野菜がよく育つ植え合わせ術

『やさい畑』2014年秋号別冊付録
【監修】木嶋利男
はじめに
コンパニオンプランツは,農薬や化学肥料に頼らないで,健全でおいしい野菜づくりを行うの
に欠かせない栽培テクニックです。とくに家庭菜園では限られたスペースを有効に使って野菜づ
くりをするためにもおおいに役立ってくれます。
多くの植物は自然状態では,限られた環境のなかで他のものよりも自分が有利になるように競
い合いながら生きています。しかし,1つの種類の植物だけがその場所を独占してしまうことは
珍しく,草丈の高いものと低いもの,根の深いものと浅いもの,日なたが好きなものと多少の日
陰でも生育できるものなどがうまくすみ分けをして,いっしょになって生長しています。
そのなかでも,とくに相性のよい植物同士をコンパニオンプランツと呼んでいます。野菜づく
りに応用することで,以下に紹介するように,大きく分けて4つのプラスの効果があります。
本書では,代表的なコンパニオンプランツを選んで,その栽培方法を紹介していますが,1つ
の組み合わせが,効果のいくつもに当てはまる場合もあります。
なお,コンパニオンプランツの効果をより引き出すには,それぞれの畑に合った栽培時期,混
植時の間隔,品種などの条件を調整していく必要があります。経験を積み重ねながら,自分なら
ではのコンパニオンプランツの活用法を見つけてください。
効果1 害虫を防除する
害虫は自分の好みの植物を探すとき,多くの場合,匂いに頼っています。異なる種類の野菜を
混植すると害虫は混乱し,目当ての野菜を探すのが難しくなります。さらにキク科,セリ科,シ
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ソ科など,強い香りを持つ野菜を用いると,それを嫌う害虫は近づかなくなり,近くで育つ他の
種類の野菜も守られます。
効果2 病気を予防する
たとえばユリ科ネギ属(別の分類法ではネギ科)の野菜は,根に共生する微生物が抗生物質を
出して,ウリ科,ナス科などの病原菌を減らすことが知られています。また,異なる種類の野菜
が育つことで,生物相が豊かになり,特定の病原菌の増殖を防いでくれる効果もあります。相性
のよい野菜を選んで混植することが,病気の予防につながります。
効果3 生長を促進する
異なる種類の野菜を近くで育てると,草丈が大きくなったり,収量が増えたりと,明らかに生
育がよくなることがあります。まだ科学的には解明されていないケースが多いものの,葉や茎,
根から分泌される特定の物質が他の種類の野菜の生育に役立っていると想像されます。また,土
壌の生物相が多様になり,肥沃になることで,生育が促進される効果も考えられます。
効果4 空間を有効活用できる
コンパニオンプランツの最大の利点といえます。相性が悪い野菜であれば,遠くに離して育て
るしかありませんが,相性がよいもの同士であれば,近くに詰め合わせて育てることができま
す。草丈の違いを利用して株元のあいた空間を利用したり,生育の速度の違いを利用して,野菜
が大きくなる前に別の野菜を栽培して収穫したりする方法もあります。コンパニオンプランツ
が,限られた面積で行う家庭菜園向きである理由の一つです。
トマト×ニラ
ニラの根につく善玉菌でトマトを守る
トマトの病気予防に効果的
トマトには「萎ちょう病」と呼ばれる病気がしばしば発生します。生育の途中でしおれたよう
になり,徐々に葉が黄色くなって,生育が悪くなり,実がつかなくなってしまいます。ひどい場
合は枯れてしまうこともあります。
原因は土壌中にいる病原菌です。菌はトマトが枯れたあと何年も土の中に残るため,いちど畑
でこの病気が発生し始めると,なかなか治まらず,やっかいです。
そこで,事前に病気の発生を防ぐ意味でおすすめしたいのが,トマトとニラの混植です。ニラ
の根には善玉菌が共生していて,抗生物質を出して病原菌の繁殖を防いでくれます。この混植は
キュウリと長ネギの混植と同じですが,長ネギは根が浅く広がるのにたいして,ニラの根は深く
伸びるため,同様に根が深いトマトにはニラがより相性がよいといえます。
ニラはトマト以外にもナス,ピーマンなど,他のナス科野菜の混植も有効です。どのナス科野
菜を植えつけるときも,かならず根鉢がニラの根と触れ合うようにするのがコツです。
ニラの収穫も楽しみ
なお,大きくなったニラは株元から5㎝ぐらいの高さで刈るとやわらかい葉が伸びて,何度も
利用できます。また,生長すると葉数が増えて株分かれをし,大株になります。トマトの収穫が
終わって株を整理したあとに植え替え,翌年に株分けしながらふたたびトマトと混植することも
