第 2章 人体の構造・機能

第
1
人間の体はさまざまな細胞、組織、器官で構成されており、
それぞれが特定の役割を果たしながら、
安定して生命を維持するように働いている。
内外からのさまざまな刺激を受けながらも
体の内部環境は常に一定に保たれている(ホメオスタシス)
。
2
しかし、何らかの原因(遺伝子異常などの内的成因や
感染症などの外的成因)により
この身体の内部環境のバランスが崩れ、
健康が維持できなくなる。
3
今、われわれの周りには、さまざまな疾病がある。
また、生活環境の変化から
健康者が減少している傾向が見られる。
病的な状態を正しく理解するためには、
人体の正常な解剖・生理機能を学ぶことが不可欠である。
4
正常な老化とは、何か?
これからの少子・高齢化社会において、
将来起こりうる問題点を予想し、対策を立てるために
人間の成長・老化のメカニズムを
深く理解することが必要である。
章 人体の構造・機能
2
1. 人体の構造と機能
A. 人体各部の名称
体幹
けい ぶ
たいかん
たい し
人体は、頭部・頸部・体幹・体肢に大きく分けられる。また、頭部は、
でん ぶ
え いん ぶ
頭と顔、体幹は胸部・腹部・背部・臀部・会陰部に区分され、体肢は、上
だいたい
か たい
肢(上腕・前腕・手)と下肢(大腿・下腿・足)からなる(図 2─1)
。
体腔
頭部と体幹には、骨と筋肉に囲まれた体腔( 図 2─2)という空間があ
はいそくくう
ふくそくくう
り、その中に臓器がおさまっている。身体には、背側腔と腹側腔の 2 つの
ず がい くう
せき ちゅう かん
体腔がある。背側腔はからだの後方側にあり、頭蓋腔と脊 柱 管から構成
されるが、これらは連続した腔である。頭蓋腔は頭蓋骨の中にあって脳を
せきついこつ
せき
おさめる。脊柱管は頭蓋腔の下方から延びていて脊椎骨で囲まれ、中に脊
ずい
きょうくう
髄をおさめる。腹側腔は、体の前方に位置し、背側腔よりひろく、胸腔・
横隔膜
起 始 部 は 腰 椎 部・ 胸 骨
部・肋骨部の 3 部からな
り、円蓋状に胸腔に盛集
する。停止部は、横隔膜
中央部の腱膜(腱中心)。
横隔膜は、自分の意思で
動かせる骨格筋で、呼吸
の際、横隔膜が収縮する
ことにより、胸郭が拡大
し吸期がはじまる。支配
神経は、第 4 頸神経から
の、横隔神経である。横
隔膜には、血管、食道が
横隔膜を貫くための 3 孔
( 大 動 脈 裂 孔・ 食 道 裂
孔・大静脈孔)があり、
食道裂孔が広いことによ
り、食道裂孔ヘルニア、
逆流性食道炎などが起こ
る。横隔膜の痙攣によっ
て、 し ゃ っ く り が 起 こ
る。
ふくこつばんくう
きょうかく
腹骨盤腔の 2 つの腔がある。胸腔は、胸郭に囲まれ、横隔膜(呼吸の際に
使われる筋板)によって腹骨盤腔と隔てられている。
図 2─1 人体各部の名称
前面
後面
あたま
けんじょうとっき
剣状突起
じょう し
上肢
あたま
頭
頭
けい
頸
けい
頸
けんぽう
肩峰
だいななけいつい
きょくとっき 第7頸椎(棘突起)
せ
背
じょう し
上肢
かた
肩
むね
胸
じょうわん
上腕
だいじゅうにきょうつい きょくとっき ろっこつきゅう
肋骨弓
第12胸椎(棘突起)
ひじ
肘
はら
腹
ちょうこつりょう
腸骨稜
ぜんわん
前腕
そ けいこう
鼠径溝
でん ぶ
臀部
て
手
だいたい
大腿
か し
下肢
しつがいこつ
膝蓋骨
だいたい
大腿
ひざ
膝
ひざ
膝
か たい
下腿
か たい
下腿
あし
足
20
あし
足
か し
下肢
図 2─2 人体の体腔
第 章 ●人体の構造・機能
ず がいくう
頭蓋腔
ず がいくう
頭蓋腔
せきちゅうかん
2
はいそくくう
脊柱管
背側腔
きょうくう
胸腔
せきちゅうかん
脊柱管
縦隔
おうかくまく
横隔膜
1
・人体の構造と機能
ふくそくくう
腹側腔
じゅうかく
ふくくう
腹腔
こつばんくう
骨盤腔
じゅうかく
胸腔は縦隔によって 2 つの区画に分けられる。右と左の肺は、縦隔の両
