Title Author(s) Citation Issue Date 脂質の分配クロマトグラフィー 高橋, 是太郎 油化学 = Journal of Japan Oil Chemist's Society, 37(4): 307309 1988 DOI Doc URL http://hdl.handle.net/2115/42796 Right Type article Additional Information File Information takahashi_JJOCS37.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 第 ' ; j ' f巷 3 0 7 主 持 4号 ( 1日目的 オイルコーナー 脂質の分配クロマトグラフィー 高橋是太郎 北海道大学水産学部(干 0 4 1函鐙市港町 3-3-1) 天然、界の多くのグリセリドは,通常多種類の脂肪酸か (~:) L αA J= -R担・ T ら成り立っているので,これらの脂肪酸の組み合わせか ら成るグリセリドの分子穫の組成は複雑な場合が多い。 このことが偲々の分子種の分画,同定を困難にしてきた。 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)における分子 穫の分析は,まず溶出時間の経験的分離因子の規定から 始まった。これが和田らの有名な P a r t i t i o n number (PN),P l a t t n e r らの Equivalentcarbon number (3) (ただし, A と B は同族体同士であり, X は A と B の 分子犠造上の差を表す ;α:分配係数 ;μ ケミカルポ 度を表す) テンシャル ;R:気体定数 ;T:絶対話Z が成り立つ。ここで,式 ( 1 )と式 ( 2 )より AμB , ; t μA 百 : r一 吉: r ム Aμx (4) • 百万ず f f e c t i v ecarbonnumb日r(EC) (ECN),Porterらの E も成り立つことになる。この式は以下の式 ( 5 ) ( 8 )のよ と呼ばれるものである。すなわち,グリセリド分子種の うに拡張解釈することにより,後述のように個々の分子 アシル基の総炭素数を CN,総二重結合数を DBとする 穣の保持時間の予測に大いに役立つのである。 DB(トリアシルの場合), EC= と , PN=ECN=CN-2・ ムμDG CN-DB (ジアシルの場合)となり, したがって, CN R.T が多い分子積ほど濃く溶出し,反対に DBが多いほど A ILa l k e州 a c y 早く溶出することになる。 PNや ECはグリセリドのお R.T およその溶出時間を知る上で非常に便利であり,今日で も広く利用され用いられている。しかしながら,これら はいずれも CNと DBの値を算出のよりどころとして いるので,同ーの PNや ECをとる多数の異なる分子 , ; tμ acylJょ A μ a c y l 2 R・ T R.T (5) t;,血且民主L+全血9i R・ T R.T 生血包出Il=生血血1+生lLa c Y I R.T R.T R.T (6) (7) . t , ; t l La a c v l 八 川 、 八 H 一 一ILTG . LT G _ 一 一 t . L c y l l+ 一 一 . t .a C Y I 2+一 一一 :Yl3 (8) R.T R.T R・ T R.T 電 種が存在することから, PNや ECだけでは個々の分子 (DGはジアシル型のクリセロリン脂質,ジアシルグリ 種を霞接同定することはできない。 セリンならびにその誘導体, TGはトリアシルグリセリ 1 9 8 0年代に入り, HPLCの分解能や理論段数の大幅 ンを示す) な向上に伴い,個々の分子種を直接同定すべく PNを 他の脂質クラスについても上記と同じ考え方が適用で h e o r e t i c a lcarbonnumberと呼ばれる経験 補正した T きることは間違いないと窓われるが,この点の証明に関 式も提唱されてはきたが,基本的には PNに補正項を しては今後のデータに待たねばならない。 加えたものであり, PNほどの impactはなかったよう に思われる。 さて,一般的な分配クロマトグラフィーでは,温度が 一定の条件で分析が行われるのが普通である。したがっ 本稿では,このように今まで専ら経験的に扱われてき たクロマトグラフィーによる路震の分子種の分析法に多 少なりとも系統的な考え方を導入し,倍々の分子種を直 接同定するための溶出法則!とその理論的根拠を提示した いと思う。 ペーノ fークロマトグラフィー(これは固定相を水とす て式 (1)-(3)において l I R・ T は比例定数に相当するこ とになる。