RH‐PAC2地域医療ビジョン・地域医療計画ガイドライン 実践編 がん(がん治療と緩和ケア) ~がんになっても安心できる社会に向けて~ 東京大学医療政策人材養成講座4期 三井貴子 帝京大学内科学講座 腫瘍内科 渡邊清高 地域医療を動かす RH‐PAC がん(がん医療と緩和ケア) パート1 現状と課題 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 2 がん 現況と課題(現況) 地域医療を動かす RH‐PAC 千葉県の将来人口推計等 出典:RH‐PAC2地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 実践編(がん) 国勢調査(平成22年、総務省)日本の地域別将来推計人口(平成25年、国立社会 保障・人口問題研究所) 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 3 がん 現況と課題(現況) 地域医療を動かす RH‐PAC 千葉県の推計患者数(5疾患) 出典:日医総研ワーキングペーパー「地域の医療体制の現状と課題」 国勢調査(平成22年、総務省)日本の地域別将来推計人口(平成25年、国立社会 保障・人口問題研究所) 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 4 がん 現況と課題(現況) 地域医療を動かす RH‐PAC 急速な人口の高齢化 全国第3位のスピードで高齢化が加速 ・東葛南部医療圏: 人口が最大の医療圏、首都圏の医療へのアクセス ・山武長生夷隅医療圏: 千葉県の1/5の面積を有する地域だががん診療連携 拠点病院の空白圏、高齢化率がすでに高い ・君津医療圏 代表的な地方都市型二次医療圏 県のがん診療連携体制の整備 県がん診療連携拠点病院の司令塔としての機能 山武長生夷隅医療圏の拠点病院空白への対策 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 5 がん 地域医療を動かす 現況と課題(現況) RH‐PAC がん診療連携拠点病院(14病院) 千葉県がん診療連携協力病院(14病院) 千葉県がんセンター 東葛南部 山武長生夷隅 君津 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 出典:千葉県がん対策推進計画 実践編 6 がん 現況と課題(需給ギャップ) 地域医療を動かす RH‐PAC がん医療 千葉県 ・医療従事者の不足 ・がん治療を専門とする医療従事者数は全国でも下位 ・医療従事者数そのものが全国平均よりも少ない 医療の質を担保すべく教育を推進するも絶対数が不足 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 7 がん 現況と課題(需給ギャップ) 地域医療を動かす RH‐PAC 千葉県の医療資源・対全国比較 出典:ちばがんナビ 平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)、平成22年衛生行政報告例 (厚生労働省) 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 8 がん 現況と課題(需給ギャップ) 地域医療を動かす RH‐PAC がん医療 東葛南部医療圏 がん診療拠点病院数もあり、首都圏も近い 人口構成が最も若いが、高齢化によるギャップが大 山武長生夷隅医療圏 圏域が広く、拠点病院がなく、近隣の医療圏の支援を 受けている。場所によっては通院難 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 9 現況と課題(現況) がん 地域医療を動かす RH‐PAC がん診療連携拠点病院および特定領域がん診療連携拠点病院 当該二次医療圏に居住するがん患者の診療の割合 千葉 ①千葉県がんセンター ②千葉大学医学部附属病院 ③千葉医療センター 東葛南部 ④船橋市立医療センター ⑤東京歯科大学市川総合病院 ⑥順天堂大学医学部附属浦安病院 東葛北部 ⑦国保松戸市立病院 ⑨東京慈恵会医科大学附属柏病院 印旛 ⑩成田赤十字病院 香取 ⑪国保旭中央病院 安房 ⑫亀田総合病院 君津 ⑬君津中央病院 市原 ⑭千葉労災病院 山武長生夷隅 さんむ医療センター 当該二次医療圏に居 住するがん患者の診 療の割合 19% 19% 12% 14% 10% 10% 5% 12% 19% 38% 50% 45% 41% 25% 出典: 「第10回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会 都道府県別説明資 料より」 10 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 がん 現況と課題(需給ギャップ) 地域医療を動かす RH‐PAC 千葉県の在宅医療資源・対全国比較 出典:ちばがんナビ 平成23年医療施設調査(厚生労働省)、平成23年介護サービス施設・事業所調査 (厚生労働省) 11 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 がん 現況と課題(需給ギャップ) 緩和ケア 地域医療を動かす RH‐PAC 千葉県 ・在宅医療資源が全国でも下位 ・がん治療は拠点病院等で受診したい意向(患者・住 民アンケート) ・終末期のがん治療については在宅意向(患者・住民 アンケート) ・「循環型地域医療連携システム」の認知度低い ・がん治療の初期段階からの緩和ケアについては 普及の努力要 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 12 がん 現況と課題(需給ギャップ) 地域医療を動かす RH‐PAC 出典:千葉県がん対策推進計画 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 13 がん 現況と課題(論点整理) 地域医療を動かす RH‐PAC 課題1:急速に進む千葉県の人口の高齢化への対応 課題2:千葉県のがん診療連携拠点病院および 特定領域がん診療連携拠点病院の整備 課題3:がんの専門的な治療の質の向上 治療が一段落した後の居住地域での連携体制 がん治療の初期段階から緩和ケア提供体制 がんを治療しながら生活ができる体制を実現する ための医療資源の確保・体制整備 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 14 地域医療を動かす RH‐PAC がん(がん医療と緩和ケア) パート2 推奨施策 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 15 医療圏ごとの推計患者数(悪性新生物) 全国 2011年 増減率 2025年 増減率 入院 