シュバルツシルト解∼外部∼

シュバルツシルト解∼外部∼
真空 (物質なし空間) でのアインシュタイン方程式を解くんですが、そのために静的で球対称であるという条件を
与えてやります。こうすることで、計量テンソルの 16 成分(独立成分は 10 個)を減らしてやれて対角成分のみ
になります。ちなみに、静的と言ったときは、時間独立であると同時に時間反転に対しても不変であることを表し
ます。
リッチテンソルの計算で −Rµν みたいにしているのは、リーマンテンソルの符号を逆に定義していた頃の名残です。
本題に行く前に空間の性質を表す言葉である、一様と等方について簡単に言っておきます。3 次元空間座標 x の平
行移動後の座標 x′ は
x′ = x + a
と書けて (a は定数)、これを運動方程式 (ラグランジアン) に入れても運動方程式の形が変わらないとき、空間は
一様と言います。同様に時間 t に対しても (a は定数)
t′ = t + a
このような変換に対して運動方程式が変わらないとき、時間は一様といいます。座標が時間に依存しない回転変
換の直交行列 T による
x′ = T x
という変換に対して運動方程式が変わらないとき、空間は等方と言います。簡単にまとめれば、時間と空間が平
行移動に対して変化しないとき一様、空間が回転変換に対して変化しない (どの方向を向いても同じ) とき等方と
いうことです。
今から考えていくものは漸近的平坦な時空というやつで、原点から無限遠に離れていくとミンコフスキー空間
になるという場合です。ミンコフスキー空間 (ローレンツ系) としたときの極座標での線素は
ds2 = c2 dt2 − (dr2 + r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
x0 = ct , x1 = r , x2 = θ , x3 = φ
これが無限遠で現れるとすることで、重力場の中心から離れるにつれて重力は弱くなるというのが表現できます。
なのでこの線素を元に考えていきます。注意として、ct, r, θ, φ と書いたときのの計量は gµν のように下付きになっ
ています。これは x0 = ct , x1 = r , x2 = θ , x3 = φ というのから分かると思います。
まず、静的で球対称な線素を作ります。静的は時間独立で時間反転に対して不変だということです。なので、時
間反転 dx0 ⇒ −dx0 のもとで不変であるという条件をつけてやることで、線素において dt と他の成分が混ざるよ
うな部分は 0 にならなければならないという制限がかかり、gi0 は 0 になります。そして、球対称であるためには、
dθ, dφ は立体角部分を表すように出てき、なおかつ角度を dθ ⇒ −dθ、dφ ⇒ −dφ のようにしても線素は不変で
なければならなくなります。よって、dθdφ, drdθ のような項が出てきてはいけないことになります。これらから計
量テンソルは対角成分しかないことになるので、線素は
1
ds2 = Ac2 dt2 − (Bdr2 + Cr2 dθ2 + Dr2 sin2 θdφ2 )
のようになっているはずです。時間独立で球対称なので A, B, C, D は r の関数になっています。今は C, D は等方
性によって同じものになります(θ = 0 と θ = π/2 で対応がとれる)。動径 r を変換して式をもっと簡単にします。
動径に対して
r′ =
√
Cr , r′2 = Cr2
このような変換を行って新しい動径を作ってやります。そうすると
1 dC
1
1
dr2 = ( rC − 2
+ C 2 )−2 dr′2
2
dr
より、r′ で Bdr2 を表現すると
Bdr2
1 dC
1
1
+ C 2 )−2 dr′2
= B( rC − 2
2
dr
1
dC 2
dC −1 ′2
= B(C + r2 C −1 (
) +r
) dr
4
dr
dr
B
r dC −2 ′2
=
(1 +
) dr
C
2C dr
′ ′2
= B dr
なので
ds2 = Ac2 dt2 − Bdr2 − C(r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
これを r′ で表してやれば
ds2 = Ac2 dt2 − B ′ dr′2 − (r′2 dθ2 + r′2 sin2 θdφ2 )
という結果になります。なので、動径の選択によって C = 1 という状況が作れるので、C は 1 としてしまえます。
