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民主党参院選の敗因
2010年7月22日
逃げの政治姿勢
唐突な消費税論議の提起が、参院選民主党の敗因と言われる。だが、それはギリシャ・ユーロ危機に対
応した、市場向けメッセージでしかない。政権交代から八ヶ月、民主党は、普天間と「政治とカネ」の
迷走が、鳩山辞任・小沢外しで支持率を回復した。
眞の敗因は、こうした迷走の原因に向き合わず、目先の支持率回復で、参院選に逃げ込んだ、党の政治
姿勢ではないだろうか。消費税論議が迫力を欠いたのも、根っこは同じだ。
自民党は、議席は選挙区で勝利したが、比例で民主を下回り、政権交代が地方に及ばぬだけで、総得票
数が民主党を下回り、再生の先行きは見えていない。みんなの党は、自民・民主の批判票の受け皿に
なっただけだ。
世界同時不況と日本社会の閉塞感を打開するのは、国民主導・生活第一・地域主権・新しい日本の原点
に立ち帰る以外にない。普天間と「政治とカネ」、口蹄疫、財政危機も、そこから打開の道を開くこと
ができる。
国民主導は政治主導、生活第一は家計重視、地域主権は住民自治、新しい日本は平和外交と読み替えて
も、まず異論はないだろう。だが、その対抗軸を掘り下げると、参院選の核心が見えてくる。
政治主導の対抗軸は、官僚主導であった。生活第一の対抗軸は、国際競争力優先である。また地域主権
の対抗軸は、中央集権社会だ。そして平和外交の対抗軸は、日米同盟基軸(対米追随)ではないだろう
か。こうした対抗軸から、日本の政治が抱える課題を検証しよう。
まず、日米同盟と官僚主導を、国民との対抗軸から見よう。普天間、「政治とカネ」、口蹄疫、消費税
と強い経済・財政・社会保障が相互につながり、政権交代・菅内閣とは、何かが明らかになる。
普天間では、日米合意の抑止力、移設先の迷走と、鳩山の「対等な」日米関係、小沢の第七艦隊発言、
沖縄・徳之島の民意が対抗軸だ。
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民主党参院選の敗因
「政治とカネ」では、政権交代の主役小沢・鳩山に対する、検察官僚・野党・マスコミの政治テロ・イ
ジメ、与党内の小沢外しと、さきの衆院選における国民の選択が見えてくる。
イギリスでは、イラク戦争に加担した政治判断が、責任追及ではなく、過ちに陥った仕組みを明らかに
し、未来に役立てるため検証が進んでいる。日本でも、「政治とカネ」を責任追及ではなく、政治と社
会の仕組みという視点から検証が必要だ。
口蹄疫では、官僚主導防疫の迷走と、地域力の再構築、宮崎支援の広がりが対抗軸だ。また口蹄疫発生
の土台には、牛肉自由化・輸入飼料依存を基軸とする、霜降り牛肉の高品質・高価格志向・多頭飼育の
過密な加工畜産の歪みと、国民の食品不安・健康危機、食文化の崩壊がある。
強い経済・財政・社会保障では、法人税引き下げ・消費税引き上げ・子ども手当に集約される内実と、
不況・失業・生活保護の増大、年金・医療・介護・教育の崩壊、国民生活の破綻が対抗軸となる。
第三の道は、新自由主義とケインズ政策の融合だ。自民党の経済成長と財政再建の綱引きは、菅民主党
の強い経済・財政・社会保障と重なる。菅首相も、経団連会長も、超党派の協調を唱え、奇妙に符合し
ているではないか。既に英労働党の第三の道は破綻し、ユーロ危機の中で、財政破綻に喘いでいる。
法人税を引き下げ、事業仕分けや消費税を引き上げても、景気回復も財政再建も実現できない。法人税
の引き下げは、内需拡大につながらず、10年先の基礎的財政収支の黒字化という辻褄合わせで、800兆
円に達した国の債務が解消するだろうか。
普天間移設
ー抑止力のトラウマを抜け出す交渉カード
