カラマツ精英樹クローンの生長とヤング係数

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カラマツ精英樹クローンの生長とヤング係数
高田, 克彦; 小泉, 章夫; 上田, 恒司
北海道大學農學部 演習林研究報告 = RESEARCH
BULLETINS OF THE COLLEGE EXPERIMENT FORESTS
HOKKAIDO UNIVERSITY, 46(4): 989-1001
1989-08
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/21312
Right
Type
bulletin
Additional
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46(4)_P989-1001.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
北海道大学農学部演習林研究報告第 4
6巻 第 4号
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要 旨
道内 2ヵ所の林地において,体重負荷方式の生立木曲げ試験によってカラマツ精英樹ク
ローンの樹幹ヤング係数を非破壊的に測定した。同時に対象クローンの胸高直径を測定し,こ
れらのデータに基づいてクローン内,クローン聞の生長,材質両面における変動を調べた。そ
の結果,生長,材質いずれにおいてもクローン内変動は小さく,一方クローン間変動は大きい
ことがわかった。カラマツ精英樹クローンの生長は林地の影響をうけるが,その樹幹ヤング係
数の相対的な優劣は両林地において変動が殆どなく,生長と材質は互いに独立性の高い形質で
あることが示唆された。
キーワード: クローン,生立木,樹幹ヤング係数,生長,カラマツ。
1 . 緒 論
北海道の人工林約 1
5
0万 h
aのうちカラマツ人工林の占める割合は約 30%,5
0万 h
aにも
0%, 30 万 ha が林齢 16~30 年の林であり,適度な間伐と将来きたるべ
及ぶ九この内の約 6
き主伐期に備えての材質予測が急務となっている。近年カラマツ造林は,ネズミによる食害や
材のネジレ等の原因により手控えられる傾向にあるが,もとよりカラマツはその初期生長が良
好であり,大径木の価値も高いことから,材質に重点を置いた育種や施業方法の見直しも検討
されており,今後も北海道における主要な造林樹種の一つであることは否定できない。
このような見地に基づいて,当講座では生立木の曲げ試験によりカラマツ材の材質評価を
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北海道大学農学部演習林研究報告第 4
6巻 第 4号
行ない,樹種内の変動を調ベカラマツ造林木の現状と育種の方向を探ってきた。しかしなが
ら,出所の明らかでないカラマツ造林木に対する試験では,対象試験地での現状把握は出来る
が,材質育種の研究に有益な情報を提供することは難しいと判断される。
林木を出所が同じグループに分け性質を比較する研究は,選故育種を目的として数多く行
なわれてきている。それらの研究で取扱われている性質は,比較的に木材強度と相闘が低いも
のが多く,木材の強度材質に直接焦点をあてた選抜の基準項目にはなりにくい。そこで今回の
実験では,クローン間の材質比較のパラメーターとして樹幹ヤング係数を用いた。樹幹ヤング
係数はその樹木のもつ諸性質が複合して現れる形質と考えられ,個々の樹木の材質を相対的に
評価,比較するのに都合がよい。木材の強度評価という面から見ても,曲げ強さなどの力学的
諸性質と最も相関の高い形質はヤング係数であり,これによる相対評価は有効な基礎資料とな
ると考える。
なお,本来“クローン"という単語は生物の単一細胞,または 1個体から有性生殖を経る
ことなく栄養繁殖的に生じた細胞集固または子孫をいいへ通常はその集団を指すことが多
い。しかし,単木的な意味に用いられることもあり,判断が難しい場合もある。そこで,本論
文では便宜上“クローン"はその集団を表わすことにし,単木的には“個体"と呼ぶこととす
るo
2
. 試験地と供試木
試験は以下の林地で行なった。
林野庁北海道林木育種場
カラマツ類クローン集植所
江別市文京台
北海道立林業試験場
カラマツ類クローン集植所
美唄市光珠内
江別,美唄試験地の供試木の樹齢は,各々 2
8年
, 2
9年である。試験は,江別,美唄両試
験地に共通の 2
5クローンに対して行ない,各試験地 1グローンにつき 3本をめどに個体を選
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)を測定し,その平均値 CAv.ι) をそのク
木,生立木曲げ試験によって樹幹ヤング係数 C
ローンの代表値とした。両試験地とも各クローンの植栽本数が少ないうえ,試験実施が困難な
幹曲りのあるものを除いて選木したため, 2本だけしか試験できなかったクローンもあった。
A
v
.DBH)とともに生長のデータとして使用
また,胸高直径 CDBH)を測定し,その平均値 C
した。
3
.試験方法
樹幹ヤング係数は,当講座で考察した生立木の曲げ試験装置を使用して非破壊的に測定し
た。本試験は体重負荷によるモーメント荷重での樹幹の携みをダイヤルゲージによって測定
し,樹幹ヤング係数を算出する方法で,カラマツへの適用性についてはすでに報告されてい
E
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) は以下の式から求められる。
るト九本実験において樹幹ヤング係数 C
カラマツ精英樹クローンの生長とヤング係数(高田・小泉・上回)
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:矢高測定区間の長さ(100cm)