よって
ds2 = Ac2 dt2 − Bdr2 − (r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
という線素が求まります。ここで残っている未知関数を A = eν(r) , B = eλ(r) のようにします。計量テンソルの符
号の関係上 A, B は正なのでこのように置いて問題ないです。よって
ds2 = eν(r) c2 dt2 − eλ(r) dr2 − (r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
(1)
これが最終的な時間独立で球対称な線素の形です。この結果をみてわかるように、適当な動径 r を選んだときに
できる球の表面での線素というのは角度によって作られ
2
ds2 = −(r2 dθ2 + r2 sin2 θdφ2 )
これによって球の赤道(θ =
π
)部分の長さというのは
2
∫
2π
l=
√
∫
2π
−ds2 =
r2 dφ = 2πr
0
0
となるので通常の球の赤道の長さになり、r によって決定されます。
また、シュバルツシルト解を求めるには球対称という条件だけでも十分になっています。そのとき計量の形とし
て要求する最も一般的な形は(静的であることを要求しない)
ds2 = Ac2 dt2 + Bdr2 + 2Cdrdt + f (dθ2 + sin2 θdφ2 )
このようになっています。A, B, C, f は t と r の関数です。細かい理由については触れませんが、球対称といった
とき必要になってくる条件は二次元球の線素 dl2 = f (r, t)(dθ2 + sin2 θdφ2 ) が含まれていることです。後は二次元
球と直交に交わる線の条件によって drdθ, dtdφ のような項が落とされて上のような形になります。さらに、座標
変換によって、B は消せ、f は r2 にできるので、A, B が r だけでなく t にも依存するという点以外は同じ形にで
きます。なので、t の依存性を含ませたままでも同じ手順で計算していくことは可能です。しかも、t の依存性は
座標変換によって吸収することができ、静的だとして始めた結果と同じものになります。このように真空における
球対称な時空は静的になるというのをバーコフ (Birkhoff) の定理と呼んでいます。というわけで、最初から静的
だとして求めていきます。
今求められた計量を使ってアインシュタイン方程式に現れる 0 でないクリストッフェル記号を地道に計算して
いきます。そのために測地線方程式
{
α
x
¨ +
α
βη
x˙ =
}
x˙ β x˙ η = 0
(2)
dx
ds
を使います。測地線方程式はオイラー・ラグランジュ方程式から求められるものなので、(1) を使った変分問題と
測地線方程式の対応を使います。オイラー・ラグランジュ方程式は変分問題
∫
δ
[eν(r) (x˙ 0 )2 − eλ(r) r˙ 2 − (r2 θ˙2 + r2 sin2 θφ˙ 2 )]ds = 0
によって求められて (「運動方程式と測地線方程式」参照)、[ ] 部分を F とすると
d ∂F
∂F
=
ds ∂ x˙ α
∂xα
となります。これが今の測地線方程式に対するオイラー・ラグランジュ方程式ですので、これを計算したら (2) と
同じ式になります。
まず α = 0(xα = x0 ) の場合を見てみます。オイラー・ラグランジュ方程式の左辺は
3
d ∂F
ds ∂ x˙ 0
d
(2eν x˙ 0 )
ds
=
dν dr
dr ds
2eν x
¨0 + 2x˙ 0 eν ν ′ r˙
= 2eν x
¨0 + 2x˙ 0 eν
=
右辺は当然 0 なので
2eν x
¨0 + 2x˙ 0 eν ν ′ r˙ = 0
r で微分するものには ν ′ のように ′ をつけます。これから 2eν を割ってしまえば
x
¨0 + ν ′ x˙ 0 r˙ = 0
(3)
というものになります。これと測地線方程式 (2) を比べます。α = 0 での測地線方程式は
{
}
0
βη
x
¨0 +
x˙ β x˙ η = 0
第一項は明らかに同じ形です。第二項は
{
0
β0
}
{
β 0
x˙ x˙ +
0
β1
}
x˙ β x˙ 1 + · · ·
のようになっています。そして、オイラー・ラグランジュ方程式からは x˙ 0 r˙ の項しか出てきていないので、測地
