480 生 産 研 究 銅 テ ー 杉 プ厚み測定装置 正 男・熊 丸 博 之 X−一ω ノ2・2m・G(2m)・ ・(2) 1. 緒 言 ∵1::::喰嘘畿 薄肉銅テープ圧延機用厚み測定装置としては,100μ 以下の銅テープの肉厚を±1μ以下程度の精度で測定可 能なことが要求される.従来この種の測定器としては差 動トランスを用いるフライングマイクロメータが広く用 t磯,礪 いられ,また最近ではβ線厚み計などが用いられてい る.しかるに前者は接触型の測定ヘッドを用いるため, 圧延工程中の動的な厚み計としては信頼性に乏しく,そ の精度は圧延速度にもよるが,だいたい±5μ程度と考 えられる.また後者はβ線の散乱や特性X線の発生に 対する遮蔽を必要とし取扱いに注意を要しまた高価でも あるので,筆者らは独自で比較的精度がよく取扱い容易 でかつ安価な厚み計を開発することにした. 試作した厚み計は渦電流法に基づくもので,誘導コイ ルにより銅テt−一’プ中に50kcの渦電流を流し,その反 作用を検出コイルで取り出して増幅後位相検波して,あ る設定値よりの厚み偏差を指示記録しまた厚み制御系へ の出力信号を出すようにしたものである,試作器の性能 かつ θ〉>tと仮定する. ここにω,μo,ρはそれぞれ角周波数,真空の透磁率,金 属平面の固有抵抗を表わし,θは等価導体厚と呼ばれる もので,またα(x),Si(x)はそれぞれ余弦積分,正弦 積分を表わす. さて高感度の厚み計を得るということはtの単位割 合変化に対し(1)および(2)式で与えられるslの 変化率が大きくてかつ安定した領域を見出すことであ る.このためには2のmに関する微分曲線を求めれ ばよいがその厳密な表示は簡単でない.数値的な近似式 のみを示せば次のようになる. ’釜一藷一(ωμ03a励2)・α66物〆・63m は厚さ20∼190μの銅テープを0・5∼1.5μ程度の精 度で測定が可能でいちおう満足すべきものである.なお (0≦m<1.5)… (3) 筆者らは概略設計のみ行ない,細部設計ならびに製作は (ωμ032πh2)・αあピー 安藤電気に依頼した. (1.5≦m<5)・・(3)ノL ただし 2.設 計 理 論 2=121=/R2十X2 渦電流法による電磁厚み計を設計するには,まず与え ちれた厚み測定範囲に適した測定コイルの形状および周 (3)式および 波数を定める必要がある.その具体的数値は,最終的に (3)ノ式を図示 は実験結果に基づき定められるぺきであるが,だいたい したものが第2 の見当をつけるため,第1図に示す導体配置につき理論 図でm ・O.6に +1弗一・ 極大を有し,そ 的に考察する.厚 さtの非磁性薄 れよりmが増 肉金属の無限平面 加するにつれて 上高さhの所に 緩やかに減少し 第2図 反作用インピーダンスの 辮による変化率 2Sなる間隔で流 れる往復交流電流1は,金属平面の存在のため反作用 第 1図 ている,したが ってこの極大値 を受け,その単位長さ当たりのインピーダンスを増加す に近い右側の範囲に測定系を設計すれば良好な厚み検出 る.この反作用インピーダンス2の実部,虚部をそれ 特性が得られるものと期待される.今対象とする金属テ ぞれR,Xとすれば次のように計算される(1). R一 22 ソ2・m{・−2mF(・m)}…………(・) ー・一・ vの材質を銅としtの主なる測定範囲を10∼100μと すれば,h,8をそれぞれ5mm,0.3mmと選べば, mの・ とるべき範囲はtの測定範囲に従い0.5∼5となる. 第13巻第12号 48⊥ 測定周波数/は9のf直よll 50 kcと定まる.また〔3) なくかつ十分利得を安定化したC尺結合増幅器によ) 式がノにより最大値をとるのはrn=1.2で上述のm 所要の大きさまで増幅され,さらにi)ング復調器によ0 の範囲に含まれ,かつ9》tなる仮定も満たされるの 0またはπの位相検波により厚み偏差の正負を判別さ で,測定周波数を50kcと定める二とは妥当と考えら れる.