議事録 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

研究評価委員会
第1回「糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築」
(事後評価)分科会議事録
日
時:平成17年1月19日(水)
11:00∼17:30
場
所:国際ファッションセンタービル
KFC
Hall
2nd
出席者(敬称略、順不同)
<分科会委員>
分科会長
:大石
道夫
財団法人かずさDNA研究所
分科会長代理
:川嵜
敏祐
京都大学
委員
:磯貝
隆夫
株式会社リバース・プロテオミクス研究所
遠藤
玉夫
財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団
斎藤
成也
大学共同利用機関法人
大学院薬学研究科
糖蛋白質研究グループ
集団遺伝研究部門
佐藤
光男
八尾
徹
所長
生体分子認識学分野
教授
取締役研究所長
東京都老人総合研究所
副参事研究員
情報・システム研究機構
国立遺伝学研究所
教授
協和発酵工業株式会社
東京研究所
医薬研究部門
細胞工学グループ
主任研究員
独立行政法人理化学研究所
ゲノム科学総合研究センター
コンサルタント
<推進者>
経済産業省
:舟崎
橋本
NEDO
:古川
剛史
経済産業省
生物化学産業課
係長
花那子
経済産業省
生物化学産業課
係員
善規
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発
機構)
バイオテクノロジー・医療技術開発部
主査
平井
良彦
NEDO技術開発機構 バイオテクノロジー・医療技術開発部
主査
中村
武史
NEDO技術開発機構 バイオテクノロジー・医療技術開発部
主査
:成松
久
谷口
直之
大阪大学
医学系研究科
教授
稲森
啓一郎
大阪大学
医学系研究科
研究員
古川
鋼一
名古屋大学
木全
弘治
愛知医科大学
西原
祥子
創価大学
工学部
教授
神山
伸
創価大学
工学部
研究員
地神
芳文
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
山村
研一
熊本大学
発生医学研究センター
教授
西川
義尚
東海大学
工学部
菊池
紀広
三井情報開発株式会社
望月
秀雄
生化学工業株式会社
竹内
英之
東京大学
<実施者>
PL
久保田
権
智巳
娟大
独立行政法人産業技術総合研究所
医学系研究科
糖鎖工学研究センター
副センター長
教授
分子医科学研究所
教授
センター長
教授
バイオサイエンス本部
中央研究所
薬学系研究科
研究員
助手
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
バイオテクノロジー開発技術研究組合
丸山
浩
生化学工業株式会社
比留間
徹
富士レビオ
研究員
研究員
中央研究所研究企画部
先端研究部門
研究員
課長補
研究員
中村
充
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
チーム長
後藤
雅式
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
研究員
1
栂谷内
晶
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
研究員
佐藤
隆
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
研究員
鹿内
俊秀
独立行政法人産業技術総合研究所
糖鎖工学研究センター
研究員
三好
泰克
バイオテクノロジー開発技術研究組合
専務理事
宗内
誠人
バイオテクノロジー開発技術研究組合
常務理事
松尾
次雄
バイオテクノロジー開発技術研究組合
顧問
槇野
正
バイオテクノロジー開発技術研究組合
技術部
部長
内田
文雄
バイオテクノロジー開発技術研究組合
技術部
担当部長
技術部
研究員
鎌戸
登志子
バイオテクノロジー開発技術研究組合
<企画担当>
能勢
泰祐
NEDO技術開発機構 企画調整部 課長代理
<事務局>
高松
秀章
NEDO技術開発機構 研究評価部
主幹
上仲
秀哉
NEDO技術開発機構 研究評価部
主査
荒井
真次
NEDO技術開発機構 研究評価部
主査
他5名
一般傍聴者
2名
議事次第
1.開会、分科会の設置、資料の確認
2.分科会の公開について
3.評価実施方法について
4.評価報告書の構成について
5.プロジェクトの全体概要について