きょうせん
側の胸腔内に位置している。縦隔には、心臓、食道、気管、胸腺と心臓に
付随する大血管が含まれる。
腹骨盤腔は横隔膜の下に位置する。この腔の上部は腹腔と呼ばれ、胃・
かんぞう
たんのう
すいぞう
ひ ぞう
じんぞう
腸の大部分、肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓・腎臓が含まれる。腹骨盤腔の下部
ぼうこう ちょくちょう せいしょく き かん
は骨盤腔と呼ばれ、膀胱・直腸・生 殖 器官の体内にある部分が存在する。
器官とは、特定の機能を果たす組織の集団である。様々な器官は、連携
してシステム(系)を作り、生命を維持するのに必要な働きを分業してい
る。人体は主要な 11 の器官系から構成され、それぞれ特定の機能をもつ。
B. ホメオスタシス:内部環境の恒常性
人体は、絶えず細菌の感染や騒音、心理的ストレス、空腹など、体の内
外からの様々な刺激に反応しながらバランスをとって働き、体の中を一定
範囲内に保っている。これを内部環境の恒常性=ホメオスタシスという。
ホメオスタシスとは、
“homeo 同じ”状態に“stasis 留まる”の 2 つの
主要な 11 の器官系
①外皮系、②骨格系、③
筋系、④神経系、⑤内分
泌系、⑥循環器系、⑦リ
ンパ系、⑧呼吸器系、⑨
消化器系、⑩泌尿器系、
⑪生殖器系。それぞれの
機能については次節 A
〜K で詳述する。
ホメオスタシス
内部環境の恒常性
単語からなる言葉で、外部環境の変化に対して生体の内部環境をある範囲
けっとう ち
内で一定に保つことを意味する。身体は、体温の調節、血糖値の調節、水
分や塩分の調節、血圧の調節など、数多くのホメオスタシス機能をもち、
これが正常に働くことによって健康を保つことができる。
21
2. 各器官と機能
A. 外皮系
皮膚、毛髪や爪などの付属器官からなる。皮膚は、体の表面を覆い、体
内の組織を保護している。また、汗をかいたり毛穴を閉じたりして、体温
の調節をしている。
B. 骨格系
こっかく
骨格とは骨組みのことであり、人間の骨格は普通 206 個の骨で構成され
ている( 図 2─3)
。部分的には、頭蓋骨 29 個、脊柱 26 個、肋骨および胸
骨 25 個、肩・腕・手 64 個、骨盤・脚・足 62 個に分類できる。骨格は
図 2─4 全身の筋肉
図 2─3 全身の骨格
後面
前面
とうちょうこつ
頭頂 骨
こうとうこつ
後頭骨
ぜんとうこつ
前頭骨
そくとうこつ
側頭骨
頸椎
さ こつ
ろっこつ
きょうこつ
肩甲骨
胸骨
肋骨
ようつい
腰椎
じょうわんこつ
きょうつい
前面
後面
前頭筋
こうとうきん
後頭筋
きょう さ にゅう とつきん
けいつい
鎖骨
けんこうこつ
ぜんとうきん
上 腕骨
胸椎
かんこつ
寛骨
とうこつ
橈骨
しゃっこつ
尺骨
胸 鎖 乳 突筋
そうぼうきん
僧帽筋
そうぼうきん
さんかくきん
僧帽筋
三角筋
さんかくきん
だいきょうきん
三角筋
大胸筋
じょうわん に とうきん
じょうわんさんとうきん
上 腕二頭筋
上 腕三頭筋
ぜんきょきん
こうはいきん
前鋸筋
広背筋
ふくちょくきん
腹直筋
わんとうこつきん
腕橈骨筋
だいでんきん
せんこつ
仙骨
大臀筋
ぼうこうきん
縫工筋
び こつ
尾骨
ざ こつ
し こつ
坐骨
指骨
ちゅうしゅこつ
だいたいよんとうきん
大腿四頭筋
中 手骨
しゅこんこつ
だいたいこつ
大腿骨
ひ こつ
手根骨
しつ がい こつ
膝蓋骨
ぜんけいこつきん
腓骨
けいこつ
脛骨
そっこんこつ
足根骨
ちゅうそくこつ
しょうこつ
踵骨
中 足骨
し こつ
趾骨
22
前脛骨筋
ひ ふくきん
腓腹筋
きん
ヒラメ筋
か たいさんとうきん
下腿三頭筋
けん
アキレス腱
骨・軟骨・関節からなり、働きは、体を支える、臓器を保護する、血球を
第 章 ●人体の構造・機能
つくる、無機塩類を蓄えるなどである。
2
C. 筋系