できます。
1 植えつける
トマトの根鉢よりもひと回り大きな植え穴を掘る。左右に1株ずつニラの苗を置く。ニラの根
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は穴の底の部分に広げておく。
(ニラの根を植え穴の底に広げる。トマトの根鉢と触れ合うよう
に植えるのがコツ)
2 ニラの株分け
ニラをそのまま育てると,葉数が増えて分げつする。秋にそのまま植え替えてもよい。翌年,
株分けするとふたたびトマトなどとの混植に使える。
初年度はニラを苗で入手しよう
ニラの種まきは3月上旬~4月下旬。生育には時間がかかるため,十分な大きさの苗にしてか
らでは,トマトの植えつけに間に合いません。初年度は苗を入手して植えつけましょう。翌年の
植えつけを見越して,9月上旬~10月上旬に種をまいて準備しておくのも一法です。
ナス×パセリ
水分吸収を安定させてナスの生育促進
株元の空間を有効利用
ナスはGWの頃に植えつけを行い,秋ナスの収穫の終わる11月中旬まで栽培できます。収穫
が長く楽しめる分,畑を占有する期間も長くなります。そこで,株元のあいた空間を利用して,
多少の日陰でもよく育つ野菜をコンパニオンプランツとして混植すると,育てる品目を増やすこ
とができます。
おすすめはパセリです。ナスの植えつけと同時か,少しあとに株間にパセリの苗を植えつけま
す。葉の枚数を増やしながら生育するので,6月下旬に入った頃から,大きくなった外葉から切
り取って収穫します。
たがいの生育促進にも良
ナスもパセリも水分を好む野菜ですが,雨が多いときなどはパセリが余分な水分を吸収し,ナ
スには安定した水分が供給され,生育がよくなります。一方,パセリはナスの株元の適度な日陰
で育つことで,葉がやわらかく香りもよく,おいしくなります。また,パセリはセリ科で特有の
香りを持つため,ナスにつくアブラムシやハダニを減らしてくれます。
なお,同じ仲間のイタリアンパセリは生育の勢いが強いためか,ナスと競合して,生育を妨げ
ることがあります。ナスとの混樽にはパセリを用いるようにします。
1 ナスの植えつけ準備
植えつけの2~3週間前に植え場所を掘り下げて完熟堆肥を10㎝入れて,土を埋め戻し,畝
を高めに立てておく。
2 ナスとパセリの植えつけ
畝立てから2~3週間後に植えつけを行う。ナスは早朝に水を入れたバケツに苗をつけて,し
っかりと水を吸わせる。ナスの株間は60㎝株間の中央かややわきにパセリの苗を植えつける。
ナスの株元を利用して栽培!
やや日陰でもよく育つ野菜なら,ナスの株元を利用して植えつけられます。ショウガはナスの
植えつけ時期の5月でも同時に栽培を始められます。また,畝の肩の近くでラッカセイを育てて
もよいでしょう。種播きからでも苗の植えつけからでも育てられます。
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ピーマン×ラッカセイ
ピーマンの夏バテを防ぎ,生育を促進する
ピーマンのマルチ代わりに
果菜類の株元のあいた空間を利用して,他の野菜を栽培する方法です。ピーマンの株問や畝の
わきでラッカセイを育てます。
ピーマンは他のナス科の果菜類と比較すると,根が浅く広がる性質を持っています。その分,
梅雨明けで乾燥したり,高温が続いたりすると,生育が衰え,花がつきにくくなるなど,夏パテ
を起こしやすくなります。
そこで株元のあいた空間でラッカセイを栽培すると,地表に直接白光が当たらず,ラッカセイ
の葉が横に広がって,土中の水分が蒸発しづらくなります。その結果,ピーマンは安定して生育
することができます。
根につく微生物が生育を促進
ラッカセイの根にはマメ科に特有の根粒菌がついて土壌が肥沃になります。また,根には菌根
菌が共生しやすく,土壌中の溶けにくいリン酸分やその他のミネラルを植物が吸収しやすい状態
に変えてくれます。これらによって,ラッカセイを混植することで,ピーマンの生育はよくなり
ます。
ピーマンにもラッカセイにもアブラムシなどの害虫がつきますが,種類は異なります。益虫は
どちらにも共通で,とくにラッカセイが益虫のすまいになり,バンカープランツとして働いてく
れます。
1 ラッカセイの種まきの準備
ラッカセイはそのまま種を播くと発芽率が悪いので,種まき前日に水を吸わせ,発芽を促して
おく。
2 ピーマンの植えつけとラッカセイの種播き
早朝に水を入れたバケツにピーマンの苗をつけて,しっかりと水を吸わせる。植えつけ後,畝
の肩に近い場所にラッカセイの種を播く。あるいは苗を植えつけてもよい。
いろいろな栽培に応用しよう!
