基礎病態(糖尿病) ►1.糖尿病の症状 ►2.糖尿病の合併症 ►3.糖尿病の術前評価 1 糖尿病の症状 ►1.口渇 ►2.多飲、多尿 ►3.体重減少 ►4.昏睡 2 口渇、多飲、多尿 ► 糖尿病では、尿糖排泄による浸透圧利尿で多 尿となる。(浸透圧利尿のため、尿比重1.010 以上) ► 多尿のため、脱水となり血清浸透圧が上昇し 視床下部の渇中枢が刺激され、口渇感が生ず る。 ► その結果、多飲が起こる。 3 糖尿病合併症 ►1.急性合併症 ►2.慢性合併症 4 急性合併症 ►1.糖尿病性昏睡 a)糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡 b)高血糖高浸透圧性昏睡 ►2.感染症 肺結核等呼吸器感染症、尿路感染 症、皮膚感染症、手術後感染など。 5 糖尿病性昏睡(1) 糖尿病性ケトアシドーシス① ►高血糖、ケトーシス、アシドーシス。 ►糖が利用されないため脂肪組織から遊離 脂肪酸が動員されケトアシドーシスになる。 ►1型糖尿病:急性発症時、インスリン中断 時、感染症。 ►2型糖尿病:清涼飲料水の大量摂取時。 6 糖尿病性昏睡(1) 糖尿病性ケトアシドーシス② ► 症状 低体温、Kussmaul呼吸、アセトン臭、皮膚緊張 度の低下(脱水を示唆)、急性腹症など。 ► 検査所見 ①血糖250mg/dl以上 ②ケトン血症、ケトン尿症 ③重炭酸イオン低下、動脈血pH低値 7 糖尿病性昏睡(2) 高血糖高浸透圧性昏睡 ①2型糖尿病の高齢者に多い。 ②糖質の大量摂取、水分摂取不良、利尿剤投与、 脳血管障害、感染症(肺炎、尿路感染症)等に より出現。 ③著しい高血糖(1000mg/dl以上まで上昇)。 ④高度の脱水、高Na・K血症、血漿高浸透圧。 ⑤アシドーシスの欠如、ケトーシスの欠如。 ⑥予後不良(死亡率10~60%)。 ⑦合併症:血栓症、横紋筋融解症、治療に伴う脳 浮腫(急激な血糖、浸透圧の補正)。 8 糖尿病性昏睡(3)治療 ①速効型インスリンの投与(例えば血糖が600-1000 mg/dℓの場合100から150単位を静注、同量を皮下注 射する。昏睡になり数時間を経ているものにはさらに 1.5-2倍の量を投与する。) ②生理食塩水を2-3 ℓ投与する。(体重1 Kgあたり水分 75-100 mℓ, Na 8 mEq, K 6 mEq, Cl 5 mEq, P 1 mEq, Mg0.5 mEqの喪失がある。) ③必要に応じてカリウムを補給する。 ④感染症など基礎疾患の治療 。 9 慢性合併症 ► 1.糖尿病性神経障害 ► 2.糖尿病眼合併症 ► 3.糖尿病性腎症 ► 4.糖尿病足病変 ► 5.糖尿病性動脈硬化症 ► 6.皮膚病変、骨粗鬆症 ► 7.高血圧症、高脂血症、肥満 10 糖尿病性神経障害 ►1.有痛性糖尿病性神経障害 (手袋靴下型) ►2.単一神経障害(動眼神経麻痺など) ►3.糖尿病性筋萎縮症(下肢近位筋) ►4.自立神経障害:起立性低血圧、糖尿 病性下痢、弛緩性膀胱、など 11 糖尿病性眼合併症(1) 網膜症 A)初期病変 網膜の血管壁細胞の変性、基底膜の肥厚によ る血流障害、血液成分の漏出を原因に出血、 白斑、網膜浮腫などを生ずる。 B)続発する進行性病変 黄斑症、新生血管(網膜前、硝子体内)、硝子 体出血、網膜剥離により視力障害。 12 糖尿病性眼合併症(2) 網膜症の管理・治療 1.病期 ①正常②単純網膜症③増殖前網膜症④増殖網 膜症 2.早期網膜症の管理(①、②) 血糖管理、高血圧の治療など内科的治療を行い ③④への移行を阻止する。 3.進行した網膜症の管理(③、④) 眼科治療。光凝固療法。硝子体手術。 13 糖尿病性眼合併症(3) 1.