線方程式における他の項は当然消えなければいけません。言い換えれば、x˙ 0 r˙ 以外の項でのクリストッフェル記号
が 0 になっているということです。よって、0 になっていないクリストッフェル記号の部分は、r = x1 から
{
0
}
βη
{
β η
x˙ x˙
⇒
}
0
{
β
x˙ r˙ +
β1
0
1η
}
r˙ x˙ η
さらに x˙ 0 となるように β = 0 もしくは η = 0 を選ぶので、0 でないクリストッフェル記号として
{
0
}
{
,
01
0
}
10
そして、測地線方程式と (3) から、この二つを足したものが ν ′ と等しくなっていればいいことが分かるので
{
0
10
}
{
=
となります。
今度は α = 1(xα = x1 = r) の場合です
4
0
01
}
=
ν′
2
∂F
∂x1
= eν ν ′ (x˙ 0 )2 − eλ λ′ r˙ 2 − 2rθ˙2 − 2r sin2 θφ˙ 2
d ∂F
ds ∂ x˙ 1
λ
−2e r¨ − 2eλ λ′ r˙ 2
=
−2eλ r¨ − eλ λ′ r˙ 2
r¨ +
= eν ν ′ (x˙ 0 )2 − 2rθ˙2 − 2r sin2 θφ˙ 2
λ′ 2 ν ′ eν−λ 0 2
r˙ +
(x˙ ) − re−λ θ˙2 − re−λ sin2 θφ˙ 2
2
2
= 0
同じように測地線方程式との対応を見てやるとクリストッフェル記号は
{
1
00
}
ν ′ eν−λ
=
,
2
{
1
11
}
λ′
=
,
2
{
}
1
22
{
= −re
−λ
,
1
33
}
= −re−λ sin2 θ
というものになります。
α = 2(xα = x2 = θ) の場合では、オイラー・ラグランジュ方程式は
2
θ¨ + θ˙r˙ − sin θ cos θφ˙ 2 = 0
r
第三項部分はそのまま
{
}
2
33
= − sin θ cos θ
第二項部分では
{
2
12
}
{
,
2
21
}
を足したものになるので
{
2
12
}
{
=
2
}
=
21
1
r
となります。
最後の α = 3(xα = x3 = φ) の場合では、オイラー・ラグランジュ方程式は
2
φ¨ + 2 cot θθ˙φ˙ + r˙ φ˙ = 0
r
なのでクリストッフェル記号は
{
3
23
}
{
=
3
32
}
{
= cot θ ,
3
13
}
{
=
3
31
}
=
1
r
となります。これがクリストッフェル記号が 0 にならない全てのものです。まとめると
5
{
{
}
1
00
{
ν ′ eν−λ
=
,
2
{
{
11
}
2
12
{
=
}
3
}
1
13
{
0
10
}
2
21
}
{
{
=
ν′
2
}
1
{
1
= ,
r
{
= −re
22
1
= ,
r
31
}
0
01
=
λ′
=
,
2
3
=
}
{
,
1
}
= −re−λ sin2 θ
33
}
2
33
3
−λ
= − sin θ cos θ
}
{
=
23
}
3
32
= cot θ
これでクリストッフェル記号は求まりましたが、アインシュタイン方程式には縮約された
{
}
τ
τ ρ
のようなものが含まれているので、これらを「共変微分」の発散の式を求めるときに出てきた
{
}
τ
=
τ ρ
√
√
∂
log −g = (log −g)|ρ
∂xρ
というのを使ってやって書き換えます (g は gµν の行列式)。これを真空でのアインシュタイン方程式
{
−Rµν =
β
µβ
}
{
−
|ν
β
µν
}
{
+
|β
}{
β
τ µ
τ
βν
}
{
−
τ
µν
}{
β
τ β
}
=0
に代入すると
−Rµν
√
= (log −g)|µ|ν −
{
α
µν
}
{
+
β
}{
τ µ
|α
}
τ
βν
{
−
µν
計量テンソル gµν の行列式 g は、今使っている計量テンソル

gµν
eν

 0
=
 0

0
0
−eλ
0
0
0
0
0
0
−r2
0
0
−r sin2 θ
から素直に
g = −eν+λ r4 sin2 θ
6
2
τ






}
(log
√
−g)|τ = 0
これを代入してやって
log
√
1
1
−g = log(eν+λ r4 sin2 θ) = log eν+λ + 2 log r + log | sin θ|
2
2
これでアインシュタイン方程式に必要なものは揃ったことになります。eν(r) の ν(r) と Rµν の ν は無関係なもの
なので混同しないでください。
