期待効用, プロスペクト理論, 行動経済学(3) どう思いましたか? 発展

2015/5/13
どう思いましたか?
期待効用,
プロスペクト理論,
行動経済学(3)
• うまいこといっているようじゃない?
• 何かカッコ良さそうなものが出てきて,
で実際の結果にもあってそうな答えを出
してくれて,問題なさそうじゃない?
~プロスペクト理論は何を説明しているか~
発展したはずが
• 実は元に戻ってしまっている
o Allaisのパラドクスを説明できていない
(Neilson & Stowe, 2001)
o 聖ペテルスブルグのパラドクスも説明できて
いない
(Rieger & Wang, 2006)
αとγが特定の組み合わせ
でないといけない
• 確率加重関数と価値関数は,そのままの形ではAllaisの
パラドクスを予測しない,値のとり方によってはAllais
のパラドクスの選択課題で一貫した選択を予測する
• 次スライドの2本の曲線に挟まれた領域の中にαとγの組
み合わせがないといけない
• ところが,これまでの研究で推定されたαとγの値の組み
合わせはこの領域の中に入っていない!
実はデータの説明が矛盾
• Neilson & Stowe (2001)
• 実データで推定されたパラメタ値ではAllaisのパラドク
スを説明できない
• パラメタ(parameter):データから推測する値
• つまり,実際の人間は累積プロスペクト理論からすれば
Allaisのパラドクスを引き起こさないことになる
1
0.9
0.8
0.7
0.6
α 0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
TK
A~B
CH
WG
ここのエリアに
入っていないと
ダメ
C~D
0
0.2
0.4
γ
0.6
0.8
1
1
2015/5/13
0.8
0.6
0.4
確確確確 w(p)
0.2
• Allaisのパラドクス同様,これまでの主要な確率加重関数は
パラメタ値がある条件を満たさないと、聖ペテルスブルグ
のパラドクスの賭けに対して無限の価値を与えてしまう
• そして既存のデータはその条件を満たしていない
• 期待効用理論からすら後退してしまう!
0.0
• Rieger & Wang (2006)
• Tversky & Kahneman (1992)型の関数は単調増加ではない
• 確率の値が増えると確率加重が小さくなる場合がある,そ
もそも確率加重関数として不自然
1.0
聖ペテルスブルグの
パラドクスすら説明できない
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
確確
単純増加にならない場合のTversky and Kahneman
(1992)タイプの確率加重関数
Rieger & Wang (2006)の定理
• 5つくらいある,物好きな人は原論文をみること
• 主要な結果:価値関数のパラメタα,βと確率加重関数
のパラメタγ,δについて,α<γ,β<δが満たされな
ければ,聖ペテルスブルグのパラドクスに対しては無限
の価値が生じうる
• 先行研究の推定結果は殆どこの条件を満たさない
結局何を
していたのだろう?
• Allaisのパラドクスから出発していたはずのプロスペク
ト理論が,実はいつの間にかAllaisのパラドクスを予測
できていなかったばかりか,聖ペテルスブルグのパラド
クスすら説明できなくなってしまっていた!
• 本当なら大事だ!というか本当なので大事だ!
• しかし,あまり認識されているとは言い難い
全てのモデルは
間違っている
• “Essentially, all models are wrong, but some are
useful”
• “All models are wrong, and the value of any
model is only to the extent to which it supports
the purpose for which it was built.”
(G. E. P. Box)
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