大学女子ラクロス選手の体幹筋収縮と意識(認識)に関する調査 The research of abdominal muscular contraction and knowledge in collegiate women lacrosse players 1K07A114-2 新藤 愛美 指導教員 主査 金岡恒治 先生 副査 中村千秋 先生 【緒言】 【結果】 近年、多くのスポーツ活動現場で体幹の重要性について認 アンケート調査の結果と各筋の平均変化率(収縮時筋厚/安静 知され、ドローインやそれを応用したトレーニングが指導さ 時筋厚×100)との間に相関はなかった。また、圧バイオフィード れている。しかしながら、指導される側がその効果や筋の使 バック装置と平均変化率との間にも相関はなかった。各筋間の平 い方を十分に理解し、正しく実践出来ているかについては疑 均変化率の比較では、右側 OE と左側 OI の間を除いて、両側 問が残る。また、意識や理解度と実際の収縮の関係について OE と両側 TrA、OI との間に有意差が認められた。また、右側 の報告はまだない。そこで本研究では、ドローインの意識や TrA と左側 OI にも有意差が認められた。 理解度が、実際の収縮とどのように関係するかを明らかにす 利き手側と非利き手側の各筋安静時筋厚の平均値で有意差が ることを目的として行った。 認められたのは OE のみである。また、両側とも TrA と OI の間に 【方法】 は有意差があった。非利き手側 OE とその他すべての筋におい 学生1部リーグ、大学女子ラクロス部に所属する選手 27 名を対象とした。対象者にはまず、ドローインに関する意識 ても有意差が認められた。 【考察】 や理解度を計るためのアンケート調査を実施した。設問ごと 圧バイオフィードバックの結果と各筋の平均収縮率に相関が にデータを数値化し、その合計点を被験者の理解度の指標と 見られなかったのは、圧バイオフィードバック装置はそもそも「腹 した。 横筋の選択的な収縮」を確認するための装置であるからだと考え 次 に 圧 バ イ オ フ ィ ー ド バ ッ ク 装 置 ( Chattanooga 社 られる。圧バイオフィードバックによる調査は、本研究の定義した 製,STABILIZER)によりドローイン時の圧変化を観察した。 中間層の筋全体の収縮を前提とするドローインの出来を確認す 体位は仰臥位、膝を軽く曲げた状態で、腰背部とマットとの る方法としては不適切であることが示唆された。 間に圧パッドを挿入した。その後圧を 40mmHg に設定し、 理解度と実際の収縮との間に相関がないことが示唆された。そ 圧変化を検知できるようにした。被験者にメーターを見せる こからは、ドローインを理解することと、収縮をイメージし実際に収 ことなく各人3回ずつ連続で測定した。ドローイン時、圧に 縮出来ることに相関はないことが推測された。 大幅な増加が認められた場合を失敗、2mmHg 程度の若干の増 OI が TrA や OE よりも発達しているのは、ラクロスのスロー動 加は失敗とはいいきれないと考え、変化なしまたは若干の減 作が関係していると考えられる。ラクロスのスロー動作では、右手 少は成功とみなした。 が上の状態でボールを投げる時、腰椎は左に屈曲、左に回旋す 最後に超音波診断装置(GE Healthcare 社製 LOGIQ ることになる。その際の主働筋は筋の作用から考えて OI であると book)を用い、ドローイン時の腹横筋(以下 TrA)、内腹斜 推測される。また、非利き手側 OE が利き手側よりも発達している 筋(以下 OI)、外腹斜筋(以下 OE)の筋収縮を観察した。 のは、コッキング・フェイズ時の非利き手側腹筋群の伸張性収縮 被験者を仰臥位、股関節 45 度屈曲、膝関節 90 度屈曲させた が関係していると考えられる。ラクロスは基本的には両側の手で 状態にし、プローブ(10MHz)は胸郭の下角と上前腸骨棘 ボールを扱うことが出来るが、キープ動作や遠投では利き手を使 とを結んだ線の中点で、TrA、OI、OE の三層構造が写る場 う選手が多い。キープ動作では常に軽いコッキング・フェイズのよ 所に位置させた。画像上で TrA の付着部が体の中心部から うな体勢をとることと、遠投など大きく振りかぶってのスローは動作 2cm になる所に合わせて、安静時左、ドローイン時左、安静 では非利き手側の腹筋群がいつものスロー動作より強く伸張性 時右、ドローイン時右の順に一人4回撮像した。画像の解析 収縮していると予測される。伸張性収縮は筋肥大に効果的と言 では、TrA の付着部から水平方向1cm の部分の筋厚を、垂 われることから、これにより非利き手側の OE が発達していると考 直方向にそれぞれ 3 回ずつ測り、その平均値を採用した。 えられる。 【分析】 【結論】 アンケート結果と圧バイオフィードバック装置の結果と ドローインの理解度と実際の収縮の間には相関がないことが示 の関係、アンケート結果と筋収縮の関係については、 唆された。圧バイオフィードバック装置では、スポーツ活動中に行 Spearman の相関係数を用いた。各筋の変化率の比較、安静 われるような実践的なドローインの出来を確認することは難しい。 時筋厚の比較には一元配置分散分析を行い、Bonferroni によ 女子ラクロス選手の体幹筋の形態的特徴として、OI が TrA や る多重比較を行った。統計処理には SPSS を用い、有意水準 OE に比べて発達していることが示された。また、非利き手側の はp<0.05 とした。 OE が利き手側 OE に比べ有意に発達していることが示された。
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