それでは Rµν を地道に計算していき、真空での eν と eλ を決定します。ここで求められる Rµν は、球対称であ
るという条件のものに対してはそのまま適用させることができます (ただし、当たり前ですが Rµν = 0 とした場
合は真空でのみ使用できます)。
µ = ν = 0 の場合
−R00
√
= (log −g)|0|0 −
{
α
00
}
{
+
|α
}{
β
τ 0
}
τ
β0
{
−
}
τ
(log
00
√
−g)|τ = 0
これに上で求めたクリストッフェル記号が 0 にならないものを代入していくと
{
−R00
= −
=
=
=
=
=
1
00
}
{
+
|1
1
00
}{
0
10
}
{
+
0
10
}{
1
00
}
{
−
1
00
}
(log
ν′
ν ′2 ν−λ ν ′ ν−λ 1 ′
2
−( eν−λ )′ +
e
− e
( (ν + λ′ ) + )
2
2
2
2
r
′2
ν ′′ ν−λ ν ′ ′
ν
1
1
2
− e
− (ν − λ′ )eν−λ +
eν−λ − eν−λ ( (ν ′2 + ν ′ λ′ ) + ν ′ )
2
2
2
2
2
r
eν−λ ′′
1
2
−
(ν + ν ′2 − ν ′ λ′ − ν ′2 + (ν ′2 + ν ′ λ′ ) + ν ′ )
2
2
r
eν−λ ′′
1
1
2
−
(ν − ν ′ λ′ + ν ′2 + ν ′ λ′ + ν ′ )
2
2
2
r
−eν−λ ′′ ν ′2
ν ′ λ′
2ν ′
(ν +
−
+
)
2
2
2
r
R00 = 0 なので
ν ′′ +
ν ′2
ν ′ λ′
2ν ′
−
+
=0
2
2
r
という式を得られます。同様に µ = ν = 1 の場合
7
√
−g)|1
−R11 =(log
=(log
√
√
{
+
{
−g)|1|1 −
−g)|1|1 −
}{
21
}
1
21
{
+
|1
}
{
+
}{
β
τ 1
|α
11
2
{
+
11
{
2
}
α
3
0
}
τ
−
β1
}{
01
}{
31
}
0
31
}
{
{
−
1
τ
}
(log
11
1
+
01
3
{
}{
11
}
(log
11
√
−g)|τ
1
}
11
√
−g)|1
λ′′
ν ′2
λ′2
1
1
λ′ 1
1
1
2
+
+
+ 2 + 2 − ( (ν + λ)′ + )
= (ν + λ)′′ − 2 2 −
2
r
2
4
4
r
r
2 2
r
1
ν ′2
λ′2
λ′
λ′
= ν ′′ +
+
− (ν ′ + λ′ ) −
2
4
4
4
r
1
ν ′2
λ′ ν ′
λ′
= ν ′′ +
−
−
2
4
4
r
となって、R11 = 0 より
ν ′′ +
ν ′2
ν ′ λ′
2λ′
−
−
=0
2
2
r
ν ′′ +
ν ′2
ν ′ λ′
2ν ′
−
+
=0
2
2
r
ν ′′ +
ν ′2
ν ′ λ′
2λ′
−
−
=0
2
2
r
となります。R00 と R11 の結果である
から ν ′ と λ′ の関係は
ν ′ = −λ′
であることがわかります。積分すれば
ν + λ = const
a
となります。この定数を a とでも置いて、時間座標 x0 での eν c2 dt2 を t ⇒ e 2 t のように座標変換します。細かく
書けば計量テンソルにおける
g 00 =
∂x0 2
∂xα ∂xβ
) g00
0
0 gαβ = (
∂x ∂x
∂x0
a
という変換です。このとき、空間成分 α, β = 1, 2, 3 は変化しないとしています。で、∂x0 /∂x0 の部分を e 2 と選ん
だことになります。そうすると計量の時間成分の係数が eν+a というように変わります。つまり ν ⇒ ν + a となる
ことから
8
ν+λ=a ⇒ ν+λ=0
という式に書き換わって
ν = −λ
このように選ぶと線素の ct と r 成分は e−λ , eλ となります。そして、eλ = 1 となる時には e−λ = 1 になるため
に、このとき線素はミンコフスキー空間でのものになります。つまり、r 無限大で eλ = 1 になるなら、時間成分
も e−λ = 1 になるので、この座標変換で漸近的に平坦になるという制限がかかったことになります。
この関係を R11 で得られた結果に代入すると
−λ′′ +
λ′2
λ′2
2λ′
+
−
2
2
r
′
2λ
λ′′ − λ′2 +
r
= 0
=
これは変形すると