6.プロジェクトの詳細について
6.1 糖鎖合成関連遺伝子の網羅的クローニング
【2-1-1】バイオインフォマティクス法
【2-1-2】遺伝子トラップ
6.2 糖鎖合成関連遺伝子の機能解析
【2-2-3】1,4結合糖転移酵素ファミリー
【2-2-4】β1,3結合糖転移酵素ファミリー
【2-2-5】β1,6N-アセチルグルコサミン転移酵素ファミリー
【2-2-1】Polypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase 転移酵素ファミリー
ポリペプチド N-アセチルガラクトサミン転移酵素(pp-GalNAc-T)ファミリーによる
ムチンのグリコシレーション
【2-2-2】コンドロイチン硫酸合成酵素ファミリー
【2-2-6】新規硫酸基転移酵素遺伝子
【2-2-11】GDP-Man 依存性マンノース転移酵素遺伝子
【2-2-7】N-結合型糖鎖合成に必要な酵母の遺伝子と相同性のあるヒトの候補遺伝子
【2-2-8】糖ヌクレオチド輸送体
【2-2-9】N-Glycan 合成に係る酵素の遺伝子クローニング
【2-2-10】新規シアル酸転移酵素遺伝子
【2-2-12】糖転移酵素の結晶化とX線結晶構造解析
6.3 糖鎖合成関連遺伝子のデータベースの作成およびデータベースの構築
6.4 実用化の見通しについて
7.全体についての質疑応答
8.今後の予定、その他
9.閉会
2
議題1.開会、分科会の設置、資料の確認
事務局(NEDO技術開発機構研究評価部 荒井主査)より資料 1-1, 1-2 に基づき、本分科会設置につ
いての説明があり、予めNEDO技術開発機構理事長より指名された大石分科会長が紹介された。大石分
科会長の挨拶の後、分科会委員、プロジェクトの推進・実施部門、評価事務局の出席者が紹介された。N
EDO技術開発機構研究評価部高松主幹より評価分科会の趣旨が説明された。事務局から配布資料の確認
が行われた。
議題2.分科会の公開について
事務局より、資料 2-2 に基づき、研究評価委員会関係の公開について説明が行われた。本分科会につい
ては、資料 2-1 の提案通り、議題5まで公開で行い、議題6以降を知的財産権の保護等の観点から非公開
で行うことが了承された。
議題3.評価実施方法について
議題4.評価報告書の構成について
事務局より、資料 3-1∼資料 4 に基づき、評価の実施方法と評価報告書の構成に係わる提案について説明
が行われた。事務局からの提案内容を基本に本評価を進めることが了承された。
5.プロジェクトの全体概要について
推進・実施者より、資料 5-2 に基づき、プロジェクトの概要について説明が行われ、引き続き質疑が行
われた。
【大石分科会長】
どうもありがとうございました。今まで古川主査と、成松糖鎖センターの副センター長
から、このプロジェクトの概略、政策的な面、行政的な面、知財の問題、それから今は、
大体技術的なものも含めまして、総括的なご説明がございました。これから、委員の方か
らご質問をこれからお受けするわけでございますけれども、特に細かい技術的なことにつ
きましては、午後のセッションでございますので、今のご説明に対しての、一般的という
ことでもないのですけれども、そういうご質問がございましたら、どうぞ。いかがでしょ
うか。
【遠藤委員】
大変わかりやすい説明をありがとうございました。古川さんにご質問なのですけれど、
世界的な競争が大変だということで、アメリカについては予算的な数字を出されたのです
が、この円グラフを見ると、ヨーロッパでも研究が実施されているようです。ヨーロッパ
での糖鎖プロジェクトに関する予算とかは、どのくらいヨーロッパ全体でやられているの
でしょうか。数字があったら教えていただきたいと思います。
【古川(推進者)
】 ヨーロッパのほうは統計をとるのがなかなか難しくて、政府として出している、例えば
フレームワークプロジェクトみたいなところで、糖鎖ということをキーワードに何かお金
を出しているというのはないのですね。あとマックス・プランク研究所が独自の資金を持
ってやっていたり、トラスト財団が、糖鎖という名前ではなくてやっていたりとか、集計
の仕方がなかなか難しくて、数字として出すことはできなかったのですけれども、ヨーロ
ッパのほうも従来から糖鎖の研究というのは強いところでございます。基本的に、そこに
も負けないようにと考えております。ただ、数字として、政府予算としてどれだけつぎ込
んでいるかというのは、ちょっと出せる状況にはありませんでした。
【八尾委員】
まず、全体的な感想としては、集中研究をとられたことは非常に良かったのではないか
