能なことが要求される~ 従来この種の測定器としては差 動トランス - Core

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生 産 研 究
銅 テ ー
杉
プ厚み測定装置
正
男・熊
丸 博 之
X−一ω ノ2・2m・G(2m)・
・(2)
1. 緒 言
∵1::::喰嘘畿
薄肉銅テープ圧延機用厚み測定装置としては,100μ
以下の銅テープの肉厚を±1μ以下程度の精度で測定可
能なことが要求される.従来この種の測定器としては差
動トランスを用いるフライングマイクロメータが広く用
t磯,礪
いられ,また最近ではβ線厚み計などが用いられてい
る.しかるに前者は接触型の測定ヘッドを用いるため,
圧延工程中の動的な厚み計としては信頼性に乏しく,そ
の精度は圧延速度にもよるが,だいたい±5μ程度と考
えられる.また後者はβ線の散乱や特性X線の発生に
対する遮蔽を必要とし取扱いに注意を要しまた高価でも
あるので,筆者らは独自で比較的精度がよく取扱い容易
でかつ安価な厚み計を開発することにした.
試作した厚み計は渦電流法に基づくもので,誘導コイ
ルにより銅テt−一’プ中に50kcの渦電流を流し,その反
作用を検出コイルで取り出して増幅後位相検波して,あ
る設定値よりの厚み偏差を指示記録しまた厚み制御系へ
の出力信号を出すようにしたものである,試作器の性能
かつ θ〉>tと仮定する.
ここにω,μo,ρはそれぞれ角周波数,真空の透磁率,金
属平面の固有抵抗を表わし,θは等価導体厚と呼ばれる
もので,またα(x),Si(x)はそれぞれ余弦積分,正弦
積分を表わす.
さて高感度の厚み計を得るということはtの単位割
合変化に対し(1)および(2)式で与えられるslの
変化率が大きくてかつ安定した領域を見出すことであ
る.このためには2のmに関する微分曲線を求めれ
ばよいがその厳密な表示は簡単でない.数値的な近似式
のみを示せば次のようになる.
’釜一藷一(ωμ03a励2)・α66物〆・63m
は厚さ20∼190μの銅テープを0・5∼1.5μ程度の精
度で測定が可能でいちおう満足すべきものである.なお
(0≦m<1.5)… (3)
筆者らは概略設計のみ行ない,細部設計ならびに製作は
(ωμ032πh2)・αあピー
安藤電気に依頼した.
(1.5≦m<5)・・(3)ノL
ただし
2.設 計 理 論
2=121=/R2十X2
渦電流法による電磁厚み計を設計するには,まず与え
ちれた厚み測定範囲に適した測定コイルの形状および周
(3)式および
波数を定める必要がある.その具体的数値は,最終的に
(3)ノ式を図示
は実験結果に基づき定められるぺきであるが,だいたい
したものが第2
の見当をつけるため,第1図に示す導体配置につき理論
図でm ・O.6に
+1弗一・
極大を有し,そ
的に考察する.厚
さtの非磁性薄
れよりmが増
肉金属の無限平面
加するにつれて
上高さhの所に
緩やかに減少し
第2図 反作用インピーダンスの
辮による変化率
2Sなる間隔で流
れる往復交流電流1は,金属平面の存在のため反作用
第 1図
ている,したが
ってこの極大値
を受け,その単位長さ当たりのインピーダンスを増加す
に近い右側の範囲に測定系を設計すれば良好な厚み検出
る.この反作用インピーダンス2の実部,虚部をそれ
特性が得られるものと期待される.今対象とする金属テ
ぞれR,Xとすれば次のように計算される(1).
R一
22
ソ2・m{・−2mF(・m)}…………(・)
ー・一・
vの材質を銅としtの主なる測定範囲を10∼100μと
すれば,h,8をそれぞれ5mm,0.3mmと選べば, mの・
とるべき範囲はtの測定範囲に従い0.5∼5となる.
