優秀賞 昔から日本人がやってきたことなのです。それが現在まで受け継が れてきた訳ですから、何か深い理由があって、茶道がこのような形 になったに違いありません。そう考えた私は、茶道をするうえで、 何が一番大切なのかを探すことにしました。それが理解できれば、 この疑問にも全て説明がつくと思ったからです。私なりの答えを見 小学校六年生のある日、友達が言いました。 「茶道ってよくわからない」 返す言葉が何もありませんでした。その友達の言ったとおり、粉 末を器に入れ、お湯を注いで混ぜる。インスタントコーヒーを作る のです。私は、心から茶道が好きです。 言葉ではうまく説明できませんが、心を洗われるような感じがする 道に関わっているときは心が落ち着き、とても気分が良いのです。 お道具を洗っているとき、正座をしているときなど、とにかく、茶 ました。お茶を飲んでいるときはもちろん、お点前をしているとき、 道を習ってきて、時間を積み重ねるうちに茶道を好きになっていき は、一般的な中学生より長いのではないでしょうか。私は六年間茶 私が茶道を始めたのは、小学校三年生の頃です。そこで、中学校 に入学して茶道部に入りました。私がお茶の道を歩んできた道のり て実践することです。 のは、とても簡単なことです。でも、一番重要なのは、「心」を込め 考えてみれば、単純なことです。でもとても大切なことです。 のは、お点前が、お客様をもてなすために作られた動作だからです。 るでしょうか。少なくとも私はしません。私をこんなに感動させた ヒーと同じようにいれ、完成品を差し出されたら、あんなに感動す 程までの疑問に不思議と説明がつきました。お茶をインスタントコー をもって心にひびきました。お点前が終わり、しばらくすると、先 でいっぱいになりました。動きの一つ一つが、「美しさ」という意味 きです。私のきれいに洗い流された心は、それを美しいと思う感情 一番大切なもの 高松市立庵治中学校二年(香川県) つけるのに三年もかかってしまいました。でもこれを見つけてから、 私の価値観は大きく変わったと思います。 のと大して変わらない作業のはずなのに、いくつもの手順を踏み、 増田 直 ややこしい動作をして、しかも人前でそれをするのは、何だか不自 それから、私は変わりました。茶道が好きなのはもちろんですが、 日常生活でも、あの「良い気分」で満たされることがあるのです。 私は茶道で一番大切なものは、お客様をもてなそうとする「心」 だと思います。それを見つけたのは、私の師がお点前をしていると 然です。しかし、私は小さい頃から茶道を習ってきたので、そんな 私の「心」が一つ成長したということなのでしょうか。今、私はと りません。「受け継ぐ」と口で言ったり、こうして紙に書いたりする 長い時間の中で、先人たちが受け継いできた大切な「心」ですか ら、当然私も茶道部の後輩たちに、しっかり伝えていかなければな ことは一度も考えたことがありませんでした。よく考えればもっと ても幸せです。茶道部で茶道を受け継ぐために、できることは、全 力でやるつもりです。 次の私の目標は、茶道部の部長になって、より多くの人を、おも てなしすること、そのための「心」を育てることです。
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