トウモロコシ”から見る世界経済

書評報告
“トウモロコシ”から読む
世界経済
光文社新書
06A2100H
谷澤 佑介
江藤隆司著
テーマ
エコノミストの一般的な傾向として工業品だけ
に目が奪われて、国際経済を判断しがち。
そのため例えばアジアの通貨危機や南米の
経済危機などでも超悲観的な見方がされる。
しかし、農産物をその国は輸出しているのか、
輸入しているのか、つまり穀物市場の視点か
ら見れば世界経済の様子は変わって見えてく
る。
例)タイの通貨危機
1997年7月、タイのバーツ切り下げ。
これらを発端とした、アジア通貨危機によって
穀物の消費減少、それによって供給過剰に
なったと新聞などでは説明されていた。
そしてそのタイのバーツ切り下げのニュース
以降、タイはつぶれるかのような悲観的な見
方が広がった。
例)タイの通貨危機
しかし、実際は通貨切り下げによって、タイは
どんどん儲けていた。
その理由は・・・
当時のタイは、トウモロコシやコメなどの農産
物の輸出国であり、農産物の輸出国にとって
は、対ドルに対して自国通貨が切り下げられ
るということは極めて有利に働くため。
なぜ、“トウモロコシ”なのか
トウモロコシは農産物の中でも経済性やあらゆる観
点から“万能選手”になり、現在様々なものにトウモ
ロコシが使われている。
トウモロコシは食用だけでなく、家畜向けの飼料のほ
か、かまぼこの中の弾力強材、アイスコーヒーのシ
ロップ、さらにはエネルギー・プラスチックにまで用
途が広がっており、日本の輸入数量は年々増加し、
今や年間1600万トンにも及ぶ。
このことから、穀物市場の代表といるのではないか
日本の経済を見る
(千トン)
日本のトウモロコシ輸入実績
20,000
16,007
15,000

16,584 16,097 16,606 16,111 16,221
14,225
1975年ごろから急激
に輸入数量が増加して
いる。
12,830
10,000

7,470
6,108
5,000
0
1970 1975 1980 1985 1990 1995 1997 1999 2000 2001
1990年が過ぎた頃か
ら伸び悩み、目立った
変化が見られない。
日本の経済を見る
1975年ごろか輸入数量が急激な増加
→高度経済成長により食生活に変化。植物油の油脂
類、畜産物の食肉などの摂取量の増加が顕著にな
る。飼料となる穀物の需要が増加。

1990年が過ぎたころから目立った変化なし
→高度経済成長期が既に過ぎ、GDPも2年連続前年
比マイナスを記録。穀物関係である搾油業界・飼料
業界もピークが過ぎ、下降線。しかし、ファースト
フードの成長にかげりがなく、穀物需要は大して減
少せず。

穀物需給の今後
中国
→国内農業政策と自給率の動向が、世界の需給関係
を大きく左右する。経済成長によってどこまで欧米
型の食肉生活になるかがポイントとなる。
 インド
→現在、急速に人口が増加。穀物生産が不作の場合、
大量輸入の可能性大。また、ブロイラー産業の発展
期にあり、飼料として穀物消費が増加し、輸入も増
加する予想される。

今後、需要拡大が予想でき、解決策は単収を増やすこと!!
感想(評価)
 穀物市場と経済の関係はなかなか学ぶ機会
がなかったので、この本を読んでさわりだけ
でも学ぶことができて、良かった。
 著者は伊藤忠商事の社員であり、いままでど
のような仕事をやってきたかが書かれていた
ので、商社の業務を知るのに参考になった。