鳩山は、普天間移設で迷走し、対等な日米関係とトラスト・ミー、国外少なくとも県外の一方で、抑止
力を「学べば学ぶほど」官僚主導に絡め取られ、日米韓の「先頭に立つ」韓国哨戒艦事件へと追随し
た。
一方で東アジア共同体、小沢訪中団、天皇と習近平中国副主席の会見、小沢の羽毛田信吾宮内庁長官の
政治利用発言批判、インド洋給油中止と小沢の第七艦隊発言を思い起こす。鳩山の二酸化炭素削減目
標・核廃絶の提起は、オバマの協調外交と共鳴し、自主・自立の日本外交を模索していたのだ。
そして沖縄では、仲井間知事を始め、日米合意に反対する住民の意志が統合された。徳之島の三人の町
長も、民意を背負って、国の移設先たらい回しを批判している。基地の撤去と地位協定見直しは、条約
改正の治外法権を無くす課題と似ていないだろうか。またWTOの関税引き下げ、FTA・PTA交渉は、同
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じ国境障壁を撤去し、関税自主権の回復とは逆な位置づけができる。
19世紀アヘン戦争の時代には、砲艦外交があった。条約改正は、日英同盟と日清・日露戦争を梃子に
実現したが、大陸侵攻と敗戦につながった。中国の香港は、阿片戦争の苦難を経て、武力を用いず一国
に制度で返還され、台湾海峡は、FTAで結ばれている。また朝鮮戦争で、核使用を提案したマッカー
サーは解任され、ベトナム・アフガン・イラク戦争は破綻している。
さらに、両大戦の戦勝国アメリカの債権放棄という、もう一つの歴史の教訓がある。三國陽夫は、日本
の貿易黒字は、政府と銀行の保有する回収されない「売掛金」で、日本経済が疲弊する「黒字亡国」か
らの脱却を考察し、米国の対外債務返済は難しく、債権国への借金の棒引き提案も予想されると言う。
遡ると米国は、両大戦後2度に亘る債権放棄をし、マーシャルプランでドル経済圏の確立に導いた。
こうした視点から、三國は、日本の債権放棄検討を提起している。同時に、日本経済を内需型に転換す
れば、国内経済を再生できるとし、国内市場に目を向け、給与をコストではなく消費喚起の投資と捉え
ている(『エコノミスト』2010.5.4・11.)。
オバマが協調を謳い核廃絶を掲げても、その抑止力は、アフガン増派など砲艦外交の延長線にある。日
本の開国と条約改正、敗戦と日米安保体制、9.11.以後の一国覇権体制の転換とグローバルな経済危
機。日米関係の「進化」には、こうした歴史の文脈の中で、日本の外交・安全保障を捉えねばならな
い。
またユーロの危機から、東アジア共同体と共通通貨の論議を、見直す必要がある。世界金融危機に対応
し、アジア新興工業国の成長に依拠する、「多極化」の流れが形成された。鳩山首相は、東アジア共同
体を提唱し、新成長戦略もアジアをフロンティアの開拓による成長分野と位置付けている。
1997年のアジア通貨危機を契機に、これまでもFTA・EPAと併せ、共通通貨の設立が論じられてき
た。その背景には、EUの統合と共通通貨ユーロがあったと言える。だがギリシャ・ユーロの危機は、
共通通貨が、文化・社会・政府の自立に関わることを教えている。
三國と同じく内需型へ転換し、給与をコストではなく消費喚起の投資と捉え、ドル経済圏の樹立の歴
史に学ぼう。近代の武力戦争は、人的被害に加え、財政経済を破壊し、技術文明や市場と利潤の追求に
起因している。
平和日本の安全保障、専守防衛には、補完互恵の経済外交・対話外交が必要だ。 日本は、政府と銀行
の回収されない「売掛金」の債権放棄を外交カードに、アジアを始めグローバル危機を打開する、自立
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互恵・自然と人間優先の同心円型経済モデルを提起できないだろうか。