白内障 高血糖により、ソルビトールが水晶体内に蓄 積し、水晶体の変性、白濁が起こる。 2.虹彩毛様体炎、血管新生緑内障。 3.眼筋麻痺(単一神経障害):動眼神経麻痺が 最も多く、次いで外転神経麻痺。 4.虚血性視神経症。 14 糖尿病性腎症(1) ► 腎糸球体血管周囲の結合組織のメサンギウムが増生 することによって、糸球体構造の破壊と機能障害が起 こる。 ► 病期 第一期(腎症前期)正常アルブミン尿 第二期(早期腎症期)微量アルブミン尿 第三期(顕性腎症期)顕性蛋白尿 第四期(慢性腎不全期) 第五期(透析療法期) 15 糖尿病性腎症(2) 腎症進展の指標 1.糸球体濾過値(GFR):正常140ml/分以上 2.尿中アルブミン排泄量(UAE) 正常尿<30mg/gクレアチニン 微量アルブミン尿30~300 mg/gクレアチニン 蛋白尿> 300 mg/gクレアチニン 16 糖尿病性腎症(3) 治療 ► 1.血糖コントロール ► 2.血圧コントロール:ACEI,ARBが第一選択。 ► 3.蛋白制限食(0.8g/kg以下)を、第三期から 開始する。 ► 4.腎性貧血:エリスロポエチン 17 糖尿病性足病変(1) ► 1.糖尿病患者の下肢潰瘍、壊疽は神経障害、 血管障害などの末梢循環障害による虚血と外 傷、感染症が複雑に関与して起こる。 ► 2.治療に当たっては全身管理と局所療法を同 時に行う。 ► 3.局所療法の基本は、病変部のデブリットメン と無菌化である。 18 糖尿病性足病変(2) ハイリスクの人 ► 1.60歳以上の高齢者。 ► 2.糖尿病罹病期間が10年以上。 ► 3.喫煙歴のあるもの。 ► 4.足の潰瘍、熱傷の既往。 ► 5.透析治療中。 ► 6.高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、脳血管 障害のあるもの。 19 糖尿病性動脈硬化症(1) 冠動脈硬化症 ► 1.糖尿病患者が心筋梗塞を起こす危険度は 健常者の3倍以上。 ► 2.はっきりした症状が無いことが多い。 ► 3.発症時には多枝病変などすでに進行病変 例が多く心不全、致死的不整脈を起こし易い。 ► 4.予後不良例が多い。 ► 5.糖尿病患者の死因第1位。 20 糖尿病性動脈硬化症(2) 脳血管障害 ► 1.脳出血より脳梗塞が多い。 ► 2.脳梗塞は、皮質枝のアテローム血栓性脳梗 塞と、穿通枝の小梗塞の多発例(ラクナ梗塞) が多い。 ► 3.急性期の治療としては、入院安静下で、脳 血流減少を避けるため原則降圧せず血糖管理、 脳浮腫対策を行う。 ► 4.慢性期の治療としては体位変換による血圧 変動に気をつけながらリハビリテーションを行う。 21 糖尿病性動脈硬化症(3) 下肢閉塞性動脈硬化症(ASO) ► 1.糖尿病患者の10~15%に合併する。 ► 2.病期診断には、Fontaine分類が用いられる。 Ⅰ度:冷感、痺れ感 Ⅱ度:間欠性は行 Ⅲ度:安静時疼痛 Ⅳ度:皮膚潰瘍 ► 3. Ⅰ度、Ⅱ度には薬物治療、Ⅲ度経皮経管 的血管形成術、Ⅳ度には外科的血管再建術が 適応される。 22 皮膚病変 1.糖代謝異常を基盤とするもの ①結合組織病変 ②血管障害性病変 2.皮膚感染症 ①細菌性:せつ、よう、毛包炎 ②真菌:白癬、カンジダ ③ウイルス:帯状疱疹、単純ヘルペス 3.薬剤性:光線過敏症など 23 骨粗鬆症 ► 1.骨減少症の発生頻度は、糖尿病患者は健 常者の2.5倍と報告されている。 ► 2.インスリン欠乏が骨芽細胞機能低下をきた し、骨形成低下を起こす。 ► 3.骨減少症は糖尿病の重症度、コントロール 状態に影響される。 ► 4.