こちら - 東京女子医科大学

l︲I
!︲
│
I、1
3
ノ
3
齢
’
10
dグ
『
忠
.
,
l’
I
東京女子医科大学病院集中治療室(ICU)において
プロポフォールを投与された小児患者における死亡例の
検討結果報告
!
I
外部評価委員会
委員長賀藤均:国立成育医療研究センター病院長
委員志馬伸朗:国立病院機構京都医療センター救命救急センター長
委員鈴木康之:国立成育医療研究センター病院麻酔・集中治療部長
委員益田宗孝:横浜市立大学医学部外科治療学教授
(あいうえお順)
1
車
狸
はじめに
我々外部評価委員会は、東京女子医科大学病院集中治療室(ICU)内でプロポ
フオールの投与を受けて死亡した小児患者おいて、プロポフォールと死因の関
連‘性について検討したので報告する。
虚
ミ画I
、
q=
対象および方法
対象は、2008年1月から2013年12月までの6年間に、東京女子医科大学病
院ICUで、鎮静目的でプロポフオール持続静注療法を受けた15歳未満の患者の
内、ICU内又はICU退室後1ヶ月以内に死亡した症例である。
対象患者のICU内の医療情報については、ICU内での経時チャート(チャート)
やカルテから、体温、心拍数、血圧、投与薬剤、血液生化学検査、血液ガス分
析などの検査結果、看護記録の内容を評価した。これらのチェック・評価は、
委員各自で別々に行い、その後に、全員がその結果を持ちより、合議の上、最
終評価を出すこととした。
プロポフォール注入症候群(PRIS:PropofolInfusionSyndrome)の定義として、
プロポフォール持続静注中に発生した不整脈の他に、1)高脂血症、2)肝腫
大、3)代謝性アシドーシス、4)横紋筋融解の内、1つ以上みられた場合と
する(1)ともあるが、外部委としては、1)代謝性アシドーシス、2)進行‘性の
心不全を伴う横紋筋融解の双方かどちらか一方が存在する場合を広義の定義と
した(2)。そのため、心機能障害、高脂血症、高トリグリセリド(TG)血症、高
カリウム(K)血症、徐脈、不整脈、腎不全、高乳酸血症、血圧低下、呼吸障害
の有無をチェックした。
結果
1.調査期間内におけるプロポフオール使用患者
2008年1月から2013年12月までの6年間にICU内で、鎮静目的でプロポフ
オール持続静注を受けた小児患者症例数は、63例(男:女=4:3)であった。年
齢は0ケ月から14歳(中央値:7歳)であった。基礎疾患は先天‘性心疾患、脳
血管障害、慢′性腎疾患、慢性呼吸器疾患、遺伝子疾患、神経疾患、全身熱傷、
重症感染症であった。
2.死亡患者
調査期間内に死亡した患者は11例(男児7例、女児4例)で、年齢は中央値
2
6ケ月(0ケ月∼13歳)であった。ICU入室時体重は中央値2.9kg(2.4∼39.Okg)
であった。基礎疾患は先天」性心疾患9例、拡張型心筋症2例であり、拡張型心
筋症の2例を除き、先天‘性心疾患の心臓術後であった。これら11例の内10例
は、麻酔科専門医又は集中治療専門医ではなく、心臓血管外科中心のチームの
管理下において集中治療管理が行われた、残りの1例は循環器小児科管理下で
の集中治療管理であった。
3.死亡患者におけるプロポフォール最大投与量、投与日数などについて
投与中の最大投与量、総投与時間、4.0mg/kg/hr以上の投与時間、総投与日数
を下表に示した(表1)。
最大投与量は全例で4.0mg/kg/hrを超えていた。5例では1Omg/kg/hr以上で
あった。総投与日数は最少で16日、最多で308日にも及んでいた。5例では90