ラッカセイは他の野菜とも混植できます。同じナス科のトマト,ナスなどには同様の使い方が
できます。また,ラッカセイの根はさまざまな種類の野菜に障害を引き起こすセンチュウを根に
集めて,繁殖させない性質を持っています。センチュウ害の多い畑では,混植すると予防になり
ます。
キュウリ×長ネギ
連作で起きやすい土壌病害を防ぐ
つる割病対策として有効
キュウリなどのウリ科は,しばしばつる割病などの連作障害が起きます。連作障害を避けるに
は,5年以上同じ場所でウリ科の野菜を栽培しない輪作を行うことですが,面積の限られた家庭
菜園や新しく借りた市民農園などでは,きちんとした輪作を行うことが難しいかもしれません。
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そこで,キュウリの株元に長ネギを混植します。ネギの仲間の根には,
「バークホーデリア・
グラジオリー」という善玉菌が共生し,抗生物質の一種を分泌します。これが周囲の病原菌を減
らしてくれます。また,ネギの仲間の根には,他にも多様な微生物が成育していて,周囲の土壌
の生物相が豊かになり,特定の病原菌の繁殖を抑えます。
根と根をくっつけて植える
コツは,長ネギとキュウリの根が触れ合うように植えつけることです。長ネギはユリ科ネギ属
(別の分類法ではネギ科)
,キュウリはウリ科で,好んで吸収する養分が異なるため,すぐ近く
に植えても,養分の奪い合いは起きません。
じつはユウガオ(かんぴょうの原料。ウリ科)の産地である栃木県では,ユウガオと長ネギを
混植すると連作障害が起きないことが経験的に知られ,利用されてきました。キュウリと長ネギ
の混植は,この伝承農法を科学的に研究することから生まれた栽培技術なのです。
1 長ネギを植える
キュウリの根鉢よりもひと回り大きく植え穴を掘る。左右に1株ずつ長ネギの苗を置く。長ネ
ギの根は,穴の底の部分に広げておく。
2 キュウリを植える
キュウリは根鉢を崩さず,そのまま植えつける。長ネギの根の上にキュウリの根鉢を置く。周
囲の土とのあいた空間は,土を入れてしっかりと密着させる。全体に深植えにならないように注
意する。
3 支柱を立てる
キュウリの苗をたくさん植える場合は,株間,条間ともに60㎝程度とり,合掌形に支柱を立
てておく。キュウリネットを張って,誘引してもよい。
いろいろな栽培に応用しよう!
長ネギの混植は,キュウリの代わりにゴーヤー,カボチャ,メロンなど,ウリ科の野菜に広く
応用できます。長ネギの代わりにはリーキなども使えます。ニラは根が比較的深く,浅根のキュ
ウリの根圏とあまり一致しないため,効果的ではありません。
トウモロコシ×エダマメ
種播きも収穫も同時に行えるベストパートナー
栽培期間がほぼ同じ
トウモロコシとユダマメは,家庭菜園の中でもベストパートナーの一つです。トウモロコシの
栽培期間は種播きから約90日。エダマメの早生種から中生種は75~90日とほぼ同じ。トウ
モロコシはイネ科でよく肥料を吸収しますが,エダマメはマメ科で根につく根粒菌が空気中の窒
素を取り込んで,土を肥沃にしてくれます。
トウモロコシは草丈が高くなって,周囲は陰になりがちですが,エダマメはやや日陰の場所で
もよく育ってくれます。混植することで詰め合わせての栽培が可能で,限られた面積の畑を有効
活用することができます。
害虫の被害も軽減
しかも,混植するとエダマメにはカメムシなどの害虫が,トウモロコシにはアブラムシなどの
害虫がつきにくくなります。また,害虫を食べてくれる益虫を増やすバンカープランツの役割も
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双方が果たしてくれます。
トウモロコシは光要求性が高いため,受粉がよくなるように南北畝に2条で植えます。エダマ
メはその株間で育てたり,2列のトウモロコシを挟んでその両側で育てたりする方法がありま
す。必要な株数などによって,植え方を工夫するとよいでしょう。
1 種の播き方
トウモロコシ2列の問にエダマメを栽培する方法。畝幅70㎝の広めの畝を立て,両側の列に
トウモロコシ,中央の列にエダマメを播く。
2 間引き
トウモロコシは間引いて1本立ちに。エダマメは間引いて2本立ちにする。エダマメは2本立
ちのほうが根が深く張って,莢やもつきやすくなる。
いろいろな栽培に応用しよう!