きん にく
こっ かく きん
おう もん きん
へい かつ きん
しん きん
筋肉には、骨格筋(横紋筋)
・平滑筋・心筋の 3 つがある。また、筋肉
ずい い きん
ふ ずい い
は、自分の意志で動かせる随意筋と、意思で動かすことができない不随意
きん
・各器官と機能
2
筋に分けられる。骨格筋は骨についている筋肉で、これが収縮したり弛緩
したりすることによって、骨が動き、体の運動が生じる( 図 2─4)。骨格
筋は随意筋である。平滑筋は、消化器や血管などの内部器官をつくり、不
随意筋である。この不随意筋の動きはホルモンや自律神経によってコント
ロールされており、ゆっくりした持続的な収縮である。心臓をつくる心筋
も、意思とは無関係に休みなく律動的な収縮運動を行う不随意筋である。
D. 神経系
神経系の構造は中枢神経系と末梢神経系の 2 つに分けられる。
[1]中枢神経
ちゅうすうしんけい
脳(大脳・小脳・脳幹)
、脊髄を中枢神経という。
脳(図 2─5)は、大脳と小脳、脳幹からなり、全重量の約 8 割を大脳が
占めている。
(1)大脳
だいのう
大脳の重さは男性で約 1350 g、女性で約 1250 gである。大脳はその表
だいのう ひ しつ
かいはくしつ
だいのうずいしつ
はくしつ
面を大脳皮質(灰白質)が覆い、内部に大脳髄質(白質)がある。主な働
きとしては、①全身の器官のコントロール、②言語機能のコントロール、
③運動機能のコントロール、④本能や感情を司る、⑤記憶するなどがあ
り、体の隅々から送られる情報を受け取り、判断し、体の各部に命令を与
える、人体の総司令室のような役割を果たす。大脳の表面である大脳皮質
のうかい
は、いくつもの隆起に折りたたまれている。これらの隆起を脳回という。
大脳皮質には、人類が進化するにつれて発達してきた新皮質と、それ以前
からある古皮質・旧皮質がある。
だいのう き ていかく
古皮質・旧皮質は、新皮質の内側にある大脳基底核(神経細胞の塊)と
だいのうへんえんけい
ともに大脳辺縁系という機能単位を形成する。この古皮質・旧皮質は、食
欲や性欲などの本能的な活動や、怒り、恐怖といった感情を支配する場所
脳を保護するシステム
脳 は、 硬 い 頭 蓋 骨 の 下
で、硬膜、くも膜、軟膜
の三重の保護膜によって
守られている。くも膜の
内側は髄液で満たされ、
これが衝撃を吸収する役
割を果たす。
大脳の重さ
脳・神経系は、臓器の中
でも最も早く発達する。脳
の重量は 4 〜 6 歳で成人
の約 90%を超え、8 歳で
プラトーに達する。
臓器別発育曲線
p.50
大脳皮質の隆起
厚 さ 2 〜 5 mm の 大 脳
皮質のしわを伸ばした広
さは、新聞紙ほぼ 1 枚分
である。しわを作ること
によって、より多くの表
面積を有することとな
り、膨大な量の情報を処
理できる。
である(本能と情動の座)
。
23
図 2─5 脳の区分
ちゅうしんこう
中心溝
図 2─6 大脳皮質の諸中枢
ずい い うんどう
とうちょうよう
随意運動
左半球の外面
頭頂葉
ち かく
知覚
ぜんとうよう
前頭葉
うんどうせいげん ご ちゅうすう
こうとうよう
後頭葉
運動性言語 中 枢
し かく
視覚
しょうのう
小脳
がいそくこう
外側溝
えんずい
そくとうよう
側頭葉
ちょうかく
延髄
しょうのう
聴覚
えんずい
小脳
延髄
ししょう
視床
かんのう
し しょう か ぶ
間脳
視床下部
ずい い うんどう
右半球の内面
随意運動
ち かく
知覚
しょうのう
小脳
か すい たい
下垂体
し かく
視覚
ちゅうのう
のうかん
脳幹
中脳
きょう
きゅうかく
橋
嗅覚
せきずい
えんずい
脊髄
延髄
きゅうかく
み かく
嗅 覚・味覚
古皮質・旧皮質を包み込むようにしている新皮質は、論理的な思考や、
脳幹の役目
何らかの理由で脳幹の機
能 が 損 な わ れ る と、 呼
吸、心臓の動き、体温の
調節などができなくな
り、人は生命を維持する
