2015/5/20 行動経済学 (behavioral economics) 期待効用, プロスペクト理論, 行動経済学(4) • “行動経済学(こうどうけいざいがく,英: Behavioral economics)、行動ファイナンス(英: behavioral finance)とは、典型的な経済学のように経済人を前提と するのではなく、実際の人間による実験やその観察を重視 し、人間がどのように選択・行動し、その結果どうなるか を究明することを目的とした経済学の一分野である。” (日本語版wikiによる) ~行動経済学という分野の開拓~ 結局人が何をしているか • 期待効用理論以外の枠組みも積極的に利用して人間の経済 行動を理解しようとする研究分野 o 期待効用理論は行動の記述をする上で厳しすぎる制約を置いている, その制約を緩めたほうがかえってよく理解できることがある o “Behavioral game theory extends rationality rather than abandoning it. (Camerer, 2003)” 準拠点という考え方 • 最終的にどれだけ手に入るかという結果ではなく,現時 点からみて損か得かに注目する • 同じ結果を伴う場合でも問題をどう定式化するかで大き く異なってくることを意味する • フレーミング効果 • 所有効果 どっちがいいですか? どっちがいいですか? • ある伝染病が流行し,600人の人間が感染した. 放置すると全員が死亡する.対応策として下の2 案が提案された.あなたならどちらを選ぶか? • ある伝染病が流行し,1000人の人間が感染した. 放置すると全員が死亡する.対応策として下の2 案が提案された.あなたならどちらを選ぶか? A)確実に200人助かる A)確実に400人死ぬ B)1/3の確率で全員が助かるが, 2/3の確率で誰も助からない. B)1/3の確率で誰も死なないが, 2/3の確率で全員死ぬ. 1 2015/5/20 どっちがいいですか? どっちがいいですか? • 下の2つのうちどちらを選びますか? • まずあなたに2万円与えられます.そうなったと して,下の2つのうちどちらを選びますか? A)確実に5千円もらう A)その2万円から確実に1万5千円失う B)2万円もらえる確率が25%、何ももらえない 確率が75%のくじを引く B)その2万円から何も失わない確率が25%,2万 円失う確率が75%のくじを引く 100 フレーミング効果 • 意味的に同じ情報が表現を変えることで 異なった影響を意思決定に与える (Tversky & Kahneman, 1981) o 違うのはポジティヴフレーム(PF)かネガティヴフレーム(NF)かど うか,しかしどちらの問題でもPFの場合はAを選ぶ方が,NFの場 合はBを選ぶ方が多数派になる 90 ポジティヴ ネガティヴ 80 70 60 50 40 30 20 ( o 何もないところから始めるか2万円与えられるところから始まるか, あるいは200人助かるところから始まるか400人死ぬところから始 まるかで得と感じられるか損と感じられるかが変わる リ ス ク 回 避 選 択 肢 の 選 択 比 率 % 10 ) 0 賭け アジア病 Tversky & Kahneman (1981)の代表的な結果 所有効果 (endowment effect) 第1グループ グループ: グループ マグカップと チョコバー 交換する? 自分 第2グループ グループ: グループ チョコバーと マグカップ 交換する? 自分 相手 • 同じものでも,それを自分が持っているか相手が持って いるかで価値が変わってくる • WTA (Willing To Accept) > WTP (Willing To Pay): 自分の持っているものを受け渡す金額の方が相手の持っ ているものを買い入れる金額よりも高い 第3グループ グループ: グループ チョコバーと マグカップ どっちがいい? 相手 自分 2 2015/5/20 Nudge (ひと押し) • R. Thaler が提唱した概念 • “ほんの些細な違いが同じ問題に対しても異なる決定を 導く”という意思決定心理学の知見に基づき,“適切な 決定を導くためのほんのひと押しを政策決定者は行うべ きだという考え方 Knetch (1989)より 臓器提供者になりますか? (Johnson & Goldstein, 2003 in Science) • それを決めるのに一番重要なのは聞き方 • 2種類のデフォルト o Noといわない限りは勝手に臓器提供者 o なるといわない限り臓器提供者にならない • デフォルトの選択肢が選ばれることが多い,デフォルト 選択肢が決定を決めている デフォルトが“臓器提供者になる” デフォルトが“臓器提供者にならない” “臓器提供者 にならない” “臓器提供者 になる” 2つの選択肢 から選ぶ 3 2015/5/20 現実場面での プロスペクト理論 • 現実的なデータをみても,プロスペクト理論が想定するよ うな価値関数や確率加重関数の性質自体は再現できている • “本命-大穴バイアス”(favorite-longshot bias) (Griffiths, 1949; 小幡と太宰,2014) • 当たる確率の低い大穴馬券に対する過剰な人気 • 低確率の過大評価,という性質と一致する 小幡と太宰(2014)の結果 神経経済学 (neuroeconomics) 不確実性を考える脳 • 脳の働きから経済活動の意味を探る研究分野 • 経済行動の意味を脳科学・心理学的知見によってとらえ 直す o 効用の意味をまさに効用を考える脳の動きを用いて理解する o 脳の動きは直接的 • 曖昧さを考える時とリスクを考える時で脳の働きが違う o 曖昧さ:そもそもどの程度の確率か分からない o リスク:絶対ではないが,確率自体は分かっている • 確率的な意思決定を行う問題,知識を問う問題,他者の行 動を予測する問題,などを用いて曖昧さとリスクを区別 ? 実験で用いられた課題:3種類の課題いずれも,上側が曖昧さ(そもそもどのような状態 か分からない),下側がリスク(絶対ではないが,少なくともどのような状態かは分かる) を表す課題 4 2015/5/20 損失忌避と フレーミング効果 • 同じ結果でも得を強調するか損を強調するかで選択が変 わる o “5000ドルもらって2000ドル残る”と “5000ドルもらって3000ドル失う”は違う • 損失忌避と呼ばれる現象: 同じ額でも失う悲しみの方が得る喜びより大きい v(X) 曖昧さとリスクの場合では線条体(Striatum)の活性度も違う, また課題によって光る場所も異なる X 5
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