第13巻第12号
48⊥
測定周波数/は9のf直よll 50 kcと定まる.また〔3)
なくかつ十分利得を安定化したC尺結合増幅器によ)
式がノにより最大値をとるのはrn=1.2で上述のm
所要の大きさまで増幅され,さらにi)ング復調器によ0
の範囲に含まれ,かつ9》tなる仮定も満たされるの
0またはπの位相検波により厚み偏差の正負を判別さ
で,測定周波数を50kcと定める二とは妥当と考えら
れる.増幅器利得は標準サンプルにさらに厚さ5μ以内
れる.Sの値は検出感度を上げる点からは大きい方がよ
の金属箔を追加挿入して所要の偏差指示を得るよう調整
いが,測定すぺき金属テープ幅の1/2以上とすることは
するか,または全厚み測定範囲にわたり較正されたポテ
端末効果の混入の点よワ好ましくなく上限が存在する,
ンショメータRsよウ較正用偏差電圧を得てフルスナー
以上により厚み計設計のための大略の方針がつかめた
ル偏差指示を得るよ5調整される、
わけで,あとは二三測定コイルを試作し所要巻回数やそ
リング復調器より得られる厚み偏差に比例した直流出
れに流すべき電流値および所要増幅度などを実験的に決
力電圧は厚み偏差指示計ならびに直流増幅器を通じてペ
定すれ.ばLい.以下IS礎実験結果に基づいて試作した電
ン書き記録計に与えられる.ペン書き記録計は最高周波
磁厚み計につき述べる,
数60%のものを使用したので,金属テープ走行速度が
60m/mlnの場合でも分解能は約15mmであり,二の
3,測定装置の構成
数値は圧延機のワークロールの円周長よウも小で実用上
電磁厚み計は第3図に示すようにその心臓部たる測定
十分な値である,分解能はオキサイドコアを含む測定コ
イルの大きさによっても制限を受け,二の点
7・ラ佃アノ}聯及酬定鋸〒一フ匿
よりの分解能は約20mmと考えられる.直
測定コイル/
流出力信号はまた厚み制御回路たとえば金民
厚丹偏ftSE示計
(±sμ・±10−)
品質制御系の検出器としての役割を果たすこ
5σKGA閉F
5σKC
リン71L
謹叛器
復翻器
テープ張力制御器へ供給され,圧延機工程の
十
とができる.第4図には電磁厚み計の全景を
矩繍
示す.
4.特性試験結果ならぴに考察
出力信号〔±40皿V)
電磁厚み計の諸特性に関し実用上問題にな
るのは,金属テープの上下振動および横振れ
第3図 電磁厚み計の回路
の影響,テープ温度の変動,電源電圧変動の
コイル系と発振器,増幅復調指示計およびペン書き記録
計より構成される.コイルは磁界の集中をよくし金属テ
ープの局部厚を高感度で測定するためE字形のオキサイ
ドコアに一次側および二次側を100回共巻し,かつ金属
テープの振動にようhの変動の誤差を小さくするため2
個のコイルを1mmの間隙を隔てて対向させその間を金
属テープを走らせることにした、きらにこれとまったく
同一構造のバランスコイ’レ系をもう一組設け,目標値の
厚みをもつ金属テープサンプルを挿入し,コイルの二次
側を測定コイルのそれと差動的に結線し,そこに残っ
た微小な不平衡電圧の振幅および位相をそれぞれRt,
第4図 電磁厚み計の全景
R2により零調整する.これらのコイル系に発振器より
影響および各種誤差要因の集積の結果たる測定器零点の
50kc,1∼10 mA範囲の定電流を流しておき,まず測定
時間約変動などである,厚み計の静的な指示精度は使用
コイルに標準サンプルを挿入しコイル系の零バランスを
に先立ちその都度標準サンプノレで較正を行なうので再現
とっておけば,次に測定すべぎ金属テープを標準サンプ
性のみが問題であるが,実験結果によれば再現性の誤差
ルと置換すればそれらの厚み偏差に応じた不平衡出力電
は1μ以内程度である.各種の特性試験は硝酸により所
圧が増幅器の入力端に与えられる.なおバランスコイル
要の厚さまで溶かして得た軟銅テープサンプルを用いて
系は単にインダクタンスブリッジとしての平衡電圧を発
行なった.
生するためだけでなく,室温など周囲条件の変化が測定
まず金属テープ上下振動による指示誤差の測定結果を
コイルに与える誤差の影響を補償するのにも役立つ.