日以上に及んでいた。
表1:死亡患者におけるプロポフォール投与量
症例番号
最大投与量
総投与時間
4.0mg/kg/hr以
総投与日数
上の投与時間
(
m
g
/
k
g
/
h
r
)
1
6.7
3876
1286
165
2
7.4
1220
916
51
3
14.8
2484
1820
105
4
5.7
1179
168
52
5
13.8
3103
3001
143
6
5.4
7348
7068
308
7
14.4
868
819
42
8
10.0
1329
1168
56
9
4.2
284
205
16
10
17.9
1891
1239
94
11
4.6
277
43
13
3
﹃1州
4.血液生化学検査、心拍数などについて
各症例の血液生化学検査および血液ガス分析の結果を記載することはしな
い。ただ、全ての症例において、クレアチンキナーゼ(CK)、総コレステロー
ル(T.Choi)、トリグリセリド(TG)の検査は、ほとんど施行されていなかっ
た。そのため、横紋筋融解の有無の判定は、筋細胞融解時に血中に流出するも
fl
のの、筋細胞には非特異的であるAST(aspartateaminotransferase)、
LDH(lactatedehydrogenase)、カリウム(K)の値から類推するしかなかった。
多くの患者でペースメーカが植え込んであり、ICUチャートから不整脈、徐脈
の評価は困難であった。そのため、ペースメーカ植込み患者では看護記載など
から判定することも試みたが、PRISを示唆する徐脈、不整脈は見当たらなかっ
た。血圧はICUチャートから判断した。全ての患者が人工呼吸器に装着されて
いたが、呼吸状態はICUチャート、看護記載から判定した。いずれもPRISを疑
うような変化はなかった。
5.死因とPRIS、感染症・心機能悪化とプロポフオール(表2)
死因、PRISとの関連の有無、死亡と感染症・心機能低下との関連を表2にま
とめた。
死亡にPRISが直接関与したと考えられた例はなかった。死亡に感染症が関連
し、その感染症にプロポフォールの悪影響を受けたことが完全に否定できない
と判断した例は4例、死亡に心機能低下(心不全)が関与し、その心機能低下
にプロポフォールが悪影響を及ぼしたことが完全に否定できないと判断した例
は2例であった。内、1例は感染症、心機能低下の双方の要因が存在していた。
4
’
表2:死亡原因とPRIS、感染症、心機能悪化とプロポフオール
症例番号
死亡原因
PRIS
感染症*
心機能低下*
1
原疾患に伴う心不
紐E
ノ、、、
否定できず
否定できず
全、感染』性心内膜炎
2
クモ膜下出血
鉦
無
鉦
J1、、
3
原疾患に伴う低酸素
短
鉦
否定できず
否定できず
鉦
鉦
否定できず
4
旺
ノ、、、
ノ、、、
ノ、、、
』、、、
血症、心不全
4
敗血症、多臓器不全
5
原疾患による心不
ノ、、、
ノ、、、
全、敗血症
6
原疾患による心不全
鉦
鉦
ノ、、、
無
7
出血'性ショック
笠
ノ、、、
鉦
鉦
』、、、
ノ、,、
8
原疾患に伴う心不全
鉦
ノ、、、
無
鉦
9
汎血球減少症
無
鉦
鉦
ノ、、、
ノ、、、
10
敗血症‘性多臓器不全
4
旺
ノ、、、
否定できず
無
11
原疾患による心不全
無
鉦
4
旺
ノ、、、
J,、、
ノ、、、
』、、、
rr
*感染症、心機能低下は、死亡に関連している感染症、心機能低下であって、
それに対するプロポフォールの関与の可能‘性について評価した。
6
.
