期待効用, プロスペクト理論, 行動経済学(2) 意思決定行動の アノマリを

2015/4/21
意思決定行動の
アノマリを解く
期待効用,
プロスペクト理論,
行動経済学(2)
~prospect theory~
プロスペクト理論
(prospect theory: Kahneman & Tversky, 1979)
• “~%で~手に入る”という対象を人がどう理解・評価
するか,期待効用からの逸脱をどのように表現するか
• 編集過程(editing processes)と評価過程(evaluating
processes)の2段階を想定する,プロセスを描く
• Allaisのパラドクス,Ellsbergのパラドクスは,人間の決
定が期待効用理論に従わないという以上に,そもそも人
間の決定を測る物差しが存在しないかもしれないことを
示している
• 科学は現象の理解のために量を作り出してきた
• それでは困るので,期待効用理論をうまく調整して何と
か人間の決定を描き出せる物差しを作りたい
編集過程
(editing process)
• 選択肢を分かりやすいように,都合の良いように編集
• 幾つかのルールを適用する
o 符号化(coding):損得を考える
o 統合(combination):選択肢をまとめる
編集
(editing)
評価
(evaluating)
o 分解(segregation):選択肢を分ける
o 消去(cancellation):共通したものを取り除く
評価過程
(evaluation process)
• 編集された選択肢の評価を確率加重関数と価値関数に
基づいて下す
•
, ; ,
=
+
• 当初は確率事象は2つのみ
• ついに確率にも確率を変換する確率加重関数を設定
• これだけでは単に期待効用理論をより柔軟にしただけ,これが
行動の理論たり得るには
と
の満たすべき性質を特定し
なければいけない
価値関数
(value function)
• ある結果の大きさを主観的な価値に変換する関数,働きは
効用関数と同じ
• 3つの特徴
o 感度の逓減(dimishing sensitivity):
価値が大きくなるにつれ変化に鈍感になる
o 準拠点(reference point)の設定:
単純な金額ではなく準拠点からの変化に対して変動する
o 利得と損失の違い,損失回避(loss aversion):
同じ価値の変動でも利益か損失で動き方が違う,損失の
方が敏感に動く
1
2015/4/21
確率加重関数
(probability weighting function)
• 確率を決定のための重み,決定加重に変換する関数
• 細かい特徴(詳しくはKahneman & Tversky, 1979; 中村,
2013を参照)
o 低確率の過大評価,高確率の過小評価
o 劣確実性(subcertainty):0<p<1のとき,
π(p)+(1-π(p))<1,になる,
o 劣比率性(subproportionality):π(pq)/π(p) <
π(pq)r/π(pr)である.
o 0と1付近の確率はうまく表さない
o 等々・・・・
Kaheneman & Tversky (1979)の価値関数の形状
Allaisのパラドクス
• プロスペクト理論で問題を表現すると,
• 最初の問題:
•
1 1000万
≻ 0.89 1000万 + 0.1 5000万 + 0.01
• 2番目の問題:
•
0.11 1000万
≻ 0.1 5000万 +
0.9
0
0
Kahneman & Tversky (1979)の確率加重関数の形状
整理すると
•
( .
)
( .
)
>
(
万)
>
万)
(
準拠点という考え方
( .
- ( .
)
)
結局,
•
( .
)
( .
)
>
( .
( .
• 同じ結果を伴う場合でも問題をどう定式化するかで大き
く異なってくることを意味する
)
)
なので,
•
• 最終的にどれだけ手に入るかという結果ではなく,現時
点からみて損か得かに注目する
(0.11)< 1 − (0.89) ⇒ (0.11)+ (0.89)<1
• フレーミング効果
• 所有効果
これは劣加法性になる
2
2015/4/21
100
フレーミング効果
• 意味的に同じ情報が表現を変えることで
異なった影響を意思決定に与える
(Tversky & Kahneman, 1981)
o 違うのはポジティヴフレーム(PF)かネガティヴフレーム(NF)かど
うか,しかしどちらの問題でもPFの場合はAを選ぶ方が,NFの場
合はBを選ぶ方が多数派になる
リ
ス
ク
回
避
選
択
肢
の
選
択
比
率
90
ポジティヴ
ネガティヴ
80
70
60
50
40
30
20
(
%
10
)
0
賭け
アジア病
Tversky & Kahneman (1981)の代表的な結果
所有効果
(endowment effect)
第1グループ
グループ:
グループ
マグカップと
チョコバー
交換する?
自分
第2グループ
グループ:
グループ
チョコバーと
マグカップ
交換する?
自分
相手
• 同じものでも,それを自分が持っているか相手が持って
いるかで価値が変わってくる
• WTA (Willing To Accept) > WTP (Willing To Pay):
自分の持っているものを受け渡す金額の方が相手の持っ
ているものを買い入れる金額よりも高い
第3グループ
グループ:
グループ
チョコバーと
マグカップ
どっちがいい?
相手
自分
累積プロスペクト理論
(Cumulative prospect theory: Tversky & Kahneman, 1992)
• プロスペクト理論の改良版
o 選択肢に含まれる不確実事象が3個以上の時にも定義
できるよう定式化
o 不確実事象の順番も考える:順位依存(rank
dependent)という考え方
o 具体的な価値関数と確率加重関数を提案する
o 詳しく知りたい人はたとえば中村 (2013)を参照
Knetch (1989)より
3
2015/4/21
価値関数の形
確率加重関数がいっぱい
• 累積プロスペクト理論では確率加重関数はこの関数でな
ければいけない,というものはなく,いくつかの特徴を
表せる関数であれば何でもいい
α
 x x ≥ 0
v( x) = 
α
− λ(−x) x < 0
値が大きくなるにつれて
変化がなだらか
+
• 一杯ある
V(X)
-
o
o
o
o
+
Tversky & Kahneman (1992)
Prelec (1998)
Rieger & Wang (2008)
等々・・・・
X
損をしている時の
方が変化が急
-
準拠点
1.0
Tversky & Kahneman (1992)
! ))
0.2
Rieger & Wang (2008)
3 − 3b
p 3 − (a + 1) p 2 + ap + p
a2 − a + 1
(
)
0.0
π ( p) =
0.6
=exp(-(-ln
Plerec (1998)
0.4
! )) "!
!
確確確確 w(p)
+ (1 −
(
0.8
!
=
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.6
0.0
0.2
0.4
確確確確 w(p)
0.6
確確確確
0.4
0.2
0.0
w(p)
0.8
0.8
1.0
1.0
確確
確確
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
確確
4