と思います。私も別のプロジェクトで、集中研究と分散研究の差をいろいろ感じているの
ですが、集中研究が良かった例をいくつか知っています。後ででもいいのですけれど、ど
ういう効果があったかというようなことを、参考のために聞かせていただきたいと思いま
す。もう一つは、情勢変化に対応した手を打っておられるというご報告がありましたが、
このことも非常に大事ですね。こういうプロジェクトがある計画の下で始まっても、やは
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りその後いろいろな進歩がありますから、変化への対応というのは重要なことで、そうい
うことをされたというのは非常に良かったのではないかと思います。それからもう一つは、
バイオインフォマティクスの活用です。これは非常に見事に、最初の段階であれだけのこ
とをされたというのは、本当に私は感心しました。というのは、当時日本はバイオインフ
ォマティクスの力が弱いと言われていたわけですが、バイオインフォマティクスをこの糖
鎖の研究−日本の強い研究にうまくアプライされたのは、非常に良かったと思うのです。
バイオインフォマティクス全面戦争で、あれにもこれにも使うというよりは、むしろ重点
的に大事なことに使うということが大切です。そういう意味で非常に上手な使い方だった
と私は感じました。午後のところで結構ですが、具体的な新しい方法論の開発など良い事
例がありましたら、ご説明ください。
【大石分科会長】
今のことは、どちらかというと質問というよりもコメントだと思います。よくわかりま
した。
ほかにいかがでしょうか。
【斎藤委員】
未知遺伝子を200個ぐらいではないかと最初予測されているのですが、その根拠をち
ょっとお聞きしたいのですけれども。それと関連しまして、立体構造との関係ですね。同
じフォールドであれば、当然、進化的に共有されていますから、例えば糖転移酵素で幾つ
か、A、B、Oとかいろいろわかっておりますから、そういう立体構造との関係は、どの
ぐらい考えられたのか。
【成松PL(実施者)】 立体構造の話は、おそらく午後の各論で、三井情報の菊池さんのほうから、彼が1
つ、ある発見をしていまして、糖転移酵素は、実はフォールドで言うと4つに分けること
ができます。シェーマとして、N末に膜タンパクでというのが一番メジャーなファミリー
ですが、あれ以外にあと3つファミリーがありまして、それは斎藤先生がおっしゃるよう
に、進化論的にルーツをシェアしているものが4つあるということが、このプロジェクト
の過程でわかりました。それは、おそらく午後の各論でお話が出るかと思います。
300の根拠は、かなりあいまいな数字ですが、当時、2001年に進んでいたゲノム
プロジェクトのパーセンテージが、まだ完璧にはゲノムシークエンスは終わっていなかっ
たのですが、8割方ぐらい進んでいた時点で、試験的に、マニュアル的に、糖鎖遺伝子が
どれぐらいありそうだというのを探し出しますと、バイオインフォマティクスみたいな非
常に厳密な方法でやったのではなくて、ただマニュアルでやったときの確率から見て、当
時、110個の既知があってということで、あと150か200ぐらいはありそうだとい
う、極めてあいまいな推測ですが、大体遠からずとも当たっているかなと。今のところの
原則で、ちょうどそれは、全ゲノム遺伝子の1%ぐらいかなというのが、答かなと思いま
す。
【大石分科会長】
わかりました。ちょっと私のほうからですけれども、基本的には既知の遺伝子の配列か
ら、in silico あるいはインフォマティクス化で推測されていますね。もし可能性として、
実際にほかの糖の転移酵素の遺伝子が、既知にない場合という可能性はないんですか。
【成松PL(実施者)】 実は、ホモロジー検索だけではなくて、さっき述べましたフォールドも考えて、そ
れからあとはヒドン・マルコフ法というのを駆使して、最初に105個と言いましたが、
それ以外にもそれらしき配列がまだ結構手元にあります。それも、糖転移酵素としての可
能性が残されている候補遺伝子が、まだ手元に結構あるのです。
【大石分科会長】
なるほど、わかりました。
それからもう一つ、その場合、実際に糖の転移、転化を見ていらっしゃいますね、そう
いうプレディクトした遺伝子のタンパクをつくって。その場合の成功率というのですか、
実際に、最後に数字として何%ぐらいが糖の転移が見られなかったか、それはどれぐらい
ですか。
【成松PL(実施者)
】 候補遺伝子の中でうまくいったのが、今のところ3割から3割5分ぐらい、そんな
ものです。
