コエンザイム Q10 によるヒト皮膚線維芽細胞 へのアンチエイジング作用 ! ○ 峯 幸稔 1, 松本 篤 1, 北條重文 1, 髙橋隆幸 1, 岡本正志 1, 八幡信広 2,峯村 剛 2, 1 市橋正光 3 2 神戸学院大学薬学部・社会薬学部門・生化学研究室, 日清ファルマ株式会社・健康科学研 3 究所, 同志社大学大学院生命医科学研究所・アンチエイジングリサーチセンター " 培養細胞を用いた還元型コエンザイム Q10 の 抗老化メカニズムの解明 ○徐 哲 1,霍 佳 1,澤下 仁子 1,2,森 政之 1,2, 1 2 口 京一 1,2 信州大学大学院 医学系研究科 疾患予防医科学系 加齢生物学 信州大学学術研究院 先鋭領域融合研究群 バイオメディカル研究所 【背景・目的】 我 々 は, 還 元 型 CoQ10(CoQH2) を 継 続 補 給 す る こ と に よ り, 老 化 促 進 モ デ ル マ ウ ス [ 目 的 ] Coenzyme Q10(CoQ10)は, ミトコンドリア電子伝達系の必須構成成分であり, エネルギー SAMP1 の促進老化が遅延することを明らかにしてきた (Yan et al Exp Gerontol 2006).また, い防御作用を示すことは周知の事実である.このような二つの重要な生理作用から,最近で リア機能の改善が関与することを示唆した (Tian et al Antioxid Redox Signal 2014).本研究で にわが国のような高齢化社会では,CoQ10 への関心が高く,その有効性が期待されていると なマウス繊維芽細胞株 (3T3L1) とヒト肝癌由来細胞株 (HepG2) を用い,CoQH2 の抗老化作 産生系で重要な役割を担っている.また,CoQ10 は生体内の種々の酸化ストレスに対して強 CoQH2 の抗老化作用は酸化ストレスの抑制のほかに,SIRT1 や PGC-1 αを介したミトコンド は,CoQ10 のアンチエイジング作用を基盤とした生体への応用が数多く試みられている.殊 は,SAMP1 と対照マウス (SAMR1) の胎仔由来繊維芽細胞 (MEF),脂肪細胞に分化誘導可能 ころである. 用とそのメカニズムを解析した. この研究では,CoQ10 のアンチエイジングへの適用の可能性を探索する目的で,今回,系 統的かつ詳細な報告が十分なされていない CoQ10 のヒト皮膚細胞に及ぼす影響について検 討した. 【方 法】 1) MEF を用いた実験 CoQH2 添加時の細胞老化マーカー (p16INK4a,SA- β -gal) を測定 した.2) 3T3L1 を用いた実験 脂肪細胞への分化前後に CoQH2 を添加し,Oil Red O 染色法 で細胞内脂肪量を評価した.3) HepG2 を用いた実験 パラコート (PQ) による細胞傷害時の [ 実験方法 ] ヒト皮膚線維芽細胞(新生児由来)は Lonza 社より購入し,培養 5 日目の細胞を実験に供 した.細胞増殖能は MTT アッセイ法,コラーゲンⅠ,Ⅳ,Ⅶ型,マトリックスメタロプロ テアーゼ(MMP)Ⅱ,ならびにⅧ型の mRNA 量は,RT-PCR 法にてそれぞれ測定した.細胞 内の CoQ10 量は HPLC-ECD 法にて定量した.細胞内の酸化ストレス(ROS)の抑制作用は CM-H2DCFDA 試薬により測定し, 細胞老化の特異的マーカーとしてβガラクトシダーゼ(SA- β gal)を測定した.CoQ10 は,日清ファルマ株式会社の水溶化 CoQ10(アクア Q10 P40) を使用した. CoQH2 の効果を検討した.また,CoQH2 添加時の Sirt1,Pgc-1 α等の遺伝子発現量,老化マー カー,cAMP 量やホスホジエステラーゼ (PDE, cAMP 分解酵素 ) の遺伝子発現量を測定した. 【結果・考察】 1) MEF では,時間の経過に伴って細胞老化マーカーの上昇がみられたが,CoQH2 はこれ らの上昇を抑制した ( 図 1). 2)CoQH2 は 3T3L1 の脂肪細胞への分化を抑制し ( 図 2),分化 後の脂肪量を減少した.これらの結果から,CoQH2 は脂肪代謝を改善する可能性が考えら れた. 3) PQ は HepG2 の p16INK4a 遺伝子発現量を増加し,Sirt1,Pgc-1 αや Sod2 の遺 伝子発現量を減少したが,CoQH2 によって改善した.CoQH2 の効果は,ニコチンアミド (NAM, [ 結果および考察 ] 培養液への 1 μ M 以上の CoQ10 添加は,ヒト皮膚培養線維芽細胞内の CoQ10 量や細胞増 殖能を有意に上昇させた.また,この作用は CoQ9 でも同様に観察された.さらに,CoQ10 は線維芽細胞のコラーゲンⅠ,Ⅳ,Ⅶ型 mRNA 量も有意に上昇させた. 一方,CoQ10 は過酸化水素により誘導されるⅡ型,Ⅷ型 MMP や酸化ストレスによる細胞 障害,さらには細胞老化特異的マーカーである SA- β gal を有意に抑制した. SIRT1 活性阻害剤 ) 共存時には抑制された.また,CoQH2 添加時細胞内 cAMP 量が増加し, PDE4 の遺伝子発現量やタンパク質量も減少した ( 図 3).以上の結果から,CoQH2 は PDE4 を介して cAMP の分解を抑制すると考えられ,cAMP を介してミトコンドリア機能関連因子 の発現を増強し,老化を抑制するメカニズムが示唆された.今後は,CoQH2 の PDE4 活性抑 制メカニズムと脂肪代謝改善のメカニズムを解析する必要がある. これらの結果は,CoQ10 が SA- β gal の陽性染色,細胞増殖能や抗酸化能の低下,コラー ゲンを含む細胞外マトリックス産生量の低下など,老化した皮膚線維芽細胞に特徴的に観察 される多くの細胞機能の低下を抑制したことから,CoQ10 のアンチエイジング作用と加齢性 疾患へのさらなる適用の可能性が示唆された. −!− ➨ᅇᮏᩥ࠙ࠚึᰯLQGG −"−
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