骨減少の予防として、良好な血糖コントロー ル、カルシウムを多く含む食品の摂取、適度の 運動が推奨されている。 ► 5.薬物療法は骨吸収抑制剤、ビタミンD等。 24 歯科合併症 ► 1.う蝕症 ► 2.歯周組織疾患など 糖尿病患者では歯科治療が非常に困難なこ とが多い。 25 糖尿病患者の術前評価1 ► 糖尿病の長期合併症 網膜症 retinopathy 腎症 nephropathy 神経障害 neuropathy 自律神経障害 autonomic neuropathy 冠動脈性疾患 coronary heart disease 末梢血管障害 peripheral vascular disease 26 糖尿病患者の術前評価2 ► 血糖のコントロール 測定頻度 平均的早朝空腹時血糖レベル 血糖の変動 ► 低血糖 頻度 起きる状況 自覚症状 重症度 27 糖尿病患者の術前評価3 ► 非薬物療法 食事療法 運動療法 ► 薬物療法 投与薬剤 用量 用法(投与時間の詳細) 28 糖尿病患者の術前評価4 ► 外科的介入の特徴 いつ食事をやめるか どのようなタイプの介入か(Major or minor) いつ施行するか 所要時間 ► 麻酔法 局所麻酔 硬膜外 (血糖、インスリン抵抗性への影響はほとんどない) 全身麻酔 29 糖尿病患者の術前評価5 ► 臨床検査 心電図 ►Q波などの異常は術後の心事故のリスクファクター 腎機能検査 ►慢性腎疾患は術後の心事故のリスクファクター 血糖値 ►>200mg/dlは深部感染のリスク上昇(OR≒10) ►HbA1c ? (>8%) 30 血糖のコントロール ► 200mg/dl以下にコントロールする 食事療法のみの2型糖尿病→特に治療必要なし。術前と術 後すぐに血糖を測定。200mg/dlを超えていた場合、少量の 短時間作用型インスリン投与。 経口糖尿病薬投与の2型糖尿病→前日まで服用させ、当日 は服用しない。>200mg/dlは同上。 インスリン投与2型および1型糖尿病→当日は量を調整して インスリン投与。(中間型に変更する場合もある)。 ► ICU入院急性心筋梗塞患者では80-110mg/dlの厳重 なコントロールの方がアウトカムが優れている 31 待機的手術時のインスリン投与 ► ► ► ► 5%グルコース+KCl 20meq/Lを持続点滴(100ml/hour)し 即効型インスリンを側管から持続注入する。 血糖は120~180mg/dlに保つ。(点滴中は血糖値は実際の 値より50mg/dl以上高目にでる。) 術前1日使用量が40U/dayでは1.0U/hで注入,40~80 U/dayでは1.5U/h,80U/day以上では2.0U/hとする。 血糖は1~2時間おきに測定し120~180mg/dlに保つように, インスリン量を調節する。 血糖が180mg/dl以上では持続注入インスリン量を0.5U/h増量する。 120mg/dl以下では持続注入インスリン量を0.5U/h減量する。 血糖が下がりすぎてもインスリンは術中最低0.5U/hは必ず注入する。こ の場合は点滴するブドウ糖の量を増量して対処する。 32 緊急手術時のインスリン投与 血糖 70以下 インスリン(U/h) 0.5 70-99 1.0 100-200 1.5 201-250 2.0 251-300 3.0 即効型インスリン6U皮下注 301-350 4.0 5.0 即効型インスリン8U皮下注 即効型インスリン10U皮下注 350以上 その他の対応 50%ブドウ糖20ml静注 33 オンラインExam ►ID livrev ►Password disc55 34
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