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【大石分科会長】
そうすると7割は、実際にはインフォマティクスその他の情報から、糖転移遺伝子と間
違いないけれども、実際にさっきのエクスプレッションした系で見た場合、それからいろ
んな基質を使っていらっしゃいましたね。それでも糖の転移が見当たらなかったのが7割
ぐらいということですか。
【成松PL(実施者)
】 その7割の中にも結構バラエティーがありまして、一番簡単なのは、精製した1つ
のタンパクで、in vitro で活性が見えるものが、3割。残された7割の中にはどういうも
のが残っているかといいますと、上清に分泌させて精製したら、どう一生懸命がんばって
もなかなか活性が検出できない。だけれども、細胞の中でゴルジ体で発現させると、細胞
の糖鎖は変化する。だから、糖鎖合成に関与していることは間違いないけれども、それが
酵素そのものかどうかの確証はまだつかめないというのが、結構残っている。
【大石分科会長】
なるほど、わかりました。そういうアッセイ系で、実際に既にタンパク質に糖鎖がつい
ていた場合、それがある程度サチュレートしているというか、そういう可能性はないので
すか。実際には、もうついてしまったために、あとエクスプレッションさせてもそれ以上
つかないから、アッセイ系に引っかからないということはないのですか。
【成松PL(実施者)
】 それは、糖鎖を削り込んでから実験をやりますので、見落としている可能性もある
のですが、その辺の問題は注意しながら実験をやっています。
【大石分科会長】
わかりました。
もう一つ、いいですか。最後に、シュード遺伝子が10幾つかあると言いましたが、あ
れはシークエンスから見て結論されたということですね。
【成松PL(実施者)
】 それもありますし、ストップコドンが来れば明らかにシュードなのですが、ORF
がつながっていても、ホモロジーから活性は、明らかに100%予想できるのですけれど、
活性がないというのがあります。
【大石分科会長】
わかりました。
【川嵜分科会長代理】
古川さんに教えていただきたいのですが、先ほどNEDOのプロジェクトの全体的
な位置づけ、NEDOの中での、この糖鎖関連プロジェクトの位置づけ、あるいは国際的
な面での位置づけというお話があったのですが、一方、日本国内での糖鎖研究、歴史は長
いのですけれども、その中でどういうふうにこのプロジェクトを位置づけられて、スター
トされているのかということもご説明いただけたらと思います。
【古川(推進者)
】 基本的に、糖鎖の研究というのは、NEDOだけが進めてきたものではなくて、その前
に、文部科学省が連綿と続けてきた研究があって、そこで投資された予算というもので、
先ほどお示ししましたような特許上の強さであるとか、研究の強さというのが構築された
と考えております。我々の目的というのは、文部科学省とか大学の先生たちがつくり上げ
てきた学術的な知見をいかに産業につなげていくかということであり、このプロジェクト
の目的でもございますので、そういう意味でも、大学の先生のお力をかりなければ、キャ
ンディデートとして見つけてきた遺伝子の機能を解明するというところを、これほどのス
ピードではできなかったというふうに考えております。
したがいまして、経済産業省だけで、もしくはNEDOのプロジェクトだけで、この成
果が生まれたとは考えておりません。今までに蓄積された知的なストックをいかに集約さ
せて、それを形あるものにし、次につなげるために何を構築したらいいのかというところ
に答えることが、このプロジェクトの位置づけでありまして、別に経済産業省だけの成果
ではないと考えております。
したがいまして、このプロジェクトで構築されたライブラリー、それから情報について
は、まずは日本の研究者の皆様に等しく使っていただいて、糖鎖の研究を進めるというバ
ックグラウンドを太くしていきたいというのが、我々のプロジェクトの目的でございます。
【佐藤委員】
目的のライブラリーということを考えたときに、その質、多様性というようなことを考
えたときに、検索のされ方とかに非常に工夫をされて、約300あるうちの230幾つと
いう形ですから、結果として非常にうまく動いているという印象を受けるのですけれども、
スクリーニングのソース自身がヒトという限定になっていると、例えば単なる産業の応用
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性を考えたときには、微生物というところまで含めて考えたときに、どうですか。例えば、