よって ( 告 ) 民 Aμx (9) l n すなわち, αAと αBの比の対数値はケミカルポテンシャ ルに比例するわけであるが,今ここで αAを相対保持時 るれっきとした分配クロマトグラフィーである)でノー 間 (RRT) 算出のための基準脂質分子種の分配係数, .P .Martinは,次の 3つの関 ベル賞を受賞した A.J α8を任意の脂質分子種の分自己係数とすると αB/αA は 分子種 B の RRTを意味することになる。このことか 係を見いだした。すなわち,分配クロマトグラフィーに おいては, l n日=主ι A R.T (1) lna ーム μAL t ; ,μ U B - R.T .R.T (2) 凶 9 )は ら式 ( ( 渋 )=2制 l n og(RRT)cxt ; , 1 Lx o g(RRT) とも と表され, ケミカルポテンシャルは l 8 7 3 0 8 油化学 式( 7 )は 比例関係にあることになる。 =log(RRT)a1k y1 log(RRT)a1 k y1 a c y1 今 , 相 対 保 持 時 間 の 常 用 対 数 値 口o g '(RRT)Jを相 +log(RRT)a c y1 対保持ポテンシャル指数 R e l a t i v er e t e n t i o np o t e n t i a l index (略して RPI) と定義すると ( 12 ) 式( 8 )は log(RRT)=RPIo c! : : .μx log(RRT)百 =log(RRT)acy1 1 なる関係があることになるから式 ( 5 )は 十 log(RRT)ffi=log(RPT)acy1 1 log(RRT)a c y1 2 +log(RRT)a c y1 3 +log(RRT)a c y1 2 ( 10 ) 味において非常に有用である。 式( 6 )は 1 ) 同一の脂質クラスであれば,その脂質クラスの log(RRT)a1 k e n y1 a c y1= log(RRT)a1 k e n y1 +log(RRT)acy1 構成要素の RPIの和の形で任意の分子穫の RPIを算 ( 1 1 ) 出できる。 表一 1 一定条件下の逆椙 HPLCにおける標品(既知)トリアシルグリセリンの相対保 持時間 子 分 相対保持 時間* Source 種 I SigmaChemicalCompany ( 14:0 ,1 4:0,1 4:0 ) 4 1 8 . 8 ( 16:0 , 1 6:0,1 6:0 ) , 12 5 6 .0 ( 16:1ω9,1 6:1ω9,1 6:1ω9) I Nu-Chek-Prep,I n c . 3 8 2 . 8 9 5 2 . 8 3 8 2 . 8 ( 18:2ω6,1 8:2ω6,1 8:2ω6) I " 1 6 6 . 0 ( 18:3ω3,1 8:3ω3,1 8:3ω3) I " ( 2 0:3ω3,2 0:3ω3,2 0:3ω3) I オゴノリ ( Gr αc i l a r iαv e r r u c o s α) 3 1 7 . 7 2 2 0 . 3 ( 2 0:4ω6,2 0:4ω6,2 0:4ω6) I " ( 2 0:5ω3, 2 0:5ω3,2 0:5ω3) I スナガレイ ( L i n αnd αp u n c t a t L s s L m α) 1 0 0 . 0 ( 18:0 ,1 8:1ω9,1 8・0 ) カカオ脂 2 . 2 3 3 . 6 ( 2 2:6ω3,2 0:5ω3,2 0:5ω3) I スナガレイ 1 0 6 . 1 ( 18:1ω9 ,1 8:1ω9,1 8:1ω9) I SigmaChemicalCompany ( 2 0:5,2 0:5,2 0:5 ) を基準とした場合 nuTム R J poaUD 自 --2 1 Tム 只JFb 句 目 ・ ・ ・2 6 0 l22 F h UハUAU 055 i zunυnυ 7 1ム 勺 乙 う 4 内 今乙内 5 ε υ 内 6 0 .••••. 155 τ J R J 定J Tよ 内 ノ ﹄ 内 4 P • i [ 。 c o にJ つιnυηu 。 ム 、164n U 44 勾, 4 - 勾,乙-勾,4& 内J- i [ 内 555 14 にJ R J . . 町' nunU U 。 nU υ 2 2 2 lo2 2 ii 命 - •• 3 0 90 m i n *カラム:S u p e r s h e r ePR-18,250x4m m,溶媒:アセトン/アセトニトリル ( 1:1 , v ol/v o l ),検出器:RI,温度:室温(恒温室〉 図一 1 高分解能 HPLCによるスナガレイ筋肉トリアシルグリセリンのクロ マトグラム 8 8 ( 1 3 ) と書き表すことができる。