マイクロウエープ照射による膨張黒鉛の生成 - 愛知工業大学

2
1
愛総研・研究報告
第 7号 2
005年
マイクロウエープ照射による膨張黒鉛の生成
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1.はじめに
膨張黒鉛はパインダーを使うことなくシート状
に成型でき,フレキシブルな黒鉛シートを製造す
ることが出来ることから,大量に生産されている.
その成型した黒鉛シートは種々の形状に打ち抜い
て,シール材,パキング材,あるいはシートのま
1
3
]・ 膨 張 黒 鉛 は
ま熱絶縁材として使われている [
層状構造を持つ黒鉛が種々のインターカレーショ
ン
イb合 物 を 作 る こ と を 利 用 し た も の で , 工 業 的 に
は硫酸のインターカレーションイ七合物とし 9 そ れ
をいったん水洗して分解させることによって残留
佑合物と呼ばれるインターカレーションした硫酸
0000C程 度 の 高
量を少なくしたものに変えた後, 1
温に急熱することによって作られている.高温へ
の急熱によって,黒鉛層聞に残留していた硫酸が
ガスに分解し,それに伴って層間が大きく引き裂
かれ,層面に垂直方向に優先的に膨張することに
よッて生成する.したがって 3 膨張黒鉛を構成す
る粒子は, F
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)に SEM像 と し て 示 し た よ う な 芋
虫状の粒子である.この膨張黒鉛をロール成型し
て 作 ら れ た 黒 鉛 シ ー ト は , 潤 滑 性 , 耐 熱 性 3 イ七学
的安定性,熱およぴ電気に対する高伝導性などの
黒 鉛 固 有 の 特 性 に 加 え て 9 可 擦 性 p 圧縮復元性,
そして種々の形状への打ち抜きが可能であるなど
の特性を持っている.最近 3 この黒鉛シートの原
料である膨張黒鉛が大量の重油を収着し得ること
[
4,
5
], さ ら に 生 体 液 な ど の 収 着 も 可 能 で あ る こ と
[
6,7]が見出された.
i
g
.1から分かるように,少なくとも
膨張黒鉛は F
3種 類 の 細 孔 を 持 っ て い る . す な わ ち 3 芋 虫 状 粒
子が複雑に入り組んで出来た比較的大きな細孔
(空間と呼ぶ方が適当といえる) ,粒子表面のク
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.1
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レ パ ス 状 の 細 孔 そ し て 粒 子 内 部 の 細 孔 (F
である.これらの細孔の存在と黒鉛表面が親油性
(援水性)であることが 3 大 き な 重 油 収 着 量 の 原
因となっていると考えられる.したがって,これ
愛知工業大学工学部応用他学科(豊田市)
らの細孔の定量的な評価が必要となり,一連の研
8
1
3
].粒子内の細孔は, F
i
g
.1
b
)
究を行ってきた [
の例のように,粒子の割断面を作製し,細孔断面
を楕円形に近似して 3 画像処理プロセスを用いて
評価することができる [
8].また芋虫状粒子が入り
組むことによって生成した空間は 3 パラフィンを
充填した後,その断面を画像処理することによっ
て評価できる [
8
].
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一方,重油収着という新しい用途の開発に伴っ
て,膨張化のためのプロセスの再検討も行われる
ようになった.最近 3 マイクロウエーブの照射に
よって膨張黒鉛が作成可能であることが示された
[
1
4
1
6
]
.
本 研 究 で は , 家 庭 用 の 400W 電 子 レ ン ジ を 用 い
て硫酸残留イ七合物にマイクロウエーブを照射し,
生成した芋虫状粒子について,内部細孔の構造を,
画像処理プロセスによって解析し,一般的に使わ
0000Cへ の 急 熱 に よ っ て 作 製 し た 膨 張 黒
れている 1
鉛のそれと比較した.
2. 実 験
膨張黒鉛作製のための原料としては,鱗片状天
然 黒 鉛 ( 平 均 粒 子 径 300μm) を原料として 3 電 気
他学的に硫酸をインターカレーションさせ(消費
3
.
3
3Ah/kg) た 後 , 水 洗 す る こ と に よ っ て 残
電力 3
留伯合物としたものを用いた.残留イじ合物の作製
およびその高温への急熱処理によって生成した膨
22
張黒鉛中の細孔構造については前報 [
9
]で報告した.