増幅器利得は標準サンプルにさらに厚さ5μ以内 れる.Sの値は検出感度を上げる点からは大きい方がよ の金属箔を追加挿入して所要の偏差指示を得るよう調整 いが,測定すぺき金属テープ幅の1/2以上とすることは するか,または全厚み測定範囲にわたり較正されたポテ 端末効果の混入の点よワ好ましくなく上限が存在する, ンショメータRsよウ較正用偏差電圧を得てフルスナー 以上により厚み計設計のための大略の方針がつかめた ル偏差指示を得るよ5調整される、 わけで,あとは二三測定コイルを試作し所要巻回数やそ リング復調器より得られる厚み偏差に比例した直流出 れに流すべき電流値および所要増幅度などを実験的に決 力電圧は厚み偏差指示計ならびに直流増幅器を通じてペ 定すれ.ばLい.以下IS礎実験結果に基づいて試作した電 ン書き記録計に与えられる.ペン書き記録計は最高周波 磁厚み計につき述べる, 数60%のものを使用したので,金属テープ走行速度が 60m/mlnの場合でも分解能は約15mmであり,二の 3,測定装置の構成 数値は圧延機のワークロールの円周長よウも小で実用上 電磁厚み計は第3図に示すようにその心臓部たる測定 十分な値である,分解能はオキサイドコアを含む測定コ イルの大きさによっても制限を受け,二の点 7・ラ佃アノ}聯及酬定鋸〒一フ匿 よりの分解能は約20mmと考えられる.直 測定コイル/ 流出力信号はまた厚み制御回路たとえば金民 厚丹偏ftSE示計 (±sμ・±10−) 品質制御系の検出器としての役割を果たすこ 5σKGA閉F 5σKC リン71L 謹叛器 復翻器 テープ張力制御器へ供給され,圧延機工程の 十 とができる.第4図には電磁厚み計の全景を 矩繍 示す. 4.特性試験結果ならぴに考察 出力信号〔±40皿V) 電磁厚み計の諸特性に関し実用上問題にな るのは,金属テープの上下振動および横振れ 第3図 電磁厚み計の回路 の影響,テープ温度の変動,電源電圧変動の コイル系と発振器,増幅復調指示計およびペン書き記録 計より構成される.コイルは磁界の集中をよくし金属テ ープの局部厚を高感度で測定するためE字形のオキサイ ドコアに一次側および二次側を100回共巻し,かつ金属 テープの振動にようhの変動の誤差を小さくするため2 個のコイルを1mmの間隙を隔てて対向させその間を金 属テープを走らせることにした、きらにこれとまったく 同一構造のバランスコイ’レ系をもう一組設け,目標値の 厚みをもつ金属テープサンプルを挿入し,コイルの二次 側を測定コイルのそれと差動的に結線し,そこに残っ た微小な不平衡電圧の振幅および位相をそれぞれRt, 第4図 電磁厚み計の全景 R2により零調整する.これらのコイル系に発振器より 影響および各種誤差要因の集積の結果たる測定器零点の 50kc,1∼10 mA範囲の定電流を流しておき,まず測定 時間約変動などである,厚み計の静的な指示精度は使用 コイルに標準サンプルを挿入しコイル系の零バランスを に先立ちその都度標準サンプノレで較正を行なうので再現 とっておけば,次に測定すべぎ金属テープを標準サンプ 性のみが問題であるが,実験結果によれば再現性の誤差 ルと置換すればそれらの厚み偏差に応じた不平衡出力電 は1μ以内程度である.各種の特性試験は硝酸により所 圧が増幅器の入力端に与えられる.なおバランスコイル 要の厚さまで溶かして得た軟銅テープサンプルを用いて 系は単にインダクタンスブリッジとしての平衡電圧を発 行なった. 生するためだけでなく,室温など周囲条件の変化が測定 まず金属テープ上下振動による指示誤差の測定結果を コイルに与える誤差の影響を補償するのにも役立つ. 第5図に示す.測定コイル間の1mm隙間に磁界が一様 コイル系より得られる偏差電圧は,内部位相回転を少 に分布していれば,一次近似では金属テープの位置す 23 482 生 産 研 究 れ±2mmに対し指示変動は一〇.5μと測定された.