このモデルは、流域圏を基軸に海で内外と結ばれ、瀬戸内海・太平洋・東シナ海・日本海・オホーツク
海に区分されている。沖縄の未来も、太平洋・東シナ海の地政図を描く中で展望が切り開かれるのだ。
「政治とカネ」批判の中身を問う
ー眞の打開策は
民主党は、「政治とカネ」が、細川内閣と同じ政権交代の主役小沢・鳩山への政治攻撃であることを
見抜けず、受け身で逃げと言い訳の釈明に終始した。尊皇攘夷も、倒幕の政治手段で、維新後の天皇制
官僚主導国家が形成されている。
「政治とカネ」批判の根源は、企業と政権の癒着した利権政治だ。だが政治資金の説明責任を追求し、
企業・団体献金の廃止や政党助成金制度を見直しても、政治の浄化は実現できない。日本社会は劣化
し、それに対応した犯罪が増えている。裁判員制度や時効制度など法制度改革で、社会の治安が復元で
きるだろうか。
大相撲の野球賭博が報じられているが、サッカーくじ、シャッター街のパチンコ店もある。法令遵守で
「無菌社会」を謳っても、失業や貧困を打開し、仕事と暮らしの下支え、国民の心に生きる展望が無く
ては社会は再生できない。企業・団体献金の禁止、政党助成金の廃止もよいが、民のかまどの煙・上杉
鷹山など、利権政治に替わる治世の実現こそが、眞の解決だ。
また国民主権は、三権分立、立法・行政・司法の上にある。この視点から、「政治とカネ」を問われる
政治家は、選挙における国民の審判で裁かれることが優先する。百年に一度の日本の危機を横に置き、
「政治とカネ」批判の野党・マスコミの立ち位置こそが問われているのだ。
さらに明治以来の官僚主導が、「政治とカネ」の利権政治を生み出した。かけ声だけの地域主権では、
政治主導が、官僚主導に絡め取られる。国民主導・地域主権社会の実現が、政治浄化の道を開くのであ
る。
口蹄疫は、天災か政災か
ー政治主導・地域主権とは何か
宮崎に全国から新潟中越地震を上回る支援が寄せられたが、口蹄疫は参院選の争点にならなかった。現
地では、多くの人々が汗と涙を流し、29万頭の牛と豚が殺処分され、一千億円の血税が投じられる。
だが社会には、何とも言えぬ空しさが漂い、これを象徴するのが民間種牛の殺処分である。
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県東部の種牛農家薦田(こもだ)長久さん(72)は、5月ワクチン接種を拒否し、特例での助命を強く求
め、県も助命する方針を決めた。だが国は、殺処分しない限り制限区域の解除に応じず。知事は7月15
日、薦田さんに「制限区域や非常事態宣言の解除が重要」として、殺処分受け入れを要請し、翌日受け
入れ翌々日殺処分された。
ところで国の口蹄疫対策は、リングワクチン(移動制限区域の半径10キロ圏内にいる牛や豚全頭に、ワ
クチンを接種した上での殺処分)と、搬出制限区域の周辺10 20キロ圏に加工処理による緩衝地帯の設
置であった。それは、全会一致可決の特措法となっている。
現行の家伝法は、農場内の全頭家畜(患畜・疑似患畜)の殺処分だ。特措法は、全頭殺処分の対象を、
農場内から半径10キロ圏域に広げているのである。
だが口蹄疫は、感染力が高いが人体への影響は少なく、患畜の経済的な被害の軽減が主な課題だ。だが
全頭殺処分は、初動対応を遅らせ、感染が区域の外に広がれば無意味となる。
またワクチン接種には、感染力の抑制効果の一方で、全頭殺処分と同様、初動対応を遅らせ、海外防疫
規制(口蹄疫清浄国)にも影響を及ぼす(家畜伝染病防疫指針)。さらに緩衝帯対策は、食肉処理場の
受け入れ能力や移動リスク、枝肉の値下がり等から、土台無理な対策であった。
東国原知事は、「あの時は蔓延防止・拡大阻止のために致し方無かった。・・・リングワクチンは二度