.
6gを 300mLビーカー中に計り取
残留佑合物約 0
り,それを家庭用電子レンジ中で, 20 お よ び 60
秒間マイクロウエーブで照射した.
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. 2 の手順で割
生成した芋虫状粒子を取り, F
断面を作製した.
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割断面の走査電子顕微鏡像を 10 kVによって加
速された電子線によって 200倍の倍率で測定した.
この SEM像 を 二 値 化 し た の ち 透 明 紙 に ト レ ー ス し
た後,スキャナーを使って再度コンビュータに読
み込み,画像処理ソフト(三谷商事 MacSCOPEVe
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.
2
.
5
.
6 )によって解析した.多数の細孔断面につい
て,断面の面積,断面を楕円形と仮定したときの
長軸および短軸の長さ,アスペクト比を測定し,
ぞれらの分布をヒストグラムで表わすとともに,
平均値を求めた.割断面の作製方法ョ SEM像 の 二
値イじなどについての詳細は別に報告している [
8
].
比較のために,膨張黒鉛製造のための原料とし
て市販されている残留化合物粉末を p 実験室で
10000C に急熱し, 10000Cに 60秒間保持すること
によって得られた膨張黒鉛[
1
3
]に つ い て も 同 様 の
測定を行った
a
生成膨張黒鉛を肉眼で観察すると,膨張した芋
虫状粒子の中に,充分膨張していない粒子も少数
認められ 2 膨 張 が 均 一 に 生 じ て い な い こ と が 明 ら
かになった.この不均一性は原料塊の表面ではほ
とんどなく,内部ほど顕著な傾向が認められた.
10000Cへの急熱によって作製した膨張黒鉛中には
このような不均一性は認められなかった.
10000Cへの急熱の場合には,膨張黒鉛は赤熱し
ており 3 空気中で行うと, 60秒以上の時聞を保持
すると黒鉛が酸化される危険がある圃これに対し
て,マイクロウエーブ照射による場合は,赤熱す
るほどの高温になることは無く,酸化の危険性は
非常に低いと云える.
3ムマイクロウエーブ照射膨張黒鉛の細孔構造
20および 60 秒間のマイクロウエーブ照射によ
って生成した芋虫状粒子を探取して 3 そ の 割 断 面
の解析を行った.細孔断面の面積,長軸および短
軸の長さをヒストグラムとして,それぞれ F
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)
および b
) として示し,平均値を T
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とめた.なお 3 そ れ ぞ れ の 細 孔 パ ラ メ ー タ は 非 常
に広い範囲に変動するので,比較を容易にするた
め,パラメータの大きな値の部分を別のヒストグ
ラムとし,その積算値を小さな値の部分を示した
ヒストグラムの右端に示した.また,ヒストグラ
ムの縦軸は,それぞれのパラメータ値を持つ細孔
の個数を表しているが,測定した細孔総数は試料
によって異なっているので,試料同士を比較する
際には 3 縦 軸 の 数 値 そ の も の で は な く , ヒ ス ト グ
ラム全体の形状を比較することとなる圃
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3. 結 果 と 考 察
3
.1.マイクロウエーブ照射による膨張佑
原料である残留黒鉛に電子レンジ中でマイクロ
ウエーブを照射すると,最初,瞬間的に火花を発
するが,それとほぼ同時に黒鉛が膨張し,膨れ上
がり,見掛けの体積は 100倍以上となる.しかし,
黒鉛が赤熱することはなく,高温になることはな
かった.
マイクロウエーブ照射の場合は, 50 mg以上の
原料残留黒鉛を用いることが必要で,これ以下の
量では電子レンジのスイッチをオンとしても,膨
張 化 が 生 じ る こ と は な か っ た . こ れ は 3 マイクロ
ウエーブによる渦電流が生成しないためと思われ
る.また,原料粉末塊の表面近くがより膨張する
傾向が認められた.
約 17,
000個の細孔についての平均値を見ると,
面積,長軸および短軸の長さは, 20秒照射のもの
でも 60秒照射のものでもほぼ同じであり,マイク
ロウエーブを照射する時聞は粒子内の細孔に対し
てはほとんど影響しないと云える.アスペクト比
はほぼ 0
.
