この排泄にともない、マグネシウムや亜鉛などのミネラル、他の栄養素がやは
り失われることになるのです。
このように、牛乳の吸収率がよいにしろ悪いにしろ、カルシウムを多く含む牛乳や乳製
品をとり過ぎることは、結果的にマグネシウムをはじめとする必要なミネラルを失うこと
になります。実際、牛乳や乳製品など、カルシウム分か特に多い食品のとり過ぎによって
マグネシウム不足になるケースは多いのです。
ちなみに、カルシウムとマグネシウムの摂取比は「2一1」が適切と考えられています
が、牛乳そのもののカルシウムとマグネシウムの比は「10
一1」程度と、カルシウムの
比率が高くてアンバランスです。それから代表的な乳製品であるチーズに含まれるカルシ
ウムとマグネシウムの比は、ナチュラルチーズで「20
一1」程度、プロセスチーズ「30
一1」と、もっとバランスが悪くなっています。マグネシウム不足はミトコンドリアの働
きを悪くさせますので、牛乳や乳製品のとり過ぎには充分に気をつけましょう。
また、肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エストロゲン様環境ホルモン)が含ま
れている可能性があり、本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製
品・環境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低
下します。
またタンパク質を多量に摂ると(肉食)、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、
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大きな負担をかけることになります。尿素が増えてくると、それを尿として流し出すため
に、体は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなど
のミネラル類も排泄されてしまうことになります。こういったことから、マグネシウム不
足を引き起こすことになり、マグネシウム不足はミトコンドリの働きを悪くさせます。
高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあいまっ
て、
「SOD」
(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」、
「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、
セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が増加するこ
とになり、ミトコンドリアの働きを悪化させま
す。
肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質
”たっぷりの食事は、腸内環境を悪くします。
腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や
脂肪を多く含む食品です。
悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、有害
物質を作り出し、このためミトコンドリアの働きを悪化させることになります。
牛乳の飲み過ぎは、過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・
鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足
が進むことになります。
砂糖のような「空のカロリー食品」の多い食事には必須栄養素が不足していますから、
カロリーだけは満たされても必須栄養素は欠乏するという事態が生じます。結局エネルギ
ー代謝が円滑に進まず、ミトコンドリアの働きを悪くさせます。
ミトコンドリアは「生命のエネルギー工場」と呼ばれ、エネルギーを産生する重要な場
所です。ミトコンドリアの働きの悪さは、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の低下を意
味します。このエネルギー代謝を円滑に行うためには、食生活でとくに栄養素・ビタミン
・ミネラルを過不足なくバランスよく摂取することが大切になります。
偏った食事は、ミトコンドリアの働きを悪化させ、新陳代謝やエネルギー代謝が円滑
に行われなくなります。
こうしたことから、食生活が極めて重要な鍵を握っています。
以上のように、食生活でとくに栄養素・ビタミン・ミネラルを過不足なくバランスよく
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摂取することが大切になります。
インスリン過剰分泌
血糖値というのは血液中のブドウ糖の濃度のこ
とです。ブドウ糖というのは、ご飯や麺類などの
主食に多く含まれる「糖質」が分解されたもので
人間が活動するための主なエネルギーになります。
食事をすると糖質が消化吸収されブドウ糖にな
り吸収され、血液によって体のあちこちに運ばれ
ます。
血液の中のブドウ糖はそのままではエネルギーとして使えません。血管からエネルギー
を使う器官の細胞に取り込まれないといけないのですが、その取り込む役割をするのが「イ
ンスリン」です。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事をして血糖値が上昇すると分泌量
が増え、血中に増えたブドウ糖を細胞に取り込みます。
その取り込まれたブドウ糖がエネルギーになって、人間は活動することができるのです
が、余分にとってしまったエネルギー(ブドウ糖)は脂肪として蓄えられてしまいます。
急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過
剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎることに
なります。血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組み
が働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費がバランスしていれば問
題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血
液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
緩やかな血糖値の上がり方なら良いのですが、急上昇と急降下を繰り返すような食事を
していると太りやすいのです。上がりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが頑張って
中性脂肪をたくさん作ってしまうということなのです・・・
また、急上昇急降下の食べ方はすぐにお腹が空くので、食べる量が多くなってしまいま
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すし、いつも大量のインスリンを出していると膵臓が疲れてしまい糖尿病になりやすくな
ってしまいます。
インスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り込まれて血液中のリ
ン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグネシウムは腎臓から
尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌もマグネシウム不足を
起こす原因となります。
肥満の人が健康を願うのであれば、何よりも標準体重(BMI:一 25 以下)まで減量
することが第一優先です(スポーツなどで筋肉体質な人は別として)。
肥満であればあるほど、ミトコンドリアの増殖は抑えられてエネルギー代謝が少なくな
り、さらに肥満になりやすくなるという悪循環に陥ります。
食事はカロリーのとり過ぎに気をつけるとともに、いつも満腹でいるのではなく、次の
食事の前には必ず空腹を感じるようにすることです。食事からブドウ糖の供給がなくなれ
ば空腹感を感じ、体に蓄積されているグリコーゲンや中性脂肪からのエネルギー代謝が開
始されます。このとき、ミトコンドリアは栄養分が不足してきたことを認識して数を増や
そうとするのです。ですから間食はダメです!
さらに、空腹時の運動は軽いものであっても、ミトコンドリアをより刺激することにな
り、効率よく数を増やすことにつながります。
小断食(三度の食事を一度程度抜く)は、ミトコンドリアを刺激するのに有効な手段で
すが、2日を越える絶食は、刺激ではなくミトコンドリアの死滅を招く可能性があり逆効
果です。分子化学療法研究所の後藤日出夫先生提唱される、朝食を「万能健康ジュース」
に変えること”は、日常的に軽い刺激を与えることになり、ミトコンドリアの活性化に有
効です。
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標準体重以下(BMI一 20 以下)の人はカロリーを制限する必要はなく、むしろ摂取
カロリーを増やす必要がありますが、それでも間食は控えて、さらに空腹時には軽い運動
をすることが、ミトコンドリアの数を増すためには効果的です。
食べ物では、ブドウの果皮(赤ワインにも含まれる)やピーナッツの薄皮に含まれるポ
リフェノールの一種レスペラトロールに、カロリー制限と同じような効果があり、ミトコ
ンドリアの数を増すといわれています。また、大豆や大豆製品に含まれるタンパク質成分
のβコングリシニンや、黒豆の皮に含まれるアントシアニン、トマトなどに含まれるリコ
ピンもミトコンドリアの数を増す効果があるといわれています。
脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種、アディポネクチンには、ミトコンドリアの数
を増やす効果があるといわれています。これも肥満になれば分泌量が減り、減量すると増
えます。標準体重でいること、きちんと空腹感を感じることが、ミトコンドリアを増やす
最良の方法なのです。
このように、食べ過ぎはミトコンドリアの働きを悪化させます。
さらに活性酸素は細胞にインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を高めて、
それにより糖尿病や動脈硬化を引き起こしやすい状態をつくるという悪循環になります。
インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)は、それ自体で「酸化ストレス」を
促進すると言われています。
これらによって引き起こされる炎症反応は活性酸素の増加や細胞の酸化を促進する要因
になります。
血液中に溢れる遊離脂肪酸も直接的に酸化ストレスを増加させる要因になっています。
血液中に大量の遊離脂肪酸があると、血液の酸化が亢進します。
また、脂質が酸化されると細胞が障害されてしまいます。
細胞を包む膜の活性酸素産生、細胞内のミトコンドリアでの活性酸素産生も促進します。
また、肥満化した脂肪細胞からは様々な生理活性物質(アディポカイン)や炎症を引き
起こす物質(炎症性サイトカイン)が分泌されます。
これらの生理活性物質や遊離脂肪酸などが合わさって、身体の「酸化ストレス」を促進
する要因となり、全身の障害を招くことになるのです。
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2.睡眠不足の問題
慢性頭痛を改善させる際に、まず最初に念頭におくべきことがあります。
片頭痛の方々は、基本的に「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在します。このミトコ
ンドリアを元気にさせるためには、重要な点は睡眠を十分にとることが必要です。
それは、活性酸素等で傷ついた組織の修復は寝ている間に行われるため、修復には睡眠
が不可欠です。ミトコンドリアを元気にするためには必要不可欠です。
また、緊張型頭痛では、脳内セロトニンの低下が存在します。セロトニン神経の活性化
には、早寝、早起き、十分な睡眠が基本原則となっています。
それでは、どうして「睡眠」が大切なのでしょうか?
この点をよく理解され、十分に
睡眠をとられませんと、以後行われるどのような方法も慢性頭痛を改善に導くことはあり
ません。それ程、十分な睡眠は、慢性頭痛治療上、極めて重要な位置を占めています。
エネルギーの生産には休息が必要です
これまで述べてきましたように、生物の細胞の中にはミ
トコンドリアという細胞小器官があります。
私たちが食物からとった、炭水化物(糖)や脂肪は代謝
されて、ミトコンドリアの中でTCAサイクルに放り込ま
れて酸素を消費しながら、活動していくのに必要なエネル
ギーに変えられています。
糖にはTCAサイクル以外に、酸素を使わずミトコンドリア以外の場所でエネルギーを
生産するシステム(解糖系)もあります。
この場合は乳酸ができますので、激しい運動(無酸素運動)をした時などは、筋肉内に
大量の乳酸がたまることになります。
しかし、このエネルギーの作り方では効率が良くないので、解糖系で分解した糖も、酸
素が十分にある場合は、途中からミトコンドリアの中でTCAサイクルに渡されて、エネ
ルギーに変えられることになります。
つまり、ミトコンドリアは体温や生体が活動するエネルギーを生産するにはなくてはな
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らない場所なわけです。
そして、ミトコンドリアは生体がちゃんと休息をとらないと働けなくなってしまうので
す。ですから、ちゃんと睡眠時間を確保することが大切になります。
地球の重力に逆らって動物が立ったり、座ったり、動いたりするには、相当なエネルギ
ーの消耗があり、眠らなくても重力に逆らわないように横になっているだけでも休息をと
っていることになります。
直立2足歩行は人間に大変な重労働を課
しています。
生物が水の中で暮らしていた頃は水の浮
力によって1/6Gの重力しかなかったのが
陸にあがって1Gに変わり、なおかつ5キ
ログラムもある頭を 150 ~ 180 センチの高
さに保つには相当なエネルギーが必要です。
血圧を例にとると、4足歩行の 45 キロ位
の大型犬で血圧は 90 ミリHgほどです。人間は 120mmHg なければ 160 センチの位置に
ある頭の活動を生き生きと保つことが出来ません。しかし、横になればイヌと同じ血圧
90mmHg でも細胞レベルの呼吸は十分維持できます。
体重を支える骨には大きな負荷がかかります。骨が体重を支えて
いるときはただ柱のようにさせているのではなく、酸素を消費し、
骨の中のリン酸を消費しエネルギー使って支えています。ここで重
要なのは骨は体を支えるだけではなく造血もしているということで
す。立っているときは体重を支えることでエネルギーが消費されて
しまい、エネルギーが不足して造血したくても出来ません。だから
新陳代謝は睡眠中に行われます。1晩で1兆個の細胞がリモデリン
グ(新陳代謝)しています。つまり、睡眠をとらないと新陳代謝と
いうプロセスが行われないということです。
睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤
太古から人類は、日の出とともに狩猟や農耕に精を出し、日が沈むとともに体を休め眠
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りにつく一日を過ごしていました。睡眠とは、重力に逆らい二本足で昼間活動していた人
類が、疲れを取るために横になって眠る時間です。重力の影響は大きいので、横になって
体を休め、その影響を解除しないと骨髄の造血機能が働きません。骨休めという言葉の意
味でもあります。
眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌され、細胞の成
長や修復を行ったり、脂肪を分解させたり、病気をもたらすウィルスなどの体内への侵入
防ぐ免疫力も高めたりします。
また、睡眠は体ばかりでなく、何よりも脳の疲労を回復させてくれます、長い時間運動
を続けていると、筋肉に疲労物質がたまって、充分な力が発揮できなくなるように、脳で
も同様のことが起こります。脳は働く時間と量に比例して、睡眠促進物質プロスタグラン
ディンやサイトカイン、神経ペプチドなどがたまってき
てしまいます。
睡眠促進物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、
睡眠促進物質の生産を止め、これを分解するために、脳
の働きを止めて眠る必要があるのです。そのため大脳が
疲れてくると自然に眠くなり、眠ることによって脳の疲
労を回復して定期的なメンテナンスを行っています。
嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠
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中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われています。
睡眠中に分泌されるホルモンの役割
夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、体の中ではさまざまなホルモンが
分泌され、大切な働きをしています。
ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の
役割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりし
ます。成長ホルモンは 22 時頃から活発になり 2 〜 3 時頃にピークを迎えます。「寝る子は
育つというように」、睡眠の深い子ど
も程たくさん分泌され、子どもの成
長に重要なホルモンですが、大人に
とっても体の修復に欠かせません。
たんぱく質や骨などを合成する働き
の促進、疲労回復、リンパ球の働き
を活発にさせて傷の修復、お酒を飲
んで代謝に使われた肝臓細胞の再生
など、細胞を活性化させ、体全体の
ダメージを回復するホルモンです。
女性にとってもこの 4 時間は、お肌のゴールデンタイムといわれ、肌の生まれ変わりが
最も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌がみずみずしく、つやつや
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していきます。
不規則な睡眠などでメラトニンの分泌が少なくなると、卵巣からのエストロゲン分泌が
過剰になってしまいます。エストロゲン過剰はマグネシウムを減少させます。
睡眠が美容にとって重要なのは、むしろ成長ホルモンの分泌が起こるからです。成長ホ
ルモンはお肌の細胞分裂を促し、メラトニンは成長ホルモンの分泌を促します。
レム睡眠中には、生命維持に不可欠なホルモン、コルチゾールが分泌され、睡眠中のエ
ネルギー供給のために脂肪を燃やしたり、肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に分解して
血糖値を高めてすぐに活動できるようにします。
不規則な就寝時間や浅い睡眠は、ホルモンの分泌時間や量を乱し働きを低下させた体温
調節ができなくなります。ホルモンや免疫から考えると、遅くても午前 0 時には入眠する
のが望ましいでしょう。
それでは、睡眠時間に関して最近一
番よく聞くのが、6 時間半~ 7 時間半く
らい、つまり平均して 7 時間くらいが
良いということです。従って 11 時頃就
寝し、6 時頃起床するのが理想的と言わ
れています。この点に関しては、本人
にとって適正な時間であれば十分であ
り、それよりは起床時間と就寝時間を一定にさせることが最も大事な点です。
適切な睡眠時間は、各人によって異なっていることを理解され、睡眠時間を適正に確保
し、起床・就寝時間を一定にすべきです。これが最低限必要とされています。
とくに、仕事の関係で十分な睡眠時間が確保できない状況においては、最低限、朝の起
床時間を一定にする必要があります。
以上、睡眠は、片頭痛治療上、極めて大切であるかが理解して頂けたかと思います。
しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このよう
な考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールに
は難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのよう
になるかを証明していると言えます。
経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛
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を改善させることは不可能といえる程、重要な位置を占めております。
慢性頭痛に「不眠」があれば、その不眠の原因・背景を探ることを出発点にすることが
大切になってきます。ここから、慢性頭痛の発症要因を探る手がかりになることもありま
す。
このように睡眠は、ミトコンドリアを元気にさせるために絶対的に必要なものです。
3.有害物質・・活性酸素の問題
細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、
反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミト
コンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する
機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰
の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪
循環が始まります。
身の回りは活性酸素を生み出す要因だらけ
実は活性酸素は、私たちが生きていく上で、どうしても発生してしまうものなのです。
私たちが体に酸素を取り込み、消費する過程で活性酸素は自動的につくり出されます。
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激しい運動をしているときはもちろんのこと、仕事や家事などをして普通に生活してい
るときも、くつろいでいるときや眠っているときも発生するのです。
私たちは生きている限り活性酸素から逃れることはできません。
太古、地球の生物が酸素を体に取り込んで生きるようになったときからの、宿命といえ
るかもしれません。
もちろん活性酸素が体の中で増える一方だと、人間はたちまち死んでしまいます。
そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、病気や老化が起きるの
です。大量発生のきっかけにはさまざま
なものがあります。
体が傷を受けたり、ウイルスが侵入し
たときもそうですし、太陽光線も原因に
なります。
これらは昔から、私たちの体に活性酸
素を発生させる原因になってきました。
その上、現在では、更に活性酸素を発
生させる原因が増えています。
それが食品添加物や洗剤、化粧品など
に含まれる化学物質であり、大気中の有害物質や放射線などです。これらの原因は、昔に
はなかったものです。
豊富な栄養をとっているにもかかわらず、現代人に病気が多いのは、このことが原因で
はないかと言われています。
ウイルスや細菌は、病気を引き起こす元凶ですが、これも活性酸素発生の原因になりま
す。これらの外敵が入ってくると、白血球が出動してきて外敵を殺そうとします。
このときの武器が活性酸素なのです。白血球が敵の数に合わせて、びったり適量の活性
酸素しか出さなければいいのですが、白血球は外敵を確実にやっつけるために必要量を上
回る活性酸素をつくってしまいます。その余分な活性酸素が、まわりの細胞まで傷つけて
しまうのです。体にとっての異物は、ウイルスや細菌ばかりではありません。
実は、病気を治すために飲む薬や、空気中に存在する有害物質、そして食品添加物や洗
剤、化粧品などに含まれる化学物質も、体にとっては異物なのです。
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このなかには、当然のこととして頭痛薬として使用される市販の鎮痛薬、非ステロイド
性鎮痛薬、エルゴタミン製剤、さらにトリプタン製剤も含まれています。
これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異
物と理解してしまうのです。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸
素が発生してしまうのです。
このように特に、現代の科学や文化の発達が生んだ数々の人工的な要因が、私たちを更
にむしばんでいることが伺えます。
薬や食品添加物の氾濫、農薬の普及、排ガスによる大気の汚染、水の汚染、原子力の利
用による放射線被爆、電気製品による電磁波・・・・・生活環境の変化、破壊はすなわち
体内での活性酸素の大量発生につながっているのです。
昔から受けてきた紫外線にしても、オゾン層の破壊により、増加し続けています。
こうした要因は、ほんの数十年の間に急速に増えてきたものです。
私たちの体の働きは、太古から少しずつつくられてきたものですから、この数十年の変
化にはついていくことができません。
体の中には活性酸素を取り除く働きもありますが、人間のミトコンドリアは、活性酸素
の発生源が今よりずっと少ない時代につくられていますから、新しい要因が生み出す過剰
な活性酸素まで取り除くことはできない状態にあります。
活性酸素をつくり出す原因がこれだけ増え、体の中には対抗する手段が充分にはないと
すると、私たちの体の中には、過剰な活性酸素が存在しているということになります。
- 43 -
これが現代人の体をむしばみ、病気をつくり出しているのです。
食物の豊富な国に住み、快適な暮らしをしているにもかかわらず、現代社会に暮らす日
本人は病気から逃れることができません。
ガンや糖尿病、心臓病などの成人病の発生が増えているのも、昔はあまりみられなか
った喘息や花粉症、アトピーなどのアレルギーが増えているのも、環境の悪化による活性
酸素の増加が原因と考えられます。
日本は長寿大国となりましたが、長寿を謳歌している人の多くは、活性酸素を発生させ
る要因が少ない時代に育っていることを忘れてはいけません。
また、昔の日本人の食事は活性酸素を取り除くために理想的な食事ともいわれています。
活性酸素の発生要因に囲まれ、欧米風に変化した食事をとって育っている若い人や子供
が、長生きできる保証はどこにもないのです。
また、高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあ
いまって、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシ
ダーゼ」、「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、
銅、亜鉛、セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が
抗酸化作用より常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になります。
偏食や過食は活性酸素の発生を加速し、がんや認知症などの疾患にも悪影響を及ぼしま
す。カロリーのとり過ぎは活性酸素の発生量を増加させ、逆にカロリーを制限することは
活性酸素の発生を減少させ、片頭痛を改善させ、老化の進行を抑制します。
さらに、活性酸素の増加させる”環境の悪化”があります。
環境ホルモンとは?