いろんな糖鎖を何かつくってみたいというソースとして考えたときに、この数というのは、
全体的にどのくらいを押さえることが結果としてできたのかというような評価という意
味合いでは、どうでしょうか。
【古川(推進者)
】 まず、なぜヒトに限ったのかということですけれども、プログラムの目的がヒトの健康
維持増進というところにつながっているのですね。確かにヒトの健康維持増進につなげる
ときに、薬剤に関しても別にヒト由来のものでない、微生物由来のものが非常にたくさん
あるのは存じております。3年間という時間的な制約の中でやるためには、ターゲットを
絞らないといけない。ここでつくられた手法自身が、微生物のほうに転用できないかとい
うと、そういうわけではないのですね。
ですから、我々は、まずターゲットとしてはヒトとしました。ヒトのところが、例えば
インフォマティクスをやるときに、まずゲノムの情報を使いますから、ゲノムの情報がど
こまで利用できたかというのは、プロジェクトのスタート時点で考えると、やはりヒトで
の研究が一番進んでいたわけです。アメリカのDOEでは、TIGRの技術を使って50
個ぐらいの微生物のゲノムを解析するというプロジェクトをその当時やっておりました
けれども、それがどの程度医療産業として有用性が高いのか。どちらかというと例えば核
で汚染された土壌の浄化に能力を持った菌などが選定されており、その菌がもつ機能がど
ういうふうにヒトの健康維持増進につながってくるのかというのはわからないので、そう
いう意味からも、まずはソースとして、そのとき最も確度高く利用できるのはヒューマン
のゲノム情報ですから、そこに焦点を絞って、ゼネラルな手法を構築して、そこでまず一
定のものをとってしまう。その手法ができれば、それは微生物のほうに展開することがで
きるのではないかというふうに、政策のサイドでは考えております。
【磯貝委員】
今回は、糖転移酵素が中心ですけれど、ヒトの糖鎖全体を考えたときに、これでカバー
できているのは、どのぐらいでしょうか。糖をつくるという面では、基本的には、例えば
ヒト型の細胞以外でもつくれたらということもあるとは思うのですけれど、人工的にそれ
をやっていくために、カバーしておかないといけないのが、どのぐらい残っているか。
【成松PL(実施者)
】 ヒトが持つ主要な糖鎖構造は、ほとんどカバーしていると思います。まだ残された、
ほんのちょっと変わったような構造のものは、この中に入っていない可能性があるという
感じです。
【大石分科会長】
そろそろ時間ですけれども、一つ教えていただきたいのですが、ヒトの遺伝子とタンパ
クの間のディスクレパンシーの問題で、タンパクの種類はおそらく最低10万ぐらい、人
によっては100万ぐらいあるだろうと言われているのですけれど、いろんな理由が考え
られて、タンパクのプロセッシングが問題、スプライシングバリアントの問題、あとは今
言った、糖鎖も含めたモディフィケーションの問題ですね。リン酸化とかいろんなことが
あるのですけれども、その場合、糖鎖によってバリエーションというのは、大体のラフな
数としてどれぐらいあると思いますか。
きょうのお話を聞きますと、基本的にはみんな、糖を転移する酵素のほうの話であって、
ターゲットのタンパクがどういうパターンで、どれぐらいあるかとか、そういうことにつ
いては、まだ情報としては、少なくともきょうの、さっきの説明では、それほどはっきり
していなかった。おそらくそれは、これからの課題だと思うのですけれども、大体どんな
感じですか。
【成松PL(実施者)
】 今のご質問が、私はまさしく多細胞生物が複雑になったゆえんだと思っているので
すが、要するに、例えば特定のタンパクが100万分子あったとして、その100万分子
の特定のタンパクが、全部同じ糖鎖構造を持っているわけではないですね、全部違うわけ
ですね。それから、たった1個の、1分子のタンパク質をとってきて、それに2カ所、糖
がついているとして、その2カ所の構造もまた違うわけです。それを決めているメカニズ
ムをどう解析するかというのは、これからまさしく将来の、私は研究課題だとは思ってい
るのです。
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大石先生のご質問のお答えは、分子種というのをどこまで細かく分けるかということに
かかわっていると思うのです。例えば、糖鎖の構造なんかはどうでもいいよ、タンパク部
分が同じなら同一分子だと言ってしまう人もいれば、そうではなくて、タンパク部分は同
じでも、そこの上に乗っている糖鎖構造が少しずつ違えば、全部違う分子だという分け方
