認知症と薬1 Dementia and Drugs Department of Geriatric Medicine Faculty of Medicine University of Tokyo Next Dr. Corporation Executive Direct Soshi Okamoto 本日話す内容 1.自己紹介(ここが8割ぐらい) 2.認知症概論 3.認知症各論 4.薬の使い方:中核症状に対して 5.薬の使い方:BPSDに対して 自己紹介 Self-Introduction Self- Introduction Name : 岡本 宗史 生年月日:1981年9月3日(33歳独身) 酉年乙女座 性格:ただの変態 座右の銘「おもしろき事もなき世をおもしろく」 趣味:サーフィン・ゴルフ(と言いたい・・) 出身:大阪 これまでずっと感じていたこと 健康・病気など医療に関する 関心の低さや、 医療機関と社会との考えの相違 個人の問題、家庭の問題と同じ水準で感じ、 考えてもらう必要ある HIV患者の推移 先進国で増加しているのは日本だけ! Tobacco consumption, % of female Country 2002 2012 Canada 27.0 13.5 Japan 10.2 9.7 Netherlands 24.5 16.3 United Kingdom 25.0 10.7 United States 16.5 12.5 OECD healthより改変 救急車たらい回し 医療費の高騰 コンビニ受診 医療訴訟の増加 医師不足 慢性病の拡大 医療に対する関心・知識が十分ではない 医療者との意識の隔たりが大きい 予防医学 従来:検診 メタボ健診など これから: 医療に対する最低限の知識・マインドを 一般社会に根づかせる Principle 医療の概念を社会に根付かせる ことを信念に。 新しい医療像の確立 医療ルネッサンス 認知症概論 Dementia Q:認知症と年相応の物忘れとの違いは? 未曾有の超高齢化社会 医療費高騰の問題 老老介護、認認介護 社会全体で取り組む姿勢が必要 ⬇︎ 認知症に対する知識や関心・意識 を向上させる取り組みが必要 認知症予備群 ⬇︎ MCI:軽度認知障害 Mild Cognitive Impairment 認知症 〈ICD-10〉 日常生活機能に支障がでる認知機能障害を認める 認知機能の障害は継続し、かつ進行性 ⇔ せん妄 精神症状・人格変化(BPSD)を伴う 認知症 vs. 物忘れ (加齢による)物忘れ 認知症 原因 加齢 神経変性疾患など 自覚 物忘れがあることを自覚 病識がないことが多い 記憶 体験の一部を忘れる (きっかけにより思い出すこと も:可逆的) 体験そのものを忘れる (完全に記憶が脱落: 非可逆的) 病状 基本的に非進行性 進行性 人格変化 精神症状 伴わない 伴う 認知症 vs. せん妄 せん妄 認知症 発症 急激 緩徐 初発症状 錯覚、幻覚、妄想、興奮 記銘力低下 日内変動 夜間に悪化すること多い 一部(DLBなど)を除き乏しい 持続 限局的 永続的 身体疾患 合併することが多い 時にあり 薬剤関与 関与することが多い なし 環境関与 関与することが多い なし BPSDという概念 BPSD:周辺症状 Behavioral and Psychological Symptom of Dementia 記銘力低下(中核症状)に随伴する、 精神症状変化、人格変化、行動変化をまとめて指す 薬物療法や、非薬物療法介入にてコントロールを行う それぞれの認知症に比較的特異的であるBPSDもあり • 典型例は覚えておくべき(後述) 実際の臨床では介護面でBPSDコントロールが大切 • 介護者の共倒れ予防が非常に重要 BPSDという概念 中核症状 抗認知症薬 周辺症状 (BPSD) 抗精神病薬 実際の治療にあたっては、介護者の軽減目的にも、 BPSDをコントロールすることが重要な役割となる 認知症検査の流れ 問診・簡単な心理検査: 認知機能障害・日常生活機 能の低下をcheck BPSDの有無を確認 スクーニング検査: 血液検査・CTなど 加齢性による物忘れ MCI せん妄 仮面性認知症 などを除外 【Treatable dementia】 内分泌疾患 感染症 せん妄 などを除外 身体診察・神経所見・ 進んだ心理検査(FAB, MOCA, WMS-Rなど) (必要に応じて)画像検査: MRI・SPECT・MIBGなど 【dementia】 アルツハイマー型 レビー小体型 脳血管性 前頭側頭葉型 など 心理検査 〈認知機能試験〉 ※赤字はルーチーンで行うもの MMSE:Mini-Mental Scale Examination HDS-R:改定長谷川式簡易知能評価スケール CDT:Clock Drawing Test 時計描画試験 MoCA:Montreal Cognitive Assesement FAB:Frontal Assessment Battery 前頭葉機能検査 WMS-R:Wechsler Memory Scale-Revised Wechsler記憶検査改訂版 〈生活機能評価〉 IADL:Instrumental Activities of Daily Living 手段的日常生活活動 Barthel Index:機能的評価 Vitality Index:意欲評価 〈その他〉 GDS:Geriatric Depression Scale MMSE 1. 