環境ホルモンが問題となりはじめたのは、1980 年頃に世界各地で異常が発見されるこ
とによって、研究がされるようになりました。環境ホルモンは、外因性内分泌攪乱物質ま
たは外因性内分泌攪乱化学物質と呼ばれています。
環境ホルモンという呼び名は、あるひとつの物質の名前ではなく、”生物のホルモンの
働きを狂わせてしまう物質”の総称です。環境ホルモンは、体内の正常な働きをするホル
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モンの働きを壊すことで、様々な異常を引き起こします。
体内の”ホルモンの働きを乱し
”、生殖機能への影響などが心配さ
れている環境ホルモンは、人工的
に作りだされた化学物質で、正し
くは「内分泌攪乱化学物質」とい
います。環境ホルモンの多くは有
機合成化合物で、環境庁が 1998 年
5 月に策定 、2000 年 11 月に改定
した「環境ホルモン戦略計画」で
は、“動物の生体内に取り込まれた
場合に、本来、その生体内で営ま
れている正常ホルモンの作用に影響を与える外因性の物質”とし、疑われる化学物質とし
て 65 物質をあげています。
また、ゴミの焼却の際に生ず環境ホルモンも大問題になっていますが、私たちの周りに
は 医薬品、農薬、食品添加物、合成樹脂、合成洗剤など、人が作りだした化学物質がた
くさんあります。
問題は人体がダイオキシンなど環境ホルモンである有機化合物を受け入れやすく、分解
・排出しにくい点です。そのために体の中に残って害をもたらすのです。たとえば、女性
ホルモンに似た環境ホルモンが体内に入り込むことで、ホルモン本来の働きが乱されるこ
とになります。環境ホルモンは、前立腺ガンとの関係が心配され、免疫力を低下させるの
ではという不安もいわれています。
食物では、アメリカの肉牛や養殖の魚に環境ホルモンの残留が見られますが、これは家
畜の飼料やエサに成長を早める成長ホルモンが混ぜられているからです。
私たちはゴミを出さないなど、身近にできることから取り組み、これ以上環境ホルモ
ンを作らないようにすることも重要ではないでしょうか。
環境ホルモンの原因
環境ホルモンの原因となっているのは、化学物質です。化学物質を大量に摂取している
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とは、誰もが思わないのでしょうが、日々の生活の中で環境ホルモンは、身体の中に取り
込まれているといってもよいでしょう。殺菌剤・防腐剤・殺虫剤・農薬・食品添加物・ダ
イオキシンなど、約 70 種もの化学物質があげられています。さらに、環境汚染された状
態の川や海などからも有害物質が検出されています。産廃処分場の侵出水から、30 種以
上の環境ホルモンが検出されたという例もあります。
環境ホルモンの影響
環境ホルモンは、知能低下・学力障害・注意力欠如・ストレスへの過剰反応・ 拒食症
・強迫神経症・様々な不安症・鬱状態・アレルギーなど、人や生物に、多大な悪影響を及
ぼすことがわかっています。さらに、環境ホルモンの影響を受けている動物の肉などを食
べることも環境ホルモンの影響があります。そして、人間への影響として、キレやすい子
供が増えたことも環境ホルモンの影響ではないか?と言われています。
私たちが、なにげなく食べているジャンクフードには、着色料や保存料といった食品添
加物(化学物質)が大量に入っています。さらに、カップメンやお弁当などの容器や缶ジ
ュースの缶には、化学物質が使われていて、微量ですが、溶け出しています。私たちが、
安全だと思っているものには、実際、多くの化学物質が入っているというのが現状なので
す。しかし、そういったものは、私たちの目に見えるものではなく、見逃してしまいがち
です。
「エストロゲン過剰症」
エストロゲンとは単独の化学物質を示す言葉ではなく、エストロン(E1)、エストラ
ジオール(E 2)、エストリオール(E 3)、エステトロール(E 4)などと、それらと同様の
生物活性を有する化学物質の総称です。分泌源は主に卵巣の卵胞ですが(したがって卵胞
ホルモンとよばれます)、副腎や精巣からも分泌されます。
エストロゲンは「女性をつくるホルモン」で、第二次性徴の発現、子宮内膜の増殖、月
経周期の成立の媒介、乳腺管の増殖分泌促進などの作用がありますが、副腎や精巣でも分
泌されることからおわかりのように、男性の体の中にも存在しているのです。
もちろんエストロゲンは男女ともに必要なホルモンですが、現代ではプロゲステロン(黄
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体ホルモン)やテストステロン(男性ホルモンの一種)との比率が、本来あるべき姿から
逸脱し、エストロゲンが過剰に人体に存在するようになってしまいました。
「エストロゲン過剰症」とは、この状態を示します。
そして、これが次のような、さまざまの病気や症状の原因の一つとなっています。
子宮筋腫・子宮がん・子宮頚部異形成・乳が
ん・前立腺がん・デプレッションや不安・気
分の動揺・いらいら感・不眠・頭痛・疲労・
むくみ・性欲の減退・甲状腺機能障害 の一つ
の症状である手足の冷え・不活発な代謝・生
理不順・PMS・不妊・乳房の圧痛・多嚢胞
性卵胞・喘息、蕁麻疹、湿疹、鼻づまり とい
ったアレルギー症状・加齢亢進、特に腰まわ
りと太ももの脂肪の蓄積・胆嚢の病気
・血
栓の増加(脳卒中の危険性の増大)・低血糖・銅の過剰と亜鉛の欠乏・マグネシウム欠乏
・ビタミンB群の欠乏・閉経前の骨密度低下・骨粗鬆症・全身性エリテマトーデス、橋本
病、シェーグレン氏病といった自己免疫疾患・無精子症や新生児の尿道下裂。
以上のように現代人が罹患する多くの病気にエストロゲン過剰が災いしているのです。
これだけの病気や症状を述べると、いかにもエストロゲンが悪役のような印象を与えて
しまいますが、問題はバランスなのです。もちろんエストロゲンも必要です。しかし、現
代は、男女ともに他のホルモンと比較すると、相対的に過剰なのです。
その理由の一つは、内分泌攪乱物質、つまり環境ホルモンです。
環境ホルモンと考えられるものは、約70種類あるといわれています。
代表的なものは、①ダイオキシン
ェノール
⑥フタル酸エステル
⑩合成エストロゲン
②DDT
③PCB
④ビスフェノールA⑤ノニルフ
⑦有機スズ⑧スチレンダイマー
⑨スチレントリマー
などがあります。
環境ホルモンはビスフェノールA、ダイオキシンの2つを始めとして、殺虫剤、工業廃
棄物、自動車の排気ガス、石けんやシャンプー、ネイルポリッシュ、家具や建材の塗料に
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も環境ホルモンが含まれており、これがエストロゲン様作用を示すのです。
つまり、私たちはエストロゲンの大海に住み、乳飲み子の時から、いやもっと正確にい
うと、胎児の時から過剰なエストロゲンにさらされているのです。
特にアメリカ産の肉には多く含まれており、食事からもエストロゲンが入ってきます。
本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製品・環境ホルモンの摂
取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低下し、子宮収縮が強ま
ります。
デトックス(解毒)の必要性
このように私達の身の回りには「有害物質」に満ちあふれている生活環境におかれてい
ます。このため有害物質に対する対策を考える必要があります。
デトックス(解毒)を行う上での基本的な対策は、次のようにまとめられます。
1.有害化学物質を摂らない、発生させない(薬、飲酒、魚介類、腸内細菌の健全化な
ど)
2.有害化学物質を体内に吸収させずに排出する(食物繊維、硫黄を含む野菜類など)
3.吸収したものは排泄する(皮脂、含硫アミノ酸・野菜、キレート剤、水分不足など)
4.解毒代謝を向上する(ビタミン・ミネラル類、解毒負荷軽減など)
こういったことから、慢性頭痛を改善させるためには「デトックス」が不可欠となりま
す。
デトックスとは
デトックスとは身体の中の毒素を外に出すということです。不要なものは出してしまう
ことが大事なことです。ちなみに便秘になると不快感を感じます。イライラしたり身体が
重く感じたりしますが、快便の時は爽快じゃないですか。またサウナや岩盤浴で汗をたく
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さんかいた時も気持ちいいです。老廃物や毒素を出した時には爽快感を感じるのです。
もちろん毒はなるべく身体に入れないほうがいいのですが、現実的にはとても難しいこ
とです。だからなるべく出してしまうために「デトックス」が必要なのです。
体内の毒素や老廃物を外に出すこと。これは必要なことなのです。
ストレスが続いて血圧や血糖が上がるなど、新陳代謝が低下することで体に必要な栄養
素などが届きにくく、老廃物などの不要なものが、排出しにくい状況になってしまいます。
つまりデトックスができにくい状況になってしまいます。
毎日の食生活で取り入れる食べ物(たんぱく質・脂質・炭水化物・ミネラル・水)で私達
の体が維持されています。その人間の体の 70 %前後は水でできていますが、水の使い方
で体の中の老廃物や汚染物質を流しだすことに大きなヒントがあるのです。
人の体は、日々代謝を行い古いものと新しいものとに交換しています。細胞の数で 5000
億個の細胞が入れ替わるといいます。
その結果、不要物としてたんぱく質や核
酸が分解されて出てくる老廃物や、生命維
持や代謝によって出てくるものなどの有害
物質なのです。
体の不要物質は、血液によって回収され
ますが、血液の循環がスムーズに行われな
いと回収されずに臓器や細胞の働きを邪魔
することになります。
●尿を出しましょう!!・・水分摂取を怠りなく
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尿は体の老廃物を排泄したり、病気を教えてくれたりと人間の体にとって大切な役割を
しています。体に毒素をためず健康体にするためにも、毎日の生活においての解毒(デド
ックス)を心がけが必要です。
基本のデドックス・・・多くの解毒(デドックス)
の中でも基本ともいえるものが、水を飲むというこ
とです。あらゆる代謝は水のある環境下で行われる
ので、水を飲むことで代謝がスムースになり、細胞
が解毒(デトックス)されていきます。
特に、尿から有害物質を排出するためには、尿の
濃度を薄く保つことが必要で、水分が不足して尿の
濃度が高まると、有害物質が溶けずに体内残ってし
まいます。
水をコップでこまめに意識して飲むことです。目安は 1 日 1 から 2 リットルほどです。
ただし、病気で医師にかかっている場合は、水分摂取の注意があるかもしれませんので、
医師とご相談してください。
体のなかのさまざまな化学反応の媒体
浸透圧バランス、pH 調整、血液循環などの、体内で起こるほとんどの作用に水が関係
しています。体温を調節や、栄養素を運んだり、不要なものを排出するのも、水が大きく
関わっています。命の源とも言える働きをしているのです。
大量の水が自分の中を流れ、あらゆる機能を支えていることを考えると、いきいきした
体をつくるのに、水の質が体の良し悪しを左右すことになります。そのためにもよい水を
取りましょう。
ストレスが多い環境下では体内で活性酸素が発生しやすく、さまざまな病気の80%は
活性酸素が関与しているともいわれています。その活性酸素を消してくれるといわれる水
素水が話題になっていますが、世界に奇跡の水といわれる名水もこの水素が多く含まれて
いるそうです。
☆水の可能性に期待して、老廃物のデトックスを心がけましょう!
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●食生活に気をつけましょう。・・食物繊維摂取不足には注意を
沢山尿を出すために、食物繊維やカリウムは、便や尿を出やすくするので、たっぷり取
ることをおすすめします。カリウムの多い食材には、ほうれん草やトマト、リンゴ、にん
にく、人参、海藻など・・・。
要注意!食品添加物の現実
食品添加物には、保存剤、殺菌剤、漂白剤、小麦粉改良剤、合成着色料、合成着香料、
乳化剤などがります。普通の食生活をしていても、私たちは 1 日に 80 種類以上の食品添
加物を食べています。食品添加物の怖さとして、その発がん性が取り上げられています。
摂取されている食品添加物の組み合わせによる害は測定されていません。仮に、食品添
加物自体は、発がん性がないとしても活性酸素となると話が違います。いま、私たちが口
にする食品は、食品添加物のお世話になっていないものが無い程です。
そうした食べ物からも活性酸素が生まれるのです。食品添加物には亜鉛を消費するもの
が多く、亜鉛不足は、活性酸素を打消すSODの効果を弱めます。その結果体内に発生す
る活性酸素の増加が大量に増加することになります。脳内セロトニン産生低下にも繋がり
ます。そのような体内を水でデトックスをしましょう!
