1 目的 嚥下機能、呼吸機能が筋弛緩薬投与前のレベルまで回復して

目的
嚥下機能、呼吸機能が筋弛緩薬投与前のレベルまで回復しているかは、上肢の筋弛
緩 モ ニ タ ー で 四 連 反 応 比 が 0.9 以 上 に 戻 っ て い る こ と で 判 断 す る 。 加 速 度 ト ラ ン ス デ
ューサーを用いて下肢の筋でブロックをモニターした場合、嚥下機能、呼吸機能の回
復を上肢と同様に判断出来るかどうかはわかっていない。今回われわれは、ベクロニ
ウムによるブロックからの回復を、上肢では第一背側骨間筋で筋電図を用い、下肢で
は短母趾屈筋で加速度トランスデューサーを用いてそれぞれモニターし、回復の違い
を比較した。
対象と方法
対 象 は 、 ASA physical status I, II で 、 全 身 麻 酔 下 で 耳 鼻 科 ま た は 眼 科 の 手 術 が 予 定 さ
れ た 18 - 70 歳 の 患 者 29 名 と し た 。神 経 筋 接 合 部 に 影 響 す る 薬 剤 を 使 用 し て い る 患 者 、
肝 機 能 障 害 、腎 機 能 障 害 、内 分 泌・代 謝・神 経 筋 疾 患 が あ る 患 者 、体 格 指 数 が 30 kg m - 2
以上ある患者を除外した。
手 術 室 入 室 後 に 心 電 図 、非 観 血 的 血 圧 計 、パ ル ス オ キ シ メ ー タ ー を 装 着 し た 。筋 弛 緩
モ ニ タ ー は 、上 肢 は 第 一 背 側 骨 間 筋 に 筋 電 図 式 筋 弛 緩 モ ニ タ ー (M-NMT monitor ® , AS/3,
Datex-Ohmeda)の 測 定 電 極 を 、 下 肢 は 母 趾 腹 側 に 加 速 度 式 筋 弛 緩 モ ニ タ ー (TOF-Watch
SX ® )の 加 速 度 プ ロ ー ブ を 装 着 し た 。上 下 肢 の 刺 激 電 極 は 、そ れ ぞ れ 前 腕 尺 側 と 足 関 節
内果後方に貼った。筋弛緩モニターのキャリブレーションを行った後は、尺骨神経を
20 秒 間 隔 で 、 後 脛 骨 神 経 を 15 秒 間 隔 で 、 最 大 上 刺 激 で 四 連 刺 激 を 行 っ た 。 ベ ク ロ ニ
ウ ム 0.1 mg kg - 1 を 手 背 静 脈 か ら 投 与 し 、 直 後 に 生 理 食 塩 液 5 ml を ボ ー ラ ス 投 与 し た 。
ベ ク ロ ニ ウ ム の 作 用 発 現 時 間 は 、 ベ ク ロ ニ ウ ム の 静 脈 内 投 与 終 了 か ら T1/T0 が 5 %以
下になるまでの時間とした。
麻 酔 維 持 は プ ロ ポ フ ォ ー ル 4 - 10 mg kg - 1 h - 1 を 持 続 投 与 し 、 フ ェ ン タ ニ ル を 適 宜 投
与した。術中にベクロニウムは追加投与しなかった。ブロックからの自然回復を、第
一 背 側 骨 間 筋 と 短 母 趾 屈 筋 で 四 連 反 応 比 が 0.7 、 0.9 に な る ま で 観 察 し た 。 短 母 趾 屈
筋 の 四 連 反 応 比 が 0.7、0.9 に な っ た 時 の 第 一 背 側 骨 間 筋 の 四 連 反 応 比 の 値 も 記 録 し た 。
筋弛緩の拮抗薬は用いなかった。
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結果
対 象 患 者 は 、 男 性 17 名 、 女 性 12 名 、 年 齢 は 44 ± 17 歳 、 身 長 は 163 ± 48 cm、 体 重
は 65 ± 12 kg で あ っ た 。
ベ ク ロ ニ ウ ム の 作 用 発 現 時 間 は 、第 一 背 側 骨 間 筋 は 137 ± 33 秒 で 短 母 趾 屈 筋 は 143 ±
19 秒 で 両 群 に 違 い は な か っ た 。ベ ク ロ ニ ウ ム 投 与 か ら 四 連 反 応 比 が 0.7、0.9 ま で の 回
復 時 間 は と も に 第 一 背 側 骨 間 筋 群 が 短 母 趾 屈 筋 群 よ り 有 意 に 遅 か っ た (P < 0.05)。短 母
趾 屈 筋 の 四 連 反 応 比 が 0.7、0.9 に 回 復 し た 時 の 第 一 背 側 骨 間 筋 の 四 連 反 応 比 は そ れ ぞ
れ 0.24 ± 0.19、 0.44 ± 0.23 で あ っ た 。
結論
短 母 趾 屈 筋 で 加 速 度 式 筋 弛 緩 モ ニ タ ー の 四 連 反 応 比 が 0.9 ま で 回 復 し て い て も 、 第
一 背 側 骨 間 筋 の 筋 電 図 式 筋 弛 緩 モ ニ タ ー の 四 連 反 応 比 は 0.44 ± 0.23 と 非 常 に 低 い 値 で
あ っ た 。 加 速 度 式 筋 弛 緩 モ ニ タ ー で 下 肢 の 短 母 趾 屈 筋 の 四 連 反 応 比 が 0.9 ま で 回 復 し
て い て も 上 肢 の 四 連 反 応 比 が 0.9 ま で 回 復 し て い な い こ と が 分 か っ た 。 術 中 に 短 母 趾
屈筋で評価を行った場合は、術後に第一背側骨間筋、または母指内転筋で再評価した
方が安全である。
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