木嶋博士の驚き育てワザ 第2回 丸々としたイモが,どっさりとれる 「サトイモの種イモは芽を上向きに植えつけるもの」と思っていません か。でも,逆さに植えつけると,あら不思議! 格段に収量がアップします。だれにでも筒単にできて,失敗知らず。 木嶋博士,おすすめの育てワザをご紹介します。 ここがすごい! 一 収量が増える 二 孫イモの大きさが揃う 三 土寄せが不要 四 病気に強くなる きじま・としお 東京大学農学博士。MOA自然農法文化事業団理 事。栃木県農業試験場生物工学部長などを経て, 自然農法や伝承農法の研究と後継者の育成に携 わる。 『伝承農法に学ぶ野菜づくりこんなに使え るコンパニオンプランツ』 (家の光協会)など著 書多数。 理論編 ── 芽を下に向けるだけで,育ち方が激変する まちがえやすい種イモと親イモの関係 最初に,いじわるな質問を一つ。サトイモを掘り上げてみると大豊作。イモがたくさんついて, 固まりになっています。さて,このなかで植えつけたときの種イモはどれでしょう? 真ん中の大きなイモが種イモ? いえ,違います。ほとんどの場合,種イモは養分を使い果た し,消えてしまっているか,痕跡しかとどめていません。 真ん中の大きなイモは「親イモ」です。種イモから芽が出て,その先につくのが親イモ。親イ モから茎葉が伸びたあと,親イモのまわりに接してできるのが子イモ。同様に孫イモ,ひ孫イモ ができます。収量をアップし,おいしいサトイモを作るには,孫イモをたくさんつけ,大きく育 1 てることかポイントです。 親イモが一定の深さでしっかりと育つ サトイモは熱帯地方原産で,比較的高温で水分が豊富な環境を好みます。一般的な植え方では, 種イモの芽を上にして植えつけますが,親イモはその上につくので,地表に露出して乾燥し,生 育が衰えるおそれがあります。そこで,土寄せを行って育てます。種イモを深植えするとよさそ うですが,それでは温度が上がらず,発育が遅れたり,種イモが腐ったりすることがあります。 今回,紹介する「サトイモの逆さ植え」では,種イモの下側から伸びた芽がUターンして地表 へと向かいます。親イモができるのは,種イモのほぼ横の位置。地中での深さが変わらないため, 温度も水分も一定に保たれ,よく育ちます。親イモが地表に露出しないので,土寄せは不要で手 間もかかりません。 さらなる利点は,親イモから茎葉が伸びるのが少し遅れることです。暖かくなってから茎葉が 地表に出るため,傷みが少なく,健全に育ちます。子イモから茎葉が伸びるのも遅れますが,そ の結果,子イモがあまり大きくならず,孫イモ,ひ孫イモに養分が行くため,イモの数が増え, 大きさもよくそろいます。 実技編 ── 種イモの向きをよく確認。下向きに植える 2 ●植え溝をつくる 植えつけのd20日以上前に,完熟堆肥かポカシ肥をまいてよく耕して おく。畝幅は60~70㌢,高さ10㌢の畝をつくり,深さ15㌢の植 え溝を掘る Point 「サトイモは熱帯地方原産。早く植えつけると低温でイモが傷み,病気 になることがあります。遅霜のおそれのない4月下旬を待って植えつけます。逆さ植えは普通植 えよりも芽が地上に出るのがやや遅れますが,この時期であれば,十分に生長が追いつきます」 ●種イモを土で覆う 種イモを30~50㌢間隔に溝に置いたら,イモの上部が深さ8㌢程 度になるように土で覆う。水やりは不要 検証編 ── 種収量の違いは一目瞭然! 11月下旬,初霜にあたり,葉が枯れ始めたので急いで収穫。 「きれい に違いが出ましたね。子イモが大きく育つと,逆に孫イモ,ひ孫イモは大 きくなりません。逆さ植えはイモの大きさがほぼそろい,使い勝手もよさ そうです。養分もそれぞれのイモにしっかりと行き渡っているので,食べ るとおいしいですよ」 3 4 さらにひと工夫!── 相性のよいショウガを一緒に育てよう 5 裏ワザ1 サトイモと混植するとショウガの品質がよくなる ショウガはサトイモと相性がよく,たがいによく育ち ます。どちらも水分を必要とするなど,似た栽培環境を 好むため,サトイモが育つ畑なら,ショウガも育てるこ とができます。それだけでなく,サトイモの葉でできる 日陰で,ショウガは乾燥から守られて育ち,収量も増え るほか,品質もよくなります。 南北畝なら,サトイモとショウガを交互に植えつけま す。東西畝なら,南にサトイモを植え,その北側にショ ウガを植えつけます。 サトイモの葉の日陰でショウガを育てる。夏 場の乾燥から守られ,ショウガがよく育つ 裏ワザ2 種ショウガを小分けすると収量が増える 種ショウガは,大きな固まりで売られています。植えつける際は,大きいままのほうが,よく 育つように思うかもしれませんが,けっしてそんなことはありません。 種ショウガは50㌘くらいになるように,かならず手で折って割るようにします。手で折るの は,内部を走る導管を傷つけず,自然な場所で分割するため。ナイフなどで切ると,かえって不 自然な場所で導管が切れ,傷口から腐ることがあります。 50㌘ほどの大きさであれば,芽は3~4つ程度ついていま す。分割することで生育が活性化され,芽がよく伸び,十分な大 きさのショウガに育ちます。大きな種ショウガを植えつけるより も,細かく分けて植えつけるほうが,収量も増えます。 種ショウガは,かならず手で折 って分割してから植えつける 種ショウガが大きいと,それだけたく さん新しいショウガができそうだが, 芽が伸びるのは数か所のみ。できたシ ョウガも,かえって小さくなりがち 種ショウガの大きさは50㌘程度がベス ト。種ショウガは分割されることで,生 育が促され,できるショウガも大きく育 つ。なお,種ショウガが小さいと乾きや すくなるので,何個かをまとめて並べて 植えると安心 『やさい畑』2015年春号 6
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