4であり,原料黒鉛の膚面に垂直方向へ膨
張し,膨張の方向が短軸を形成している.
ヒストグラムで示した細孔断面の面積および軸
長 の 分 布 (F
i
g
.3aお よ び b) も,マイクロウエー
ブ照射時間によっては大きく変動せず,その形状
はほぼ同ーであると云える.しかし,それぞれの
i
g
. 3 中の挿入
パラメータの大きな値の部分(F
図)を比較すると,面積では顕著でないが,長軸
および短軸の長さでは明らかに, 60秒照射の方が
大きな値を持つ細孔の数が増えている.
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24
細孔分布のヒストグラムは,マイクロウエーブ
を照射する時間が,生成膨張黒鉛の大きな細孔の
生成に対して影響を及ぼしていることを示してい
る.たとえば,重油収着などの用途を考えた場合
は,比較的大きな細孔が望ましいことから,マイ
クロウエーブ照射時聞がその性能に影響を及ぼす
ことが考えられる.
3
.
3
.マ イ ク ロ ウ エ ー ブ 照 射 と 急 熱 と の 比 較
マイクロウエーブ照射による膨張黒鉛作製の実
用イじの可能性を探るために,市販の残留黒鉛から
10000Cへの急熱によって作製したものとの比較を
行った.急熱処理による場合には,その温度での
保持時間も細孔構造に影響を持ち, 60秒 程 度 の 保
持が望ましいことが知られている [
1
3
]ので,ここで
も 60秒間の保持時間で比較を行った.
1000 oC,60秒 間 保 持 に よ っ て 作 製 し た 膨 張 黒 鉛
i
g
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,
の細孔構造パラメータのヒストグラムを F
a
b
l
巴 1中に示した.
それぞれの平均債を T
保持時間 60秒についてのヒストグラム, Fig.3b)
とのを比較すると,急熱によって作られた膨張黒
鉛 (F
i
g
.3c)の方が細孔パラメータが小さい値に
鋭くなっており,大きい値を持つ細孔もマイクロ
ウエーブ照射の場合の方が多いように見える. し
かし,平均値で見ると,長軸および短軸の債はほ
とんど差がなく,面積が急熱の場合の方が幾分大
きい.
10000Cへ加熱したときに生じる重量減少率は 3
残留化合物中に残存し,ホスト黒鉛の膨張を引き
起こすのに有効なインターカレートの量の目安と
考 え ら れ て い る . そ の 値 を 2つ の 原 料 で 比 較 す る
と , 急 熱 処 理 に 使 わ れ た 残 留 化 合 物 の 方 が 3倍 近
く大きい.このことは,残存インターカレート量
が多いことが,必ずしも大きく膨張することに繋
がらないこと示しており,必要最小限のインター
カレート量があることが分かる.
4. おわりに
マイクロウエーブ照射によって膨張黒鉛を作製
することが可能であり,生成した芋虫状粒子中の
細孔構造は,急熱によって作製したものとほぼ同
ーであった.
マイクロウエーブ照射は,室温で行うことが可
能であり,赤熱するほどの高温になることがない
ため,空気中でも酸イじされる危険性が低いと云え
る.マイクロウエーブ照射による膨張佑において
も 3 急、熱の場合と同じように 60秒 程 度 の 保 持 を す
ることが望ましい.しかし,膨張が原料の塊の表
面で選択的に起こる傾向があることは注意を要す
る.
膨張黒鉛の製造にマイクロウエーブ照射を利用
することは,装置が簡便であること,高温を必要
としない(すなわち,高温炉を必要としない)こ
と,エネルギー消費を少ないことなどの利点があ
る.しかし,膨張が塊の表面付近で起こり易く,
膨張に不均一性が生じる可能性があるなどの問題
点も指摘しなければならない.したがって,大量
の膨張黒鉛を製造するためには,例えば 2 原料黒
鉛をある程度薄い層にして,連続的にマイクロウ
エーブが照射されている場所を通過させることが
有効と考えられる.
謝辞
本研究は,文部科学省私学助成事業・学術フロ
ンティア事業 r21世紀を支える材料の開発一環境,
エネルギー,情報に資する材料開発に関する基礎
研究」の一環として行われたものである.記して
謝意を表する.
引用文献
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2005年 5月 2 日)