(re−λ )′′ = 0
と書けるので、積分することで
(re−λ )′ = const
となります。
ここでアインシュタイン方程式の計算に戻って今度は R22 の場合を持ち出してみます
−R22
√
=(log −g)|2|2 −
{
−
1
22
{
}
(log
1
22
}
{
+
|1
1
22
}{
2
12
}
{
+
2
12
}{
1
22
√
−g)|1
=
′
′
∂2
2
−λ ′
−λ
2
−λ λ + ν
(log
|
sin
θ|)
+
(e
r)
−
2e
+
cot
θ
+
re
(
+ )
∂θ2
2
r
=
′
′
∂ cos θ cos2 θ
−λ ′
−λ
−λ λ + ν
+
+
(e
r)
−
2e
+
e
(r
+ 2)
∂θ sin θ
2
sin2 θ
=
− sin θ cos2 θ cos2 θ
λ′ + ν ′
−
+
+ (e−λ r)′ − 2e−λ + e−λ (r
+ 2)
2
2
sin θ
2
sin θ
sin θ
= − 1 + (e−λ r)′ + e−λ r
= − 1 + (e−λ r)′ + r
λ′ + ν ′
2
λ′ − λ′ −λ
e
2
= − 1 + (e−λ r)′ = 0
9
}
{
+
3
32
}{
3
32
}
上で求められた λ′ と ν ′ の関係 ν ′ = −λ′ を使っています。なので
(e−λ r)′ = 1
というものだけが生き残ります。これでわかったように前では (e−λ r)′ = const となっていたものは 1 だというこ
とになります。これを積分すれば
e−λ r = r + C = r − 2m
Cは積分定数で、それを −2m としています。これによって eν と eλ を求めることができて
e−λ = eν = 1 −
eλ =
2m
r
1
1 − 2m
r
だということになります。よって線素は
ds2 = (1 −
2m
1
)(cdt)2 −
dr2 − r2 (dθ2 + sin2 θdφ2 )
r
1 − 2m
r
になります。静的で球対称としたときの真空でのアインシュタイン方程式の解であるこれを、シュバルツシルト解
(Schwarzschild solution) と呼んでいて、これに対応する計量がシュバルツシルト計量です。
他にも R01 や R33 とか残り 7 個あるんですが、これらは 0 になります。例えば R12 の場合
−R12
= (log
= (log
=
√
√
{
−g)|1|2 −
{
−g)|1|2 −
α
12
2
12
}
{
+
|α
}
{
+
β
τ 1
3
31
|2
1
1
cot θ − cot θ = 0
r
r
となって 0 になります。ついでに R33 も求めておきます
10
}{
}{
τ
β2
3
32
}
{
−
}
{
−
τ
12
2
12
}
(log
}
(log
√
−g)|τ
√
−g)|2
−R33
√
=(log −g)|3|3 −
{
=−
{
−
1
33
1
33
}
{
33
{
−
|1
}
α
2
33
}
{
+
}
{
+2
|2
=(re−λ sin2 θ)′ +
{
τ
τ 3
|α
√
(log −g)|1 −
}{
β
2
33
}
β3
}{
1
33
}
(log
3
13
{
−
}
33
{
+2
}
τ
2
33
(log
√
−g)|τ
}{
3
32
}
√
−g)|2
∂
2
(sin θ cos θ) − 2e−λ sin2 θ − 2 cot θ sin θ cos θ + re−λ sin2 θ + cos2 θ
∂θ
r
=(re−λ )′ sin2 θ − sin2 θ
=[(re−λ )′ − 1] sin2 θ
この式は R12 とは違いそのまま 0 にはならないんですが、R22 の式に sin2 θ を掛けたものになっています。なの
で R22 と同じ結果を出すことになりますし、(re−λ )′ = 1 を代入することで 0 になります。
なので、結局のところ eλ 、eν というのは今求めたもの以外には出てこないので、ここでのアインシュタイン方
程式の解としてはシュバルツシルト解のみになっています。
積分定数 2m というのが何者なのか調べます。弱い場の中を運動する粒子を考えたときの計量は「計量テンソル
と重力」で求めたように
g00 ≃ 1 +
2ϕ
c2
となっていて、この ϕ が重力ポテンシャルであるならニュートンの重力理論から
ϕ=−
κM
r