としてはいけない。これは、何の罪もない人から全てを奪う無差別攻撃なのである。この悲劇は経験し
た者でなければ分からない。二度と経験してはいけない、させてはいけないことなのだ。」と言う(同
ブログ)。
なお政府は、裁量により、全頭の殺処分で5頭の種牛を経過観察とした。東国原知事は、49頭の種牛に
ついても、経過観察とする政治判断を求めたが、政府は認めず、殺処分された。他方で、周辺緩衝地域
の加工処理対策では、現場が要請した未感染家畜の飼育を認める裁量をしている。
薦田さんは、平成の義農作兵だ。だが国の裁量は、これを認めず、県も地域も対抗できなかった。
国の対策本部は、4月20日発生以来、5月17日にが設置され、この時点で既に130例が発生している。
ウィルスの感染力や畜産の大規模化等もあり、防疫措置が手探りで後手後手に回った。感染拡大の原因
は、第一に初動対応の遅れと言える。
県東部と同時発生のえびの市では、早期に感染が終息した。その理由に、初動対応の適切と飼養密度の
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低さが挙げられている。ところが東部では、懸命の努力にも拘わらず、感染拡大を防止できなかった。
初動対応で、ワクチン接種・全頭殺処分・埋却には、人員と埋却地の確保が必要だ。多頭飼育で飼養密
度の高いことは、初動対応を困難にし増幅する。それは、家畜の全頭殺処分に加え、飼育農家を始め地
域の活力を喪失させているのだ。
県は、10年前の口蹄疫事件の総括に、「種牛は貴重なので、一カ所で飼育しないで分散飼育する」とあ
るのに、宮崎改良事業団の防疫の失敗から種牛を感染させた。また県川南試験場の豚の感染爆発が、同
地区全体の畜産を全滅に追いやっている。
ワクチン接種を行わず、患畜だけを殺処分とすれば、初動対応を迅速にする。同じ行政主導の下で、え
びの市が終息し、宮崎東部で感染が拡大したのは、飼養密度の差に加え、初動対応を迅速にする地域力
の差と捉えたい。それは、飼育農家を始め住民・自治体を含む、地域的な防疫対応力の差異だ。口蹄疫
対策を担うのは、地域社会なのである。
都城では、えびの方式に学び、対策の見直しが聞かれた。経過観察で、被害を最小限に食い止め、未来
に展望を持ち得てこそ、地域の活力を引き出すことができる。
先のえびの市では、移動制限が解除された。同時期に発生した韓国でも、広域防除機が威力を発揮して
いる(日本農業新聞)。6月10日、新たに感染が都城市に飛び火したが、えびの方式に学び、対策の見
直しが伝えられた。初動対応が、全てに優先するのである。
一方で13日、県東部地域の代表江藤和利(JA尾鈴畜産組織連絡会長)は、早期に民間種雄牛を処分す
るよう県に求め、「特例を求めると今後の口蹄疫対策に禍根を残す」と指摘した。要請書では、家伝法
の遵守、OIE(国際防疫事務局)清浄国復帰の障害を訴えている。
同じ行政主導の下で、この地域的な違いを生んだのは、法制度や国・県の対応では説明できない。それ
は、飼養密度の差に加え、初動対応を迅速にする地域力の差と捉えたい。飼育農家を始め住民・自治体
を含む、地域的な対応の差異だ。
口蹄疫対策を担うのは、地域社会なのである。経過観察で、被害を最小限に食い止め、未来に展望を持
ち得てこそ、地域の活力を引き出すことができる。感染の拡大が続く地域では、地域・現場の対応力が
活かされず、政治主導の試行錯誤と、集権官僚の裁量行政で歪められたのだ。
現場や地域の活力喪失と、官僚主導の裁量行政の肥大化は、畜産だけに止まらない。米を始め各作目・
農業の全分野に及んでいる。他産業や、インフラ・教育・社会保障も同じだ。政治主導が官僚主導を変
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えるには、国民主導と地域主権が不可欠なのである。
