6 僻地の障害児教育

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僻地の障害児教育
(1)沖縄県西表島の障害児教育
竹富町には小さな島々が点在し7つの有人島が
あり、その中でも一番大きな島が上原小学校のあ
る西表島である。竹富町の学校数は14校で、ほ
とんどの学校が小学校と中学校の併置校である。
その中で特殊学級が設置されているの学校が6
校あり、学級の在籍はどの学校も1名である。
特殊学級設置人数を満たしてはいないが、養護
学校が海を隔てた他の島(市)にあることと、
宿舎が設置されていないこともあり、養護学校
へ入学できない児童生徒が島の学校で障害児教
育を受けている。
①本校の障害児教育
本校の特殊学級在籍児童は1名で、現在2年生のダウン症の男子である。幼稚園から
集団生活を経験し、周りの友達や島の住民の温かい理解で集団への適応ができている。
本児の実態を明確に把握し、障害の実態や特性に即して特別な教育課程を編成している。
【児童の実態】
・はっきりした発音でことばを話すことはできないが、内言語は豊富
で積極的に自ら声をかけてくる。
こ
と
ば
・登下校・学習のあいさつを自分からすすんでする。
・自分の名前に関する文字を五十音表からで読むことができる。
・絵カードで支持された物を拾うことができる。
・身体部位名がわかる。
・歌や踊りが大好きで、リズムに乗って歌ったり踊ったりすることが
できる。
行
動
・友だちと簡単な鬼ごっこ遊びができる。
・校内での移動は一人ででき、トイレでの用足しも一人でできる。
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・好き嫌いが激しく、量的にも少量であったがランチルームでの合同
生
活
給食をとおして食に広がりがでて改善されてきた。
・一人で着替えができる。
②学級目標及び学級経営方針
(ァ) 学級目標
○自分のことは自分でする→自分でできることを増やしていく
○元気にあいさつをする
→口型を意識して大きな声で
○いやがらずに最後までがんばる
→楽しい雰囲気の中で
(ィ)経営方針
①家庭との連携を密にし、生活に必要な基本的な生活習慣の定着に努める。
②児童の行動に目を配り、児童理解に努める。
③児童の実態に応じた指導計画を立て、自分を発揮できる児童の育成に努める
④2年生との交流を盛んにし、集団生活・人との関わり方の指導の充実を図る
(生活・音楽・体育・図工・帰りの会等は通常学級と行う)
⑤全職員に特殊学級への理解を求め、協力体制の徹底を図る。
③一日の指導の流れ(登校・学習・下校)
活
動
配
慮
事
項
登
・家族の車で登校
・出会う人全員がゆっ
校
し一人で玄関に入
くり、はっきりあい
時
る。
さつを返す。
の
・上靴に履き替え、
か
外履きを靴箱に
まで待っているので
か
整理する。
席をあけないように
わ
・職員室の職員に
り
朝のあいさつをす
・学校長が部屋に戻る
している。
・発声練習は自分の
る。
名前・あいさつ・担
・校長室へ行き、
任・校長の名前等身
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校長にあいさつをし、発声練習を行う。
・教室へ向かう。
近なものから行う。
・できるだけ一人で行
動させる。
学
習
場
面
・かばんの整理
・決められた場所へ
・朝の活動
・一人でできるように
・カレンダー提示
・口をあけて大きな声
・飼育活動
であいさつする。
・あさの会
・絵カードを利用して
あいさつ→お天気しらべ→今日の学習予定
〈個別指導〉
・担任が個別指導を行
う。
国語・算数・生活単元
・教室だけにとどまら
日常生活
ず学校内の施設を利用
して、学びを広げる。
交流学習( 体育・図工・音楽・ 生活科)
・同学年との関わりを
←2年生と体育学習
もたせるよう活動を工
夫する。
・体力を配慮し途中で
水分補給等の休みを入
れる。
←音楽の時間指遊び
・リズム感を生かし
自信を持って活動でき
るような内容を入れる
下 校
・終わりの会を2年生と行う。
④やって見せて・話してあげて・させてみて・褒めてあげて定着へ
本校には、三つの合い言葉がある。
「字をかく」「汗をかく」「恥をかく」で、「字をかく」は基礎・基本の学びをさし「汗
をかく」は働くこと・遊ぶことで、「恥をかく」はチャレンジする心である。特殊学級で
の学びも、その三つの合い言葉を柱にして取り組まれている。