イネ科とマメ科はたがいによく育ちます。トウモロコシが終わりかけたら,株元につるありイ
ンゲンやササゲをまくとトウモロコシの茎を支柱代わりにして育てることもできます。7月播き
で10月収穫の場合は,晩生のエダマメは草丈が高く,分枝しやすいので,条間,株間を広くと
る必要があります。
イチゴ×ニンニク
ニンニクの殺菌能力でイチゴの病害を防ぐ
病気を事前に予防する
とりたての完熟の実が食べられるのが,家庭菜園でイチゴ栽培を行うときの楽しみです。とこ
ろが,畑で栽培しているときに問題になるのは,萎黄病,炭痘病などの病気。これらの病気にか
かると,葉がひどく傷むため,生育が衰えて,実がよくなりません。病原菌は土の中にいるた
め,泥跳ねなどで伝染し,いちど発生すると,次作以降も病気が発生しやすくなってしまいま
す。
イチゴの病気を事前に防ぐ方法がニンニクの混植です。ニンニクの根の周囲に病原菌を減らす
抗生物質を出す微生物がついているだけでなく,ニンニクの匂い成分は強い殺菌作用を持ってい
ます。また,ニンニク独特の匂いによって,ウイルスの媒介をすることもあるアブラムシなどの
害虫が,イチゴの葉につくことも減らせます。
イチゴの収穫が長くなる
おもしろいのは,ニンニクの香りの効果か,混植をするとイチゴの開花時期が早くなることで
す。その結果,イチゴが長く収穫できることが知られています。
秋のイチゴの苗の植えつけ時にニンニクも植えつけられますが,通常のニンニクの植えつけ時
期よりも遅めになります。あらかじめニンニクを植えつけてから,適期になってからイチゴの苗
を植えつけるとより確実です。
1 ニンニクの植えつけ準備
通常の適期よりも遅めにニンニクを植えつける場合は,皮をすべて取り除いて発芽を早める。
9月中旬までにニンニクを植えつける場合は薄皮を取り除かなくてもよい。
(ニンニクは1片ご
とにして植えつける。遅めに植えつけるときは薄皮も取り除いてツルツルにする)
2 イチゴとニンニクの植えつけ
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イチゴは千鳥植えがふつう。4~5株に1株の割合でイチゴの代わりにニンニクを植えつけ
る。病気が発生しやすい畑ではイチゴとニンニクを交互に植えてもよい。
2年目からは子株も育てよう!
イチゴはランナーを伸ばして,次々に子株,孫株を作ります。病気が発生した場合,1番めの
子株には病気が伝染している可能性が高いので,できれば3番め以降の株(ひ孫以降の株)を掘
り上げて,ポリポットなどで育苗し,秋に新苗として植えつけます。
ゴーヤー×つるありインゲン
グリーンカーテンづくりに最適の組み合わせ
きれいなカーテンができる
グリーンカーテンの定番といえば,ゴーヤー。そのゴーヤーにコンパニオンプランツを組み合
わせるなら,つるありインゲンがおすすめです。
つる性の植物なら,窓の外側にネットを張り,そこにはわせて,グリーンカーテンにすること
ができますが,なかでもつるありインゲンは生育が旺盛で,莢もたくさんつき,栽培も容易で
す。
つるありインゲンはマメ科で,根に根粒菌がついて空気中の窒素を取り込んで養分に変えて,
みずから生長するだけでなく,周囲の土も肥沃にします。ゴーヤーはその養分を利用しながら生
育するため,コンテナなど容積の限られた栽培スペースに混植してもたがいによく育ってくれま
す。たがいのつるを絡ませながら伸びて,きれいなグリーンカーテンができあがります。
早採りが長もちの秘訣
ゴーヤーもつるありインゲンももともと害虫の心配はあまりありませんが,ゴーヤーはウリ科
でインゲンとは科が異なるため,混植するとより害虫もつきにくくなります。
なお,つるありインゲンはさやを大きくしすぎると老化して,生育が早めに終わりがちです。
若採りが長く楽しむコツです。ゴーヤーの実も同様に早めに収穫をしましょう。
1 ゴーヤーの種播き
2.5号程度のポリポットに種を3粒播く。用土は市販の育苗培土か,腐葉土と赤玉土の等量
を混合したものにポカシ肥を加えて2~3週間おいたものを使う。(種は一昼夜水に浸けてから
まくと発芽率がアップする。水を入れたコップにゴーヤーの種を浸す。種まき後,育苗し,本葉
2枚で間引いて1本立ちに)
2 ゴーヤーの苗の植えつけ
本葉3~4枚で植えつける。深植えにしない。横幅60㎝程度のコンテナなら中央に1株。2
0㎝程度離して左右につるありインゲンを育てる
3 つるありインゲンの種播き
インゲンは1穴に2~3粒播き。深さ3㎝程度の穴をあけて,種を落として入れ,土をかぶせ
る
好みの品種を見つけよう!