これら式 (10)-(13)は次の意 第3 7巻 第 4考 ( 1 9 8 8 ) 3 0 9 表 -2 スナガレイ筋肉トリアシルグリセリンの主要分子種の実保持時間と棺対保持ポ テンシャル指数によって算出した保持時間との比較*I ピーク 番号 分 種 ( 2 0:5ω3,2 0:5ω3,2 0:5ω3)*2 0:5ω3,2 0:5ω3ア2 ( 2 2:6ω3,2 l 2 0:5ω3,2 0:5ω3) 06:1ω9,2 3 4 5 6 7 8 指 子 ( 16:1ω9, 2 0:5ω3,2 2:6ω3) 0:5ω3,2 0:5ω3) 08:1ω9,2 ( 18:1ω9, 2 0 ' :5ω3, 2 2:6ω3) ( 16:0 , 2 0:5ω3, 2 0:5ω3) ( 16:0 ,1 6:1ω9,2 0:5ω3) m持 m時)間 相対的なずれ 実保 (持 ml n 時 )間 予測(保 (%) 7 . 0 6 7 . 4 9 1 .0 5 1 1 1 .7 7 1 4 . 8 9 1 5 . 9 4 1 6 . 8 9 2 5 .7 0 1 1 .0 6 1 .7 2 1 1 4 . 9 9 1 5 . 8 8 1 6 . 4 4 2 5 . 6 9 0 . 1 0 . 4 O .7 O .4 2 .7 ーo 参照 1 図1 り相対保持ポテンシャル指数の算出の基準となった分子種 2 ) RPIがわかればその親数を計算することによ りRRTを求めることができる。 定される。この分子種の RRTは 1 0 6 . 1であることから RPIは log106.1=2.026となり, 20:5(ω3)の脂肪酸 では,構成要素の R PIを求めるにはどうしたらよいの PIは 0.667であるから, 22:6(ω3)の脂肪酸 残基の R であろうか。まず,前提条件として向一脂質クラスの分 残基の R PIは式 (13)を変形することにより, 2.0260 . 6 6 7 0 . 6 6 7 = 0 . 6 9 2と算出される。表 -2は以上のよう 溶媒比を可 子種の分析においては移動相の流速,温度, 1 RPIを基に,式 (13)によって算出した保 能な限り一定とすることが不可欠となる。異体的計算方 にして求めた 法について TGを例にあげると以下の手順となる。 持時間と図 -1中の番号をふった主要同定ピークの実保 初めに既知の単酸型分子種の HPLCピークに注目し 持時間とを比較して,両者の相対的なずれを示したもの てその RRTを求める。例えばいま一定分析条件下での であるが,表中に示されているように,保持時間の予測 既知分子種(標品等)の RRTデータが表ー1であったと 値と実測値との間にはほとんど差異は認められない。 する。 ( 2 0:5, 2 0:5, 2 0:5 ) の RRTを基準値 (RRT 以上紹介した具体例は他のよりシンプルな脂質クラス =100)とすると 2 0:5 (ω3)の脂肪酸残基の R PIは 0 0 . 0 ) / 3 = 0 . 6 6 7となる。同様に, 1 8 :1(ω9)の場 ( log1 も当然適用できるものであり.また, HPLCに限らず最 合は(log9 5 2 . 8 ) / 3 = 0 . 9 9 3となる。このようにして単殻 近注自されている p h e n y l m e t h y l s i l i c o n egumFSOT (ジアシル,アルケニルアシル,アルキルアシル等)に 型の既知分子種の RRTから容易に相当数の構成脂肪酸 による PI(ω 異性体はわずかながら異なった 残慈の R だし,この場合は昇混クロマトグラフィーとなるので RPIを 持つ)を算出で、きるが,たとえば ( 2 2:6, 2 2:6,2 2:6 ) GCの分子穫の直接分析にも応用できる。た RPIは保持混度に相当することになる。 のように単酸裂であっても標品の入手が比較的困難な場 0年近くも前にペーパークロ 以上のように,今から 4 I 買で繕成脂肪酸残基の R PIを求める。図 -1 合は次の手J マトグラフィーで築かれた Martinの理論は,今日の のスナガレイの筋肉 TGの HPLCを例にあげると.ま HPLCを初めとする各種の分配クロマトグラフィーに ず,図中の著書号をふった主要 8ピークのうち No.1は よってますますその有用性と確かさが註明される結果と ( G C )による脂肪酸組成の分 なった。年月の経過と共に色あせるどころか,なお一層 析の結果, 75%を 2 0:5 (ω3)が占めていたことから 輝きを増していくものが真に価値のある研究なのだとい ガスクロマトグラフィー ( 2 0:5, 2 0:5 , 2 0:5 )と同定され, No.2のピークは GC の結果, 2molの 2 0:5 (ω3)と 1molの 22:6 (ω3) うことを彼の論文は物語っている。 ( s g 日 < 16 3年 2月 1 5a 受現) の存在が確認されたことから ( 2 2 :6, 20:5, 20:5 )と同 8 9
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