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「字をかく」の基礎・基本は生きる力に繋がることば・かずを中心に個別指導を行って
いるが、日常生活の中で全職員が意識して関わりをもつようにしている。校内研修の中で、
ダウン症児について共通理解をもち、本校児童の課題であることばの習得については、で
きるだけその場で指導を行うことにしている。校長室でのことばの訓練もその一つで、朝
の短時間であるがよだれを意識して吸い、あいさつ、自分の名前、校長の名前等2年間で
大きな成果を見ている。児童の関わりの中でも、優しく教えあっている姿があり、その子
の目線での関わりが学校中に定着している。
「汗をかく」は生活科や体育学習の中で、身体を動かすことを積極的に取り入れている。
家庭では、外へ出てたっぷり遊ぶ経験がないため、時には嫌がることもあるが、大好きな
リズム遊びを取り入れながら学習を広げている。生活科においては本校の特色ある教育活
動にもなっている「海」を通して、海での遊び・クリーン活動等、同学年との学習で汗を
流す活動に参加している。
「恥をかく」は、嫌がらずチャレンジする場面を大切にし、全校集会での発表等にチャ
レンジする場面を全職員で意識して設定し、強い心を育てる配慮をしている。本校の 障
害児教育で、私が特に学校ぐるみで意識していることは、正しいお手本、その子の目線に
立って「やってみせる」こと、やり方等をしっかり「話してあげて」「させる」こと、さ
せたあとはしっかり「褒めてあげる」ことである。褒められた喜びが「やる気」をおこし
定着に繋がることを確認している。
離島地区においては、義務教育修了後高等部への進学は難しく、地域での生活にとどま
ってしまう。そのため、将来にむけてどのような自立活動を組んでいけばよいのかが大き
な課題である。本校では、地域の行事に多く参加させることで地域の人々との関わりを深
め、地域の人々に見守られて自立活動が広がっていくことをねらい、父母が安心して子育
てができる島での障害児教育のあり方を探っている。
(大田綾子)
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(2)北海道野付郡別海町の障害児教育
①概要
【別海町の概要】別海町は、北海道の東部根室管内にある人口約1万6干人、面積が 1,320
平方km(我が国第二位の広さ)の町である。道庁所在地札幌との距離は直線にして約
500km あり、これはほぼ東京~名古屋間強に匹敵する。気候については、夏期は内陸部で
高温になるが、海岸部は冷涼である。冬期は降雪量が少ないものの寒さは厳しい。町の基
幹産業は、内陸地域では主に大規模酪農業であり、オホーツク海に面した海岸部は漁業が
中心である。人口密度は1平方 km に13人であり、人口は微弱ながら滅少している、,
【町内の学校の状況】別海町は広大な大地に、小学校 11 校、中学校9校、小中併置校1
校が点在している。学校規模については、中心部を除き1学年1学級であり、学級定員を
割り込んでいる学校が大部分を占める。ほとんどの学校が小規模校であり、少人数での教
育がなされている。過疎化が進んだ地域では複式教育も行われている。
②障害児教育の現状
別海町でも乳幼児健診のシステムは完備しており、1歳6ヵ月児健診においてある程度
の障害の疑いなどの早期発見ができる体制は整っている。重度の知的障害や肢体不自由、
自閉症等は保護者も療育に納得し、適切なケアを受けることになる。しかし、発達障害の
疑いのある場合については、その受け皿となる療育機関が地域にないこと、保護者の発達
障害への埋解か十分ではないこと、相談機関から遠隔地にあることなどが災いし、専門機
関にかかる機会を失したりする場合もある。家庭の中ではなかなか発達障害が問題として
保護者に気づかれることは少なく、幼稚園や保育園に入園して初めて園の指摘を受けて気
づくことになる。しかし、稼業である酪農業では搾乳や牛の世話をするのに費やす時間が
多く、点在する集落から町中心部までに通うことの時間的な制約から、「ことばの教室」
などへ通うことに困難を訴える保護者も少なくない。児童相談所や北海道立特殊教育セン
ターの巡回相談に応じてくれる保護者もいれば、かたくなに拒む保護者もおり、事情は複
雑である。
小学校への就学は、町の教育委員会が実施する就学時健康診断や知能検査の結果を受け、
教育の場が決定される。子どもの発達に遅れ等があれば、特殊学級や特殊教育諸学校への
入学を勧めることになるが、養護学校が遠く釧路にしかないために保護者の肴 .望により
通学区域の小学校特殊学級での教育を受けるケースが多い。別海町では、過去に特殊学級