4.薬剤による影響
さらに、「ミトコンドリアの働きを悪く
させるもの」があります。それは、まず
「頭痛」のたびに服用する”アスピリン
”を含んだ市販の鎮痛薬であり、片頭痛
・予防薬として使用される抗てんかん薬
のデパケンであり、また風邪などのとき
に安易に使用される抗生物質です。
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ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔、真核細胞生物に入り込んだあ
る種の細菌がその先祖であると考えられています。このように、ミトコンドリアは細菌的
な性質を有していることから、他の細菌類と同じように抗生物質により殺傷される可能性
が高いのです。細菌に近い生物であったミトコンドリアにも少なからずダメージを与えま
す。特に片頭痛の素因のある人は、ミトコンドリアの数がもともと少なく、またミトコン
ドリアの働きが悪いために、その影響を受けやすいのです。
こういったことから、意味のない風邪での抗生物質の服用には注意が必要です。
また、牛肉、豚肉、鶏肉など、大量生産される畜産食品や養殖魚には抗生物質を含むエサ
を用いて飼育されたものが多く、それらを通して抗生物質が摂取されることになりますの
で、これらの食品のとり過ぎには注意が必要です。
また、アスピリン(アセチルサルチル酸)は、肝臓で代謝されてサルチル酸という強い
酸に分解されます。サルチル酸は、ミトコンドリアが代謝物を取り入れる小さな穴を破壊
します。その結果、ミトコンドリアはエネルギー代謝ができなくなり、最終的に死滅して
しまいます。頭痛薬や風邪薬の安易な服薬は、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせま
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す。こういったことから、緊張型頭痛の状態で、アスピリンを含んだ鎮痛薬を頻繁に服用
していますと、片頭痛への移行を早めることになります。片頭痛の段階での服用は、その
鎮痛効果を悪くさせ、結果的に効かなくなります。
また、予防薬として使われる抗てんかん薬のデパケンにもミトコンドリア毒性があり、
要注意です。長期間にわたる服用では、結局何をしているのか分からなくなります。
病気を治すために飲む薬(市販の鎮痛薬や病院で処方される薬剤などすべてです)これ
らのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理
解してしまいます。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で、活性酸素
が発生してしまうのです。このため、過剰に服用した鎮痛薬は異物そのものであり、これ
を解毒するために過剰に活性酸素が発生することによって”ミトコンドリアを弱らせる”
ことになります。
以上のように、長期間にわたる薬剤の服用は、その種類は問わず要注意ということです。
第4章
ミトコンドリアを効果的に増やすには
毎日の生活習慣や運動でミトコンドリアを増
やすにはコツがあります。例えば、ミトコンド
リアは持久力をつかさどる筋肉に多く含まれる
と分かっていますから、筋肉痛にならない程度
の運動を行うことです。ここが一番大切な点で
す。決して無理をしないことです。
<背筋を1分間伸ばす>
まずは、背筋を1分でもピンと伸ばす習慣をつけることです。実はミトコンドリアは筋
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肉の中でも姿勢を保つための筋肉、特に背筋と太ももの筋肉に多く含まれています。背筋
を伸ばすには背中の筋肉を意識して使い続けることが必要で、とても持久力を伴う動作で
す。いつでもどこでも出来ますし、見た目も若々しくなります。
<毎日1分片足立ちをする>
また、毎日1分ほど片足立ちをするのもお勧
めです。例えば体重 60kg の人が普段両足で立つ
ことで 30kg ずつ支えているとすれば、片足立ち
している間、足にはその倍の負荷が加わります。
普段両足で支える体を1分ずつ片足で支えるこ
とで負荷を与え、バランス感覚も鍛えることが
出来ます。
<短時間で効果的な有酸素運動>
有酸素運動の前に汗が出る強めの運動をプラスすることでミトコンドリアを増やし、ダ
イエット効果も上げることが出来ます。有酸素運動とは、ウオーキング、ジョギング、エ
アロビクスなど、「酸素を使って脂肪を燃やす」運動すべてを指します。しかし、通常の
有酸素運動では体が脂肪燃焼を始める「有酸素」状態になるまでに 30 分かかるとされ、30
分以上続けないと効果がなく、効率が悪いのも事実です。また、ウオーキング程度ではミ
トコンドリアを増やす効果はありません。そこで、初めに汗がどっと出るような強めの運
動を行い、「エネルギーの枯渇状態」を作り出すことで、すぐに有酸素運動の状態に入る
ようにします。具体的には、
①
30秒ほど小走りする
②
1分ほど脈が整うまで歩く
③
また30秒ほど小走りする
これを最初に繰り返すだけでミトコンドリアを増やす効果が劇的に高まります。ダンベ
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ルで少し汗ばむくらいの準備運動をしてからウオーキングやジョギングを行うのも同じよ
うな効果があります。
<古来伝わる不自然な動き>
ヨガや太極拳、フラダンスもゆっくりとした動作を繰り返
しながら、ミトコンドリアを増やす運動と言えます。また、
古くから伝わる日本舞踊の動きも実に効果的です。動作がゆ
っくりであるほど姿勢を保つ事は難しくなり、様々な筋肉を
使うことが求められるからです。ともあれ、普段の生活で背
筋を伸ばした「美しい」姿勢を習慣化することから始めてみ
てください。
<寒中稽古、サウナ後の水風呂>
寒い所で運動することもミトコンドリアを増やす効果があることが分かっています。寒
さを感じることによって体は「エネルギーが必要だ」と感じ、ミトコンドリアを増やそう
とします。剣道や柔道などの武芸では古くから寒中稽古が行われてきました。1週間ほど
続けると運動後は体がぽかぽかしてきます。これはミトコンドリアが活性化しているため
です。
寒い所での運動は骨が折れるということでしたら、「サウナでたっぷり汗をかいた後に
水風呂に入る」ことでも同様の効果が望めます。ただ、冬場に体が冷えるのは風邪の原因
にもなるので十分に注意して下さい。
背筋を伸ばす、片足立ちを行う。この二つを習慣化するだけで1週間で体の調子が変わ
ってくることを実感できるでしょう。まずは、ほんの少しの努力でミトコンドリアを増や
す習慣をつけることから始めてみてください。
ミトコンドリア・ダイエットとは?
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「ミトコンドリアダイエット」という言葉を聞いたことはありますか?
まず、「軽い空腹状態で生活すること」。お腹が空くと、体はもっともっとエネルギー
を作り出そうとミトコンドリアを増やします。昼食を我慢するなんてことまでする必要は
なく、小腹が空いたときの間食をやめ、夕飯まで我慢するなどして軽い空腹状態をつくり
ます。一度に食べる量を少なくするというのもいい方法です。間食のカロリー摂取を抑え
られ、しかもミトコンドリアが増えて糖や脂肪が燃えやすくなるのですから一石二鳥です。
そして、「姿勢を保つよう心がけること」。ミトコンドリアが住んでいるのは、持久力
のある筋肉です。片足に体重をかけて「休め」の姿勢をとったり、座ったときに姿勢を丸
めるのをぐっとこらえて、正しい姿勢を維持するように心がけて下さい。見た目にも美し
いですし、姿勢が正しいとお腹周りも普段よりしゅっとして見えます。かっこいい姿勢を
とり続けることが、本当のかっこいい体形へと繋がっていくのを意識してみてください。
さらに、運動でもミトコンドリアを増やせるのですが、これも無理がなくて簡単です。
「30 秒間の無酸素運動と、30 秒間の有酸素運動を繰り返す」ということをすればいいの
です。
例えば、腹筋の姿勢を 30 秒間保ったあとに、足踏みを 30 秒間する......というような感
じです。運動が得意・苦手にも関係なく誰にでもできる方法です。
簡単で無理のないダイエットなので、今まで挫折してきた方にも続けられるはず。ミト
コンドリアに協力をお願いして、若くて美しい体形を目指しましょう。
ミトコンドリアダイエットの方法
やり方のポイントは、「有酸素運動 30 秒」と「無酸素運動 30 秒」をセットにした1分間
のエクササイズを、1日3回行うことです。
しかも、有酸素運動といっても、軽くジャンプするとか、足を上げるなどの、簡単なエ
クササイズです。
また、無酸素運動といっても、腕立て伏せの格好を30秒間保つ程度です。
これらの有酸素運動と、無酸素運動を、わずか30秒ずつを組み合わせた1分間のスト
レッチ体操を、1日3回行うのが基本です。
これによってミトコンドリアが活性化されて、代謝機能の高い体に改善されていきます。
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第5章
片頭痛治療上の食事療法の基本とは
「伝統的な日本食」と「長寿村の食事」をモデルにして、これに近づけていくことが食事
療法の指針になります。ただ単に昔の伝統食を真似るのではなく、現代栄養学の最新の科
学的知識を応用して、伝統食の利点を引き上げた、さらに強力な伝統食でなければなりま
せん。
基本原則は、「健康的な生活と長寿」を目的とするものであり、これはミトコンドリア
の機能改善・ミトコンドリアの働きを悪くさせないことを目的としたものに他なりませ
ん。ということは、片頭痛治療上の食事療法そのものということになります。
このことは、欧米人と日本人の片頭痛との差異を念頭に置いた考え方です。
伝統的な日本食や長寿村の食事を真似てこれに近づけるためには、具体的な食事療法の
指針が必要となります。その指針とは、次の 10 のポイントにまとめられます。
1) 加工食品・インスタント食品をできるだけ減らす
2) 脂肪・油をできるだけ減らす(オメガ3を摂る)
3) 肉・乳製品・卵を摂らないか、ごく少量にする
4) 砂糖をごく少量にする。白砂糖を摂らない
5) 主食を精製度の低い穀類にする。雑穀を加える
6) 豆類を摂る。種子・ナッツ類を摂る
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7) 野菜をたっぷり摂る。果物を摂る。海藻を摂る
8) 魚貝類を少量摂る
9) 発酵食品を常に摂る
10) 食材・調味料は自然で新鮮なものを使う
このような基本的な考え方で「食事療法」は考えなくてはなりません。
「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)を作らないために
前編で述べましたように、片頭痛の根底には「酸化ストレス・炎症体質」が存在します。
「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などによって起こり、特効薬を飲んだ
からといってすぐに治るようなものではありませんし、特効薬などもありません。
「酸化ストレス・炎症体質」を形成させないためには、その根底にある次のような問題を
解決する必要があります。
1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
2)腸内環境を整える
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをよくする
5)インスリン過剰を起こさない
これらを根本的に正さない限り「酸化ストレス・炎症体質」を形成させていくことに
なります。ここからは、それぞれを正しくする方法について説明します。
1)有害物質となるものの摂取をしない
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私達は、知らないうちに「有害物質」
を口にしています。「公害」は過去のも
のではなく、有害物質は海底などに堆積
する形で残っていますし、単位面積あた
りの農薬の使用量の多さ、何でも焼却処
分することから発生する大気汚染などは
そのままです。
最終的に有害物質は、海の生物達に蓄
積され、それを最後に人間が食べています。
私達の体には解毒機能が備わっているのですが、これらの有害物質は代謝されませんの
で体内に蓄積されていきます。その量が限界を迎えると、さまざまな症状となってあらわ
れます。
有害物質となるものは、添加物入りの食品や、
農薬を使った野菜などです。食品には、添加物を
使ったものがたくさんあります。このような有害
物質になるものを体に取り込まないことが大切で
す。現在は、無農薬野菜なども販売されているの
で、うまくそういうものを利用していくことが大
切なのです。さらに、この有害物質となっている
ダイオキシンなどは、しっかりと、水洗いするこ
とや火を通す作業を行うことによって、かなりその量が減少します。これが、環境ホルモ
ンから体を守っていくためにできることのひとつです。
これらの有害物質は、「酸化ストレス・炎症体質」を形成させるものです。有害物質
ゼロが理想です。
2)腸内環境を乱れさせないために
腸内環境を整えるためには
1)肉の多い食事をやめる
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腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を
多く含む食品です。
ハンバーガーなどのファーストフードは悪玉菌が好む
典型的な食事といえるでしょう。
悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、悪臭のする有害物質を作り出します。便秘や
下痢、肌荒れ、腸炎はもちろん、これらの物質が体中に運ばれ、動脈硬化、高血圧などの
病気の原因にもなります。
肉類は悪玉菌の格好のエサです。この点を忘れてはなりません。肉食の多い欧米人の片
頭痛は日本人に比べ、強度なことは、ここに原因があります。
肉の食べ過ぎでニトロソアミンと二次胆汁酸がそろうと、大腸がんのリスクが跳ね上が
ります。
2)食物繊維や発酵食品を摂取する
食物繊維は、便の元となり腸を刺激して便通につながる「不溶性食物繊維」と、腸内で
水に溶けて有害物質を吸着し体外へ排出する「水溶性食物繊維」に分けられます。
不溶性と水溶性の食物繊維をバ
ランスよくとることで、お腹の中
をよりキレイにすることができま
す。
水溶性食物繊維を多く含む食べ
物には、りんご、バナナなどの果
物類、しいたけ、えのきだけなど
のきのこ類、わかめ、こんぶなど
の海藻類があります。
不溶性食物繊維を多く含む食べ物には、大豆、いんげん豆などの豆類、ブロッコリー、
ごぼうなどの野菜類、さつまいも、さといもなどのいも類があります。
この二つをバランスよく摂取しましょう。
善玉菌を増やすにはヨーグルト、漬物、納豆、チーズなど発酵食品を食べることです。
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3)適度な運動をする
運動不足になると、腹筋が弱まり、腸の蠕動運動が弱まって便秘になりやすくなります。
運動をすれば腸が揺れて動きが活発になりますが、強すぎる運動は交感神経を興奮させ
ます。交感神経が興奮すると腸は動かなくなりますので、むしろ軽い運動がいいのです。
過度な運動は逆効果です。軽い腹筋運動や、ウォーキングなどの有酸素運動が効果的で
す。
4)ストレスをため込まない
ストレスがたまると、自律神経のバランスが乱れ、腸の運動が悪くなって便秘が起こり
やすくなります。
健康な腸内細菌を持つ個体は、不安や心配などのストレスが少ないのが普通です。
腸の健康を保つためには、副交感神経が優位となる「リラックスして過ごす時間」をバ
ランスよく確保することが必要になります。
自分に合ったリラクゼーション方法を見つけて、腸内環境を良くしましょう。
5)腸内環境を整える「善玉菌」のヒミツ
女性の大半がかかえているのは便秘の悩みです。便秘になると、腸内に悪玉菌が増殖し
ます。悪玉菌が増えることでさらに便秘は悪化し、負のスパイラルに陥ってしまいます。
そこで、腸内環境を整えてくれる『善玉菌』に注目しましょう!
腸内をクリーンにし
たら、次のステップとしては善玉菌を増やすことが重要なのです。ここでは、善玉菌を増
やしてくれる食べ物をご紹介します。
・その 1:『生きた乳酸菌』を含むヨーグルト
乳酸菌は悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。乳酸菌は体内に存在していますが、加
齢とともに減少してしまいます。しかも、ストレスの多い現代人は、乳酸菌の減量スピー
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ドも速いのだとか。そのために、乳酸菌を含む乳製品を外部から摂取する必要があるので
す。ヨーグルトを朝食べることで腸が 1 日中活発になります!
乳酸菌と言えば、一番に思い浮かぶのがヨーグルトです。でも、先程述べたように”ヨ
ーグルトなら全て OK”というわけではありません。乳酸菌は胃酸などによって死滅しが
ちなので、しっかりと生きて腸に届くものをチョイスする必要があるのです。
・その 2:『植物性乳酸菌』を含む発酵食品
善玉菌の増殖をサポートしてくれる、発酵食品。いま流行りの発酵食品ですが、たと
えばキムチや漬物、味噌、コウジなどが挙げられます。
おなじみキムチなら手軽に植物性乳酸菌チャージ!
これらは『植物性乳酸菌』とよばれるものです。同じ発酵食品でもチーズなどの『動物
性乳酸菌』よりも、生きて腸まで届きやすいという特徴があります。
・その 3:『オリゴ糖』を含む大豆製品
大豆製品には、食物繊維がたっぷり含まれています。
特にオススメなのが納豆ですが、納豆には善玉菌の増殖
をサポートするオリゴ糖も含まれています。
納豆が苦手な方は、豆乳、おからなどでも OK です。
さらに、悪玉菌の増殖を阻害するのに役立つリノール
酸も入っているので一石二鳥!
