保険論(第14回) リスク回避 講義のまとめ 敬愛大学経済学部 2015年7月9日 大塚忠義 1 リスクの高い投資 ボラティリティ(volatility) =分散、標準偏差 =期待値の周りの変動 1.預金:100万円預けて満期150万円 2.株式:100万円の元手で50%の確率で成功 2-1.成功したら200万円失敗したら100万円 2-2.成功したら300万円失敗したら0 それぞれの平均と分散を計算してください あなたならどれを選びますか? 2 リスク許容 リスク選好 コインを投げて表なら100円貰い、裏な ら100円払う 5億円を狙って宝くじを3千円買う(ただし 期待払戻率は60%) リスク回避 1千万円相当の家を持っている。火事で 全焼する確率は1/1万 2千円払って火災保険に加入する 3 行動経済学 金融工学に心理学の視点をいれて経済行動を 説明する アニマルスピリット:リスクに対して、人は原始の 生存本能に基づき行動する傾向がある つまり、人は金融工学理論にあるように合理的な 投資判断をするわけではなく、損失を嫌がる 本能が合理的な行動にゆがみを与える カーネマン:2002年、『プロスペクト理論』により ノーベル経済学賞を受賞 4 プロスペクト理論(1) 質問1: 選択肢A:100万円が無条件で手に入る 選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円 が手に入るが、裏が出たら何も手に入ら ない 手に入る金額の期待値は100万円と同額で ある 一般的には、堅実性の高い「選択肢A」を選 ぶ人の方が圧倒的に多い 5 プロスペクト理論(2) 質問2: あなたは200万円の負債を抱えているものと する 選択肢A:無条件で負債が100万円減額され、 負債総額が100万円となる 選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払い が全額免除されるが、裏が出たら負債総 額は変わらない 6 プロスペクト理論(3) 質問2も両者の期待値は100万円と同額である しかし、質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべて の人が、質問2ではギャンブル性の高い「選択 肢B」を選んだ この一連の結果が意味することは、人間は目の 前に利益があると、利益が手に入らないというリ スクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損 失そのものを回避しようとする傾向があるというこ とである。 7 生活保障システム(1) 通常の生活のなかでさらされる「生活リス ク」から個人やその家族を保護・保障する 諸制度を1つのシステムと捉えたもの 3つのサブシステムから構成される •社会保障:政府の責任により国民の生活 を支える。 •企業保障:企業がその従業員のために •個人保障:個人が自己責任で 生活保障システム(2) •社会保障:公的保障 •企業保障、個人保障:私的保障 3つのシステムがそれぞれの機能を果 たすことにより、国民生活の安定や福 祉の維持増進が確保できる 公的保障:強制的制度、政策により保 険料、給付内容、給付水準が定まる 私的保障:公的保障の在り方に根本的 に制約される 生活保障システム(3) アメリカ 自由と自己責任の国、国家による束縛を嫌 う、低福祉、低い税金、民間保険の普及 健康保険、老齢年金は企業年金か個人加 入、eg. 401K EU 旧世界、宗教色が色濃く残る 高福祉、高い税金、民間保険は富裕層の み 国による健康保険、手厚い公的年金 公私役割分担 •どの経済主体がどの程度まで、生活リ スクを保障するか 国?会社?自分? •どの経済主体がどの程度まで、保険 料を負担するか 自己責任と国による強制 ⇔最低限の生活の保障(憲法によって 定められた基本的な人権) ライフステージ 人が生涯のなかで負う責任とリスクの 大きさは異なる。 ライフイベント 就職、結婚、出産、子供の入学・卒業 そして定年 それぞれのステージの応じた生活設計 とリスク管理が必要となる Question? お疲れ様でした 13
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