♂こ 銅デー7eE面∼測定へ・ド闘距9fl 一一“’ hE、 一1.O の程度であれば実用上問題ない. m一ト・一→r→→舞羅撫 iK−20 その他長期零点変動試験の結果では,1時間半の予熱 時間を置けばその後の零点の移動は5時間以上にわたう 柘蝋30 て問題なく,また電源電圧も100V±5Vの範囲で変 随一4θ 銅テープ厚 70,a 鯉一50 発振電圧30▽ ψ) 第5図 電磁厚み計指示に対する銅テープ上下振 動の影響 化しても問題ないことが実験的に確かめられた.結局総 合精度としては,10∼100μの銅テープに対して,約 0.5∼1.5μ程度であろうと推定される.なお本測定装 置を実際の圧延機へ取りつけての実測結果は別稿に示さ れているからここでは省略する. なわち(1),(2)式中のhの影響はないはずであるが, この電磁厚み計は主に10∼100μの銅テー・一・一プ厚み測 磁界の小さな乱れのためか第5図のようにテープ位置に 定に適するように設計されているが,さきほども述ぺた より指示移動を生ずる,しかしテープをコイル間隙の中 ようにt/ρが同一一・fs金属テープはコイル系に同一な電磁 央すなわち0.5mmの位置におけば上下振動:』O.1mm 的反作用を及ぼす.この事実は実験的にも容易に証明さ でも指示誤差はたかだか±0.5μ程度と推定できる.実 れるが,この関係を用いて銅テープに関する実験結果を 際の圧延工程においても測定ヘッドの前後にガイドn一 そのままアルミニウムや錫などの他の金属テープに適用 ラ・一を置くことによって±0.1mm以内に上下振動を抑 することができる.また銅テープでも加工硬化による導 えることは容易であろう. 電率の低下がいちじるしい場合は,同一関係式により指 次に大きな誤差要因と考えられるものに金属テープの 示偏差に補正を施す必要がある・しかしながらこの影響 温度が挙げられる.このことは理論式(1),または(2) は適当な標準サンプルで零調整を行なうかぎり指示偏差 中にt/ρなる因子が含まれ,温度上昇によりρが大と の大きさにのみ現われるので,指示誤差は1μ以内に止 なれば厚み計は等価的に云が小さくなったように指示す まるものと考えられる. るはずである.指示の温度による理論的変化率はo.4%/ °C程度であるが第6図では0.4∼0.8%/°Cの結果が得 られている.実験値と理論的推定値との食い違いはもち 5. 結 言 渦電流法による金属テープの厚み測定は,非接触方式 ろん実験誤差にもよるが,サンプルの銅テープをハンダ でかつ比較的簡単かつ安価な装置で高感度を得ることが ゴテ用ヒータで加熱する際測定ヘッドに熱が移ってオキ できるという大きな特長をもっている.その操作法も通 サイドコアの温度特性が混入したことやその他測定器の 常のレベルメータと同様で至って簡便であり工業的精度 不完全性に起因すると考えられる.実用的には銅テープ では十分な再現性を有している,一方金属テープの上下 温度を±2°C以内に制御すれば厚さ100μ以下の場合 左右の振動により誤差を生じまた温度特性にやや劣ると 指示誤差を1μ以内に抑えることができる. 霧テヲ温馬。(℃) いう短所を有する.金属テープ振動の影響は測定コイル 系の設計に留意し,かつそれを圧延機に取りつける際振 動をなるべく少なくする機械構造とすることによって, 実用上問題ないほどにまで軽減される,一方温度特性に 51 関しては,測定原理上本文に述ぺた程度の誤差は避け難 \・x銅翻 いものである.これらの短所を十分認識した上で使用す 70μ れば,実用上この測定法の特長を十分発揮させることが できる. 樟尾に本装置の細部設計ならびに製作に当たられた海 保芳郎氏初め安藤電気株式会社の諸氏に深く感謝した し・. 一20 (e/。) 第6図 銅テープの温度変化による測定器零点 の移動 測定ヘッド内を走行中の金属テープの横振れの影響は テープ幅25mm厚さ100μの銅テープの場合,横振 24 (1961年10月ユ2日受理) 一一 ot件は特許申請中一 参考文献 杉 正男:薄い平面導体に平行せる撚対線の抵抗およびインダ クタンス,電気通信学会誌 昭和30年6月号
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