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腸内をクリーンにしながら、さらに善玉菌を増やして健康な腸へと導いてくれるのでと
ても効率的です。納豆は健康な腸づくりのためにはパーフェクトな食べ物と言えるかもし
れません。
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させるために
1.水を十分に補給しましよう
デトックスするうえで欠かせないのが水です。
腸内の水分不足は便秘が起こる原因とも言われて
います。「それなら水を飲めば解決できる」と安易
に考えてはいけません。大腸に届く水は、飲んだ
量のわずか 10 分の 1 ほどです。便秘解消のために
は、
“1 日 1.5 ~ 2 リットル”を目標にしましょう。
特に、マグネシウムやミネラルを豊富に含むミネ
ラルウォーターがオススメです。
冷たい水が苦手な方はぬるま湯でも OK です。
また、やたらと水をガブ飲みしても、体が冷えて逆にむくみなどのトラブルが起こるこ
とになります。ポイントは、回数を多く、少量ずつ飲むことです。一度に水分を摂取する
より、数回にわけることで、常に腸にも水分がある状態になります。体の冷えが気になる
方は、冷たい水ではなく、ぬるま湯や常温の状態で摂るようにしましょう。
2.食物繊維を十分に摂取しましょう
食物繊維には 2 つの種類があります。海藻類などの腸の善玉菌を増やす『水溶性』と、
さつまいもや大豆製品などに代表される『不溶性』。どちらもそれぞれ、違った効果を持
っています。
さつまいもはヘルシーなおやつとしてもピッタリです!
≪水溶性食物繊維の効果≫
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・血糖値の上昇を防ぐ。
・コレステロールの上昇を抑え、生活習慣病を予防する。
・海藻類に含まれる『アルギン酸ナトリウム』には整腸作用もあり。
≪不溶性食物繊維の効果≫
・腸の運動を促進し、便秘を解消させる。
・大腸を刺激し、スムーズな排便を促す。
3.デトックスからみた食事
デトックス効果が高い食べ物
排泄をスムーズに行うこと、デトックスを助けて
くれる食べ物のことについて述べます。
先程の食物繊維ですが、食物繊維には不溶性と水溶
性の2種類がありますが、特に水溶性の食物繊維は
ネバネバのゲル状になって体内の毒素を吸着して排
出する効果が高いです。不溶性食物繊維は大きく膨
張して腸の働きを活発にして排便をスムーズにして
くれます。
「水溶性が毒素を吸着する」「不溶性が便をスムーズに排泄する」、この二つの特徴がデ
トックスに役立つのです。
■
腸内で毒素を吸着して排出する食材 としては
ごぼう、オクラ、レンコン、こんにゃく、トマト、海藻、玄米
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などがあります。
キレート効果
また、包み込むだけでなく、外に出したい毒素と化学的に結合して、体外への排出を促
してくれる、「キレート作用」がある食品もあります。
包み込むだけだと、また元に戻ってしまうこともありますが、キレート結合された有害
ミネラルは体内で再吸収されることなく尿や便などから排出され、効果的なデトックスが
できます。
たとえば、魚介類や緑黄色野菜に含まれる亜鉛やセレンは 水銀 や ヒ素 に対しての
デトックスを促進しくれることでよく知られますが、ビタミン A、C、E、や含硫アミノ
酸(にんにくやたまねぎに含まれるイオウを含んだアミノ酸)などもデトックス効果が高
いと言われます。
■
血液中の毒素をキレートする食材
にんにく、アスパラガス、ブロッコリー、ねぎ、ほうれんそう、大豆、りんご
などが
あります。
■
肝臓での解毒機能を強くしてくれる食品
たまねぎ、キャベツ、ブロッコリー、にんにく、ダイコン、わさび
など
デトックスを考えるとき、何を食べるかということはとても大切なことです。
一つには、なるべく毒素を体に入れない食事をする。という考え方が大事です。食品
添加物の多そうなもの、加工食品やコンビニのお弁当など、こうしたものはなるべく少な
く済ませられるようにするとか、また、残留農薬などが少なくなるよう、野菜はよく洗っ
て食べるなど、毒素が体に入らない配慮をすることは大事です。なるべく毒素を身体に入
れないということです。
しかしあまり神経質になりすぎることもよくないです。上に書いてあるような食物繊維
が多い食材、キレート効果のある食材を、なるべく増やすようにする、水分補給をしっか
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りするなど、できる範囲の努力をしましょう。
4.活性酸素を除去する食物
片頭痛やさまざまな病気には、活性酸素が深く関わっています。体内で活性酸素が過剰
に発生して体がサビついた状態になることを「酸化ストレス」と呼び、その抑制は片頭痛
改善のために不可欠な要素と考えられます。
フリーラジカルスカベンジャーは、活性酸素の毒消しをする物質です。これを増やすこ
とによって、人体に蓄積された有害な活性酸素を無害化することができます。
活性酸素とは、人間の体に取り込まれて燃焼した酸素からできたものです。本来は殺菌
や消毒作用がある有益なものですが、増えすぎると体内物質を酸化させ、老化や病気の原
因になってしまうのです。
この具体的なことは、後ほど述べます。
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスをとるために
リノール酸(植物油)の摂りすぎによる弊害
唐揚げ・てんぷら・フライに使用される油(リノール酸)は人間にとって必要な栄養素、
必須脂肪酸なのですが、これは摂りすぎ注意です。リノール酸は非常に酸化しやすいとい
う特徴のある油です。
なぜ、油が酸化すると片頭痛に関係するのでしょうか?
過酸化脂質は、コレステロールや中性脂肪が活性酸素によって酸化されてできたもので
す。これらは体内で作られるのです。
過酸化脂質は、てんぷら油を使用後に長時間放置すると、油が酸化して悪臭を放つよう
な油になるのですが、まさにこれが体内で起こっている状態です。
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食べた物の油は体内で酸化すると、
「過酸化脂質」
という非常に厄介なものを生み出してしまいます。
これは、活性酸素を発生させて、体内の細胞を傷
つけたり、過酸化脂質自体が、臓器などの奥底に
侵入して、内臓を破壊・傷つけて行ってしまう、
「不
要物・毒」みたいなものです。
過酸化脂質が作られると血液の流れも悪くなり、
脳内に必要な栄養や酸素が届かなくなりますが、
過酸化脂質の分解が進むことによって、脳内の細胞に、酸素やマグネシウム、カルシウム、
脳のエネルギー源のブドウ糖などがスムーズに供給されるようになり、老廃物も排泄され
やすくなるので、頭痛を引き起こしにくくなります。
われわれが生きてゆくために必要不可欠である酸素は、一方で体内の脂肪を酸化させ、
体に害のある過酸化脂質を作りだすのですが、この過酸化脂質ができますと動脈硬化を促
進し、血管に血栓が生じやすくなったりします。すなわち過酸化脂質は心筋梗塞や脳梗塞
を引き起こすようにも働くのです。
ビタミンEはこの過酸化脂質の発生を予防する他、動脈硬化を防ぐ善玉コレステロール
を増やすように働きます。
ビタミン B2 は、グルタチオンペルオキシダーゼという酵素と一緒に働いて、過酸化脂
質の分解を促進する効果があります。動脈硬化は、高血圧や脳卒中、心臓病などの生活習
慣病の原因にもなるため、ビタミン B2 を摂ることは片頭痛・生活習慣病の予防にもなり
ます。
過酸化脂質の生成を抑えるビタミンEも一緒に摂ると、より効果的です。
片頭痛・生活習慣病のような「酸化ストレス’炎症体質」の人は、体内で過酸化脂質が
生成されやすく、これが活性酸素を過剰に発生させる原因物質となっています。
過酸化脂質が多い体内では、このような細胞の破壊や傷が多く発生し、多くのストレス
が発生しています。
このストレスや活性酸素によって、血管神経周辺が炎症を起こして、痛みを発生させ、
片頭痛を引き起こしていきます。
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さらに、血液がドロドロになって、脂質代謝に時間がかかるので、血液中に溶け出して
いる「遊離脂肪酸」の濃度がいつも高い状態になります。
この状態ではちょっとしたストレスや刺激でも、すぐに反応して血小板が凝集し、活性
酸素の発生が促進されてしまいます。
以上のように、過酸化脂質これらは体内で作られるのですが、それ以上に、そもそも過
酸化脂質を多く含む加工食品などを過剰にとる食習慣のほうに問題があると考えられま
す。
ポテトチップスなどのスナック菓子、インス
タントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、マ
グロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い
油分には注意が必要です。また、新しいもので
もチキンフライなどの揚げ物を電子レンジで加
熱すると、とがった部分や角の部分が過酸化さ
れることがあります。
過酸化脂質を作り出すのは揚げ物だけではあ
りません。
スナック菓子・コンビニ弁当・インスタントラーメン、お惣菜など、油で揚げてから時
間がたっているものは、すでに空気によってかなり酸化が進んだ食べ物です。これらを摂
取することで、なお一層体内の過酸化脂質が発生しやすくなりますので、控えるようにし
て下さい。
植物油(リノール酸)やトランス脂肪酸はなるべく避ける
植物油(リノール酸)やトランス脂肪酸を摂りすぎる生活をしていると、体内での脂質
代謝が充分に行われず、血液中の遊離脂肪酸の濃度が高い状態になる事がわかっています。
この遊離脂肪酸には細胞毒性(細胞を傷つける性質)が強いという特徴があり、血小板
の凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりして、これが「活性酸素」を発生させる原因と
なってしまうのです。
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ただ、通常は血液中のアルブミンというたんぱく質成分と結合して、毒性が弱められた
状態で存在しているので、あまり問題にはならないのですが、リノール酸やトランス脂肪
酸などの「悪い油」を摂り続けていると、このバランスが崩れて遊離脂肪酸の濃度が高く
なってしまうわけです。
そしてこのような状態になると、ちょっとしたストレスなどのわずかな刺激であっても、
片頭痛の引き金になってしまいますので、特に「悪い油」は注意して避けるようにしたい
ものです。
では、具体的にどの様なものが「悪い油」で、「良い油」とはどんなものなのでしょう
か?
精製・加工処理された植物油は「悪い油」
上にあげた低温圧搾で作られた植物油以外の、市販されているサラダ油などの多くは「悪
い油」と言えます。
また、マーガリンやショートニングなどの脂もダメです。
こうした「悪い油」を原材料とする以下のような食べ物は特に注意したいものです。
マヨネーズやドレッシング
植物性ヨーグルト
ケーキ
ビスケットやクッキー
チョコレート
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などなど…
これらの加工食品の成分表を見るとわかりますが、植物油が加えられていない加工食品
はほとんどありません。
そして、これらに使われている植物油は、ほとんどが「悪い油」なので、注意してく
ださい。
では、逆にどのような油をとれば良いのでしょうか?
まず、一般的に安心して使えるのは、オリーブオイルと低温圧搾絞りのごま油、菜種油
ポイントは、「低温圧搾絞り」と言う点です。
これは、コールドプレス製法とも呼ばれ、悪くならないように極力熱を加えず、光を
当てずに絞るだけという単純な製法です。
新鮮な油は、熱でも光でも酸化してしまうので、熱も光もできるだけ避けながらの製
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造がポイントなんです。
そして、一番おススメなのが、亜麻仁油です。
特に必須脂肪酸の「オメガ3」を摂り入れるという意味でも、この亜麻仁油はとてもお
ススメです。
トランス脂肪酸も要注意!
他にもトランス脂肪酸はかなり注意が必要です。
味付きのポップコーン・マーガリン・ショートニング・お菓子パイにはものすごく多く
のトランス脂肪酸が含まれています。マーガリン・ショートニングはダントツに多いです。
トランス脂肪酸の摂りすぎは、血液中の善玉コレステロールを減らして悪玉コレステロ
ールの増加を促し、がんの発生や動脈硬化、心疾患、糖尿病のリスクを高めてしまいます。
トランス脂肪酸は活性酸素と相乗して、体内の細胞を傷つけてしまいます。ですから、
こういうものを普段からよく食べている方は、コレステロールによって肥満傾向になり、
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さらに、片頭痛を引き起こす活性酸素などの発生が非常に多いというわけなのです。
あなたは「植物油は健康に良い」と思っていませんか?
もちろん、植物油の中にも「健康に良い植物油」と「健康に悪い植物油」がありますが、
特にこの「健康に悪い植物油」を摂りすぎると、片頭痛の引き金となる「活性酸素」と「遊
離脂肪酸」を発生させる事につながります。
「健康に悪い植物油」というのは、工業的に精製・加工されたもので、その製造過程で、
副産物として生成される「トランス脂肪酸」というとても危険な有害物質を含んでいます。
この「トランス脂肪酸」は、世界的にも問題になっていて、通称“狂った油”とも言わ
れるほど危険なものです。
このトランス脂肪酸を摂ってしまうと、がんになるリスクが高まったり、病原菌やウイ
ルスに対して抵抗力がなくなると言われています。
また、善玉コレステロール(HDL)を減らし悪玉コレステロール(LDL)を増やすため、
冠動脈性心疾患の発症リスクも高まることがわかっています。
このトランス脂肪酸を含んでいる「悪い油」の代表例としては、サラダ油以外にも次の
ものがあります。
マーガリン
体に良い植物性だからって、バターをやめて積極的にマーガリンを摂っていませんか?
マーガリンは植物性ではありますが、液体ではなく半固形です。実は、これが大きな問
題なのです。
通常、植物性の油は液体です。(なので、「良い油」のオリーブオイルやごま油は液体
です)もともとの液体の植物油を固形にするために使われる、様々な化学薬品が問題とな
るのです。薬品を加えながら加工していく過程で「トランス脂肪酸」ができてしまいます。
ショートニング
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このショートニングについても、マーガリンと同様の理由でおススメできない油といえ
ます。
という事で、「トランス脂肪酸」などの高熱で処理され、人工的・化学的に加工・精製
された危険な油は極力避け、自然の必須脂肪酸を積極的に補うようにしたいものです。
脂質の摂りすぎが片頭痛を引き起こす
あなたが片頭痛になりやすい体質の場合は、特に過酸化脂質を多く含む加工食品を食べ
すぎる事は避けたほうが良いと言えます。
それは、ただでさえ体内で過酸化脂質が生成されやすい体質の上に、さらに食べ物から
も摂り入れてしまうと、完全に頭痛に拍車をかける体質になってしまうからです。
この過酸化脂質は、体内で「活性酸素」を過剰に発生させる原因物質です。
この「活性酸素」が脳内のセロトニン濃度の変化を引き起こし、それが脳の血管の収縮
・拡張を引き起こしているのです。
ですから、片頭痛持ちの場合は特に、この様な過酸化脂質を多く含む加工食品はなるべ
く食べない様にした方が良いと思います。
それでは、具体的に過酸化脂質を多く含む食品とはどんな物があるのでしょうか?
過酸化脂質を多く含む食べ物
ポテトチップスなどのスナック菓子
インスタントラーメン
ピーナッツ
マヨネーズ
スナック菓子にしてもカップラーメンにしても、またピーナッツもマヨネーズも、好き
な人は多いと思います。
何にでもマヨネーズをかけて食べたり、その手軽さのあまりカップラーメンばかり食べ
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てしまうと、ちょっとした事で頭痛を発症してしまう体質になってしまうので、今までの
食生活を振り返って見直してみてください。
大切なのは「オメガ3系脂肪酸」
一般にオメガ6系脂肪酸を摂り過ぎると「酸化ストレス・炎症体質」を形成し、逆にオ
メガ3系脂肪酸は「酸化ストレス・炎症体質」の形成を抑制する働きがあります。
今日の食生活では、オメガ6系脂肪酸は摂り
過ぎとなり、逆にオメガ3系脂肪酸は不足しが
ちです。これは近年急激に摂取量が増えた植物
油に、リノール酸などのオメガ6系脂肪酸が多
く含まれること、さらに私達が主食とする米を
はじめ、小麦やトウモロコシ、そばなどの穀類
の油分にもオメガ6系脂肪酸が多く含まれるからです(オメガ3系脂肪酸の 15 ~ 30 倍)。
当然、片頭痛にならないためには、オメガ3系脂肪酸を含む食べ物を積極的にとるよう
お勧めするわけですが、中でもEPAやDHAを多く含む青魚が有望です。
ただし、ここで注意しておきたいことがひとつ。青魚のうち、ブリやマグロなどの大型
魚には、メチル水銀やダイオキシン類といった環境汚染有害物質を多量に含むものが多い
ということです。小さければ小さいほど、こうした有害物質をわずかしか含みませんから、
目安としては「手先から肘までより小さな魚」であるイワシやアジ、サバなどの小型の青
魚がお勧めです。
また、オメガ6系脂肪酸とオメガ3系脂肪酸の摂取比率は、体質改善当初は[1:1]、
改善後は[2:1]が望ましく、私はシソ油(エゴマ油)や亜麻仁油を日常の食生活に取
り入れることを勧めています。
ところで、もしあなたが花粉症やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギ
ー疾患で悩んでいるのであれば、これまで述べてきた植物油にかかわる注意事項を忠実に
守るだけで、その悩みは解消に向かうことでしょう。
片頭痛の場合には、残念ながらこれだけでは充分な改善効果を実感することはできない
のですが、まずはこの植物油の問題をクリアすることが、片頭痛体質にならないための第
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一歩です。ぜひお試しください。
5)インスリン過剰分泌をさせないためには
いわゆる「酸化ストレス・炎症体質」は食事療法によっても形成を阻止することがで
きるということです。そしてこの食事療法は、片頭痛体質の形成阻止だけでなく、生理
痛、糖尿病、肥満、花粉症・アレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患、高血圧・がん
などさまざまな生活習慣病の体質改善や健康・美容を維持するための最も共通した基本
となる食事の摂り方だということができます。
そこで、誰にでもできる“正しい食事の摂り方”をご紹介しましょう。
その“鍵”となるのが「インスリン」です。「インスリン」は「糖質」や「蛋白質」を
とった際に分泌されます。「脂質」はインスリン分泌を促しません。
蛋白質の刺激によるインスリンの分泌は、糖質の時のように“一度にドッと”という
分泌の仕方ではなく、消化が終わるまでダラダラと長く続きますので、無駄な分泌は少
なく、食事量に見合ったインスリンが分泌されます。
なお、インスリンは血糖値が高くなった時に血糖を下げる唯一のホルモンですので、
血糖を必要以上に上げすぎないことが改善のポイントとなります。
そこで、“一度にドッと”分泌し過ぎないためには、次のように食事を心掛けることで
す。
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ⅰ、単品に近い食事のときは血糖上昇の緩やか食品を選ぶこと、複数の食品の食事で
は血糖が上がりにくい組み合わせにする(インスリンを過剰に分泌させない)
ⅱ、食品の消化・吸収の速度が早くなりすぎないように食事をとる(滞胃時間、食べる
そしゃく
順番、咀嚼時間などで調整する)
ⅲ、血糖を上げない甘味料(難消化性糖質、オリゴ糖など)などを使用する
インスリンの過剰分泌を抑える食事法とは?