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M:負荷モーモント
1:樹幹の断面 2次モーメント
a':区間 sにおける樹幹の曲げ矢高
W:試験者の体重
L:アーム(挺子)長さ
r180 :高さ
r120
180cmの樹幹半径
:高さ 120cmの樹幹半径
九:樹皮厚
試験手順は次のとおりである。
(
1
) 樹高 2m附近までの枝を払い,樹高 1
2
0cm,1
8
0cmの 2カ所の周囲長を測定する。
(
2
) 樹高 120cmでの樹皮厚を 1mm毎に刻みを付けた精密ドライパーを用いて 3方向で測定
する。
(
3
) 樹高 2m附近にロープを巻きつけ樹幹に対して水平に挺子を取り付ける。
(
4
)
樹高 70~170
cmの区間に矢高測定器を取り付ける。
(
5
) 挺子から吊り下け.たアプミに試験者が乗り,樹幹にモーメント荷重を与えそれによる携み
を矢高測定器で測定する。
なお,試験は供試木 1本につき直交 2方向で行ない,その平均値から供試木の樹幹ヤング
係数を算出する。
4
. 結果と考察
江別,美唄両試験地での試験結果を T
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6巻 第 4号
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北海道大学農学部演習林研究報告
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1 クローン内の個体差
本来, 同ークローン内では個体差はないものと考えられるが,樹木の場合後天的な環境要
因などにより個体差が生じる可能性がある。そこで,江別,美唄両試験地での試験結果のク
ローン内変動を調べてみた。
4
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.1 直径生長
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.
lは江別試験地における各個体のクローン別の胸高直径の変動, F
i
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標準偏差である。 クローンの標準偏差の平均 C
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)は1.1cmC
最大値 =3.2cm最 小 値 =
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.
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3は美唄試験地における各個体のクローン別の胸高直径の変動, F
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4はその平均と
標準偏差である。 ここでもクローンの A
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.は 0.9cm(最大値 =2.7cm最 小 値 =
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cm) と非常に小さく, A
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.は 4.0%(最大値 =13.1%最小値 =0.2%) となる。また,変
動係数比の平均は 0.
40であった。 これらの結果は 同一クローン内の個体差が小さいことを
示しており, いずれの林地においても後天的な環境要因などにより生長に関してクローン内に
個体差が生じる可能性は小さいと考えられる。
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北海道大学農学部演習林研究報告
第
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6巻
第 4号
2回
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4
.1
.2 樹幹ヤング係数
F
i
g
.
5は江別試験地における個体のクローン別の樹幹ヤング係数の変動, F
i
g
.
6はその平
2
均と標準偏差である。 クローンの A
v
.S
.D
.は 7
.
6t
/
c
m2 (最大値 =
2
5
.
3t
/
c
m
l
最小値 =1.3t
cm2) と非常に小さく, A
v
.C
.V
.は 7.8%(最大値 =25.6%最小値=1.5%)となる。また,変
.
4
5であった。また, F
動係数比の平均は 0
i
g
.
7は美唄試験地のクローン別の樹幹ヤング係数
i
g
.
8はその平均と標準偏差である。 クローンの A
の変動. F
v
.S
.D
.は 6
.
8t
/
c
m2 (最大値=
1
5
.
1t
/
c
m2最小値 =0.6t/cm
りとさらに小さく, A
v
.C
.V
.は 7.0%(最大値 =16.1%最 小 値 =
0.5%) となる。また,変動係数比の平均は 0
.
3
9であった。 これらの結果はいずれの試験地で
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カラマツ精英樹 F ローンの生長とヤング係数(高田・小泉・上回)
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も生長と同様,樹幹ヤング係数においても同一クローンに属する個体聞の差が小さいことを示
しており,樹幹ヤング係数に関しても後天的な環境要因などによりクローン内に個体差が生じ
る可能性は小さいと考えられる。
4
.