こ と が 困 難 に な る。 こ
の、 脳 幹 の 死 の 状 態 を
「脳死」という。
視床下部の体内時計
人は夜寝て昼間活動する
というように、1 日を周
期とした活動を送ってい
る。人間の本来持ってい
る 1 日の単位は 25 時間
であるが、間脳の視床下
部が外界の光などを元
に、1 日 24 時 間 の 周 期
を感知する体内時計をも
っているため、1 日のリ
ズムを微妙にコントロー
ルできる。体温も、午前
中は低く、午後から夕方
にかけて高くなるように
調節するのもこの体内時
計の働きである。
24
判断、言語など、高度な知的活動を営む重要な場所である(知・情・意の
座)
。
ぜん とう よう
とう ちょう よう
そく とう よう
こう とう よう
大脳皮質は、前頭葉・頭 頂 葉・側頭葉・後頭葉の 4 つの葉に大きく分
けられ、部位によってそれぞれ特定の機能をもつ(図 2─6)
。
(2)脳幹
大脳半球と脊髄を結ぶ部分を脳幹といい、頭側から間脳・中脳・橋・延
髄の 4 つの部分からなる。脳幹の重さは約 200 g である。脳と全身をつな
ぐ神経線維が通っている。脳幹には、呼吸、心拍、体温調節など、基本的
な生命現象を司る役目がある。また、脳幹には、意識を覚醒させる役割を
果たす脳幹網様体がある。
し しょう か
ぶ
脳幹の一部である間脳は視床と視 床 下部に分けられる。視床は嗅覚以
外のすべての感覚を大脳に伝える神経の中継点である。視床下部は、自律
神経系やホルモン系の働きを司るとともに、体温、睡眠、食欲、性機能な
どの中枢でもある。
そのほか、中脳は視覚、聴覚の伝導路の中継点があり、橋は顔や目を動
そ しゃく
えん げ
かす神経が出るところ、延髄は発語や咀嚼、嚥下、唾液分泌の中枢である
など、重要な働きを担っている。
きょう
しょうのう
大脳の下方、橋と延髄の背側に位置する 小 脳は、脳全体の 10%程度の
重さしかない。大脳とは、小脳テントといわれる硬膜が二重に折り返った
固い膜で境されている。小脳は、体を動かすための情報を処理し、なめら
かで協調のとれた運動をつくりだしたり、生命維持に欠かせない運動指令
小脳
小脳が障害されると運動
がぎこちなく、歩行がふ
らふらし(酔っぱらい様
歩行)、姿勢や体の平衡
感覚が保てなくなる。
をだしたりと、人体の基本的な活動を支配している。
・各器官と機能
間の直立、二足歩行を可能にする。新小脳は大脳から送られてきた大まか
な運動指令を細かく調整して、体の各部分に伝達している。
(4)脊髄
経線維の束のことである。全身の皮膚や筋肉からの情報は、この脊髄を経
て脳へ送られ、脳からの指令も、脊髄を経由して体の各部分へと伝達され
ずい せつ
る。脊髄は、脳と全身を結ぶ神経の連絡路である。脊髄は 31 個の髄節に
分かれ、それぞれの髄節から体の左右に向かって一対の脊髄神経がでる。
この神経が、頭部・顔面以外の全身の運動・感覚・機能を司っている。
脳からの運動指令は脊髄の前方(腹側)を通り全身へ、全身からの感覚
の情報は後方(背側)を通って脳へ送られる。脊髄は、情報の上り専用ラ
イン(上行性=感覚)と下り専用ライン(下行性=運動)を備えている。
脊髄
脊髄は背骨の脊柱管の中
に納まっている。脊髄も
脳と同様に、硬膜、くも
膜、軟膜という 3 層の膜
に包まれている。くも膜
の内側は髄液で満たされ
ており、外界からの衝撃
を和らげる役目を果た
す。脊髄の長さは脊柱管
より短く、第 1 〜 2 腰椎
あたりで終わり、その下
は腰神経や仙骨神経、尾
骨神経などが下に向かっ
て走っており、これを馬
尾神経という。
[2]末梢神経
まっ しょう しん けい
末 梢 神経は、出入りする部位によって、脳神経と脊髄神経に分類され
る( 図 2─7)。大脳、脳幹に出入りする神経を脳神経(左右 12 対)、脊髄
に出入りする神経を脊髄神経(左右 31 対)という。
末梢神経には、自分の意思で機能を支配できる体性感覚と、無意識に器