糖質は消化されると、ブドウ糖や果糖、ガラクトース(乳糖の一成分)といった最小の単
位まで分解され、体内へ吸収されます。ブドウ糖はインスリンの分泌を強く促し、血糖
値もすぐにあがりますが、果糖やガラクトースはインスリンの分泌を強く促すことはあ
りません。
また、果糖やガラクトースは吸収後に直接エネルギーとして活用されたり、一旦中性
脂肪に変換されたりしたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に放出されるため、
食後すぐに血糖値が上がるということはありません。
食品にはさまざまな種類や量の糖質が含まれていますが、食品によって消化や吸収の
速度も異なってきます。
糖質の中でも消化されやすく、消化したあとにブドウ糖を多く生成するものは血糖の
上昇は大きく、消化速度が遅いものや消化したあとに果糖やガラクトースを多く生成す
るものは血糖をすぐに上げることはありません。
そこで、実際の食事においてどの食品がどの程度血糖値を上げるかを知るために「グ
リセミック指数(GI)」が用いられることがあります。GIはブドウ糖や食パンをとっ
た際の血糖上昇値を基準(100)として、それぞれの食品の数値を相対的にあらわし
たものです。GI値の大きいものほど消化吸収が早く、また血糖の上昇も大きくなりま
す。
また、調理法によってもGI値は大きく変わります。たとえば同じ白米でも、焼き飯
にするとカロリーは高くなりますが、消化吸収に時間がかかるため血糖の上がり方は緩
やかになり、お茶漬けにするとカロリーは低くなりますが、消化吸収が早いので血糖の
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上昇は急激になります。
ですから、同じカロリーになるように計算された食事Aと食事Bを食べても血糖の上
がり方はまったく異なってきます。つまり、血糖値は摂取したカロリーで決まるのでは
なく、さまざまな栄養素の組み合わせや調理の仕方などで決まるということです。
片頭痛を治すためには、インスリンの過剰分泌を抑制して〝錆び体質〟から脱却する
必要があります。そのためにGI値を活用して理想の食事を導き出せばよいのですが、
それは簡単なことではありません。食事の組み合わせは無数にあり、またGI値も調理
法や体調(絶食、運動、休養などにより異なる体内グリコーゲンの蓄積状況など)によ
って変動しますので、あくまで目安にしかならないと覚えておいてください。
また、タンパク質や脂質も消化吸収後すぐにブドウ糖に変換されることはなく、いっ
たんアミノ酸や中性脂肪などに変換されたあと、必要に応じてブドウ糖として血液中に
放出されることになります。
ただし、タンパク質は血糖値を食後すぐに上げる要因ではありませんが、インスリン
の分泌は強く促します。タンパク質のとり過ぎも「酸化ストレス・炎症体質」を悪化さ
せる要因にもなりますので、充分に注意してください。
健康であるための(食後の血糖値を上げすぎないための)、正しい食事方法とは?
「インスリンの過剰分泌を防ぐ→〝酸化ストレス・炎症体質〟からの脱却→片頭痛が
治る」という図式を実現するために、正しい食事のとり方を伝授します。
さて、インスリンを過剰に分泌させないにはどうしたらよいか? ごくシンプルに考える
なら、食べ物がゆっくりと消化吸収されればいいのです。つまり――
◎咀嚼に時間をかける
◎滞胃時間をかける(胃から十二指腸までの移動時間)
◎消化吸収に時間をかける
これができれば、血糖値が急激に上がることは理論上なくなります。しかも、ちょっ
とした工夫でそれが可能なのです。ではご説明しましょう!
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滞胃時間を適正にする!
順番は逆になるのですが、先にこちらの説明をします。
食後の血糖の上昇を左右するのは、じつは食べ物が小腸で消化吸収されやすいかどうか
以上に、胃から十二指腸に送り込まれるまでの滞留時間(滞胃時間)にポイントがあり
ます。たとえば、栄養素では糖質(炭水化物)よりもタンパク質のほうが2倍長く時間
がかかります。一緒にとればその分、血糖の上昇が緩やかになります。
また、脂質に注目すると、一般の油脂に含まれる脂肪酸は分子が大きくなるほど胃の働
きを抑制して滞胃時間を延ばします。分子の大きい肉類の脂のほうが、分子の小さい魚
の油よりも胃の働きを抑制する効果が大きいのです。このように、油脂には血糖を上げ
やすい(GI値が高い)食品と一緒にとると、血糖上昇を緩やかにする働きがあります
(「お茶漬け」よりも「焼き
飯」がその例)。
それは酢酸や乳酸のような
分子の小さな脂肪酸でも同じ
です。酢の物や乳酸飲料、乳
酸食品などを食べると滞胃時
間が延びることになります。
さらに、調理法によっても
変わります。たとえば卵の滞
胃時間は、半熟卵では約1.5時間、生卵では約2.5時間、ゆで卵では約3時間となります。
ジャガイモの場合には、焼きジャガイモにするとブドウ糖を飲んでいるのと同じくらい
の速度で消化吸収されてしまいます。したがって、焼きジャガイモを食べるときにはサ
ワークリームやバターなど、胃の働きを抑える働きのあるものを一緒に食べたり、ステ
ーキなどのタンパク質・脂質の豊富な食品と一緒に食べたりすることで、適正な滞胃時
間に調整することができます。
さらにジャガイモに関していうと、ゆでる、フレンチフライにするといった調理法に
よってもGI値を下げることができます。
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そしゃく
咀嚼に時間をかける!
そしゃく
咀嚼には食物を細かく砕くとともに、食物を選別(魚
の骨など食べられない物を除く)し、飲み込みやすく
するだけでなく、次の効果が期待できます。
・消化液の分泌をよくする
・食欲の中枢神経を刺激し、食べ過ぎを抑制する
・あごの発達や歯を丈夫にする
・大脳を刺激し認知症を予防する
・集中力を高めストレスを緩和させる
・目のまわりの血行をよくし視力低下を予防する
・虫歯や肥満の予防をする
このようなことから、食べ物は大いに噛んでいただくことをお勧めします。
ところで、むかしから、消化吸収には「よく噛んで食べること」が推奨されています
が、じつはやたらと噛めばよいというものでもないのです。
ほとんどの食べ物は空腸(小腸の前半)で消化吸収が終わります。ここまでの時点で
の消化速度を見ると、食物繊維を多く含むもの、糖質を多く含むタンパク質(豆類など)、
アミロースの多い穀類(インディカ米など)、難消化性糖質など、もともと構造的に消化
しにくいものほど消化吸収がゆっくりで、つまり咀嚼の程度にはほとんど関係なく、食
べ物によって最初からある程度決まっています。
そしゃく
咀嚼の程度ではなく、食べ物自体の消化吸収のしやすさで決まってしまうということ
なのです。
ただし、アレルギー皮膚炎やアトピー性疾患などのようにアレルゲンとして未消化物
がとなる可能性が高い場合には、空腸と内容物との接触時間をできる限り短くするため
ごく
にもよく噛む方が極わずかかもしれませんが好ましいのかもしれません。
そしゃく
いずれにしろ、咀嚼に時間をかけるということは、消化吸収までの時間を長くすること
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になりますので、食後の血糖値の急激な上昇を抑えるためにも悪いことではありません。
そしゃく
また、咀嚼に時間をかけるようにするためには、調理の際に
根菜類、肉類などは具材を大きめに切ることや、具材を軟らか
く調理し過ぎないこと、丼ものにしないことなどの工夫をする
と良いでしょう。
利き手と逆の手で食べると早食いを避けることもできます。
そしゃく
結局、食後の血糖の上昇を抑えるには、咀嚼に十分に時間を
かけ(早食いをせず)、糖質(炭水化物)だけの偏った食事に
ならないように、タンパク質、油脂(あぶら)分を考慮した調理・摂り合わせをし、滞胃時
間が短くなり過ぎないようにすることが大切ということになります。
大切なのは、食べても直ぐに空腹にならず、胃もたれもなく、次の食事の時間の30
す
分程度前にお腹がやや空くように、糖質、タンパク質、脂質、食物繊維などを適正に組
み合わせることが血糖の上昇を抑える最良の食事法ということができます。
脂質を多くすると滞胃時間を長くすることができ、食後の血糖の上昇を抑制すること
は出来るのですが、反面、滞胃時間が長くなりすぎると胃もたれなどを起こし、胃疾患
や逆流性食道炎などの可能性を高めることになります。
食物繊維を摂る!
食物繊維には消化吸収を遅らせる作用があります。特に玄米や全粒小麦などの食物繊
維の多い穀類、タンパク質と食物繊維を多く含む豆類は消化吸収を遅らせます。
たとえば、食物繊維を多く含む玄米(含有量約3%)は、食物繊維をわずかしか含ま
ない精白米(含有量約0.5%)よりも消化吸収速度は遅く、食後の血糖上昇は緩やかにな
ります。
食物繊維にはいろいろな種類がありますが、その種類によって生理的な作用も異なっ
ています。特に水に溶ける食物繊維と水に溶けない食物繊維ではその作用が著しく異な
ります。
水に溶けない食物繊維として、セルロース(大豆、ゴボウ、小麦ふすま、穀類などに
- 80 -
含まれる)、ヘミセルロース(小麦ふすま、大豆、穀類、野菜類など)、リグニン(小麦
ふすま、穀類、完熟野菜類など)などがあります。
水に溶ける食物繊維としては、
ペクチン(リンゴやみかんな
どの果物、芋類、キャベツや
大根などの野菜類など)、ヘミ
セルロース(コンブやワカメなどの海藻類など)、ガム質(大豆やカラス麦などの麦類な
ど)などがあります。
水に溶ける食物繊維は一般的に膨潤性が高く吸着作用があり、水に溶けると粘りけが
強くなりドロドロになるなどの特徴があります。
そしゃく
一般に食物繊維の多い食品は噛み応えがあるため、咀嚼に
そしゃく
時間がかかり咀嚼力が向上するとともに食事時間が長くなり
ます。
食物繊維は胃に入ると唾液や胃液を吸収して膨潤し容積を増し、小腸においてもさらに
水分を吸収して膨潤し、小腸内容物の容量を増やすとともに、ドロドロの状態にしま
す。
内容物の容積が増すと、その中に含まれている糖質は希釈されますので、消化・吸収
は緩やかとなり、血糖の上昇も緩やかとなります。
一方、水に溶けない食物繊維は有害な物質と結合したり、有害な物質を吸着する作用
がありますので、カドミウムやPCB、ダイオキシン類などの環境汚染物質やタール色
素、食品添加物などの有害物質の体内への吸収を防ぐことができます。
水に溶けない食物繊維は有害な二次胆汁酸や酸化コレステロールなども吸着し排泄す
ることができますので有害物質の排泄に適しています。
しかし、摂りすぎは同時に有用なミネラルや油溶性のビタミン類なども排泄すること
は覚えておかなくてはいけません。
食物繊維は体内の消化酵素では消化されないため、小腸を通過し大腸に到達します。
大腸では食物繊維の一部は腸内細菌によって発酵分解を受け(水に溶けない食物繊維
は発酵を受けにくく、水に溶ける食物繊維であっても海藻類はほとんど発酵されません)、
酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸のほか、炭酸ガス、水素ガス、メタンガス
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などに代謝されます。
生成された酢酸やプロピオン酸、酪
酸などの短鎖脂肪酸の一部は腸内細
菌自体の増殖にも利用されます。
一般的に、小麦ふすまなど水に溶け
ない食物繊維は便の量を増す効果(便
秘解消効果)はありますが、血清コ
レステロール濃度を顕著に低下させ
るほどの効果は認められていません。
逆に、グアーガムやペクチンなどの
水に溶ける食物繊維は血清コレステロール濃度を効果的に低下させることはできますが、
顕著な便秘改善効果は認められないことが多いようです。
食べる順番を考える!
全く同じ食事をとっても、食品の食べる順番によって食後の血糖が上昇程度は異なる
ことをご存知でしょうか?
食べたものは胃などの消化器官内で一部は混合されますが、胃から先では原則的に「先
に入ったものは先に出て行く」ため、先に食べた順に、十二指腸、小腸へと進みます。
そのため、糖質(炭水化物)だけを先に食べると、食後の血糖は上がりやすくなりま
すし、逆に食物繊維の多い食品や脂質の多い食品などを先に食べると、食後の血糖上昇
は緩やかになります。
ご飯の前に酢の物を食べる、パン食には牛乳やヨーグルトを一緒にとる、でレッシン
グのかかった野菜サラダなどを先に食べるといったことも、食後の急激な血糖上昇を抑
えるのにはよい方法です。
「カロリーが同じであれば、食べてしまえば同じこと」にはなりませんので、日頃より
消化吸収速度を考えた食べ方(順序)に気を配ることも血糖の上昇を緩やかにするため
には大切です。
食べる順番の違いが、中性脂肪の溜まりやすさや基礎代謝にも影響を与えることにも
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なります(ダイエット効果に影響する)。
さ さ い
勿論、食事中は些細なことは気にせず、楽しく、美味しくいただくことが第一優先で
あり、大原則ではあるのですが。
・難消化性糖質、オリゴ糖などの甘味料を使用する!