I
各症例について
症例1:死亡の原因としては原疾患に伴う心不全に加え、経過中に感染‘性
心内膜炎をはじめとする各種感染症を合併したことが考えられる。感染症
発生後もプロポフォール投与は継続されている。総投与日数も100日を超
えている。それにも関わらず、CK、TG、T.Choiの測定はほとんど行われて
いなかった。
症例2:死亡の主因は体外式補助循環中の合併症としてのクモ膜下出血と
推察される。CK等の変化は、体外循環の影響として矛盾しない。TG,T.Choi
の測定はほとんど行われていない。
症例3.:死亡の主因は原疾患に関連した低酸素血症、心不全と推察される。
投与60日目頃より循環不全に起因する代謝'性アシドーシスの進行を認める
も、これ以降もプロポフォールは増量されている.死亡直前にはカリウムや
乳酸値上昇を認めているが、同時に心不全、腎不全の併発がある。死亡直
5
前の1週間において投与量がlOmg/kg/hr以上におよぶことは特記すべき点
である。総投与日数も100日を超えている。また、CK,TG、T.Choiの測定は
ほとんど行われていない。
症例生:死亡の原因として、原疾患に加え、経過中に肝不全及び腹膜炎か
らの敗血症‘性多臓器不全症を併発したことが考えられる。総ピリルピン値
が14mg/dl台まで上昇したところで、プロポフオールは中止となっているが、
プロポフォールを中止した理由はカルテからは読み取れない。特に肝不全
については、確定的な原因が見当たらないことから、脂肪乳剤であるプロ
ポフォールの影響を完全に否定はできない。また、CK,TG、T.Choiの測定は
ほとんど行われていない。
症例5_:死亡の原因としては原疾患による心不全に加え、最終的にはカテ
ーテル関連血流感染症に伴う敗血症'性ショックが考えられる。また、経過
中に肺炎、尿路感染、縦隔洞炎、カテーテル関連血流感染症など各種感染‘性
合併症を併発している。プロポフォールが中心静脈ラインから投与されて
いる上、感染症発生後も投与は継続されている。敗血症病態発生前に血管
︲I︲i
アクセス汚染を疑わせる所見があることも留意されるべき点である。総投
与日数は100日を超えている。また、CK,TG、T.Choiの測定はほとんど行わ
れていない。
’
症例6_:死亡の主因は原疾患と推察される。原疾患により集中管理が長期
化し、その中で感染’性合併症を併発したことにより症状が悪化したことは
否定できないものの、死亡への直接関連は否定的である。感染症の併発と
プロポフォールの関連は不明であるが、感染症発生後も投与は継続されて
いる。総投与日数は300日を超えている。また、CK.TG、T.Choiの測定はほ
とんど行われていない。
症例7_:死亡の主因は出血による出血'性ショックと原疾患及び出血‘性ショ
ックに関連した肺障害による低酸素血症と推察される。プロポフォールは
カテーテル処置前に中止されており、直接的な関連’性はないものと推察さ
れる。CK,TG、T.Choiの測定はほとんど行われていない。
症例8_:死亡の主因は原疾患に伴う心不全と推察される。ただし、原疾患
により集中管理が長期化し、その中で感染性合併症を併発したことにより
症状が悪化したことは否定できない。感染症の併発とプロポフォールの関
連は不明であるが、感染症発生後も投与は継続されている。総投与日数は
6
Ii
50日を超えている。また、CK,TG、T・Choiの測定はほとんど行われていな
い。脂質投与に関連した副作用についての評価は不可能と考える。
症例9:死亡の主因は汎血球減少症と推察される。感染症の併発や汎血球
減少症発生とプロポフォール終了との間には少なくとも20日以上の間隔が
あり、関連』性は乏しいと推察される。CK,TG、T.Choiの測定はほとんど行わ
れていない。
症例10:死亡の主因は原疾患をもつ患者において術後感染性合併症とし
て併発した縦隔洞炎、菌血症と、これに関連した敗血症’性多臓器不全症と推
察される。感染症の併発とプロポフォールの関連は不明であるが、感染症
発生後に投与は再開されている。総投与日数は100日を超えている。また、
CK.TG、T.Choiの測定は、ほとんど行われていない。
症例11:死亡の主因は原疾患に伴う心不全および補助循環中の出血‘性合
併症と推察される。
考察
’
プロポフォールの添付文書には、【禁忌】(次に患者に投与しないこと)の第