次に、問題の根っこには、口蹄疫の発生と飼養密度の関わり、加工畜産と呼ばれる、輸入飼料依存、薬
漬けの多頭飼育農法がある。それは、技術文明に依存し、利便と効率優先の量産システム、作目・畜
種・経営の選択と集中に起因している。作物も家畜も、自然に対する人間の営みが、歴史の中でつくり
だした。地球温暖化と同じく、技術文明が独り歩きすれば破綻を招く。
このシステムは、飼料など農産物輸入依存が梃子となり、牛肉とオレンジ・果汁の自由化が加速した。
低価格の輸入牛肉に、価格とコスト、品質と数量の両面で対応するため、量産と集約が追求されてきた
のだ。米の減反でも、不耕作田が増える一方、WTO交渉の輸入義務米汚染が生まれ、米のトレーサビ
リティ法で国民に転嫁されたが疑念の声はない。
グローバル時代の政府と多国籍企業
ー新しい国家資本主義
民主党の参院選マニフェストは、強い経済、強い財政、強い社会保障、「第三の道」の新成長戦略を掲
げ、消費税を政治の俎上に載せた。成長と財政の両立が課題になるのは、リーマンショックのアメリ
カ、ギリシャ・ユーロ危機のEUも同じで、G8・G20のテーマともなった。
だが、菅内閣が掲げる成長と財政の両立は、ギリシャ・ユーロ危機で不安感に覆われる金融市場向け
メッセージでしかない。リーマンショック後、各国が執った経済対策は、政府の市場介入から社会主義
化と評された。また政府ファンドや資源・エネルギー・インフラ輸出など、政府と多国籍企業主導の経
済戦略が報じられている。
金子勝は、これを国家資本主義と呼び、グローバル経済下の政府の役割として特徴付ける。戦前の帝国
主義・国家独占資本主義は、政府と企業の強い国家が、内需の不足を海外に求め、植民地市場を争奪す
るものであった。社会主義も、その中で生まれている。
冷戦が終わって、21世紀は、G7からG8・G20の時代に移行した。多国籍企業と政府が融合する国家資
本主義は、アメリカの軍産複合体、中国など新興工業国・資源国のグローバルな展開に象徴されてい
る。強い経済、強い財政、強い社会保障も、同じグローバル時代の国家資本主義に他ならない。
設計図と進路ー「いけ好かない美人」の話
景気対策、雇用と社会保障は、政府による富の再配分機能が、政府と地方の財政が破綻する中で論じら
れている。だが成長神話の着地点や、財政金融政策の限界は、明確にされていない。
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政府の役割を、富の再配分機能に限ると、財源論議や辻褄合わせに終始するようになる。問われている
のは、内需拡大の産業政策だが、グリーンニューディールも、省エネ車やエコポイントの家電需要の先
食いが目立つ。
新成長戦略は、強い経済、強い財政、強い社会保障が好循環する日本を掲げた。換言すれば、企業部門
で国際競争力の強い経済、家計部門で少子高齢化に強い社会保障、政府部門の国債依存に強い財政、海
外部門の日米同盟深化である。
だが経済の安定成長は、企業収支・家計収支・財政収支・国際収支が、それぞれ均衡することが基本
だ。また成長が特定部門に依存し、部門相互の均衡が欠けると、国民経済を歪曲し不安定にする。
リーマンショックで、海外依存の多国籍企業・系列企業が赤字を計上した。またトヨタのリコールは、
グローバル企業経営の先行きを不透明にしている。ギリシャ・ユーロの危機も同じだ。
そうした中で、知人から、「いけ好かない美人」の話を聞いた。彼女は、出産前まで証券会社で働き、
バブル期にはボーナスが、建売り住宅会社に勤める夫を大きく上回ったという。
ところが金融危機で、夫の収入は半減した。彼女は、家庭菜園を始めハーブを栽培し、アイディア商品