砂糖や麦芽糖(水あめの成分)、ブドウ糖などの甘味料
は血糖値を上げやすく、インスリン分泌を強く促します。
果糖はインスリン分泌の刺激は小さいものの、中性脂
肪になりやすく、内臓脂肪として蓄積されやすいという
特徴があります。
私のお勧めは、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化
性糖質です。甘味充分にあり、胃や腸の消化酵素によっ
てブドウ糖などへ消化されることがなく、インスリン分泌を促進しないからです。
また、これらの難消化性糖質が大腸に到達し腸内細菌により発酵されるときに生成す
る酢酸などの短鎖脂肪酸がインスリン分泌を刺激することもありません。
そのため、オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質を摂取しても血糖が上がるこ
とや血中インスリン濃度が上がることはありません。
ところで、血糖を上げない甘味料といえばサッカリンやパルスイートなどの合成甘味
料もあります。これらの甘味料は安全性などに疑問が残されていることや、天然に存在
しない化学物質であることから、私はお勧めしていません。
難消化性糖質であるフラクトオリゴ糖は、健常者がとっても血糖値ならびに血中イン
スリン濃度に全く影響を与えることはありません。
難吸収性のキシリトールやソルビトールも同様な傾向を示します。また、吸収はされ
ても体内で代謝されずにそのまま尿中に排泄されるエリスリトールも同様です。
難消化性糖質は小腸で消化・吸収されることなく大腸に達し、腸内細菌(善玉菌)のエサ
となります。
善玉菌であるビフィズス菌などの勢力が優勢になると、病原菌の増殖が抑制され、さ
まざまな感染症の発症が抑えられる可能性が高まります。また、難消化性糖質が醗酵・
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分解されるときには、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が生成されますから、
酸に弱い腐敗菌や病原菌などの悪玉菌が抑制されることになります。
また、これらの短鎖脂肪酸は、全身のエネ
ルギーとしての利用や、腸壁細胞の新陳代謝
ぜんどう
を促進し、大腸の蠕動運動(ミミズが這うよ
うに腸の収縮が連続する運動)を促進し、便
秘の改善にも寄与します。
また、悪玉菌が減少すれば、インドールや
スカトール、フェノール、アンモニア、硫化
物など腐敗物質の生成が少なくなり、肝臓で
の毒性物質代謝負荷が軽減されることや発癌
・老化促進物質などの内因性有害物質の生成が抑制されることになります。
同時に、糞便や腸ガスの悪臭も改善されます。
また、フラクトオリゴ糖をとることより血液中の中性脂肪が低下し、血清コレステロ
ール濃度が低下するという報告もあります(プロピオン酸の作用)。
難消化性糖質を摂取すると、腸管内pHが低下しカルシウムや鉄などの金属イオン吸
収が促進されるという報告もあります。
オリゴ糖や糖アルコールなどの難消化性糖質は砂糖のような甘味料としての強い刺激
はありませんが、甘味料としての役割は十分に備えていますので、砂糖との併用を含め
日常的に用いることが好ましいでしょう。ただし、急に摂取量を増やしたり、摂りすぎ
ゆる
るとお腹が緩くなったり、ガスが多くなることがあります(健康上に悪いことではあり
ませんが)。
片頭痛での食事療法でとくに注意すべき事項を述べることにします。
1.マグネシウムの補充
マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋が
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ることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。このため、片頭痛改善・
予防のためにはマグネシウムの補充は治療の要(かなめ)となっています。ちょっと油断
すれば、すぐにマグネシウム不足が起きてきます。このことは前編でも述べました。
●マグネシウムを多く含む食品
玄米によるご飯
100g中
白米によるご飯
10 0 g中 4 0 mg
米、麦こうじ味噌
100g中
豆こうじ味噌
100g中
アーモンド
30g中
カシューナッツ
干しひじき
納豆1パック
かき
80mg
130mg
87mg
30g中
国産大豆 30g中
落花生 30g中
48mg
72mg
66mg
60mg
10g中
54mg
100g中
70g中
100mg
50mg
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ほうれん草
70g中
50mg
いんげん豆
30g中
かつお
100g中
青のり
あずき
とうもろこし
3g中
45mg
40mg
40mg
30g中
36mg
1本120g中
枝豆
50g中
バナナ
100g中
35mg
35mg
34mg
食品から摂取するのが一番ですが、より確実に補充していく場合は「マグネシウム原液」
を作成され、これで必要量を的確に補充する方法があります。
以下は、分子化学療法研究所の後藤日出夫先生の考案されたものです。
マグネシウム原液の作り方
マグネシウムの原料は、スーパーでニガリ(200円/100cc)を求めるか、薬局
で「塩化マグネシウム」(500g/1本、1000円~1200円)を買い求めることで
す。豆腐屋で用いる20 Kg 袋を買って(4000円程度です)つくるのは量が多すぎて
現実的でないため、薬局で「塩化マグネシウム」(500g/1本、1000円~1200
円)を買い求めるのが適当と思われます。
具体的な”マグネシウム水溶液”の作り方です
2リットルの空きペットボトルの1.2リットルのところにマジックインクで線を入れて
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おきます。
漏斗等を用い塩化マグネシウム粉末 500 gをペットボト
ルに入れます。
塩化マグネシウムはネット通販で買いましょう。
( 薬局で入手できにくい地域もあります)
加熱後冷却水か市販の飲料水を1.2リットルの
線近くまで入れます。
ペットボトルに栓をし、よく振って溶解させます。
(その後、静置し正確に1.2リットルになるよう水を追加しま
す)。
以上で完成です
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これを、もっと簡略化させたものが、「マグネシウム液」です。
「マグネシウム液」は、「万能健康ジュース」の材料に登場する「50 mg マグネシウム原
液」をちょっとアレンジしたものです。作り方はすごく簡単です。81)
材料
水
75
cc
塩化マグネシウム
ビタミンC
100 g
3g
作り方
水に塩化マグネシウムとビタミンCをよく
かき混ぜて溶かして完成! あとは冷蔵庫で
保存して下さい
マグネシウム水溶液の飲み方
[飲み方の基本]
500cc の水に小さじ 1 杯程度のマグネシウム水溶液を入れて飲みます。
[味付けの工夫]
上記の様に水で薄めるだけで、マグネシウム不足を補う事ができますので、効果的には
これで問題ないのですが。このままでは苦くて飲めないと思います。
味付けを工夫して楽しみながらマグネシウムを摂取するのがよいのです。クエン酸と
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ビタミンCを 1 gずつ入れて飲む事をオススメしています。こうする事によってレモン水
の様な味になり、味のバリエーションが増えます。もう一つのオススメは、クエン酸、ビ
タミンCの他、さらに「ハチミツ」を加えることです。甘味が出るので美味しく頂けます。
[実際に飲むタイミング]
(1)片頭痛の前兆時に飲む、
(2)日頃の”水分補給時”に飲む
この 2 点です。
これを行うためには
(1)先程説明した[飲み方の基本][味付けの基本]を元にできたものを、ペットボトル等
に詰めて常に携帯し、必要に応じて飲むようにします。水分補給とかねて・・
(2)もしくは、原液の状態(小さじ 1 杯あたり 500 gの水に希釈しない状態)
のマグネシウムを小さな小瓶(弁当に入っている醤油挿しの様なもの)に詰めて携帯し、
出先で必要に応じて水に薄めて飲む。頭痛がきそうな予感がしたときに服用します。
この 2 種類の方法をオススメしています。
これらはあなたの生活スタイルに合わせて、やりやすい方を実行して頂ければOKです。
このように、マグネシウムを原液として、万能健康ジュースにも使用できますし、スポ
ーツドリンクなどの代わりに、500ml の水(ペットボトル)に 2 ~3cc入れて飲むのも
OK。また、ご飯を炊くときに少し入れるのもいいと思います。
塩化マグネシウム(粉末)はドラッグストアなどでは手に入れにくいので、ネットで購
入するのがいいでしょう。市販のニガリ(水溶液)でもよいのですが、ちょつと割高にな
ります。お豆腐屋さんでもらえるとラッキーですね。
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以上のように、慢性頭痛を改善させるためにはマグネシウムの補充がいかに大切かが理
解されたことと思います。
問題は、日常生活を送る際にちょっとしたことがマグネシウム不足を引き起こすことに
なりますので、注意が必要になってきます。
特に生理痛でお悩みの方々、さらに月経時の片頭痛に悩まれる方々はこの点を念頭にお
く必要があります。
サプリメントを飲んでもマグネシウム不足は解消されません
マグネシウム不足を解消するのが目的ならば、市販のサプリメントでマグネシムを補え
ばよいのでは??と思われる方が多いかと思うのですが、残念ながらサプリメントではマ
グネシウム不足を解消するのは難しいです。
なぜならばマグネシウムは大量の水で希釈しないと体に吸収されないからです。サプリ
メントでマグネシウム不足を解消しようと思ったら 2 リットルくらいの水と一緒に飲まな
いと効果はありません。サプリメントを 2 リットルの水で飲むなんてとても現実的ではあ
りません。そこで確実&簡単にマグネシウムを摂取する手段として、この「マグネシウム
水溶液」が考案されました。多くの方々はサプリメントで代用されようとされますが、全
く効果はありません。このことが一番大切なことです。
2.鉄分の重要性と補充の必要性
鉄分不足の貧血が片頭痛を引き起こす!?
鉄は体内で以下のような様々な重要な役割を果たしています。
1.鉄は赤血球の重要な構成要素として酸素の運搬に関わっています
全身の細胞へ酸素を運び、蓄えます。
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・酸素の運搬
:
赤血球のヘモグロビン
・酸素の備蓄
:
筋肉細胞のミオグロビン
2.エネルギーを生み出す
ミトコンドリアで ATP を産生します。ATP は細胞の中にあるミトコンドリアで作られ
ます。そして、ミトコンドリアの中には鉄が保存されています。
たとえば、過度なダイエットなどで鉄分が不足すると、ミトコンドリアに蓄えられてい
た鉄が使われて減っていきます。
鉄が減れば ATP を充分に作れなくなるので、体温を維持することができず、冷え症が
起こってくるのです。鉄不足がもっと進むと貧血になりますが、冷え症はその前に起こる
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現象です。
電子伝達系があるミトコンドリア膜には鉄は必須なのです。すなわち、鉄不足があると、
ATP 不足と乳酸蓄積を生じます。ミトコンドリアはチトクローム系酵素「ヘム酵素」を
含みヘム鉄が材料のため、ミトコンドリアの多い臓器は鉄の赤い色をしています。貧血や
鉄欠乏貧血など鉄の不足があると、TCA サイクルや電子伝達系での反応が進みにくいた
め、エネルギー不足で疲れやすい、強い冷え症などの症状が発現し、また脂肪が燃えにく
くなります。鉄は、ヘモグロビンの材料になるだけではなく、各細胞のミトコンドリアに
おけるエネルギー代謝の触媒のような働きをします。
3.活性酸素から体を守る
抗酸化酵素(カタラーゼ・SOD)の補因子として働きます。
カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシターゼなどの抗酸化酵素の構成要素となって活
性酸素の消去に関わっています。
4.コラーゲンの合成を助ける
酵素シトクロム P450 は鉄を補因子として、ビタミン C を補酵素としてコラーゲン特有
のアミノ酸 (ヒドロキシプロリン・ヒドロキシリジン)を合成します。
5.有害物質の排泄を助ける
肝臓に多い水酸化酵素シトクロム P450 の補因子として、水に溶けやすく排泄されやす
い形に換えます。ミトコンドリア内でシトクローム酵素の構成成分として ATP の合成に
重要な働きを負っています。
6.神経伝達物質(脳内セロトニン)の産生に関わっている
鉄分が不足すると、ヘモグロビンが充分に作られないので、貧血が起こります。貧血が
起こると、脳内にも酸素や栄養素がしっかりと届かなくなるため、充分なセロトニンを合
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成することもできなくなります。
鉄分は実はセロトニンなどの神経伝達物質を作るときの酵素を助ける「補酵素」として
機能しているため、鉄分が充分潤っている体内ではセロトニンがスムーズに作られますが、
鉄分不足だと、セロトニンの生成自体が出来なくなるわけです。
つまり、セロトニンの合成には、トリプトファンとビタミンB6とマグネシウムとナ
イアシンが必要!であり、実は「鉄分」も必要なのです。
トリプトファンというアミノ酸からセロトニンができる過程や、チロシンというアミノ
酸からドーパミンができる過程で、鉄が必要になってくるのです。
片頭痛持ちの人は、鉄欠乏性貧血になると頭痛が増え、頭痛の強度が増強してきます。
以上のように、食事の問題は慢性頭痛を引き起こす最大の要因になってきます。
特に、片頭痛へ移行させないための必須の項目になります。
鉄不足はエネルギー不足と心得ましょう
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鉄については新しい認識として「鉄不足=貧血」ではなく、
「鉄不足=エネルギー不足」
だと思って下さい。というのも鉄はエネルギーを作り出すうえで欠かせない成分なので、
鉄が不足するとエネルギー不足になります。
その結果、元気もでませんし、疲れやすいし、体温も上がらないので冷え症にもなりや
すくなります。体のすべての機能が低下してしまうのです。
鉄不足の影響が体のどこにでるか、どういった症状であらわれるかは人それぞれなので
すが、いわゆる女性特有のトラブルといわれるものの背景には鉄不足が関わっているケー
スが多いということは覚えておくと良いと思います。
実際に、不正出血だったり、鉄を摂取したところ便秘が改善したというケースもある
のです。この例は筋肉を収縮させる働きもする鉄分を補ったことで、子宮の筋肉がきちん
と収縮するようになったこと、腸の蠕動(ぜんどう)運動が正常化したと考えられます。
今現在、体の調子がいまいちすぐれないとか、年齢のせいかな?と思う衰えを感じて
いるようなら、まずは鉄を補給するようにしてみてください。病院に行くのはそれからで
も良いと思います。
鉄欠乏性貧血とは?
