障害者施設等一般病棟における リハのあり方

障害者施設等一般病棟における
リハのあり方
医療法人渓仁会
札幌西円山病院
幡鎌由紀子 久保進也 伊藤 隆 横串算敏
はじめに‐当院の病棟構成
内訳
ベット数
医療一般
障害者施設等一般(13:1) 重度障害者・意識障害者・神経難病
169
医療療養
回復期リハビリテーション病棟1
89
緊急の入院の受け入れ
療養病床入院基本料2
介護療養
介護療養病棟
ADL向上による寝たきりの予防
家庭復帰
長期療養
重度の看護と介護・神経難病・認知症
長期療養
能力に応じた日常生活への援助
301
310
869
障害者施設等
一般病棟
患者層、疾患特性の把握は未確立であり、
→
リハビリの役割も不明確
OT処方の状況
2010年1月1日∼2010年12月31日のOT処方:処方状況と転棟元について
処方状況
転棟前の病棟
目的
1)障害者施設等一般病棟において
他病棟からの転入患者の傾向をとらえる。
2)障害者施設等一般病棟において
リハビリテーションのあり方を検討する
対象と方法
対象;当院入院療養中で、障害者施設等一般病棟に
他病棟から転入してきたリハ対象者 30名
障害者
介護
医療療養
対象者(名)
30
32
11
平均年齢
80.9±8.7
性別(男:女)
13:17
85.0±9.2
82.2±10.8
11:21
2:9
方法;転入前と転入後のFIM・NM・N‐ADLの得点について前後比較
転入の理由・転帰先などの調査把握
* FIM:機能的自立度評価法
N‐ADL:N式老年者用日常生活動作能力評価法
NMスケール:N式老年者用精神状態尺度
統計学的検討;SPSS、Wilcoxon符号付順位検定、Kruskal Wallis検定
結果①:転入理由と転帰について
転入理由
転帰
結果②:FIM運動項目・認知項目について
FIM運動項目
食事
整容
清拭
更衣上
更衣下
トイレ動作
排尿
排便
移乗ベット
移乗トイレ
移乗浴槽
歩行
車椅子
階段
転棟前
3.03±2.39
2.33±1.67
1.37±0.96
1.87±1.36
1.53±1.11
1.67±1.52
2.03±1.90
2.07±1.96
2.13±1.76
1.80±1.73
1.40±1.19
0.40±1.40
1.13±0.90
1.07±0.37
転棟後
2.20±2.04
1.63±1.35
1.33±0.96
1.67±1.35
1.43±1.10
1.53±1.33
1.80±1.85
1.83±1.82
1.83±1.53
1.70±1.62
1.27±0.98
0.40±1.40
1.03±0.81
1.00±0.00
有意差
p<.05
p<.01
N.S
N.S
N.S
N.S
N.S
N.S
p<.05
N.S
N.S
N.S
N.S
N.S
転棟前
3.27±1.86
3.2±1.71
3.2±2.07
2.37±1.65
2.53±1.72
転棟後
2.87±1.57
2.73±1.57
2.87±1.91
1.83±1.32
2.07±1.23
有意差
N.S
N.S
N.S
p<.05
N.S
FIM認知項目
理解
表出
社会的交流
問題解決
記憶
結果③:NMスケールとN‐ADLについて
NMスケール
転棟前
転棟後
有意差
身辺動作
1.87±2.33
1.10±1.69
p<.01
交流
1.53±1.78
0.87±1.53
p<.05
会話
1.37±2.27
1.17±2.25
N.S
記憶・記銘
3.17±3.55
2.00±3.09
p<.01
見当識
2.07±3.20
1.67±2.93
N.S
転棟前
転棟後
有意差
歩行・起座
1.43±1.98
0.83±1.78
N.S
生活圏
2.77±3.42
1.63±2.93
p<.05
入浴
4.80±3.25
4.06±3.18
N.S
摂食
4.37±3.53
3.26±3.21
p<.01
排泄
4.63±3.60
3.60±3.41
p<.05
N‐ADL
結果④:変化量について
変化量
FIM運動
FIM認知
変化量
NM合計
N‐ADL合計
N.S
*
N.S
P<0.05
N.S
変化量
変化量
整容
車椅子
生活圏
*
*
P<0.05
P<0.05
*
P<0.05
考察①:転入理由から
介護・医療病棟では、長期療養が主流
→生活期のリハビリテーション
障害者施設等一般病棟では、
肺炎・心不全増悪などを急性発症
廃用症候群に
33%
67%
障害者施設等一般病棟
介護療養病棟
などへ転出
継続療養
死亡
状態悪化
考察②:障害者施設等一般病棟に求められる
リハビリテーションのあり方とは?
障害者等一般病棟への転入患者→急激な状態変化を起こしやすい
急性増悪→廃用症候群への悪循環が発生の懸念
機能レベルの低下
生活レベルの質の変化
生活圏の狭小化
廃用症候群の
リハビリテーション
能動的生活から受動的生活へ
終末期の
リハビリテーション
考察③:今後の課題
障害者施設等一般病棟には、
廃用・終末期の対象者が混在している状態
廃用症候群に対して
身体機能の早期改善を目指し
生活レベルを回復
今後の課題
早期離床・生活圏の改善
訓練頻度・内容の検証
肺炎に対しては・・
呼吸ケアチームとの連携
終末期に対して
受動的・臥床傾向となる方のリ
人との交流・生きがいの援助
ハビリのあり方の検討
今後の課題
受動的・臥床傾向に対するリハ内容
個別訓練
↓
集団の
活用
まとめ
・当院入院療養中で、障害者施設等一般病棟に他病
棟から転入してきた30名を対象に、FIM、NMスケール、
N‐ADLを用い転棟前後の得点を比較した。
・障害者施設等一般病棟では、肺炎等の急性増悪に
よる転入が多く元病棟へ戻れる対象者は約30%,残り
は継続療養あるいは死亡退院であった.さらに評価ス
ケールの変化量は他病棟患者よりも変化量が大きか
った.
・今後,当院障害者施設一般病棟においては廃用症
候群・終末期リハビリテーションの具体的方策が必要
であることを述べた.