外来 入院 外来 入院 外来 913 1,137 1,289 1,504 41% 32% 東葛南部 1,502 1,886 2,005 2,387 33% 27% 東葛北部 1,297 1,611 1,705 2,009 32% 25% 印旛 677 841 890 1,059 31% 26% 香取海匝 370 443 373 433 1% ‐2% 山武長生夷隅 547 659 611 707 12% 7% 安房 197 231 193 218 ‐2% ‐6% 君津 351 430 414 484 18% 13% 市原 278 345 349 414 26% 20% 千葉 入院 外来 18% 13% 出典:国勢調査(平成 22 年、総務省)、患者調査(平成 23 年、厚生労 働省)、日 本の地域別将来推計人口(平成 25 年、国立社会保障・人口問題研究所) 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガ イドライン 実践編 16 山武長生夷隅医療圏 「急性期医療密度指数(急性期医療の提供能力)」 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガ イドライン 実践編 17 千葉県がんセンター 拠点病院の指定更新されず (2015年4月) がん診療連携拠点病院、特に都道府県のがん対策を担う機関 の役割を踏まえると、県のがんの司令塔としての役割が果たせ なくなる懸念があり、都道府県がん診療連携拠点病院としての 機能をどのように補完するのか明らかにする必要がある。 他の拠点病院に代替機能をもたせるのかどうか、一医療機関 としての機能と、他の施設と連携しながら地域のがん診療の一 角を担う機能をどのように担うのか、地域におけるがん診療連 携拠点病院の役割について議論が必要と考えられる(2015年5 月現在)。 本ガイドライン 実践編では、医療計画や連携体制構築の実践 を目指すことを基本的なスタンスとしており、都道府県がん診療 連携拠点病院機能が存在することを想定して記述をすることで、 他の都道府県にも参考となる記載となることを目指した。 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガ イドライン 実践編 18 がん 施策・指標マップ がん医療 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 地域医療を動かす RH‐PAC 19 がん 施策・指標マップ 緩和ケア 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 地域医療を動かす RH‐PAC 20 がん あるべき姿とアウトカム 地域医療を動かす RH‐PAC がん医療 分野アウトカム 安心で安全な質の高い医療が提供できる 中間アウトカム1 がんの治療成績が向上する 中間アウトカム2 標準治療が普及し安全に実施される 中間アウトカム3 がん診療を担う専門職種が養成されチームでの診療 を実践している 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 21 がん あるべき姿とアウトカム 緩和ケア 地域医療を動かす RH‐PAC 分野アウトカム がんと診断された時期からすべてのがん患者が緩和 ケアを受けられる 中間アウトカム1 緩和ケアに関する正しい知識が普及する 中間アウトカム2 がんと診断された時期から緩和ケアを受けられる体 制が構築されている 中間アウトカム3 地域における緩和ケアの提供体制や連携が充実す る 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 22 がん 推奨施策の一例(がん医療) 地域医療を動かす RH‐PAC がんの治療成績向上 ・放射線療法および化学療法、手術療法の推進 ・臨床試験・治験・先進医療の推進 標準治療の普及 ・キャンサーボードやチームによる多職種での診療方 針検討の推進 ・インフォームドコンセント、セカンドオピニオンなどの推 進 がん診療の専門職によるチーム診療 ・専門職種の人材養成と教育研修の推進 ・在宅医療および連携の推進 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 23 がん 推奨施策の一例(緩和ケア) 地域医療を動かす RH‐PAC 緩和ケアに関する正しい知識の普及 がんと診断された時期から緩和ケアの提供 ・がん診療に携わるすべての医療従事者が緩和ケアの 知識と技能の習得 ・住民・社会に向けた緩和ケアに関する正しい理解の 促進 ・治療の初期段階からの緩和ケアを提供する緩和ケア チーム設置の推進 がん診療の専門職によるチーム診療 ・地域の緩和ケアに関する情報提供と相談支援の充実 ・在宅医療および在宅緩和ケアの推進 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 24 指標の一例 がん RH‐PAC がん医療 • • • • • • 地域医療を動かす 生存率、患者満足度調査 標準治療の実施率、診療ガイドラインの実施率 専門職種の養成数、従事する数、チームの活動実績 各種指導管理料、加算の取得割合 医療機関でのパス、レジメンの実施率 地域連携パス導入率、在宅意向率、紹介/逆紹介率 緩和ケア • • • • • • 緩和ケアに関する満足度、認知度、患者・住民調査 緩和ケアチーム、緩和ケア提供体制調査 緩和ケアの専門技能を取得した各職種の人数、体制 緩和ケアチームの設置・活動状況 在宅緩和ケアへの移行、緩和ケアの連携、紹介率 在宅看取り率、遺族調査 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 25 がん まとめ 地域医療を動かす RH‐PAC 都道府県がん診療連携拠点病院の指定、二次医療 圏に拠点病院の空白圏があることなど、体制そのも のの整備が急務。 全国平均と比べて少ない医療資源、がん医療専門家 の中でがん対策を進めているが、数はもちろん、質の 高いがん医療を提供できる体制を早く確立する必要 がある。 人口の高齢化が全国3位のスピードで進むと推定さ れているため、それに伴って増加するがん対策の体 制づくりは急務である。 「ちからをあわせてがんにうち克つちば」を目指して、 県民と医療・福祉関係者、行政が協力し、総合的か つ計画的ながん対策の推進を掲げているが、住民の 声を反映した「質」を重視した対策の推進が求められ る。 26 地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン 実践編 ありがとうございました がんを知り がんと向き合い がんになっても安心して暮らせる社会づくりを
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