ゴーヤーは果実の長いもの,短いもの,果皮が線色や白色,苦みの強いもの,弱いものなど品
種が多彩なので好みで選ぶとよいでしょう。つるありインゲンには花色が白,ピンクなどがあり
ます。平さやのモロッコインゲンなどのほか,フジマメやササゲも利用できます。
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畑で栽培するときの注意点
ゴーヤーもつるありインゲンも,ネコプセンチュウが発生している場所で栽培すると,被害が
拡大します。ネコブセンチュウの害が出ている畑での混植は避けましょう。
サツマイモ×つるなしササゲ
肥料分を分け合って,共によく育つ
サツマイモの栽培スペースを利用
サツマイモは肥料分が少ない畑で栽培したほうが,イモはよく育ち,味がおいしくなります。
逆に肥料分が多いとつるぼけを起こして,葉ばかりが茂ってイモがつかなかったり,イモができ
ても味がよくなかったりします。
サツマイモはつるが四方に長く伸びるため,栽培には広い面積を必要としますが,実際には植
えつけからつるが周囲を覆い尽くすまでには時間がかかります。その間を利用して,他の野菜を
混植して育てることができます。
一緒に植える野菜はサツマイモのつるが伸びるまでに大きく育つこと,また,あまり肥沃でな
い畑でもよく育つことが条件です。
サツマイモの生育促進に
つるなしササゲはこの条件にぴったりです。サツマイモの植えつけは通常5月中旬~6月下旬
ですが,つるなしササゲは同時に種播きが行えます。高畝にしてサツマイモの苗を植えつけ,そ
の株間につるなしササゲの種をまきます。
つるなしササゲはマメ科で,根粒菌の働きにより,根の周囲を肥沃にします。サツマイモはそ
の養分を利用しながら生長します。つるなしササゲは種播きから2か月後には収穫が始まり,そ
れから数週間で栽培が終了します。枯れた根などはサツマイモのイモが太る時期には適度の養分
となり,充実した大きなイモが育ちます。
1 サツマイモの植えつけ
挿し穂として,葉が4~5枚ついたものを用意。下の2節が土の中に埋まるように植える。垂
直に挿すことで,イモの数は少なめだが,丸く大きなイモに育つ。
2 ササゲの種播き
サツマイモの株間につるな しササゲを種播きする。点播きで1か所に3粒播き。
(つるなし
ササゲを3粒播いて,土で覆う。本葉1~2枚で間引いて1本立ちに)
必ずつるなしの品種を選ぼう!
