優秀賞 茶道のこころ、日本のこころ 東浦 千苗

優秀賞
茶道のこころ、日本のこころ
渋谷教育学園幕張中学校三年(千葉県)
東浦 千苗
まず、一つの動作は自然に次の動作へと流れていく。ごくごく自
然な流れでできている。これを学ぶのも、想像していたほど苦には
ならなくて、お点前を繰り返しお稽古していくうちに自然と体が覚
えていった。
さらに、一つ一つの動作には相手を気遣うこころが表れている。
例えば、お道具を清めること。これは、相手に気持ちよくお茶をい
ただいてもらうためにするのだと私は思う。また、最初の一服を点
てるとき、その一服に茶筅のかけらが入っては危ないから、茶筅通
もはるかに美味しかった。だから、姉の背中を見て育ってきた私は、
て帰ってきてくれた練りきりは、今までに食べたお菓子のどれより
隅にあった。姉は本当に楽しそうに部活を行っていたし、たまに持っ
中学一年生の頃から漠然と高校での部活の候補として茶道部が頭の
てなす相手のために、その場の時間を最高のものにするためのここ
せること。当たり前のことだが、ちょっとしたことでも、すべても
囲気を作り出すこと。そのためにも、自分のこころにも余裕を持た
点てること、笑顔をこころがけて、お客様がほっとできるような雰
そもそもお客様に一服のお茶を差し上げること自体におもてなし
のこころが表れている。作法だけではなく、こころを込めてお茶を
しを行い、穂先を確かめる。
三年生に上がり、まず見学に行ったのが茶道部だった。その時茶室
ろ遣いなのだな、と感じた。そして、これこそがおもてなしのここ
私が茶道を始めた理由はそこまで立派なものではない。同じ学校
に通う姉が茶道部に入っていて、とても楽しそうにしていたから、
で感じた雰囲気とこころの落ち着きに惹かれて、すぐに入部した。
じような感想を抱くようで、現に私の友達も、難しそう、と言って
最初は本当に何も知らなくて、先輩方のお稽古を見ながら、茶道
には決まりが多いなぁと思っていた。茶道を知らない人の多くは同
ようになった。
先程のおもてなしのこころはもちろん、人と人との関わりを大事に
そ、茶道には日本独特のこころが表れているのではないだろうか。
いき、茶道という名の文化に変えていったからだと思う。だからこ
お茶は元をたどれば日本のものではない。けれど、今や日本文化
の代表と言ってよいものである。それは、長い歴史の中で中国から
ろであり、茶道のこころなのだと思う。
いる。けれど、実際にやっていくうちに、そして先輩方にいろいろ
するという考え方、出逢いを大切にするという考え方。茶道には、
それから半年が経った。わずかな期間ではあるが、部活で茶道を
学んでいくうちに茶道は日本のこころの鏡なのではないか、と思う
と教わっていくうちに、決まった作法はもちろんあるけれど、それ
人が人と生きていくうえで大切なこと、どのように生きていくか、
伝わってきたお茶という風習を、日本という国は自分のものにして
にはきちんとした理由がある、ということがわかった。
そして関係を作っていくか、先人の英知と引き継がれてきた日本人
のこころが凝縮されていると思う。
「日本のこころ」はまさに、「茶
道のこころ」の中に存在するのではないだろうか。
こう思うようになってから、茶道がさらに楽しくなって、始めて
本当に良かったと思っている。
前にも述べたとおり、私が茶道を始めた理由は大したものではな
いかもしれない。けれど、今となっては、私には茶道を続ける理由
がたくさんある。そして、茶道をやっていけることは私の誇りだ。
茶道が、大好きだ。そして、茶道には終わりなんてない。茶道の
こころ、つまり日本のこころにもっと触れるためにも、ずっと茶道
を続けていきたい。