であることになります。κ は重力定数、M は粒子の質量です。ということは
g00 ≃ 1 −
2κM
c2 r
であることになり、これとシュバルツシルト解の時間成分
1−
2m
r
m=
κM
c2
を比べてやると積分定数 m というのは
であることになります。で、この m の単位は、cgs 単位系で
11
κ = [dyn · cm2 /g 2 ] (dyn = g · cm/s2 )
M = [g]
c2 = [cm2 /s2 ]
より
[dyn · cm2 /g 2 ] × [g] × [s2 /cm2 ] = [cm]
よって m は距離の単位を持ちます。幾何学単位系 (c = 1, κ = 1) では
m=M
となり、質量となるために、幾何学的な質量と呼べます。このように、ニュートンによる重力ポテンシャルと対応
させることができるので、質量 M の物体による静的で球対称な時空をシュバルツシルト解は表現していると考え
られます。このため、星の周りにできる重力場の影響を考える時に用いられます。
シュバルツシルト解を見ればわかるように、r = 2m のとき dx0 の係数 (g00 ) は 0 になり dr2 の係数 (g11 ) は無
限に発散してしまいます。この r = 2m となるところをシュバルツシルト半径もしくは重力半径と呼んでいます。
このシュバルツシルト半径の距離で特異点と呼ぶようなこともあるようですが、ここは本当の特異点ではありま
せん。この領域は座標のとり方のせいで発散するようになっており、座標を上手く取ることで発散しないものを
導けます。なので、真の特異点というのは r = 0 のことになります。シュバルツシルト半径の面は特異点ではなく
事象の地平面 (event horizon) と呼ばれます。ちなみに、太陽のシュバルツシルト半径は約 3km、地球は約 0.9cm
です。
また、最初の方でも触れましたが、バーコフの定理というものがあって、球対称であることさえ要求してしま
えば静的であるという条件を加えなくてもシュバルツシルト解が唯一の解になるということがわかっています。こ
のように静的であるという条件が外されても成り立つということは、例えば球対称でありさえすれば星が動径方
向に振動してようとも星の外部の計量(シュバルツシルト計量)には何の影響もないということになります。よっ
て球対称なものが振動しても重力波は放出しないということになります。
シュバルツシルト半径を求めるだけならば簡単な方法があって、静止エネルギーと自己重力が釣り合う条件
M c2 =
κM 2
r
M c2 =
κM 2
r
から
r=
κM
c2
12
この r が積分定数 m と同じ式になっているのがわかるのでこれを 2 倍すればそのままシュバルツシルト半径にな
ります。静止エネルギーとせずに、光速での運動エネルギーとポテンシャルが釣り合うとしても出てきます(ラプ
ラスの発想と同じです)。
ついでにシュバルツシルト半径とコンプトン波長が等しくなる時
ℏ
κM
= 2
Mc
c
√
M=
ℏc
κ
この質量 M をプランク質量と言います。プランク質量でのコンプトン波長をプランク長と呼びます。プランク質
量というのは重力定数とプランク定数という重力と量子論の基本的な定数さらに光速も含んでいるので、こいつ
が量子重力に一枚かんでいるのではないかと予想されています。その場合、どの程度のエネルギースケールになっ
ているのかというと
√
2
Mc =
ℏc5
∼ 1019 (GeV )
κ
であり、これは現在観測可能な標準模型でのエネルギースケール 100GeV に比べたらかなり大きなものになって
います。
こういったことから、もし質量がプランク質量より小さい場合だと、シュバルツシルト半径がコンプトン波長
よりも短くなります。つまり量子論的な効果が確実に表に出てくることになり一般相対論は使い物にならなくな
るので、量子重力理論を必要とします。もっと細かい話になりますが、そんな量子重力理論の候補の一つである弦
理論においては、プランクスケールよりも大きなスケール (ミリメートル程度) でわけのわからない状況 (高次元
からの寄与) が発生すると予想されています。ここまで大きなスケールだと量子論の話ではなくなるので、相対論
による重力崩壊の理論は修正が必要となります (弦理論が正しいなら)。
ちなみにコンプトン波長を求める方法もシュバルツシルト半径を求める方法と同じようにして求めることがで
きます。重力の代わりに静電ポテンシャルを使って
mc2 =
r=
e2
r
e2
mc2