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の拠点化を行っていたが、現在では通学区域の学校に特殊学級を設置する方式に改められ
た。
指導にあたる教師は、障害児について、発達段階の理解や指導方法についての専門的な
知識や技術(特に発達障害について)を必ずしも十分に持ち合わせていない場合もあり、
教師の経験と勘に基づいて個別指導計画を作成したり、個別指導計画を作成しないまま指
導をする場合が多いのが学校現場の問題点でもある。 .道都札幌から遠隔地であり、しか
も交通の不便さも重なり、教師の研修姿勢についても温度差のあることがうかがわれる。
一方、一部の保護者については、特殊教育や障害児教育を受けることについて何らかの
差別的な意識を持っており 、「通常学級での指導をお願いしたい 。」の一言で問題が片づ
けられてしまう傾向が強い。その結果、小学校6年間の間に児童の発達において必要に応
じた支援を十分に受けないままに過ごしてしまうために知識の定着がより遅れてしまい、
中学校入学時には知的障害だけが表面化してしまう事例がある。このように、就学につい
ても多少混乱しているのが現状であった。
③障害児教育(特別支援教育)への取り組み
障害児教育の前進には、彼らを支援・指導する教師の質的向上が第一である,,教師の障
害児教宥への経験から集積された技術は尊重されなければならないが、客観的かつ科学的
に児童生徒を観る目も重要である、今まで発達障害が疑われる児童生徒は、児童相談所や
北海道立特殊教育センターの巡回相談などで相談や知能検査を受けることにより、障害の
状況がわかった ,、しかし、発達障害や指導の方法について専門的な知識を教師が十分に
持ち合わせていない場合、その結果を授業にフィードバックする方法を知らなかったので
ある。そこで、まず実施したことは知能検査である、W I S C -ⅢとK- A BCの実施
方法と解釈についての学習会であった。特殊学級設置校長に呼びかけ、特殊学級の担任を
対象に希望者を募り夜間に学習会を実施した。それには地域の保健師も参加を希望したこ
とから、単に知能検査の実施方法だけではなく、各下位検査における反応が、どのような
認知の困難に起因しているのか、加えて検査中の観察から子どもの取る行動の困難さが発
達障害とどのように間係しているのかも学び合った。さらに、分析や解釈から明らかとな
った子どもの強い認知や長所を活用した指導方法について事例を基に学び合い、ここによ
うやく検査結果を指導にフィードバックできる力量を待つ教師が育った。当然これらの講
習会の中では、教師が指導に困難を感じている児童生徒の実態や、保健師に寄せられた保
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育園での気になる子どもの話題が持ち上がり、特別支援教育対象の児童生徒が多数いるこ
とが明らかとなった、そして、今までどのように子どもを理解し、どのように指導したら
よいか暗中模索であった状況から、経験と理論との融合により、個別の指導計画や日々の
授業の計画において、発達段階を踏まえたものを作成したり、教材の研究を行うことが可
能となったのである。さらに、保健師との連携は福祉課との連携を促し、保育士対象の療
育研修会や幼稚園教諭対象の研修会が企画され、発達障害について話す機会が持てるよう
になった。このように、障害の早期発見に向けて、教育委員会と福祉課が連携し幼稚園や
保育國での発達障害の啓発にも取り組むようになった。これは、別海町という小規模な行
政機関であるがゆえに、縦割り行政の弊害に翻弄されることなく、「発達障害を知ってほ
しい」という声に行政が対応した例である。
また、障害が疑われる児童生徒について各学校の判断で行われていた発達の問題に関し
て、全町で発達障害の早期発見や発達診断について統一する必要性を教育委員会に理解し
ていただき、『心身障害児発見のための観点』を作成した。内容は、知的障害、肢体不自
由、病・虚弱、言語障害、情緒障害、軽度発達障害(LD・ADHD・高機能自閉症)など、
発達診断のためのチェック・リストである。これを教育委員会として、全町の小中学校の
学級担任に配布してもらった。このチェック・リストに基づいて、各学校において6ヵ月
以上の観察を複数で行い、障害か疑われる場合は就学指導委員会に報告する制度を確立さ
せた。
この発達診断チェックリストを基盤として、各学校においては発達障害に対する理解が
少しずつ進み、就学指導委員会を待たずに心理検査の実施を要請されることが多くなった。