脳神経
厳密に言えば、第 1 脳神
経と第 2 脳神経は発生学
的には大脳の一部(中枢
神経)とされ、末梢神経
ではない。
官を支配する自律神経があり、体性感覚には感覚神経と運動神経がある。
かん かく しん けい
感覚神経は痛み、温度感覚、さわった感覚(触覚)、関節の位置感覚、
うん どう しん けい
振動感覚などを、脳の中枢に伝える(求心路)
。運動神経は、大脳皮質の
運動野から出た指令を体の各部に送り、そこで初めて、筋肉・関節が動く
(遠心路)。この大脳皮質から脊髄までの遠心路を錐体路という。錐体路
すい たい こう さ
は延髄下部で交差しており(錐体交叉)
、このため、右脳から出た指令は
左半身、左脳から出た指令は右半身の運動を司ることになる。
じ りつしんけい
ないぶんぴつせん
がいぶんぴつせん
かんせん
自律神経とはすべての内臓、内分泌腺、外分泌腺、血管、汗腺など、生
こう
命維持に欠かせない器官をコントロールする神経である。自律神経には交
かんしんけい
2
2
小脳は新小脳と古小脳に分けられる。古小脳は体の平衡感覚を保ち、人
脊髄とは首の部分にある頸椎から腰の部分にある腰椎にかけて伸びる神
第 章 ●人体の構造・機能
(3)小脳
ふくこうかんしんけい
感神経と副交感神経がある。これら 2 つの神経は、必要に応じてどちらか
25
図 2─7 中枢神経と脳・脊髄神経の根(腹側)
きゅうきゅう
終脳
し しんけい
視神経(Ⅱ)
かんのう
のう
脳
ちゅうのう
中脳
しょうのう
小脳
きゅうしんけい
嗅 球( 嗅 神経Ⅰ)
しゅうのう
きょう
橋
えんずい
延髄
けいずい
けいぼうだい
頸髄
頸膨大
嗅索
動眼神経 Ⅲ
かっしゃしんけい
間脳
きゅうさく
どうがんしんけい
滑車神経 Ⅳ さん さ しんけい
三叉神経 Ⅴ のうしんけい
がいてんしんけい
外転神経 Ⅵ がんめんしんけい
脳神経
顔面神経 Ⅶ (12対)
ちょうしんけい
聴 神経 Ⅷ ぜついんしんけい
舌咽神経 Ⅸ
めいそうしんけい
迷走神経 Ⅹ ふくしんけい
副神経 Ⅺ
ぜっ か しんけい
舌下神経 Ⅻ
けいしんけい
頸神経
(8対)
きょうずい
胸髄
きょうしんけい
胸 神経
(12対)
せきずい
脊髄
せきずいしんけい
脊髄神経
(31対)
ようずい
ようぼうだい
腰髄
腰膨大
せんずい
仙髄
び ずい
ようしんけい
腰神経
(5対)
尾髄
しゅうし
終糸
せんこつしんけい
仙骨神経
(5対)
ば
び
馬尾
び こつしんけい
尾骨神経
(1対)
自律神経失調症
交感神経と副交感神経の
バランスがうまくとれな
くなると、眩暈、動悸、
耳鳴り、頭痛、倦怠感、
冷え性、下痢や便秘、不
眠などさまざまな症状が
現れる。このような、原
因がはっきりしない身体
の不調を自律神経失調症
という。
の働きを強め、臓器や器官を自動的に調整し、バランスを保つ。たとえ
ば、交感神経が血管を収縮させたり、発汗を促進させたりするのに対し
て、副交感神経は、血管を拡張させたり、発汗を抑制させるというように
1 つの器官に関してお互いに相反する働きをもつ。交感神経はアドレナリ
ン作動性で、神経伝達物質としてはノルアドレナリンを分泌し、ストレス
時において“闘争-逃走”反応を起こすように作用する。副交感神経系は
コリン作動性で、神経伝達物質としてはアセチルコリンを分泌し、
“摂食
-生殖”行動に関与する。
(1)脳神経
のう しん けい
脳神経は左右 12 対ある。働きは主に頭部、顔面(迷走神経はのぞく)
の運動、感覚(温痛覚・触覚・固有知覚)の他に、嗅覚・視覚・聴覚・味
副交感神経の働きをもつ
神経
動眼神経、顔面神経、迷
走神経、舌下神経が、副
交感神経の働きをもつ。
覚といった特殊感覚を司る( 表 2─1)。また、脳神経には、副交感神経の
働きをもつ神経もある。
(2)脊髄神経
せき ずい しん けい
31 対の脊髄神経が脊髄から出ている。個々の神経は脊髄から出る高さ
26