2 クローン聞の比較
今回の試験対象木はカラマツ精英樹クローンであり,精英樹選木における主要な基準が直
径生長であることを考えると試験対象木の生長は平均的に良好なものが多いはずである。 これ
らの中から生長のより優良で,なおかつ樹幹ヤング係数の大きいクローンを選定することが出
来れば今後のカラマツ造林にとって非常に有益な情報となるであろう。そこで両試験地での生
北海道大学農学部演習林研究報告第 4
6巻 第 4号
鎖M)
長および樹幹ヤング係数をクローン間で比較し差異の有無を検討した。
4
.
2
.
1 直径生長
A
v
.DBHの最大値は 2
1
.9cm(クローン番号 1
3
),最小値
江別試験地では,クローンの
は1
5.7cm(クローン番号 9
)で,その差は 6.2cmと有意(危険率
1%)であった。また, A
v
.
.
2c
m
)の差は 2
.
7cm(危険率 5%で有意), A
v
.DBHの
DBHの最大値と全供試木の平均(19
.5cm(危険率 1%で有意)であった。
最小値と全供試木の平均の差は 3
一方,美唄試験地ではクローンの
A
v
.DBHの最大値は 26.8cm(クローン番号1),最小
8
.
6cm(クローン番号 2
0
)で,その差は 8.2cmと有意(危険率
値は 1
1%)であった。 A
v
.
DBHの最大値と全供試木の平均 (
2
2
.
3c
m
)の差は 4.5cm(危険率 1%で有意)で、あった。 A
v
.
DBHの最小値と全供試木の平均の差は, 3.7cm(危険率 1%で有意)であった。以上の結果
は,各試験において他のクローンに比べて明らかに生長の優れたクローンが存在することを示
している。
4
.
2
.
2 樹幹ヤング係数
江別試験地では,クローンの
6
.
2t
/
c
m2 (クローン番号
は7
た
,
Av.l
込の最大値は 1
41
.4t
/
c
m2 (クローン番号 4),最小値
2
1
0
)で,その差は 65.2t/cm
(危険率 1%
で有意〉であった。ま
A
v
.Esの最大値と全供試木の平均 (95.9t/cm
りと差は 4
5
.
5t
/
c
m2 (危険率 1%で有意〉で
あった。
A
v
.Esの最小値と全供試木の平均の差は 19.7t/cm2 (危険率 5%で有意〉であった。
一方,美唄試験地ではクローンの
0
.
1t
/
c
m2 (クローン番号
小値は 8
地より大きい差があった。
(危険率
2
A
v
.Esの最大値は 155.9t/cm
(クローン番号 4
),最
1
6
)で,その差は 75.8t/cm2 (危険率 1%で有意〉と江別試験
A
v
.Esの最大値と全供試木の平均 (98.4t/cm
りの差は 5
7
.
5t
/
c
m2
1%で有意)であった。 A
v
.Esの最小値と全供試木の平均の差は 18.3t/cm2 であっ
,
、
ー
。
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これらの結果は,各試験地において樹幹ヤング係数においても他のクローンに比べて明ら
かに優れたクローンが存在することを示している。同一林地内において樹幹ヤング係数の優れ
たクローンと生長の優れたクローンは必ずしも一致しないが,これらの両形質がともに比較的
,5が,美唄試験地
優秀なクローンを選ぶことは可能である。江別試験地ではクローン番号 4
,1
1, 1
9がこれに相当すると考えられる。
ではクローン番号 4
4
.
3 林地聞の比較
これまでに,クローン内の個体差が小さく,各試験地において他のクローンと比較して生
長,樹幹ヤング係数の優れたクローンが存在することが分かった。しかし,それらの相対的な
序列が林地によって変動するのではクローンを総合的に評価することはむずかしい。そこで次
に林地聞におけるその優劣の相対的な変動を調べてみた。
4
.
3
.
1 直径生長
F
i
g
.2
,F
i
g
.4に江別,美唄両試験地での各クローンの平均胸高直径を示した。
9
9
7
カラマツ精英樹タローンの生長とャ γ グ係数(高田・小泉・上回)
2林地の平均胸高直径の差は 3.1cmであった(危険率 1%で有意)。 この結果は,植栽す
る場所により同じクローンであってもその生長に違いが生じることを示している。雨林地での
F
i
g
.
9
),両林地の聞には相関は認められなかった。 この結果は, カ ラ マ
相闘を求めてみたが C
ツ精英樹クローンの生長は林地により差が生じ,林地に関係なく優良な生長を示すクローンの
存在する可能性が小さいことを示唆している。 これらのことより,生長は林地の環境に影響さ
れやすい形質であることが予想される。
4
.
3
.
2 樹幹ヤング係数
i
g
.
8に江別,美唄両試験地での各クローンの平均樹幹ヤング係数を示した。
F
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第4
6巻
第 4号
2林地の平均樹幹ヤング係数の差は 2.5t
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c
m2 でその差は有意ではない。また,雨林地で
F
i
g
.