にして販売して、以前にはできなかった貯金が月2万円になった。私の知人は、このライフスタイル
チェンジで、彼女を見直したと語っている。
経済成長は、マクロ経済の定式で、企業・家計・政府・海外の4部門によって担われる。「いけ好かな
い美人」の話は、国民経済の土台である家計部門、生活経済の変革につながっている。国民主導、トッ
プダウンからボトムアップへのチェンジが、生活産業再構築の梃子となるのだ。
成長の基軸は、仕事と暮らし
アダム・スミスの産業の優先順位は、一次→二次→三次産業→社会資本→海外と書き換えてもよい。
また市場構造は、商品市場と土地・労働・資本市場を、同心円で囲む地域市場→国内市場→海外市場と
捉えることができる。
そして、商品には価格・費用(償却費・労働費)、土地には地代・地価、労働には賃金、資本には利
潤・利子率が、地域市場には地産地消、国内市場には国産優先、海外市場には輸入補完が対応する。
また有効需要の原理が言う企業の投資性向は、商品の価格・費用(償却費・労働費)と賃金・利潤・
利子率・地代・地価に、家計の消費性向は商品価格と賃金に対応する。そして地代・利潤を除けば、他
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は商品・土地・労働・資本(貨幣)の価格なのだ。
こうして雇用と消費、仕事と暮らし、労働市場と商品市場、賃金と物価という成長の基軸が明らかに
なる。また国民経済の視点に立つと、この有効需要の定式に、政府と海外部門が加わって、マクロ経済
は次のように示すことができる。
マクロ経済の定式
国民経済 企業 家計 政府 海外
Y = I + C + G +EX−IM
雇用 消費 財政 交易
(仕事)(暮らし)
(労働市場)(商品市場)
(賃金)(物価)
まず家計の収支は、給与所得と生活費用の差で、賃金・生活財価格と人口に規定され、企業の製品価格
と雇用賃金で結ばれている。そして多重債務から抜け出すには、自己破産や生活スタイルのチェンジが
必要だ。
次に企業の収支は、売り上げと費用(商品価格・コストの数量との積)の差だ。そこでは、品質と生産
量、それを生み出す設備投資と労働生産性、規模の利益と比較優位が追求される。日航の企業再生で
も、リストラや事業の見直しと並んで、銀行に債権放棄を求めた。
さらに財政の収支は、税収と政府支出、公共的投資の差で、企業所得・家計所得に依存する。財政と家
計は、仁徳天皇と民のかまどの煙なのだ。加えて国際収支は、貿易・サービスと資本収支の計である。
企業・家計・政府部門と海外部門が、モノとカネで結ばれている。
そこで問われるのは、供給か需要かの選択ではない。政策・制度や法規制と財政の所得再配分という政
府の役割を、どう捉えるかだ。すなわち規模の利益・比較優位と、商品・産業・国民経済4部門の均衡
と連関・集積ではないだろうか。
そして適地適産の品目連関、地場産業など地域経済・地域市場の懐を深くする産業連関・集積を下支え
するのは、その再生産を可能にする均衡した価格の連鎖した絆である。その基軸は、商品の価格と最低
賃金・生活保障水準の均衡なのだ。
商品・産業連関と市場構造の同心円型経済モデル
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では成長の基軸である仕事と暮らし、賃金と物価は、産業政策、すなわち商品・産業連関・市場構造
と、どのように関わっているのだろうか。
これまで経済学は、商品を価格や交換価値の視点で捉え、品質などの使用価値を限界効用に倭小化
し、外部経済の中に位置づけてきた。また産業構造論は、第一次、第二次、第三次産業の区分と高次産
業比重の増大(ペティ・クラークの法則)以外には、選択と集中でスクラップ アンド ビルドが当然