これは古典電子半径と呼ばれるもので、これを電磁相互作用での重力定数 (結合定数ということです) である微細
構造定数 α で割ると
ℏc e2
ℏ
=
e2 mc2
mc
プランク波長を求めることができます。これをさらに α で割ると
ℏc ℏ
ℏ2
=
e2 mc
me2
これがボーア半径になります。
13
・別の座標系
球対称で時間独立な座標系として極座標をもとにシュバルツシルト解を求めましたが、これを別の座標系で表
現します。どういった座標系にするのかというと
ds2 = A(r)(dx0 )2 − B(r)dσ 2
のように空間成分を全て dσ 2 の中にいれてしまい B(r) でくくれるような座標です。このような座標を等方座標と
いいます。等方なので方向に依存してないです。シュバルツシルト解
ds2 = (1 −
2m
1
)(cdt)2 −
dr2 − r2 (dθ2 + sin2 θdφ2 )
r
1 − 2m
r
ds2 = (1 −
2m
)(cdt)2 − B 2 (ρ)[dρ2 + ρ2 (dθ2 + sin2 θdφ2 )]
r
これの空間成分を
このように動径 r を新しく ρ(r) に置き換えすべて B(ρ) でくくれるようにしてやります。二つの角度成分を比べ
れば
B 2 ρ2 = r2
同様に動径に対しては
1
dr2 = B 2 dρ2
1 − 2m
r
この二つより
1
dr2
1 − 2m
r
dr
±√
r2 − 2mr
∫
dr
± √
2
r − 2mr
∫
dt
1
√
±
(r2 − 2mr)−1/2 (r − m) + 1 r2 − 2mr
∫
dt
±
(r − m) + (r2 − 2mr)1/2
∫
dt
±
t−m
√
± log | r2 − 2mr + r − m|
=
=
=
=
=
=
=
ここでの r が大きい場合は
± log[2r] = log ρ + C
14
r2 2
dρ
ρ2
dρ
ρ
∫
dρ
ρ
∫
√
dρ
(t = r2 − 2mr + r)
ρ
∫
dρ
r
ρ
∫
dρ
r
ρ
log ρ + C
となり、r と ρ は無限遠で等しくなって欲しいので、符号はプラスだとわかり、定数 C を log 2 とすることで両辺
は完全に等しくなります。よって
r−m+
√
r2 − 2mr = 2ρ
これを変形させると
√
r − m − r2 − 2mr
√
√
(r − m + r2 − 2mr)(r − m − r2 − 2mr)
√
r − m − r2 − 2mr
=
1
2ρ
=
m2
2ρ
これを変形させる前のものと足し合わせることで
2(r − m) = 2ρ +
m2
2ρ
後はこれを r の式にすればいいので
m
m2
+ m = ρ(1 + )2
4ρ
2ρ
r =ρ+
よって B は
B = (1 +
m 2
)
2ρ
これで空間部分はわかったので、時間成分の式の r も ρ で置き換えます
(1 −
2m
2m
) = 1−
m 2
r
ρ(1 + 2ρ
)
=
=
m 2
2ρ ) − 2m
m 2
)
ρ(1 + 2ρ
m 2
− 2ρ )
m 2
+ 2ρ
)
ρ(1 +
(1
(1
というわけで等方座標でのシュバルツシルト解は
ds2 =
(1 −
(1 +
m 2
2ρ )
2
m 2 (cdt)
)
2ρ
− (1 +
m 4 2
) [dρ + ρ2 (dθ2 + sin2 θdφ2 )]
2ρ
これは m = 0 としてしまえばそのままローレンツ計量になります。そのため、重力場の力が弱いという近似を行
m
m
うためには
≪ 1 とすればいいので、(1 ± )2,4 の部分を一次まで展開した
ρ
2ρ
15
(1 ±
m 2
m
m
) ≃ 1 ± 2 ± ··· = 1 ±
± ···
2ρ
2ρ
ρ
(1 +
m
2m
m 4
) ≃ 1 + 4 + ··· = 1 +
+ ···
2ρ
2ρ
ρ
を代入することで
ds2
m
m
2m
)(1 − )(cdt)2 − (1 +
)dσ 2
ρ
ρ
ρ
2m m2
2m
= (1 −
+ 2 )(cdt)2 − (1 +
)dσ 2
ρ
ρ
ρ
2m
2m
≃ (1 −
)(cdt)2 − (1 +
)dσ 2
ρ
ρ
≃ (1 −
で、弱い重力場での計量 g00 は
g00 ≃ (1 +
2ϕ
2κM
) = (1 − 2 )
c2
c ρ
なので
(1 −
2κM
) =
c2 ρ
(1 −
m =
κM
c2
2m
)
ρ
となり、最初に求めたシュバルツシルト解での結果と一致します。
16