3項に小児(集中治療における人工呼吸中の鎮静)と記載されている(1%デイプ
リバン注/プロポフオール注添文書[アストラゼネカ/マルイシ]、2012年12
月改訂(第17版)、2005年11月)。しかし、日本、欧米など諸外国でも、集中
治療室で小児にプロポフォールが鎮静目的で使用されていることは事実であり
(2'3'4)、諸外国では4.0mg/kg/hr以下の濃度で48時間以内の使用なら小児でも比
較的安全であるとしている報告もあるが(4,5,6.)、それ以上の使用では、安全‘性を
証明する証拠はないと考えるのが一般的である。また、小児の長時間投与に関
する安全‘性についての検証はされていない
しかし、表1に示すように、死亡例全員で最大投与量が4.0mg/kg/hrを超え
ており、1Omg/kg/hr以上となった症例も5例存在していた。投与日数にいたっ
lr
ては、48時間(2日)以内で終了していた症例はなく、全員、長期使用例であ
った。90日以上が5例で、症例6では300日を超えていた。症例10では最大投
与量17.9rag/kg/hrで、総投与日数が94日であった。
このように、小児に対して比較的大量かつ長期間の使用を行っているにもかか
わらず、定期的なCKの計測はほとんどなされていなかった。そのため、PRISの
重要な兆候である横紋筋融解の有無は、AST、LDH、Kなど筋細胞が融解したとき
7
に血中に流出する非特異的物質で判断する以外なかった。我々は、これら逸脱
酵素(CK、LDH)とKから推察するに、死亡に直結する横紋筋融解はなかったと判
断した。PRISに起因すると考えられた代謝アシドーシスは、血液ガス分析結果
とその前後における投与薬剤の種類をチェックすることで、全例でなかったと
判断した。
ただ、上記内容から考えるに、11例の死亡例を集中治療室で管理したスタッ
フが、禁忌と添付文書に記載されている状況下で、かつ、諸外国の文献上安全
域と記載されている範囲を超えてプロポフオールを使用していた時に、「PRISと
いう重症な副作用が起こる可能性に十分な注意を払ってプロポフォール持続静
注を行っていた」とは考えにくい。
また、プロポフォールには大豆油が含まれている。本来、脂肪乳剤は、投与
時に感染の危険’性が高まることから、添付文書にも、重要な基本的注意の(6)項
に、「汚染防止:本剤は防腐剤を使用しておらず、また脂肪乳剤であるため汚染
されると細菌が増殖し、重篤な感染症が起こる可能‘性があるので以下の点に注
意すること」とあり、(6)-4)に「12時間を超えて投与する場合は、新たな注射器、
一口Y■
I
チューブ類及び本剤を使用すること」とある。また、大豆油は①6系脂肪酸を
咽向ⅢⅨ
多く含む。このの6系脂肪酸は、炎症反応を増強し、免疫能を低下させる脂質
メディエーターの材料となるアラキドン酸に代謝される。したがって高度な炎
JR
症を生じている患者や大きな侵襲を受けた患者に過剰なの6系脂肪酸が投与さ
れることによって病態が悪化することがある。このため、ASPEN(アメリカ静
脈経腸栄養学会)のガイドラインでは、静脈栄養を施行するICU患者に対して、
最初の1週間は大豆油原料の脂肪乳製剤を投与しないよう勧告しているほどで
ある(7)。加えて、一旦、細菌が脂肪乳剤に混入すると急激な増殖を来すことが
知られている。脂肪乳剤静注でインラインフィルターを使用した場合でも、そ
11
I
1−
I
’
のフィルターの孔径は細菌より大きいため、細菌は通過してしまう(8)。それで
も、菌血症、敗血症の状態で脂肪乳剤の投与は絶対禁忌とはいえない。しかし、
菌血症、敗血症の状態で脂肪乳剤を使用する際には、感染性合併症を念頭に置
いた厳密な適応判断が必要であると共に、継続使用するとしても十分な注意が
払われる必要がある。
さらに、プロポフォールの大豆油の濃度は、静脈栄養のために使用する脂肪
1
乳剤に比し低いが、長期過量した場合の肝臓網内系への影響は否定できない。
I
特に、連続時間の使用日数が長期に渡った場合における影響は否定しきれない。
0
8
f霧
"
以上の観点から、死因に直接関与した可能性のある感染症への関与についても
)
検討した。
死亡11例中、死因として感染症が関係し、それにプロポフォールの悪影響が
巳
あったことを否定できないと判断したのは症例1,4,5、10の4例で、プロ
〃
ポフオール総使用日数はそれぞれ165日、52日、143日、94日だった。全例で