をすれば、極めて途方もない数になるはずです。
【大石分科会長】
それから、きょうのお話では、当然、これから知的財産の問題とか、いろいろ機能を調
べるときに、マウスのほうの、カウンターパートの情報の蓄積その他は必須になると思う
のですけれども、それについて何か準備されていますか。いろんなノックアウトの実験は
世界中でやられて、いろんな結果が出ていると思うので、それとは別に。
【成松PL(実施者)】
遺伝子レベルは、もう糖鎖遺伝子データベースに全部マウス糖鎖遺伝子を含んで、
入れてあります。
【大石分科会長】
それは、あくまでヒトのシークエンスホモロジーのタイプで入れている、それだけです
ね。それは、だれでもというわけではないですけれど、見ればすぐわかる話なのですが、
それ以外の情報ですね、それは全然ないですか。
【成松PL(実施者)
】
【大石分科会長】
そういうことです。機能とか。
【成松PL(実施者)
】
【大石分科会長】
それ以外の情報は、酵素に関してですか。
マウスとヒトで大きく変わるものというのは、そんなにはないです。
一応、基本的には同じと考えていいわけですね。
【成松PL(実施者)
】 はい。ドロソフィラとか、ああいうかなり下等までいけばがらりと変わりますけれ
ど、ネズミとヒトはさほど変わらないです。基本的に同じと考えていいかと思います。
【大石分科会長】
ほかにいかがでしょうか。
【斎藤委員】
今のマウスに関してですけれども、例えばα1,3Gal は、ヒトではシュードジーンに
なっていますね。マウスではファンクショナルですが、そういう違いはチェックされまし
たか。
【成松PL(実施者)
】
【斎藤委員】
違いはあります。
もちろんヒトに中心ですから、ヒトでシュードジーンになったら無視されているわけだ
と思うのですが、哺乳類で考えれば、結構シュードジーンがヒトゲノムの中に多いのでは
ないかと思うのですが、その割合は。
【成松PL(実施者)
】 進化論的には、どの遺伝子がシュードになるかというのは一番おもしろいのですけ
れども、マウスとヒューマンで別々の遺伝子がシュードになっている割合というのは、2
00幾つのうちどれぐらいでしょうか。今、正確に数えていないですけれど、それこそ1
0個とか。
【大石分科会長】
きょうの午後の話で出てくると思うのですけれど、機能の問題として、実際にヒトの遺
伝病とか、それに関係しているものとか、そういうことについて。それに関係したような
ことは、これには直接なかったような気がするのですけれども。
【成松PL(実施者)
】
【大石分科会長】
そこまでは、お話しできかねます。
午後に説明していただいて。
ほかにございますか。技術的な細かい質問については、午後のいろんな機会があると思
います。
これで議題5を終わらせていただきたいと思います。先ほど申しましたように、技術的
な細かいことについては、皆さん、たくさんおありと思いますので、午後に質問していた
だくと。午後は、これから昼食を挟みまして、1時10分からというようになっておりま
す。
それから先ほど申しましたように、午後の部は、知的財産権の保護の観点から非公開と
いうことになっておりますので、よろしくお願いいたします。どうも皆さん、ご苦労さま
でした。
(
休
憩
7
)
(以下
非公開)
議題6.プロジェクトの詳細について
議題7.全体についての質疑応答
議題8.今後の予定、その他
議題9.閉会
配付資料
資料 1-1
研究評価委員会分科会の設置について
資料 1-2
NEDO技術委員・技術委員会等規程(研究評価委員会関係部分抜粋版)
資料 2-1
研究評価委員会分科会の公開について(案)
資料 2-2
研究評価委員会関係の公開について
資料 3-1
評価の実施方法と評価報告書の構成について(評価概要説明資料)
資料 3-2
NEDOにおける研究評価について
資料 3-3
技術評価実施規程
資料 3-4
評価項目・評価基準(案)、(参考)標準的評価項目・評価基準
資料 3-5
評点法の実施について(案)
資料 3-6
評価コメントおよび評点票の作成について(案)
資料 3-7
評価の分担について(案)
資料 4
評価報告書の構成について(案)
資料 5-1
【公開】事業原簿
資料 5-2
【公開】プロジェクトの全体概要説明資料
資料 6-1
【非公開】事業原簿
資料 6-2
【非公開】プロジェクトの詳細説明資料
資料 7
質問票について
資料 8
今後の予定
――了――
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