ササゲの品種にはつるありとつるなしがあります。サツマイモと混植するには支柱を立てなく
てすむ倭性のつるなし品種を用います。ここでは緑のさやの状態で収穫しますが,赤飯に入れて
利用するなど完熟した豆がほしい場合は,サツマイモとの間隔を広くあけて栽培します。つるな
しササゲの代わりにつるなしインゲンやエダマメも栽培できますが,暑い夏にもよく育つのはや
はりササゲです。
サトイモ×ショウガ
混植による生育促進で収量アップ
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似た環境を好むもの同士
サトイモもショウガも生育期間が長いのが特徴です。春に種イモ,種ショウガを植えつけてか
ら,秋の終わりに収穫するまで,長いあいだ畑を占有し続けます。どちらも育ててみたい野菜に
もかかわらず,面積の限られた家庭菜園で栽培するとなると,二の足を踏む方も多いかもしれま
せん。
実は,サトイモとショウガはコンパニオンプランツとして相性が抜群です。どちらも,栽培環
境としてやや日陰の水分の多い場所を好むため,同じ畝を利用して育てることができます。しか
も,従来のサトイモの株間に詰め合わせる要領でショウガを混植しても,競合を起こしません。
ショウガはサトイモの北側に
サトイモの葉は大きく広がり,周囲に日陰をつくりますが,ショウガはこの日陰を利用して,
よく育ちます。コツはサトイモの陰ができる北側にショウガを植えることです。
おもしろいのは,詰め合わせ栽培にもかかわらず,サトイモもショウガも単独で育てたときよ
りも生育がよくなること。収量もやや多くなります。科学的には解明されていませんが,コンパ
ニオンプランツの不思議さを感じさせる組み合わせの一つです。
1 植えつけ方
南北畝で植える場合=鍬幅で深さ15~20㎝の溝を掘り,サトイモの種イモを株間50㎝で
置いていく。その株間に種ショウガを置く。
(植えたら種イモと種ショウガが見えなくなる程度
に覆土する)
東西畝で植える場合=鍬幅で深さ15~20㎝の溝を2列掘り,南側の溝にサトイモ,北側の
溝にショウガを植えつける。
(種イモと種ショウガが見えなくなる程度に覆土する)
2 土寄せと敷きわら
サトイモの茎葉が3枚になったら,土寄せを行う。さらに1か月後にも土寄せをする。サトイ
モもショウガも水分を好むので畝の上に敷きわらをして保湿する。
ショウガは随時利用しよう
ショウガは用途に合わせて,矢ショウガ,葉ショウガなどでも収穫することができます。早め
に収穫したあとも,引き続きサトイモを育てます。
キャベツ×リーフレタス
混植で害虫が嫌がる環境をつくる
嫌がる香りで虫を撹乱
キャベツの害虫といえば,モンシロチョウやコナガの幼虫。葉を食い荒らし,せっかくのキャ
ベツの球を穴だらけにしてしまいます。
モンシロチョウやコナガの親(成虫)は,キャベツが発するアブラナ科独特の香りに誘われて
飛んできて,卵を産みつけます。おもしろいのは,アブラナ科にだけ卵を産み,他の種類の野菜
は明らかに避けることです。ほかの種類の野菜に卵を産みつけても,幼虫はその野菜をうまく消
化できないからだと考えられています。
そこでアブラナ科のキャベツの畝にキク科のリーフレタスを混植します。モンシロチョウやコ
ナガは,リーフレタスが発するキク科独特の香りを嫌がり,寄りつきにくくなります。
被害の多さで株数を調整
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混植するのは玉レタスでもかまいませんが,リーフレタスのほうが香りが強く,より効果的で
す。虫の発生が多い場合は,一緒に育てるリーフレタスの株数を増やすなどの工夫をしてみてく
ださい。
なお,ヨトウムシはさまざまな野菜を好み,キク科にもつきますが,混植によって環境を複雑
にすることで,被害を抑えることができます。
1 種播き
ポリポットに3~4粒の種を播く。用土は市販の育苗培土か,腐葉土と赤玉土の等量を混合し
たものにポカシ肥を加えて2~3週間おいたものを使う。(レタスの場合は覆土は薄めに。発芽
に失敗しやすい場合は多めに播くとよい)
2 間引き
本葉2~3枚までに間引いて,元気な苗を1本残す。育苗箱やセルトレーで育てた場合は,本
葉2~3枚で鉢上げ。本葉5~6枚まで育てる。
3 苗の植えつけ
本葉5~6枚の苗(購入苗なら)を植えつける。植えつけ当日の朝早くにバケツに入れた水に
ポットごとつけ,しっかり根鉢に水を吸わせておく。キャベツは株間,条間ともに30㎝の密植
でよく育つ。数株ごとにリーフレタスを混植する。
色々な栽培に応用しよう!