)
敗血症、菌血症が存在していたが、インラインフィルターは使用されていなか
った。症例4では経過中に肝不全及び腹膜炎からの敗血症性多臓器不全症を併
発したが、総ピリルピン値が14台まで上昇したところで、プロポフォールは中
80
止となった。敗血症、菌血症の診断確定後に、これを悪化させる危険‘性のある
プロポフォールを継続投与することの妥当性を裏付ける傍証や説明は、少なく
ともカルテからは読み取れなかった。
加えて、我々は、死亡11例のプロポフォール投与経過中の記録の中に、T.Choi、
TGの検査結果を見いだすことはほとんどできなかった。プロポフォールは濃度
’
の薄い脂肪乳剤としても、通常想定していないほど長期に渡って継続している
なら、血中脂肪に関する基本的血液検査は必須と考える。このことから、診療
スタッフが、プロポフォールという脂肪乳剤を長期に連続使用していることに
よって起こりうる副作用について、十分に考慮していたとは考えにくい。
次に、プロポフォールの心筋抑制作用の関与について考察する。米国におけ
るプロポフォール市販後調査における小児死亡例での検討では、副作用で死亡
したと考えた21例中86%の患者で進行‘性の心機能障害・心不全(徐脈、心不
全、不整脈、心停止)があった(2)。その報告の中で、PRISの根底をなす生物
学的機序はプロポフォールの心血管抑制効果に関連している可能性があるとし
ている。また、ラットの動物実験では、心筋抑制作用はβ刺激作用抑制による
I
もので、この作用は直線的な用量依存』性であり、ブタ心臓でも同様の実験結果
であったとしている(2)。そのため、我々は、死因にプロポフォールが関与して
いる可能‘性を検討した。
jlIl
11例の内、心臓が原因で死亡したと考えられたのは6例で、その内、プロポ
フオールの影響を完全に否定できないと判断したのは2例であった。この2例
は、ともに使用日数が100日を超えていた。特に症例3では死亡直前の1週間
に投与量が約15mg/kg/hrに及ぶことは特記すべき点である。AmericanCollege
1
ofCriticalCareMedicine(米国集中治療医学会)では、高用量のプロポフォー
ル持続注入中に、心機能低下に対するカテコラミン製剤の使用量増量が必要に
、■Ⅱ刷画41
9
、剰利ソ〃︽詞部到塑蝿痢到︾一・、玲州、邦少〃ゴ
霞:旬;
、
なるような状況では、別の鎮静剤への変更を推奨している(9)。プロポフオールを
100日以上心不全患者に使用した場合の心筋抑制作用に関する文献データはな
い。それは、プロポフォールを長期間(例えば100日以上)使用することがあり
うることが想定されていなかったためであろう。我々が、プロポフオールの心
機能低下への影響を「否定できない」という表現を使用せざるを得なかったの
は、プロポフォールの小児への使用について幾つかの提案、示唆があるにも関
わらず、重症心不全患者でプロポフォールを長期使用された症例において、プ
ロポフォールの心機能低下への悪影響を完全に否定することは困難と考えたか
らである。
結論
以上、我々、外部評価委員会は下記のように結論し、報告する。
1,2008年1月から2013年12月までの6年間にICU内で、鎮静目的でプロポ
フオール持続静注を受けた小児患者症例数は、63例(男:女=4:3)で、ICU
内又はICU退室30日以内に死亡した患者は11例(男児7例、女児4例)
であった。
2、死亡11例は全例、重症な心疾患であった。内、9例は先天'性心疾患術後で
あった。
3、死亡11例において、死因に関連するプロポフオール注入症候群は認めなか
った。
4、死亡11例のうち、死因に関連する感染症へのプロポフォールの影響の可能
性を否定できなかった症例は4例存在した。
5、死亡11例のうち、死因と考えた心不全へのプロポフォールの影響の可能‘性
が否定できなかった症例は2例存在した。
絢驚響講騨駕畷蕊騨星高二
7,死亡11例全例において、小児での使用する場合の安全域と文献で報告され
ている「4.0mg/kg/hr以下で48時間以内の使用」という基準を超えた投与
がなされていた。
8、死亡11例中、8例で50日以上、5例で総投与日数90日以上という長期に
渡ってプロポフォールが使用されていた。
10
職2^4iz鳳凶2丈弓那繍
、ly〆、1ノI
建這⋮§
9、第7項、第8項のような文献上の安全域を超える使用が例外的な使用法で
