北里大学付属動物病院 X 線検査報告書 ー Radiology Report ー 読影日:平成21年 フィルム評価 Technique E/ G/ F/ P Positioning E/ G/ F/ P (後腹部ならば E) Fat (BCS) 1/ 2/ 3/ 4/ 5 1月 某日 Respiratory Ex / In 読影所見 やや露出条件が強いため、微細な軟部組織構造の読影に注意が必要。 患者は成犬のメス。骨格から軟骨異栄養犬種等ではなく、一般的なイヌの体型を呈する。 <単純腹部 RL> 胃軸の起立、すなわち幽門部の頭側変位が認められる。胃内容物が存在しているにもかかわら ず、胃体部の拡張が認められない。 境界線の明瞭な片腎が確認されるが、対側の腎臓は認められない。この腎臓の尾側、L4-5 の 椎間付近より尾側に凸の周辺の消化管や脂肪、筋組織とは独立した軟部組織様の構造を伴う境 界線が認められる。 空回腸と腹側ならびに尾側への変位。膀胱陰影は認められない。 結腸内に糞塊を認め、やや腹側に変位。 <単純腹部 VD②(①はポジショニング不良)> 腹腔内正中より右側、T12 付近から L5 付近にかけて、軟部組織と同等の透過性を持つ構造物 が存在し、胃、十二指腸、空回腸ならびに結腸といった全消化管を左側へ強度の圧迫変位をも たらす。 両側腎臓の正常な陰影は認められない。また膀胱についても確認できない。 <造影 5 分 RL> 一つの腎臓において、皮質ならびに髄質部の均質な造影増強効果が認められ、尿生成が行なわ れているのが確認される。この腎サイズは正常。 片方の腎臓から延びる尿管と膀胱との連続性が認められ、膀胱陰影が認められる。膀胱は頭側 面が腸骨翼の頭端よりも尾側に収まるほどに変位あるいは圧迫を受けている。 対側の腎臓は確認できない。 <造影 5 分 VD> 左腎臓の腎盂部と尿管の走行が認められる。 <造影 5 分斜位> 一つの尿管のみが観察される。 <造影 30 分 RL> 片腎の腎盂部が明瞭に観察されるが、対側の腎臓ならびに他の造影増強効果が認められる領域 はない。 <造影 30 分 VD> 北里大学付属動物病院 左腎の腎盂部にわずかに造影剤が残存し、膀胱が完全に骨盤腔内に収まっているのが観察され る。 <造影 50 分斜位> 膀胱のみが造影剤の残存を示す。 診断的印象 診断・鑑別診断名 研修医 消化管の変位ならびに胃が頭側に変位していることから、腹腔内の右背 側に存在する軟部組織様物は、腎臓あるいは副腎の拡大した腫瘤である可 能性が高い。造影増強効果が右腎でまったく認められないことから、現段 階における右腎の尿生成機能は完全に失われている。 腹腔内腫瘤の造影増強効果が認められないことから、腫瘍性病変である のか、水腎症や嚢胞腎であるのか等の判断は難しい。 まずは超音波検査により、腫瘤の内容物の確認ならびに右腎の確認を行 なう必要がある。いずれにせよ試験的開腹を行い、必要に応じて腹腔内腫 瘤の除去を行なわなければ、食事を行なうことも難しいと思われる。 腎腫瘍、副腎腫瘍、嚢胞腎、水腎症 担当獣医師 柿崎竹彦
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