前述のように、酪農業は搾乳など牛の世話に多くの時間を必要とし、乳幼児期に母子のア
タッチメントが少ないと思われる事例や、幼少期からビデオやゲームが育児の代用になっ
ていた事例もあり、ことばの遅れや年齢相応の知識が身についていない場合、発達障害な
のか生活環境によるものなのか、保護者や保健師、教師からの背景情報と検査中の行動観
察から慎重に判断を要する事例もある。また、町内から釧路市の発達障害専門の小児科医
の外米を受診した場合、医師から心理検査を依頼されるようにもなった。最近ではこの医
師と連携し、チェックリストから発達障害が疑われる場合、事前にW I S C -ⅢとK- A
BCのテストバッテリーを組んで実施し、その上で医師の受診を勧めるようになってきた。
ここに別海町では教育と医療の連携が機能するようになった。早期の発達障害の発見と適
切な医療ケア、また医師の診断と心理検査の分析結果に基づいての子どもの個別支援計画
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の作成、保護者や学校における発達障害の理解と子どもへの対応など、発達障害を持つ子
どもの支援策が具体的に立てられるようになりつつある。教育と医療の連携は、言うまで
もなく重要なことである。この中で最近目立っのは、行動に(ADHD 的な)困難を有する
と判断される児童生徒である。また、保護者や家族の過干渉・過保護あるいは放任による
もので、発達障害ではないが行動に ADHD 的な困難さを呈している子どももいる。今や
発達障害に関わる事例は都会と地方を問わず、問題となっていることがうかがわれる。
④別海町における障害児教育の課題
第一に、幼稚園や保育園を含む小中学校の教師や保育士が、子どもの発達について正し
い知見を持つことである。各学校での研修の取り組みの充実を図りたい。それには、近接
する特殊教育諸学校から専門的な知識のある講師を派遣してもらうなどして研修会を持
ち、子どもの行動上の問題についてのアセスメントを正しく行える力量を教師は身につけ
たい。発達過程に合致した接し方をしていない場合、問題行動が発現するからである。併
せて、障害児教育に従事する教師の専門性や指導力の向上を図ることが必要である、,
第二に、優れた乳幼児健診のシステムの有効活用である。現在、子どもの誕生以降の乳
幼児健診についての情報は保健師が保持保管しており、その後の活用はあまりなされてい
ない。これらの情報を幼稚園や保育園に情報として伝える連携が必要である。幼稚園が教
育委員会管轄であり、保育園が福祉課管轄であることから、これらがうまく伝わらない部
分もある。しかし、発達障害の早期発見について、一部ではあるが連携ができている。し
たがってこの連携を一層強め、乳幼児期の発達に関わる情報を保健師を中心に一層効果的
に幼稚園・保育園に伝えられるような行政上の組織・機関があれば、保護者への啓発や支
援も含めて有効に機能すると考えられる。
第三に、保護者への啓発がある。障害児教育に対する偏見を払拭する必要を強く感じる。
地道ではあるが、教育に携わる教師が専門性を磨いたり保健師と連携を深め、保護者との
対話を通して信頼関係を強くしていくことが解決の第一歩であろう。発達障害を抱えた子
どもについては、学校教育の場だけを考えるのではなく、その子の生涯を見通し、どのよ
うな支援が必要なのかを保護者と協議すことが求められる。その上で、保護者を支える何
らかの支援が必要である。教育と福祉が連携し、子どもの発達について気軽に相談できる
「子育て支援センター」などの設置がこの道東の町にも望まれる。
(小泉 斉)
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(4)北海道ひまわり学園分校
①所在地と環境
遠軽町は、オホーツク海に面した網走支庁管内のほぼ中央、内
陸側に
位置し、面積 1,332,32 平方キロメートル、東西 90km、南北 88km にわたる
緑豊かな町である。分校のある生田原安国地区の人口は、241 世帯 730 人
であり、農林業が主な産業となっている。安国地区には、知的障害児施設
ひまわり学園(定員50名)、知的障害者更正施設向陽園(定員60名)が
ある。なお、2005 年 10 月から、所在地である生田原町が近隣4町村との
合併により、遠軽町となった。
②ひまわり学園分校の概要
本分校は、隣接する知的障害児施設ひまわり学園の施設内分校として、1979 年に開校し、児童生
徒数26名(小学部3名、中学部5名、高等部18名)を教職員30名が指導にあたっている。