あるという認識が診療スタッフに存在していたかは疑問といえる。
10、PRISに十分に注意を払った患者観察が行われていたかは疑問である。
11、プロポフォールを長期にわたって心不全患者に使用しており、心不全
に対する悪影響について考慮してかどうかは疑問である。
110Jノノ
12、脂肪乳剤であるプロポフォールと感染症や肝障害の関連’性についても
考慮されていたか疑問である。
我々、外部評価委員会としては上記に指摘したように、診療スタッフにおい
て、1)集中治療室における人工呼吸中の小児でのプロポフォール使用が禁忌
とされていること、2)これは文献上報告されている重篤な合併症や危険‘性に
関連していること、3)国内外文献で危険I性が示唆されている用法・用量が存
在すること、への認識が十分に存在しなかった可能'性があったことは指摘せざ
るを得ない。
ただし、最後に、今回検討を行った11例は全て重症心疾患患者であり、プロ
ポフォール投与がなされていなかったとしても最終的に患者が死亡していた可
能'性が決して低くはない、と委員全員が判断したことを付記する。
参考文献
.
1
FelmetK,NguyenT,ClarkRS,OrrD,CarollloL:TheFDAwarningagainst
.prolongedsedationwithporopofolinnchildrenremainswarranted
(letter).Pediatrics2003;112:1002-1003
.
2
WysowskiDK,PollockML:ReportsofdeathwithuseofPropofol
(Diprivan)fornonprocedural(1ong-term)sedationandliterature
review.Anesthesiology2006;105(5):1047-1051
3
.
KoriyamaH,DuffJP,GuerraGG,etal.Ispropofolafriendorafoe
ofthepediatricintensivists?DescriptionofpropofoluseinaPICU、
PediatrCritCareMed2014;15(2):e66-71
.
4
KruesseilMA,UdinktenGateFE,KrausAJetal:Useofpropofolin
pediatricintensivecareunits:anationalsurveyinGermany・Pediatr
CritCareMed2012;13(3):el50-el54.
『
5
CornfieldDN,TegtraeyerK,NelsonMDetal:Continuouspropofol
infusionin142criticallyillchildren.
Pediatrics
11
、■
2002;110(6):1177-1181
.
6
VasileB,RasuloF,CandianiAetal・Thepathophysiologyofpropofol
infusionsyndrome:asimplenameforacomplexsyndrome.IntensiveCare
●
7■8
Med2003;29:1417-1425
深柄和彦:脂肪乳製剤の問題点.静脈経腸栄養2013;28(4):9091-913
東海林徹:感染下で脂肪乳製剤投与は有用か、否定的立場から.医学のあ
ゆみ.2004;209(5):302-304
.
9
JacobiJ,FraserGI,CoursinDBetal:TaskforceoftheAmericanCollege
ofCriticalCareMedicine(ACCM)oftheSocietyofCriticalCare
Medicine(SCCM)AmericanSocietyofHealth-SystemPharmacists(ASHP)
AmericanCollegeofChestPhysicians:Clinicalpracticeguidelinesfor
thesustaineduseofsedativesandanalgesicsinthecriticallyill
adults.CritCareMed2002;30:119-141
平成26年11月14日
外部評価委員会
委員長賀藤均
委員志馬伸朗
委員鈴木康之
委員益田宗孝
12