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貧血にはいくつかの種類がありますが、女性に多いのは、体内の鉄分が不足して起こる
鉄欠乏性貧血です。鉄分の摂取不足、鉄の吸収が悪い、出血により鉄の補給量より排出量
が多い、などが主な原因です。
女性は月経の出血により鉄分が少しずつ失わ
れていくことで鉄欠乏性貧血になる人が多く、
20 代、30 代、40 代と年齢が高くなるにつれて
貧血の人が増える傾向があります。40 代になる
と女性の約3割が貧血になっています。
体内で鉄が減少すると、貯蔵鉄であるフェリ
チンが使われ減っていきます。フェリチンが不足すると血液中の鉄分も徐々に不足し、最
後にヘモグロビンが減少し貧血が起こります。治療では、体内に貯蔵鉄がどのくらいある
かを調べることがポイントになります。
動悸、息切れ、疲労感、めまい、頭痛、顔面蒼白、むくみ、氷がガリガリ食べたくな
る、爪がもろくなるなど症状は多彩です。
貯蔵鉄のフェリチン、理想値は 100 ~ 300
で、男性の 99.9 %はフェリチン 100 以上で
す。 50 歳以上の女性の 80%はフェリチン 100 以上です。
しかし、15 ~ 50 歳女性の 80%はフェリチン 30 以下の鉄不足で、40%はフェリチン 10
以下の深刻な鉄不足です。
鉄不足だと電子伝達系の機能が低下し、充分な ATP が産生できません。このため 鉄不
足の人はどんなに暑くても汗をかけません。
カフェインの作用として
カフェインは鉄分の吸収を阻害しますので、貧血気味の女性、貧血の人は、せっかく他
で鉄分を補ってもカフェインのせいで鉄分吸収がうまく行われないことがあります。
その他にも体から亜鉛、カリウム、カルシウムなどのミネラル、ビタミンCやB群を
奪うことが知られており、このためエネルギー代謝を始め、多くの代謝に支障がでます。
またカフェインの過剰摂取(1 日 300mg 以上)はホルモンバランスを崩しますので、こ
ちらも様々な影響を及ぼします。
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コーラ類や紅茶にはインスタント・コーヒーと同じくらいカフェインが含まれています
し、緑茶、ココア、チョコレートなどにも含まれます。市販薬に多量のカフェインが含ま
れているケースもあります。
知らず知らずのうちに、自分が思っている以上にカフェインを摂ってしまう状況があり
ます。有効な部分ももちろんあるのですが、摂りすぎには注意した方が良い成分、という
ことです。
その良い例が、カフェインは頭痛を抑える働きがあるのですが、飲みすぎると逆に頭
痛を引き起こす、という作用です。
うまく摂り入れると良いのですが、過剰になると毒となります。注意したいものです。
何でもそうですが、偏った摂り方に良いことはありません。
片頭痛とカフェイン摂取と鉄補充の有用性
カフェイン摂取制限と採血で貧血を指摘された片頭痛患者さんに対し、積極的にカフェ
イン摂取制限を行い、さらに鉄欠乏性貧血に対し治療を行った際に症状の軽減がみられま
した。 (済生会松山病院
脳神経外科・神経内科
日本頭痛学会総会
2010)
鉄が大事だと思えば普段から食事の中で症状が出ていない人でもなるべく鉄を摂るよう
にしていきましょうという風に考えて頂きたいと思います。その時の鉄、食べ物で言えば
やはりレバーです、それからお肉の赤身です、レバー嫌いな人はお肉の赤身でいいですか
らそれをしっかり摂って下さい。そしてひじきにも入っていますが、少ないのでひじきだ
けで鉄をまかなうのはかなり難しいです。小松菜、ほうれん草に至っては鉄分が非常に少
く、農薬を使っていますのでこれで摂るのもかなり厳しいです。バケツ 1 杯とか 2 杯とか
のほうれん草を食べると賄えるかもしれませんがちょっと考えただけでも食べたくないで
す。それよりはお肉の赤身ということになってきます。
3.抗酸化食品をしっかり摂取する
抗酸化作用のある野菜や果物などの食品・食べ物
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アントシアニン(ブルーベリー・カシス)、ケルセチン(そば)、ルチン(そば)、カテ
キン(お茶)、イソフラボン(大豆)、カルコン(明日葉)、クロロゲン酸(コーヒー豆)、
ロズマリン酸(シソ)、ゴマリグナン(ゴマ)、クルクミン(ウコン)、タンニン(お茶)、
スルフォラファン(ブロッコリー)、βカロチン(緑黄色野菜)、リコピン(トマト)、カ
プサイシン(唐辛子)、アスタキサンチン(鮭・イクラ)、ルテイン(ケール・ほうれん
草)、フコイダン(海藻)、βグルカン(キノコ)、ペクチン(リンゴ)、テアフラビン(紅
茶)
■
体内の活性酸素を除去する食品をまとめてみますと・・
ビタミンA:ニンジン、ほうれん草、卵黄、牛乳、バター
ビタミンC : ブロッコリー、小松菜、ピーマン、トマト、イチゴ、緑茶、ジャガイモ
ビタミンE:大豆、落花生、しじみ、うなぎ
βーカロテン : ニンジン、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、ニラなど
ポリフェノール : 赤ワインなど
リコピン : トマトなど
スルフォラファン : ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなど
メラノイジン : みそ、しょうゆなど
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抗酸化物質のほとんどは、日ごろから食べている野菜や果物に含まれています。
つまり、日ごろから、好き嫌いなく、バランス良く積極的に野菜や果物を食べていれば
不足することはないと考えられます。
しかし、一人暮らしの方や外食が多い方などは野菜不足になりがちです。
また、高カロリー・高脂肪な肉食中心の欧米型の食事は、体が酸化しやすいため、活性
酸素の攻撃を受けやすいと考えられます。
少しずつ食生活を変え、上手に抗酸化作用があるサプリメントを取り入れて、活性酸素
を抑えましょう。
強力な抗酸化作用を発揮する CoQ10。
抗酸化酵素だけでは生体脂質の酸化を防ぐことはできません。そこで登場するのがビタ
ミン E、CoQ10、ビタミン C、カロテノイド、ポリフェノールなどの抗酸化物質です。
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脂質の酸化を防ぐために生命が創り出した物質がビタミン E ですから、これが一番重
要です。しかし、条件によってはビタミン E はかえって脂質の酸化を促進することがわ
かっています。これを防ぐには、酸化抑制の過程で生成するビタミン E ラジカルを還元
する必要があり、ビタミン C と CoQ10 がその役を担っています。特に、同じ脂溶性の
CoQ10 の重要性が最近の研究から明らかにされてきました。結局、生体脂質の酸化を抑
制するためには、ビタミン E と CoQ10 とビタミン C がよいチームワークを組む必要があ
るのです。
生体が酸化ストレスにさらされたときに最初に減少するのがビタミン C と CoQ10 であ
ることは強調しておきたいと思います。ご存じのように私達はビタミン E とビタミン C
を体内で合成することはできませんから、食品等から摂取する必要があります。一方、
CoQ10 は体内で合成できますが、肉・魚などの食品に含まれていることも確かです。
第6章
ミトコンドリアを活性化する9つの習慣
片頭痛治療上大切な点は、生まれつき「ミトコンドリアの活性低下」が存在しますので、
これを、いかにして活性化させるかがポイントになってきます。
以下は、ミトコン瀬名のブログ「ミトコンドリアのキモチ♪」からの引用です。
はじめに
ミトコンドリアとは、細胞の中にある小器官(オルガネラ)です。
人間の体の中には 60 兆個の細胞があるといわれていますが、その細胞、ひとつの中に
ミトコンドリアは50~ 50 万個、平均で2000個近いミトコンドリアがいます。
このミトコンドリアが何をしているのかと言うと細胞や器官を動かすエネルギー、ATP
と呼ばれるエネルギーを作っています。
一般にエネルギーというと石油や灯油を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、 石
油や灯油とは違い、ATP は貯めてとっておくことができません。
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作った瞬間使われてしまうので、保存がきかないのです。
だから、私たちのからだの中でミトコンドリアが毎日毎秒、エネルギーを作るため働い
ていいます。さすがのミトコンドリアも毎日働きづめだとだんだん衰えてきます。
だから、加齢とともにミトコンドリアの数が減ったり、生産性が落ちたりするのです。
それと、もうひとつ、ミトコンドリアは細胞の代謝を指揮しています。
ミトコンドリアが衰えてくると新陳代謝がうまくいかなくなり、古い傷ついた細胞が残
るので病気の原因になるともいわれています。
一般的には、女性では 40 歳のちょっと手前あたり、男性は厄年である 42 歳あたりから、
ミトコンドリアの数は急速に減っていくと言われているので、アラフォーになったら
あ
なたも注意が必要です。
このように、ミトコンドリアを知ることは元気と健康の源を知ることであり、誰しもが
持っているミトコンドリアに注目することは、自分自身のカラダに目を向けることです。
自分を大切にし、からだの症状に目を向けていると、自然に自分のココロの声もきこえ
てくるようになります。
さらにミトコンドリアがすごい のは、このミトコンドリアはいくつになっても、増や
すことができる点です。しかも、その方法は誰にでも簡単にでき、一切お金がかかりませ
ん。それを、私は「ミトコンドリアを活性化する9つの習慣」とまとめ、皆さんに紹介し
ています。
ミトコンドリアはからだを動かすエネルギーをつくったり、細胞の新陳代謝を指揮して
います。
だから、ミトコンドリアの数が減ったり、生産性が落ちると、疲れやすくなったり、
老け込んだり、あるいは病気の原因になったりするのです。
ミトコンドリアは誰しも持っていますが、加齢とともに数は減っていきます。
しかし、嬉しいのは、ミトコンドリアはいくつになっても増やすことができるというこ
とです。
そのミトコンドリアを増やすための行動は、誰でもできる簡単なことであり、しかも、
- 100 -
それをやるのにお金はかかりません。
私は、これを「ミトコンドリアを活性化する9つの習慣(通称ミトナイン)」と名づけ、
皆さんに知っていただきたいと思っています。
なぜなら、ほんのちょっとしたことを知るだけで、あなた自身の生活が、からだイキイ
キこころワクワクしてくるからです。
第1の習慣は「朝陽を浴びる」ことです。
できれば、紫外線が強くなる前の時間帯、日の出から 8 時までの間が良いでしょう。
時間は 5 分~ 15 分ほどで構いません。
両手を広げ、全身で朝陽を浴びてみましょう。
外に出るのが苦手な方は、カーテンを開け、部屋の中でも構いません。
全身に光を浴びることを意識し、できれば「気持ちいい~」と言葉に出してみましょう。
それだけでミトコンドリアは活性化します。
なぜ、朝陽でミトコンドリアが活性されるかと言うと、ミトコンドリアも細胞の核と同
様、遺伝子をもっていますが、その遺伝子のスイッチの引き金となるのが「光」と「酸素」
だからです。
そもそも地球上のほとんどの生物は太陽のエネルギーなくては生きていけません。
太陽の力というのは偉大です。この自然の恵みを全身に浴びることで、ミトコンドリア
の遺伝子のスイッチがオンになると同時に、脳の中では、視交叉上核(しこうさじょうか
く)というところが反応し、体内時計 がリセットされます 。
体内時計とは、私たち自身のからだ、臓器や器官がそれぞれもっている時計で、地球の
自転(24 時間)とは 1 時間ずれ、体内時計は 1 日 25 時間といわれています。
この時間を調整し、地球の自転とあわせてくれているのが朝陽なのです。
体内時計は25時間といわれています。
だから、放っておくとリズムが崩れ、生活リズムが乱れていきます。
そのリズムをもとに戻すキーワードが「朝陽」なのです。
- 101 -
また、太陽の光は、脳の中にある視交叉上核から松果体を刺激し、セロトニンやメラト
ニンというホルモンをつくってくれます
このふたつのホルモンは、ミトコンドリアの天敵「活性酸素」を除去する働きがありま
す。
メラトニンは睡眠ホルモンとして、セロトニンは心を鍛え、バランスを整えるホルモ
ンとして、有名ですが、この二つとも、ミトコンドリアにとって天敵の活性酸素を除去す
る働きがあります。
活性酸素は、細胞を傷つけたり壊したりする働きがあるので、ミトコンドリアだけでな
くからだにとっても天敵で、老化の原因とも言われています。
朝陽を浴びることは、この活性酸素を減らすホルモンをだす効果もあるのです。
時間がない方は朝5分で構いません。
両手を広げ、カラダ全身で、朝陽を浴びてみましょう。
きっとミトコンドリアがあなたを守ってくれます。
第2の習慣は、ゆっくりと「深呼吸する」ことです。
第 1 の習慣でミトコンドリアスイッチをオンにするのは光と酸素と言いました。
私たちの祖先となる真核細胞が生まれる前、もともとはミトコンドリアは酸素を食べる
細菌でした。
その、ミトコンドリアの栄養源はたったふたつ それは・・・ 「酸素」と「ブドウ糖」
私たちが酸素がないと生きていけない理由は、私たちの細胞を動かしているエネルギー
を作るミトコンドリアが、酸素がないと生きていけないからです。
だから、ミトコンドリアは、酸素が大好きなのです。
酸素を得るために必要なこと、それは、皆さんご存知、「呼吸」。
勿論、黙っていても、呼吸はしています。
しかし、私が提唱する呼吸とは、意識した呼吸。すなわち「深呼吸」です。
なぜ、深呼吸がよいかというと、ミトコンドリアはゆっくりが好きだからです。
どういう ことかというと、ミトコンドリアが酸素とブドウ糖からエネルギーを作る際、
大変時間がかかります。(※注1)
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※注1
ミトコンドリアがエネルギーを作る際、栄養素は一旦、アセチル COA になり、
そこからクエン酸回路系というところを経て、ATP を作ります。
ミトコンドリアは一度にたくさんのエネルギーを作れますが、その分時間がかかります。
逆に短期間にたくさん酸素がきてしまうと、ミトコンドリアがエネルギー変換できなか
ったものが、活性酸素として排出されてしまいます。
活性酸素にちょっと触れただけで、赤色の活性化したミトコンドリアが一瞬に青色=死
んでしまうほど、ミトコンドリア=からだにとっては天敵です。
だから、急激な運動や、あまり激しいトレーニングは、からだに良くないのです。
40 歳を超えたら、運動は、ウォーキングや太極拳などゆっくりしたものがお薦めです。
運動できないにしても、まずは、吐くことを意識した深呼吸をしてみましょう。
それだけでこころとからだが喜びます。
第3の習慣は、「唾液を出す」ことです。
なぜ、唾液=つばを出すのがいいのかというと、唾液には、アミラーゼと言う酵素が入
っていて、食べたものを消化することを助けてくれるほか、成長ホルモンも含まれていま
す。この成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復したり、新陳代謝を促し老化防止するなど
ミトコンドリアを守ってくれる要素があるからです。
すなわち、唾液の量が多いと、それだけミトコンドリアが守られ、数が減るのを防いで
くれると言うことです。
成人が一日に出す唾液量は、0.5ℓから1.5ℓといわれています。
平均値だけ見ても一リットルもの開きがあるのです。
この量を増やすだけで、あなたのミトコンドリアは守られ、若さを保つアンチエイジン
グの効果もあります。
私が提唱している唾液を出す生活習慣とは
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①
よく噛む(一口目は 30 回噛む)
②
うがい(外から帰ってきたらうがいする)
③
歯磨きをする(食べていなくても時間になったら歯磨きする)
です。
ミトコンドリア活性化の手段として唾液を出すことを紹介しました。
たとえば、よく噛むと言っても 私たちは忙しい生活をしていますから、食事の際、毎
回 30 回噛むのは難しいでしょう。
安心してください。
一口目だけでも良いから 30 回かんでみましょう。
目的は唾液をだすことですから、最初によく噛むとあとは勝手に唾液がでてきてくれま
す。
②と③も同じ理由で、虫歯予防や抗菌作用の面より、私は唾液を出すことを目的にしてい
るので、自分の決めた定期的時間に、うがいや歯磨きをするよう心がけています。
ほかにも、
④
顔(唾液腺)のマッサージする。
⑤
ガムやあめをなめる。
⑥
酸味があるものをイメージする
⑦
たばこはやめる
など唾液を出す習慣はたくさんあります。
ミトコンドリアの数が減ると免疫力が下がります。
唾液はあなたの免疫力をあげてくれます。
是非 、唾液を出すこと、日常生活で意識してもらえると嬉しいです。
第4の習慣は、とてもシンプルです。それは「寝る」ことです。
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寝るといっても、眠らなくても構いません。ただ横になるだけでもよいのです。
勿論、睡眠をとることは大事な習慣です。
ただ、ポイントは眠らないとダメということではなく、一日の中で横になる習慣を持つ
ことが大事と思っています。
具体的には昼寝の習慣です。昼休みの 15 分でかまいません。
横になってみてはいかがでしょうか。
「えっ!なんで横になることでミトコンドリアを活性化するの?」
とお思いの方もいるかもしれません。
理由は簡単です。
ミトコンドリアのキモチになって考えて見ましょう。
ミトコンドリアは、私たちのカラダを動かすエネルギーをつくってくれていますが、
基本的に24時間ずっとはたらき詰めです。
たとえば、運動したり、勉強したりしなくても、一定量のエネルギーは使われています。
(これを基礎代謝といいます)
ミトコンドリアだって、ずっとはたらいていたら疲れます。
やはり、休めるときはきちんと休む。
だから、「寝る」ことはミトコンドリアを元気にする習慣のひとつなのです。
寝る、横になることがミトコンドリアを元気にする習慣のひとつと書きました。
これは言い方を変えると、なるべく、重力に逆らわない生活をするということを意味し
ます。そもそも私たちのカラダは、地球から 1G もの重力をつねに受けています。
1G なんてすごいと思いませんか?
これだけの重力を、人間が二本の足で支えているわけですから、カラダには常に相当の
ストレスがかかっています。
なので、私はからだのためにも、ミトコンドリアのためにも、重力に逆らわない生き方、
すなわち、横になることを薦めています。
かといって、常に横になれと言っているわけではありません。
疲れたと言うのは気持ちの問題、感情の問題もあります。
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逆に疲れたと思って横になると疲れが増すこともあります。
これは疲れの原因となっている乳酸が、カラダが動かないでいると一層たまるからです。
だから逆に私は、本当に疲れたと感じた時は、身体を揺らすとか、ぶらぶらさせるなど
簡単な運動を勧めています。
理由はその運動により血流の流れをよくし、疲れの元となっている乳酸の分泌を抑えら
れるからです。
ミトコンドリアからみると、常に横になるのではなく、時間を決めて、横になることを
薦めています。時間は身体のリズムから考えると 12 時~ 2 時まで。すなわち昼寝です。
時間は 15 分ぐらいで構いません。
からだとミトコンドリアのために、癒しの時間を与えてみましよう。
9つの習慣おさらいしてみましょう。
第 1 の習慣
朝陽を浴びる
第 2 の習慣
ゆっくり深呼吸する
第 3 の習慣
唾液を出す
第 4 の習慣
寝る、横になる
今日は、9つの習慣にない、でもミトコンドリアにとって大切な習慣を紹介します。
それは「笑う」ということです。
笑うことが、なぜ良いのでしょうか。
笑うと、脳内ではβエンドルフィンと言うホルモンが分泌されます。
「βエンドルフィン!?」
言葉だけはきいたことがある方は多いのではないでしょうか。
βエンドルフィンとは、別名「ハピネスホルモン」と呼ばれ、このホルモンが分泌され
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ると、気持ちよくなり、幸せな気分になります。
血管が拡張されるので、血行がよくなったり、血圧が下がったりする効果もあります。
血行を良くすることは、ミトコンドリアとって、とても重要です。
なぜなら、ミトコンドリアの栄養素である酸素やブドウ糖は血液が運んできてくれる
からです。
血行がよくなると、ミトコンドリアの栄養源がくまなく届くので、ミトコンドリアの数
を増やしたり、ミトコンドリアの生産性をあげ、免疫力や自己治癒力を高めてくれます。
笑いの効能を説明しました。
それを臨床例としてまとめたのがノーマン・カズンズ「笑いの治癒力」という本です。
日本でも、昇幹夫先生らが、笑いにより NK 細胞を活性化し、ガンの治療法になること
などを紹介しています。「笑って長生き―笑いと長寿の健康科学 昇 幹夫 」
笑いはすごい効果があるといっても、「つねに笑っている」のは難しいですね。
皆さん、ご存知の通り、この世の中、楽しいことばかりではないですから。
私がお薦めするのは、笑うと言う動作をすることです。
具体的には「毎朝、鏡に向かって笑顔をつくる」という習慣です。
アメリカの心理学者、ウィリアム・ジェームスは
「楽しいから笑うのではない、笑うから楽しい」といいました。
すなわち、心から楽しくなくても、笑うという動作をしただけでも、楽しくなるし、
実際、脳内ではβエンドルフィンの分泌は起こります。
もっと簡単に言うと、「口角をあげる」だけで、笑いの効果はでてきます。
インド医学では、口角をあげるとチャクラの頭頂部にある第7チャクラが開くともいわ
れています。
笑うことで、ミトコンドリアの数は増えると書きました。
しかも、楽しいことがなくても、笑うと言う動作をするだけで、ミトコンドリアは増え
ていきます。
ここで、毎朝、私が実践している方法をご紹介しましょう。
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実にシンプルです。
①
まず鏡に向かって自分 の顔をみます。
②
ニッと言って、笑ってみてください。
③
口角が上がっていませんか?