1
0
),両者の聞には高い相闘が認められた(危険率
の相闘を求めたところ C
1%で有意)。こ
の結果は,カラマツ精英樹クローン聞の樹幹ヤング係数の相対的な優劣は植栽する場所が異
なっても殆ど変化しないことを示している。すなわち,材質面においては林地を問わず優良な
クローンを選定することが可能であることを示唆している。しかし,有意ではないが 2林地の
平均樹幹ヤングに差があったことは樹幹ヤング係数が環境影響と無縁ではないことを示してお
り
, クローンの選定とともに造林地の選定も良質木の生産にとっては重要なポイントであるこ
とが明らかになった。
4
.
4 直径生長と樹幹ヤング係数
F
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.1
1,F
i
g
.1
2に両林地での生長と樹幹ヤング係数の関係を示す。いずれの林地におい
ても両者に相関は認められない。
この結果はカラマツ精英樹クローンのヤング係数がその生長の良否に影響されない形質で
4クローン,
あることを示唆している。また,今回の試験対象クローンを含む 7
2
1
6本に対す
る江別試験地での実験においても同様の結果が得られており,生長と材質は互いに独立性の高
い形質であることが予想された。
F
i
g
.
1
3は両試験のデータをプロットしたものである。この
図より胸高直径に関わらず樹幹ヤング係数の下限値がほぼ一定値をとることがわかる。生長と
材質が独立性の高い形質であることは先に述べたが, ヤング係数の下限が生長の良否に影響さ
れないで一定の値をとる傾向をもつことは非常に興味深い。これは,今回の試験供試木の樹齢
0年とすでに成熟期に達しており,個体聞に初期生長速度に違いがあったにせよ,林内
が約 3
の欝聞に伴い外側の年輪幅に差がなくなってきていることも原因のーっとして考えられるが,
他の林地での試験でも同様の結果が得られており, カラマツの樹種特性ではな L、かと考えられ
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輪
クローンによるグループ分けは生長,材質両面の比較,検討において非常に有効である。
すなわち,生長,材質共にクローン内のパラツキは小さく, 一方クローン聞のパラツキは大き
い。また,林地間で各クローンの生長には相関が認められなかったが,樹幹ヤング係数には高
度の相関が認められた。さらに,生長と材質は独立性の高い形質であり,生長の良好な個体が
必ずしも材質が劣るわけではないことがわかった。 これらを総合すると材質優良クローンによ
1
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北海道大学農学部演習林研究報告第 4
6巻 第 4号
る効率的な育種,造林は可能と言える。すなわち,樹幹ヤング係数が大きく,比較的生長の良
好なクローンを選抜し,地位の高い林地に造林することによって良質材の生産を確保してゆく
ことができるであろう。
今後の課題としては,材質優良クローンに対する遺伝的,環境的影響を調べることであろ
う。そのためには,土壌条件,気温,積雪量などの環境因子を吟味した上で複数の次代検定林
を設置する必要があると考える。材質優良クローンを候補として終らせてしまわないためにも
次代検定の実施が不可欠であると考える。
謝 辞
本研究を行なうにあたり試験の実施に際して御配慮いただいた北海道立林業試験場古本
忠場長,大島紹郎氏,林野庁北海道林木育種場育種課長片寄藤氏に深く感謝する。また,
実験にあたって御協力いただいた当講座専攻生久保英之氏にお礼申し上げる。
参考文献
1)北海道林業統計昭和 6
1年度
2
) 岩波理化学辞典:岩波書庖
3
) 小泉章夫:生立木の非破壊試験による材質評価に関する研究.北大演研報, 4
4
(
4
), 1
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2
9
1
4
1
5, (
19
87
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.
4
) 小泉章夫,上回恒司:立木の曲げ試験による材質評価(第 1報)樹幹曲げ剛性の測定,木材学会誌, 3
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(
9
),
6
6
9
6
7
6(
1
9
8
6
)
.
5
) 小泉章夫:生立木の非破壊材質試験,北方林業, 4
0(
1
)
, 2
6(
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8
8
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6
) 小泉章夫,高田克彦,上回恒司,片寄 疎カラマツ類精英樹クローンの生長と材質,第 3
8回日本木材
学会大会研究発表要旨集
p
.4
6
1(
19
8
8
)
.
7
) 小泉章夫,高田克彦,上回恒司:桧山地方演習林の造林木の樹幹ヤング係数,北大演研報, 4
6
(
2
),
4
4
1
4
5
0,
(
19
8
9
)
.
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