時間見当識 2. 場所見当識 3. 即時記憶 4. 計算 5. 遅延再生 6. 物品呼称 7. 復唱 8. 言語理解 9. 文章理解 10.自発書字 11.図形模写 MMSE National Institute for Health and Care Excellence(NICE) 25-30:normal(正常) 21-24:mild(軽度認知機能低下) 10-20:moderate(中度認知機能低下) 0-10:severe(重度認知機能低下) それぞれの点数の分布である程度、認知症のタイプ が判断できる(後述) ex. アルツハイマー型:遅延再生、見当識の障害 HDS-R 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 年齢 時間見当識 場所見当識 即時記憶 計算 逆唱 遅延再生 物品記憶 流暢性 HDS-R 21点をカットオフに用いることが多い 21-30:normal(正常) 20以下:認知症疑い 感度0.9 特異度0.82 老年精神医学誌,2,1339-1347(1991) MMSEと比較して遅延再生に大きなウェイトがあり、 AD初期の患者では、HDS-RとMMSEで点数の差が 大きくなることがある (9):流暢性はMMSEにはなく、アルツハイマー型では、 同じ名前を繰り返す(反復)傾向にある また料理が得意な女性であれば、本来の認知機能と比較して、 野菜の名前を記銘していることもあり、人によって、 野菜を動物に変えるなどの配慮は必要 FAB 〈意義〉 前頭葉機能の検査に適しており、 感度、特異度とも従来の検査より も高い 〈評価〉 16-18点:正常 10-15点:認知症の疑い 0-10点:FTLDの疑いがより強い treatable dementia 〈概念〉 治療によって可逆的に認知機能改善が期待できる認知症のこと 正常圧水頭症などはアルツハイマー型認知症などを合併していることも 多く、完全にreversibleというわけでは決してないことに注意 血液検査、CTなどのスクリーニングで除外しておく必要がある • あくまでCTなどの画像所見は認知症の診断において補助的な存在であることに注意! treatable dementia 疾患 検査など 〈内分泌疾患・代謝疾患〉 甲状腺機能低下症 FT4・TSH・FT3をチェック V.B1欠乏症 (Wernicke-Korsakoff syndrome) V.B1をチェック V.B12欠乏症 V.B12をチェック 〈感染症〉 ヘルペス脳炎・神経梅毒など CRP・抗体価・髄液検査など HIV脳症 若年男性の認知機能低下ではHIVを考慮 HIV associated dementiaという概念 〈器質的疾患〉 慢性硬膜下出血 CT 正常圧水頭症 CT・MRI、タップテスト 〈その他〉 うつ病(仮面認知症) GDS・大うつ性エピソードなど ※抑うつにより認知機能が低下することもある(仮面認知症)が、 その一方で認知症(特にVaDやAD初期など)でも精神症状として、抑うつ傾向となりうる MCIとは? 〈概念〉 認知症とも、知的にも正常とも言えない中間状態 • MMSEでは、「22〜26点」を指すことが多い 日常生活動作(ADL)、手段的日常生活動作(IADL)ともに、 概して正常であり、生活に大きな支障をきたさない MCIから認知症に移行する(コンバート)は、約10%程度 65歳以上の人口におけるMCI保有率は約15%程度 MCI患者の病理組織像では、アルツハイマー型は約20%と低く、 嗜銀顆粒性認知症(ADG)や神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)、 海馬硬化症(HS)の割合が多い • 嗜銀顆粒性認知症や神経原線維変化型老年期認知症はADとの誤診率 が高く、臨床上も類似した病態を示すが、進行は遅く、ADLや認知機能も 保たれている場合が多い Saito Y, et al : Neuropathology 2007 Dec; 27(6): 578-84. MCIとは? 〈対応〉 CSF(脳脊髄液)中の「総タウ、リン酸化タウ、Aβ42」のいずれかにおいて 異常値を示すものは将来ADにコンバートする可能性が高い(後述) 画像所見で海馬の萎縮(MRI)、楔前部の血流低下(SPECT)など認める 場合は同様にADにコンバートする可能性が高い • ADとして臨床症状が明らかになる前からAβは蓄積している 基本MCIであれば、定期的な心理検査等で経過観察となることが多い が、上記のようにADへのコンバートが高リスク群であればMCIの段階 から塩酸ドネペジルで加療を開始することもある 塩酸ドネペジルの投与によって認知機能(中核症状)の改善効果は 示されているが、MCIから認知症へのコンバート率の低下に寄与する かははっきりしない エストロゲン、もしくはNSAIDsは無効化むしろ害を与える
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