それでも足りないようなら、人差し指を唇の両端にあて、ぎゅっとあげてみてください。
ポイントは口角を上げるということです。
たった、それだけで、脳内ではβエンドルフィンという、幸せな気分にし、血行をよく
してくるホルモンがでます。
そうすると、朝から何か幸せな気分になると同時に健康にも良いのです。
ただ、この動作、人によっては恥ずかしいというかもしれません。
だいじょうぶ。誰も見ていませんから.このたった 1 分、朝に行う習慣があなたのここ
ろを優しくし、1 日を気分よくしてくれます。
そして、自分のことをもっと好きにして、あなたに自信をもたらしてくれます。
第 5 の習慣は、「入浴する」です。
去年までは「風呂上りに足に冷シャワーを浴びる」でした。
勿論、温かい水と冷たい水を交互に浴びる習慣は、足(下半身)を温め、自律神経のバ
ランスを整え、入眠しやすくしてくれるのでとても良いことです。
しかし、今年はもっとシンプルに、まずは入浴する(お風呂に入る)にしました。
なぜ、入浴がミトコンドリアにとって良いか。
それは、からだを温めることは、免疫力をあげ、ミトコンドリアの生産性をあげ、
数を増やしてくれるからです。
なぜ、からだを温めるとミトコンドリアの生産性があがるのか。
それは、ミトコンドリアはもともと細菌だったからです。
これは生物学的には、DNA から証明されました。
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細胞(核)の DNA の形は線状であるのに対し、ミトコンドリア DNA の形は環状です。
これは細菌と同じ形なのですね。
そもそも、病気になるところ、体の痛いところは、「冷えている」といいます。
私の尊敬する石原ゆうみ先生はこんな本も書かれています。
「体温が1℃上がると人生が変わる、病気が治る」
からだを温めることは、健康にもとても良い習慣です。
ミトコンドリアは温かいところで活性化するので、「入浴」が良いと紹介しました。
これを私は「ミトコンドリアは温泉好き」と名づけました。
ミトコンドリアは、もともとは細菌の仲間なので、温かいところが好きだからです。
そもそも、生物は、酸素がない中で生まれました。
いま、私たちは酸素がないと生きていかれませんが、もともとは、酸素は生物にとって
酸化(組織を破壊する)するため猛毒だったのです。
この毒である酸素を、地球上に初めて誕生させたのはシナノバクテリアという菌です。
今から約 32 億年前の話。彼が光合成をはじめるようになって、地球上に酸素が生まれ、
彼らが繁殖にするにつれ、その酸素が増えていきました。
困ったのは酸素を嫌う生物たちでした。
私たち人間の祖先(真核生物)も例外でありません。
それを救ったのがミトコンドリアでした。
ミトコンドリアはこの酸素をつかってエネルギーを作ることができました。
これに目をつけた私たちの祖先は、ミトコンドリアを体の中に取り込み、毒である酸素
を自分たちのからだを動かすエネルギーにかえたのです。
これが今から約 21 億年前の話。
だから、私たちが、酸素がないといきていけないのは、実は、ミトコンドリアが、酸素
がないといけないからなのです。
そのミトコンドリアにとってベストな温度は36.7℃。
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だからからだを温める習慣はミトコンドリアにとって良い習慣となるのです。
ぬるめの湯でゆっくり入浴、あなたも今日からしてみませんか?
第 6 の習慣は「歌う」「踊る」です。
なぜ、「歌う」「踊る」ことがミトコンドリアによいのかというと
ミトコンドリアはからだの中で常に一定のリズムで振動しているからです。
それと、前回ミトコンドリアは温かいところが好きと書きましたが、誰でもすぐできる、
からだを温めるもっとも簡単な方法が「カラダを揺らす」ということです。
寒さを感じたとき、ぶるっと震えますよね。
これはからだを震わすことでからだを温めようとする人間の本能なのです。
新潟大学の安保徹先生は、
「パーキンソン病で手が震えるのは、
震える事で体温を上げ、脳の血流をよくするための人間の本能」
とおっしゃっていました。
からだを揺らすと言う動きは、一定のリズム運動でもあります。
これを体系化したのがミトコン体操です。
ミトコン体操はしなくても、単純に、声を出して、歌ったり、躍ったりすることは、
ある意味リズム運動です。
何より声を出したり、からだを動かすと気分がすっきりします。
私は四国にいったとき、阿波踊りを体験しましたが みんなで「えらやっちゃ、えらい
やっちゃよいよい」と踊っていたら、難しいことはわからなくても、じわ~と汗をかき、
その後 、気分がスカっとして元気になりました。
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「歌う」「踊る」という習慣を紹介しました。
特に踊りはよいです。
昔から「踊る」ことは日本人の文化の中に浸透して来ました。
前回、阿波踊りを紹介しましたが、あなたの生地にも踊りがありませんか?
私の故郷、上田市では「うえだわっしょい」というのがあります。
「祭りだ、祭りだ、わっしょいだ、わっしょい、わっしょい、上田わっしょい」
といって歌いながら踊るのですが、夏などはこれをしないと夏が来た感じがしません.
もし、私の土地にはそんな踊りはないと言う方がいたとしたらお薦めは、ネイティブ
インディアンの踊りです。
どうやるのかというと、両手をあげて、バンザイの姿勢になって、「ハッハッハッハ」
と叫びながら、足踏みしてみてください。えっ、そんなことは恥ずかしくてできない。そ
う思われるかもしれません。
ただ、やってみてください。インディアンの踊りをすると、からだの底から笑いがこみ
あげてくるとともに、不思議なパワーをもらえます。
祭りの踊りに限らず、日本舞踊や、ヨガ、太極拳、足が悪い人は座ったままできるタイ
チー(太極拳)もあります。
ミトコンドリアによい運動はすべてゆっくりなので、激しい運動より、ゆるやかな運動
がお薦めです。皆さんも、どんどん自分のリズムに合わせてからだを動かしてみましょう。
声を出してみましょう。
ミトコンドリアはゆらぎが好きです。
これで、気持ちも、からだも、すっきりします。
第 7 の習慣は 「四股をふむ」です。
なぜ四股を踏むのが良いかというと、筋肉、特に下半身の筋肉を作るのに有用な運動が
「四股をふむ」だからです。
筋肉は全体の40%をしめる人体最大の発熱器官です。
筋肉量が多いと、それだけでからだを温める効果があります。
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そして、ミトコンドリアが一番多くすんでいるのも、筋肉です。
実にミトコンドリアの約7割は筋肉の中にあるのです。
だから、筋肉を鍛え、筋肉の量を増やすことはミトコンドリアを増やすことであり、体
を温めることでもあったのです。
嬉しいことに、筋肉は、年齢は関係なく、いくつになっても鍛える(増やす)ことがで
きます。
特に、鍛えて欲しいのは下半身です。
なぜなら、筋肉の 7 割が足腰を含む下半身にあり、「老化は下半身から」といわれるよ
うに加齢と共に一番衰えやすいのが下半身だからです。
筋肉は、何もしないと、30代から衰えだし、60代になると一気に衰えます。
60歳過ぎたら足腰が立たなくなるなんてことにはなりたくないですね。
そのために私が提唱しているのが「寝る前に四股をふむ」です。
ミトコンドリアを増やす習慣として、「四股を踏む」を紹介しました。
ミトコンドリアは筋肉に一番多くすみ、筋肉はからだを温める効果があるからです。
回数は 10 回ぐらいで構いません。
そして、やる時間は、寝る前がお薦めです。
なぜかというと、この時間帯が筋肉を鍛えるのに一番効果的だからです。
筋肉を増やすためには、使うだけでなく、休むこととの繰り返しが必要です。
だから、筋肉を鍛えた後、いかに休むか、そして鍛えることで傷ついた部分(細胞)を
いかに早く直すかが重要です。
そのキーワードとなるのが「成長ホルモン」です。
成長ホルモンとは、寝ている間に傷ついた細胞を修復してくれるホルモンで、就寝後 30
分ぐらいしてから分泌がはじまり、一番良く出る時間帯が午後10時~午前 2 時といわれ
ています。
だから、寝る前(=10 時~ 12 時の間)にこの筋肉を鍛える運動するのがよいのです。
しかも、四股を踏むと大腿四頭筋が鍛えられます。
ここを刺激することは、成長ホルモンの分泌を促す効果もあるのです。
また、東洋医学では「腎虚」といって、腎(下半身)の衰えは病気の原因ともいわれて
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いるので、下半身を鍛える「四股踏み」は、病気を未然に防ぐ効果もあるのです
さぁ、あなたも今日からはじめてみませんか?
寝る前に 10 回、「四股踏み」
残念ながら、四股を踏むと言う動作は、誰でもできるに少し当てはまりません。
なかには、膝や足が痛くて四股が踏めない人もいるでしょう。
そういう人にうってつけの方法を今回ご紹介します。
それは、「つまさき上げ」です。
やり方は簡単です。
①椅子に座ったままでよいので、かかとをつけたまま、つま先をちょっと持ち上げてみま
しょう。
②この状態でできれば 3 秒数えてください。
③これを片足ずつ 5 回ほどやってみて下さい。
これでも、しこを踏むと同じ効果があります。
なぜかというと、四股ふみの動作で鍛えているのは、太腿の筋肉(すなわち大腿四頭筋
や大腿二頭筋)です。
つま先あげでも、この太腿の筋肉(大腿四頭筋や大腿二頭筋)を鍛えることができるか
らです。
追伸です。
つま先あげと平行して、もうひとつ体操を紹介します。
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足首ふりです。
やり方は簡単です。仰向けに横になって、リラックスしたまま、足首を左右にぶらぶら
ふるだけで構いません。
これだけで、股関節をゆるませ、インナーマッスルを鍛える効果があります・
キーワードは股関節をゆるます、そして太腿の筋肉を鍛える。
覚えておくと何かと便利です。
第8の習慣は「胸を張る」です。
「えっ、胸をはることとミトコンドリアって関係があるの?」
と思う方がいるかもしれませんが、実はこの2つは大きく関係します。
理由は2つあります。
一つは「呼吸」です。
胸を張る動作は、胸郭を広げるので、肺が開き、それだけで酸素を、ゆっくりと、自然
に取り込んでいきます。
第 2 の習慣。ミトコンドリアが酸素好き!は覚えていますね。
2 つ目は姿勢が良くなることです。
良い姿勢はあなたを美しくするだけでなく、考え方まで変えてしまう力があります。
それな何かというと、こころとからだはつながっています。
たとえば、肩を縮め、目線を下げたまま状態でいるだけで、なんだか暗い気分になって
きませんか?
これを逆手にとると、胸をはった状態では暗いことが考えられなくなります。
なぜかというと、視線は自然に、前または上にいくからです。
人間のからだは視線を上に向けたまま、ネガティブなことが考えられないようにできて
います。
だから、胸を張っただけで、気分を明るく、自分に自信がもてるようになるのです。
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試しに実験してみましょう。
胸を張るという動作はミトコンドリアにとってよいと書きました。
その理由のひとつとして、気分が明るく、元気になると言いました。
なぜ、胸をはることと、気分がつながっていくのでしょう。
ここでひとつ実験してみたいと思います。
あなたが今一番ネガティブと思うことを考えてみてください。
まずは肩を縮め、視線は下にして、どんより暗くなることを考えてみてください。
どんよ~~~~りした気分になってきたかと思います。
頭の中はそのどんよりしたままの気持ちで、そこから、上体だけ変えていきます。
まず、視線をまっすぐにして、胸を張ってみましょう。
どうですか?何か気持ちの変化はありますか?
これだけではあまり変化を感じない方は次に、右手の人差し指を立て、視線はその人差
し指をみたまま、そのまあ手を天高くあげていってみましょう。
はい、そこでストップ!
さて、あなたは最初のどんよりした気分のままでいられましたか?
不思議なことに、先ほどまでの暗い気持ちが持続できないことに気づいてきませんか。
このように、からだの状態が変えることで、こころの状態を変えることができます。
それがこころとからだはつながっているということなのです。
私の尊敬する医師、帯津良一先生や西原克成先生は、病気は、生体のエネルギーバラン
スの乱れからくるといいます。
(この目に見えない生体エネルギーを、東洋医学では「気」、インド医学では「プラーナ」
といい、帯津先生は「生命場」と呼びます。)
ミトコンドリアも生体エネルギーの中でいきているので、
「気」のエネルギーによって、
活性化したり、停滞したりするのです。
前回、紹介した胸をはる動作は、正しい姿勢をもたらし、この気の流れをよくしてくれ
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ます。
最初に、正しい姿勢とは何かというとからだの力が抜けたリラックスした状態で、頭頂
部から足の裏まで、天と地と自分がすっと 1 本の線でつながったような自然な姿勢をいい
ます。
キーとなるのは背中です。
正しい姿勢は背中にヘンな緊張がなく、すっと伸びた状態にしてくれます。
そのためには、肩甲骨を寄せる動作、すなわち胸をはることが良いと紹介しました。
正しい姿勢は、キレイなからだをもつくってくれます。
それは体全体で体重を支えられるようになり、からだに余計な負担がかからなくなるか
らです。
ミトコンドリアはキレイがすきといい、正しい姿勢はきれいなからだをつくるといいま
した。
正しい姿勢は、なぜきれいなからだをつくるかを具体的事例を紹介しながら説明したい
と思います。
たとえば、胸を張ると、背筋が自然に伸び、それに伴い首もすっと伸びてきます。
そうすると、首への負担が減ってきます。
首への負担が減ると、それとシンクロするように首を支えている腕、それから首の上の
顔(あご)の負担も減っていきます。
これはどういう効果をもたらすかというと腕を支えている二の腕や、あごを支えている
顔の部分に負担がかからなくなり、結果的に二の腕が細くなったり、二重あごがなくなっ
たりするのです。
えっ。
たったそれだけでそんな効果があると疑問を持たれる方がいるかもしれません。
よく考えてみてください。
私たちは 1 日のうち2/3は立ったり、座ったりしているのです。
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その時間、トレーニングしているとしたら。。。。
私は、そもそも、健康によいものはすべて美しいと思っています。
なぜなら、健康とは、人間本来の自然の姿であり、大自然の中で、自然の姿のままでい
るものは、みな美しいからです。
ミトコンドリアはきれいが好き。あなたもきれいになってみませんか?
第 9 の習慣・・・・それは「感動する」こと
今年はより具体的に「思い切り笑う、泣く、そして恋をする」といいます。
カラダだけでなく、ココロを動かすことは、ミトコンドリアを活性化する大事な要素に
なります。
なぜなら、ミトコンドリアは感情で動く。
こころとからだはつながっているから・・
あなたも、思いっきり泣いたり、笑ったあと、気持ちがすっきりして、カラダの調子が
よくなった経験はありませんか?。
自分の感情を吐き出すことは、気分をすっきりさせ、カラダもイキイキさせてくれます。
笑うと NK 細胞(ナチュラルキラー細胞)が増えるという話は、お話しましたね。
村上和雄先生は遺伝子工学の立場から、「思いが遺伝子を変える」ともおっしゃってい
ました。
感情には、時に細胞の中の遺伝子をも変え、そしてミトコンドリアを活性化させる働き
があるのです。
といっても、感動は、そんなたいそうなことでなく、身の回りにあるほんの些細なこと
からはじまります。
たとえば、歩いているとき、きれいな花をみつめ「まぁ、きれい」といったり
上げて、「おっ、すごい雲だ」と驚いたり。
以上のように9つの習慣を挙げています。
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空を見