北海道には、現在7校の分校が設置され、いずれも施設内分校であることから、校区は施設に限
定されている。しかしながら、近隣地域に居住する障害のある児童生徒についても特別通学生とし
て受け入れており、ひまわり学園分校においては、4名が通学している。
③ひまわり学園分校の教育
[1]教育の柱
教職員、保護者の願いは、「子供たちが、今も、これからも安心して生活のできる居場所をつく
ること、支えてくれる人をつくること」に集約される。この願いは、「共に地域で普通の生活を営
むことを当然とする」としたノーマライゼーションの理念にも通じることであり、願いの実現に
向けて、積極的に地域の人たちと関わり、分かり合える関係を築く実践が進められている。
[2]地域を共有した日常的な交流
ひまわり学園分校の近くには、児童数40名の安国小学校があり、開
校以来、日常的に交流している。例年、5月の合同町内清掃を皮切りに、
小学校で行われる各学年の出店を中心とした「お楽しみ集会」に分校の
子供たちも出店したり、図画工作の授業に参加して共同作品の製作、一
緒に給食を食べるなどの他、毎週1回、昼休みに小学校の体育館に遊び
に行くなどの日常的な交流が進められている。また、中学校との交流で
は、合唱大会や総合的な学習の時間における研究発表の見学、中学校の
マラソン大会に一部の生徒が参加するなど、小学校時代のつながりが維持されている。
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これらの取り組みを通して、同世代の子供たち同士が、身近な存在、当たり前の存在であるこ
と感じながら、それぞれにみんな違うという他者理解が芽生える中で、支える、支え合うといっ
た意識が育っていると感じている。
[3]近隣地域の学校との交流
隣接した小学校、中学校との交流の他に、近隣の地域にある特殊学級の児童生徒との交流も図
られている。本分校に集まって集会活動を開催したり、校外学習の日程を調整して合同遠足に行
くなど、普段はなかなかできない大きな学習集団での学習の機会となっている。
また、夏季・冬季休業中には、学校開放事業を実施しており、本
分校の子供たちのみならず、近隣の特殊学級、さらには管内の養護
学校に通っていて帰省した子供たちにも呼びかけている。サポート
には、分校職員、町内小中学校の教員、高等学校のボランティア、
NPO サポートセンター、保護者があたっており、通常学級に在籍し
ている LD 児が参加するなど、年々参加者が増えてきている。
[4]地域の行事への参加
本町は、地域住民の結びつきが強く、町内で実施される春、秋祭りや盆踊り大会、町民運動会
などにも可能な範囲で参加している。町内行事の諸準備には、分校
職員が住民として担当しており、地域との関係を深めるには、日常
的な職員の参画が不可欠である。
[5]地域に居場所をつくる
卒業を控えた高等部では、老人ホーム、公民館といった公共施設
の清掃や、小学校のタイヤ遊具のペンキ塗りをするなど、微力なが
らも町づくりへの参画に取り組んでいる。これらの取り組みは、地
域全戸に配布される学校だより、町のホームページ、新聞記事など
を介して町民に紹介することにより、生徒自身の自信につながると
共に、地域の人たちからも頼りにされる存在となってきている。
また、地域からは、タマネギ収穫用コンテナの組み立てや、お菓子の値札付け、紙おしぼりの
箱詰め作業などの実習の機会を提供していただき、自立に向けた重要な学習となっている。
④学び合う関係から支え合う関係へ
高等部の生徒たちは、顔写真入りの名刺を持って実習に出かける。それは、地域の人
たちから
「○○くん」「○○さん」といった固有名詞で結びつきたいとの願いからである。卒業後、分校の生
徒という肩書きが外れても、名前を覚えてもらうことにより、その子の存在はより確かになるとと
もに、グループホームなどで地域生活を送る上でも一人の町民とし存在すると思うのである。
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遠軽町生田原安国地区は、二つの福祉施設により障害のある人たちが多数住んでいると共に、住
民の高齢化が進み、みんなで支え合う町づくりが必要となっている。小学校からの交流学習は、学
び合う関係から、支え合う関係へと着実に進展をしており、「人が優しい町」づくりに、大きな役割
を果たしていると考えている。
(宮崎
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真彰)