視され、イノベーションとリストラを軸に、産業空洞化と産業調整を是認してきた。
だが産業構造は、商品生産の母体である。商品の体系(物産複合)は、産業の均衡・連関・集積が必
要で、分業の利益が機能するのだ。そこで商品の体系と産業構造は、使用価値の概念だが、これを経済
学の基軸に据えた経済モデルを提示したい。その国民経済は、次の枠組みで示すことができる。
国民経済の枠組み
技術・生活文化様式(イノベーション・商品の体系・産業連関・市場構造)
商品・生産要素(土地・労働・資本)市場、
社会構成(企業・家計・政府・海外)、
社会規範 (価格・利潤・利子率・地代の体系)
アダム・スミスの産業の優先順位、国内の農業→工業→商業→海外貿易は、現在の一次→二次→三次
産業→海外だ。これを、均衡・連関・集積した同心円型の商品・産業構造・社会資本・海外部門として
捉え直す。また市場構造は、商品市場と土地・労働・資本の生産要素市場が、地域市場→国内市場→海
外市場へ同心円型につながっている。
この経済モデルは、企業・家計・財政・海外部門が、技術・生活文化様式を軸に商品の体系・産業構
造・イノベーションを担い、商品・生産要素市場が価格・利潤・利子率・地代の体系で結ばれ、三位一
体に位置づけられている。
浜矩子は、ヒト・モノ・カネの黄金三角形を提起した(09.10.4NHKテレビ.)。ヒトは、労働で、
生活文化と社会をつくり、賃金に集約される。モノは、商品で、人間の営みでつくられ、価格に集約さ
れる。カネは、貨幣で、市場経済の交換手段、価値の尺度、蓄積の手段で、利子率(貨幣の価格)に集
約される。
ヒト・モノ・カネは、賃金・価格・利子率という、労働・商品・貨幣の価格で結ばれているのだ。
これまで価格には政策価格、利潤・利子率・地代には公定歩合、賃金には最低賃金・生活保障、課税
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には税制、関税・為替にはWTO・IMFが対応してきた。
これを、ヒト・モノ・カネの黄金三角形、労働・商品・貨幣の価格を軸に、政策・制度の仕組みを再構
築する必要があるのだ。
<ヒト・モノ・カネの黄金三角形(市場経済の枠組み)>
ヒト 人間優先で生活スタイルを変革し、「新しい公共」社会、自助の家族、 共助の地域・企業、
公助の政府を再構築。
モノ 現場主導の自然と人間を活かし・つなぐ技術開発で、環境と生活経済 主軸、品目・産業の均
衡・連関・集積の利益重視、地産地消と国産優 先の互恵経済に転換。
カネ 域境課税と関税を含む税制改革で内外価格差を調整し、最低賃金・生 活保障が下支えする政
策価格の体系を樹立。また内外経済を結ぶ新基軸 通貨を創設し、固定相場制の国際通貨体制を
構築。
政治は、国の舵取りだ。船長は、乗っている国民に行き先の設計図と進路を示さねばならない。設計図
と進路は、国家戦略だ。自然力発電の固定価格買い取り制度も、対象を生活経済・生活産業に広げれ
ば、地域経済・国民経済を変える。
<平成の船中八策>
一策 象徴天皇制と国民主権
二策 分野別・地域別の二院制議会
三策 流域圏(連合)に、住民主導の地域主権社会
四策 専守防衛、アジア重視・対話優先の平和外交
五策 和の文化・社会を軸に、現行憲法を進展
六策 外国基地の撤去・自主防衛
七策 首都圏の危機管理体制整備
八策 国産優先・輸入補完貿易
商品・産業の連関・集積
政策価格の均衡・連鎖
新基軸通貨と固定相場の為替
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http://www.geocities.jp/kirino3330/toki36-minsyu-sanin-haiin.htm (11/11) [2010/07/22 10:33:08]