一点の運動 —位置、速度、加速度— ■ 位置を表す。 • デカルト伝説 朝、眠くてウトウトしていると、天井から蜘蛛 が降りてきた。 これを見て、蜘蛛の位置の記述法にはたと気づ いた。 • 直積分解 点 P の位置は x の位置、y の位置、z の位置に 分解できる。 • オイラーの解析力学 点 P の運動は x の動き、y の動き、z の動き に分解できる。 x の動きは時間 t から x への関数 x(t) で記述 できる。 z P (x,y,z) O x y ■ 速度 (Velocity)って何だ? • 速度とは位置の時間変化「率」 • 単位時間 あたり の位置の変化量と言ってもよい。 • 言い換えれば、位置の変化量の時間の変化量に対する「比」を速度と いう。 速度 = 位置の変化量 経過した時間 . • ニュートンは、時間の関数を「流量」、時間に関する変化率を「流率」、 と呼んだ。 ニュートンによる流量と流率の間の関係の発見が「微積分の発見」と 言われている。 ニュートンの場合、独立変数は「時間」であり、流量 x にたいして、 流率は x˙ と表記された。 ■ 変化量 変化量=(最後の値)-(始めの値) 変化量=(値)-(基準値) • 位置の変化量を変位という。 途中経過を考えない。歴史を引きずらない。 • 半径 r の円周を一周しても、変位は 0. もとに戻っているから。 しかし、動いた距離は 2πr ■ 速度と速さは何が違う? Velocity - Speed • 速度は大きさと方向を持つ量。 ∗ 直線上の運動でも速度はマイナスになること がある。 • 速さは大きさだけ。 ∗ 速さは正またはゼロの量 ■ 速度はどうすれば測れるか 物理の概念はどのように測るかに基づいて、実験的に定義される (操作 的な定義)。物理が分かるとは測り方が分かること。 • 時計で時間を測る。 • ものさしで位置を測る。 ∗ 初めの位置 x1 と時間 t1、最後の位置 x2 と時間 t2 を測って x2 − x1 . v= t2 − t1 比が一定なら、これでよし。 ∗ 横軸に時間、縦軸に位置をとってグラフを書くと、比が一定なら、 直線のグラフになり、速度はその傾き。 ■ 速度が変化するとき、どうすれば測定できるか 微小な時間間隔に分けて、何度も何度も、位置と時間を観察すればよい。 速度の求めかた —- 例 時計の読み 0.1 s 0.2 s 0.3 s 0.4 s ... 定規の読み 5.21 cm 読みの差 時間変化率 2.14 cm 21.4 cm/ s 1.67 cm 16.7 cm/ s 0.53 cm 5.3 cm/ s ... ... 7.35 cm 9.02 cm 9.55 cm ... ■ 「平均の速度」と「速度」 • 前の例では、速度は隣り合う2つの時間のちょうど真ん中の時間での ものと考えた。 • 厳密には、2つの時間の間のどこかの速度であるとしかいえない。 • しかし、観測間隔を小さくすると、速度の値は正確になっていく。 • それで十分だというのが微積分。平均の速度と速度が一致する時間が わからないとき、微積分が役に立つ。 • 一致する時間が明らかなとき、微積分は不要である。 ニュートンは「プリンキピア」では微積分を使わず、作図で力学を厳 密に論じている。 ニュートンは、時間とは何か、空間とは何か、を考えたかったので、 あえて、微積分を使わなかった。 ■ 平均値の定理 平均速度 速度 x 平均値の定理 x x dx Δx dt Δt t1 t2 t t t1 t2 t 平均の速度と速度が一致する時間が考えている時間内にかならず「存在」 する。 存在するというだけで、いろいろなことが言える。それが微分学。 存在する点がどこかを計算(作図)できるなら、微分はいらない。 ■ 位置は t-v のグラフの面積から求められる。 • もし速度 v が一定なら, 時間 tA から時間 tB までの変位 v × (tB − tA) 速度 v は長方形の面積。 S v < 0 なら面積は負であることに注意。 物理では長さや面積や体積まで符号つき で考える。 tA tB 時刻 • もし速度 v が一定の割合で変化するなら, 時間 tA から時間 tB までの変位 (xB − xA) は 平均の速度が中央の時間での速度に等し v vB いと置くと vB + vA xB − xA = tB − tA 2 (vB + vA) xB − xA = × (tB − tA) 2 これは台形の面積の公式である。 vA S tA tB t • 速度 v が一定でなかったら、 時間を細かく区切って考える。 物理の公式を考えるこつ: まず、変数が定数の場合を考えて、つぎ に時間を細かく区切って考える。 v 変位は面積で表される。 面積は積分で求められる。 ∫ t 2 r= vdt t1 t1 t2 t ■ 加速度 (Acceleration)って何だ? • 速度の時間変化率。 • 速度の変化量の時間の変化量に対する比 a= 速度の変化 時間の経過 • 速度と加速度は次元のまったく異なる量である。加速度の単位は m s−2 どうすれば加速度を測れるか? — 例 時計と定規があれば測れる。 時計 0.1 s 0.2 s 位置 5.21 cm 差 速度 2.14 cm 21.4 cm/ s 7.35 cm 1.67 cm 0.3 s 9.02 cm 0.53 cm 0.4 s 16.7 cm/ s 加速度 −4.7 cm/ s −47.0 cm/ s2 −11.4 cm/ s −114 cm/ s2 ... ... 5.3 cm/ s 9.55 s ... 差 ... 等加速度運動の場合、横軸を時間、縦軸を速度としたグラフは直線にな る。 加速している場合は傾きは正、減速の場合は傾きは負。 v S t1 t2 t 面積から変位が分かることも思い出しておこう。 ■ 相対 • 絶対位置 = 位置 - 原点の位置。 原点など、どこにあってもいいから、絶対位置に意味はない。 空間のベクトルは平行移動してもよかったことを思い出せ。 • 相対位置 = 位置 - 基準の位置 • 相対速度 = 速度 - 基準の速度 ■ 絶対空間論争 • ニュートン (1642–1727) は絶対空間のなかでの一点の運動を考え た。 • バークリー (1685–1753) は、運動はすべて相対的で、絶対空間な どありえないと主張した。 バークリー「流率法の存在を信ずる程のものは宗教上の神秘に信を置 くにも抵抗を感じるべからず。」 • マッハ (1838–1916) は絶対空間は宇宙全体の物質の運動から決ま ると主張した。 • アインシュタイン (1879–1955) はマッハの考えにしたがって、相対 性理論を作った。 ■ 微分記法にかんする注意 • 加速度は速度の微分であり、速度は位置の微分だから a(t) = dv dt = d( dx dt ) これを次のように略記することが多い。 a(t) = d2 x dt2 dt ■ ライプニッツ • 人間の思想全体に対する普遍的な象徴言語である記号論の創始者。 • 微積分の記号はライプニッツの画期的な発明である。 • オイラーはライプニッツの記号を用いて、力学の問題を次々と解いて いった。 運動の法則を ma = f と書いたのは、オイラーである。 • ライプニッツの記号による形式的な操作は、正確な意味が定義されて おらず、厳密性に欠けるものであったが、新しい問題を解く上ではあ まりにも強力であった。強力過ぎてニュートンの「プリンキピア」は 顧みられなかった。
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