キャベツの代わりに,ブロッコリー,カリフラワーでも同様の混植が行えます。リーフレタス
の代わりには,同じキク科のシュンギクのほか,シソ科のサルビアなどを混植する方法もありま
す。
カブ×ニンジン
異なる根菜類の混植で害虫を避ける
害虫の好き嫌いを利用する
アブラナ科の野菜につく,モンシロチョウ,コナガの幼虫などの害虫を避けるコンパニオンプ
ランツには,大きく分けて,2つの組み合わせがあります。キャベツとリーフレタスのようにア
ブラナ科の野菜にキク科の野菜を混植する方法。そして,もう一つはセリ科の野菜を混植する方
法です。
カブとニンジンの組み合わせは後者の代表例。ニンジンのセリ科特有の匂いをアブラナ科につ
く害虫が嫌って,あまり寄りつかなくなります。
一方,ニンジンにつくセリ科の害虫はキアゲハが有名です。黄緑色の地に黒い筋の派手な模様
をした幼虫が葉を食い荒らします。キアゲハはセリ科にしか産卵しないので,ニンジンのそばに
アブラナ科のカブを混植すると,あまり寄りつかなくなります。
ニンジンを先行して栽培
栽培期間はカブよりもニンジンのほうが長く,また,カブのほうがニンジンよりも害虫の被害
に遭いやすいことから,ニンジンの栽培を先行させて,ニンジンの間引き時にカブの種まきを行
います。カブが生育を始める頃には,ニンジンの葉が広がっていて,カブの害虫を防いでくれま
す。
1 ニンジンの種播き
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ニンジンの種を播く。条間を広めにとり,種を条播きする。(種を播き終わったら,覆土して
しっかりと鎮圧する)
2 ニンジンの間引き
ニンジンの間引きは3回程度。本葉が出たら株間2~3㎝,本葉3~4枚で5~6㎝,本葉6
~7枚で10~12㎝にする
3 カブの種播き
ニンジンの最終間引きをしたときに,条問の中央にカブの種を条播きする。本葉が出たら,2
~3回に分けて間引き,最終的に株間を12㎝程度にする。
(種は1㎝間隔で播く,播き終わったら,覆土して鎮圧しておく)
種まき後の鎮圧がニンジンの発芽のコツ
ニンジンは好光性種子のため,種播き後,覆土は薄めにします。そのため乾燥しやすく発芽に
失敗しがちです。覆土後,鍬の背を押しつけたり,足で踏み固めたりして,しっかり鎮圧して土
と種を密着させ,水分を吸いやすくします。カブは遅れて種を播くため,ニンジンの葉の陰にな
り,水分が保たれ,発芽しやすくなります。
チンゲンサイ×シュンギク
シュンギクの香りでアブラナ科の虫除けに
シュンギクを先に育てる
互いが虫除けになるコンパニオンプランツです。キャベツとレタスと同じ,アブラナ科とキク
科の組み合わせで,キク科独特の香りがアブラナ科につくモンシロチョウやコナガの飛来を防
ぎ,幼虫による食害を減らします。また,シュンギクにつくアブラムシの被害をアブラナ科のチ
ンゲンサイが防いでくれます。
チンゲンサイのほうが害虫による被害が大きいので,シュンギクを列でまいて先に栽培を開始
しておき,その列の隣にチンゲンサイを種播きします。株数を多く育てる場合は,列ごとにシュ
ンギクとチンゲンサイを交互に育てるとよいでしょう。
摘み取り収穫で長く楽しむ
シュンギクは東日本では草丈が高くなる株立ちタイプ,西日本ではキクナと呼ばれる葉に切れ
込みの少ない株張りタイプがよく栽培されています。
株立ちタイプは草丈20㎝程度で茎の先端を摘芯して収穫します。その後伸びてくるわき芽を
順次,摘み取るようにすると長期にわたる収穫が可能になります。その間にチンゲンサイは大き
く育ってきます。チンゲンサイは種播きから60日程皮で,株元で切って株ごと収穫しますが,
その後もシュンギクの摘み取り収穫は続けられます。株張りタイプは摘芯しないで,草丈が20
㎝ぐらいになったら,株元で切って一度に収穫します。
1 シュンギクの種播き
1か所3粒の点播きで2列播く。条間はやや広めに20~25㎝程度にする。
(薄めに覆土
し,しっかり鎮圧する)
2 シュンギクの間引き
シュンギクは本葉1~2枚で1か所1本立ちにする。最終的に本葉7~8枚までに間引き,株
間12㎝にする。
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3 チンゲンサイの種播き
シュンギクを最初に間引いたら,チンゲンサイをシュンギクの列の間に1か所3粒ずつ播く。
チンゲンサイは本葉5~6枚で間引いて1本立ちに。(1㎝程度覆土して,しっかりと鎮圧す
る。生育の弱い株を間引き,健全な株を残す)
色々な栽培に応用しよう!