第5図に示す.測定コイル間の1mm隙間に磁界が一様
コイル系より得られる偏差電圧は,内部位相回転を少
に分布していれば,一次近似では金属テープの位置す
23
482
生 産 研 究
れ±2mmに対し指示変動は一〇.5μと測定された.♂こ
銅デー7eE面∼測定へ・ド闘距9fl
一一“’
hE、
一1.O
の程度であれば実用上問題ない.
m一ト・一→r→→舞羅撫
iK−20
その他長期零点変動試験の結果では,1時間半の予熱
時間を置けばその後の零点の移動は5時間以上にわたう
柘蝋30
て問題なく,また電源電圧も100V±5Vの範囲で変
随一4θ
銅テープ厚 70,a
鯉一50
発振電圧30▽
ψ)
第5図 電磁厚み計指示に対する銅テープ上下振
動の影響
化しても問題ないことが実験的に確かめられた.結局総
合精度としては,10∼100μの銅テープに対して,約
0.5∼1.5μ程度であろうと推定される.なお本測定装
置を実際の圧延機へ取りつけての実測結果は別稿に示さ
れているからここでは省略する.
なわち(1),(2)式中のhの影響はないはずであるが,
この電磁厚み計は主に10∼100μの銅テー・一・一プ厚み測
磁界の小さな乱れのためか第5図のようにテープ位置に
定に適するように設計されているが,さきほども述ぺた
より指示移動を生ずる,しかしテープをコイル間隙の中
ようにt/ρが同一一・fs金属テープはコイル系に同一な電磁
央すなわち0.5mmの位置におけば上下振動:』O.1mm
的反作用を及ぼす.この事実は実験的にも容易に証明さ
でも指示誤差はたかだか±0.5μ程度と推定できる.実
れるが,この関係を用いて銅テープに関する実験結果を
際の圧延工程においても測定ヘッドの前後にガイドn一
そのままアルミニウムや錫などの他の金属テープに適用
ラ・一を置くことによって±0.1mm以内に上下振動を抑
することができる.また銅テープでも加工硬化による導
えることは容易であろう.
電率の低下がいちじるしい場合は,同一関係式により指
次に大きな誤差要因と考えられるものに金属テープの
示偏差に補正を施す必要がある・しかしながらこの影響
温度が挙げられる.このことは理論式(1),または(2)
は適当な標準サンプルで零調整を行なうかぎり指示偏差
中にt/ρなる因子が含まれ,温度上昇によりρが大と
の大きさにのみ現われるので,指示誤差は1μ以内に止
なれば厚み計は等価的に云が小さくなったように指示す
まるものと考えられる.
るはずである.指示の温度による理論的変化率はo.4%/
°C程度であるが第6図では0.4∼0.8%/°Cの結果が得
られている.実験値と理論的推定値との食い違いはもち
5. 結 言
渦電流法による金属テープの厚み測定は,非接触方式
ろん実験誤差にもよるが,サンプルの銅テープをハンダ
でかつ比較的簡単かつ安価な装置で高感度を得ることが
ゴテ用ヒータで加熱する際測定ヘッドに熱が移ってオキ
できるという大きな特長をもっている.その操作法も通
サイドコアの温度特性が混入したことやその他測定器の
常のレベルメータと同様で至って簡便であり工業的精度
不完全性に起因すると考えられる.実用的には銅テープ
では十分な再現性を有している,一方金属テープの上下
温度を±2°C以内に制御すれば厚さ100μ以下の場合
左右の振動により誤差を生じまた温度特性にやや劣ると
指示誤差を1μ以内に抑えることができる.
霧テヲ温馬。(℃)
いう短所を有する.金属テープ振動の影響は測定コイル
系の設計に留意し,かつそれを圧延機に取りつける際振
動をなるべく少なくする機械構造とすることによって,
実用上問題ないほどにまで軽減される,一方温度特性に
51
関しては,測定原理上本文に述ぺた程度の誤差は避け難
\・x銅翻
いものである.これらの短所を十分認識した上で使用す
70μ
れば,実用上この測定法の特長を十分発揮させることが
できる.
樟尾に本装置の細部設計ならびに製作に当たられた海
保芳郎氏初め安藤電気株式会社の諸氏に深く感謝した
し・.
一20
(e/。)
第6図 銅テープの温度変化による測定器零点
の移動
測定ヘッド内を走行中の金属テープの横振れの影響は
テープ幅25mm厚さ100μの銅テープの場合,横振
24
(1961年10月ユ2日受理)
一一
ot件は特許申請中一
参考文献
杉 正男:薄い平面導体に平行せる撚対線の抵抗およびインダ
クタンス,電気通信学会誌 昭和30年6月号