アプラナ科の野菜であれば,チンゲンサイの代わりになります。コマツナ,カラシナなどにも
利用できます。ただし,山東菜やハクサイなど,葉が大きく広がる野菜を混植する場合は,シュ
ンギクの種を播くための,あらかじめ条間を広くとっておく必要があります。
ホウレンソウ×葉ネギ
肥料過多を防ぎ,ホウレンソウが美味しくなる
苦みやあくを抑える
ホウレンソウの味が苦かったり,あくが強かったりすることがありませんか。特に肥料過多で
育ったホウレンソウは葉の緑が濃くなりがちで,あくが強くなって,後味もよくありません。こ
れは肥料の窒素成分が多いと,ホウレンソウの葉の中で苦みやあくの原因となるシュウ酸が多く
つくられるためです。
そこでホウレンソウの近くに葉ネギを混植します。土の中の有機物は微生物などの働きで分解
し,窒素成分はまずアンモニア態窒素になり,それが酸化して亜硝酸態窒素,硝酸態窒素へと順
に変わっていきます。葉ネギが好んで吸収するのはアンモニア態窒素,ホウレンソウが好んで吸
収するのは硝酸態窒素です。余分な窒素成分を葉ネギが先に吸収してくれるため,ホウレンソウ
の味がよくなるわけです。
性質の違いをうまく利用
互いの性質が大きく異なるため,混植しても競合が起きにくくなります。ホウレンソウが発芽
のときに双葉が出る双子葉植物,菓ネギは単子葉植物。ホウレンソウは葉が広がり根は直根型に
対して,葉ネギは葉がまっすぐ伸びて根は浅根型と,性質は対照的です。また,葉ネギの根には
多様な微生物がすみつき,土壌を豊かで健全な状態にしてくれるのも重要なポイントです。
1 畝づくり
ホウレンソウ,葉ネギを交互 に育てる。葉ネギの植え場所は土を盛り上げ,条間のくぼみに
ホウレンソウを種播きする。
2 葉ネギの植えつけ
長さ15~20㎝の苗2~3株を束にして植える。市販のものでもよいが,種から育てるとき
は,鉢上げして苗を大きく育てておく。
(2~3株を束にして植える。株元を1~2㎝,土に埋
める。根が長すぎて植えにくい時は,1~2㎝に切ってもよい)
3 ホウレンソウの種播きと間引き
溝をつくり,そこに種を播く。覆土して,しっかり種と土を密着させることが発芽成功のコ
ツ。覆土後に足で踏んでもよい。間引きして最終的に株間5~6㎝にする。
色々な栽培に応用しよう!
葉ネギの代わりに長ネギやリーキ,ニラなども使えます。ホウレンソウの代わりにコマツナ,
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チンゲンサイなどの葉物野菜にも応用できます。なお,ホウレンソウは秋播きよりも春播きの時
のほうがあくが強く出やすいので,とくに春播き時には葉ネギとの混植をおすすめします。
植えつけ前にチェック!
植物の組み合わせは相性のよいものばかりではありません。一緒に植えるとどちらかが枯
れてなくなったり,収量が目に見えて落ちるなど,明らかに相性の悪い「負のコンパニオン
プランツ」もあります。
栽培環境によって,よいコンパニオンプランツが悪いコンパニオンプランツに変わる場合
もあります。なかには意外なものもありますので,実際に栽培に入る前には組み合わせのよ
し悪しをよくチェックしてみてください。
科・野菜名
アブラナ科
避けたい野菜
ゴマ
イチゴ
ニラ
キュウリ
インゲン
キャベツ
ジャガイモ
ナス・トマト
などのナス科
ダイコン
長ネギ
ナス
トウモロコシ
ニンジン
インゲン
野菜全般
ローズマリー・
ラベンダー・タ
イムなど
理
由
どちらも生育不良になる。混植,間作は避ける
イチゴの生育が悪くなる。ニンニクは生育促進に役立つ
が,同じ仲間だからといってニラを植えない事
本来は互いに生育促進をするよい関係。但し,ネコブセ
ンチュウなど,センチュウ害の発生する畑では,どちら
も被害を増やすので混植は避ける
隣の畝にキャベツがあるだけでジャガイモは生育が悪く
なり,収量が落ちる。畝を離して育てる
ジャガイモもナス科のため,近くで栽培すると疫病など
の病気,テントウムシダマシなどの害虫による被害が拡
大する。畝を離して育てる。後作も不可
ネギが出す何らかの成分を嫌って避けるように,ダイコ
ンが曲がって伸びたり,二股になったりする。畝を離し
て育てる
どちらも日光を好むため,混植するとナスが草丈の高い
トウモロコシの陰になり,生育が悪くなる。陰にならな
い程度離して育てる
どちらもネコブセンチュウなどセンチュウ害を増やすの
で,混植は絶対避ける。互いの後作も被害が拡大するの
で不可
ハーブ類は香りが虫除けに使えるが,同じ種類だけで増
えようとするので,他の野菜を一緒に育てると枯れてし
まう。また,生長を抑制する物質を出すものもある。利
用時はコンテナ植え等の状態で畑に置くとよい
※平成27年5月9日(土)晴耕雨読の日の学習活動として,昨年の『やさい畑』秋号の別冊付録を一日ががか
りで書写する。22:16完
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