KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 肺の原発性腫瘍と誤診された腎癌症例 今井, 重昭; 中井, 準 京都大學結核研究所紀要 (1965), 14(1): 14-22 1965-09 http://hdl.handle.net/2433/51834 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 肺 の原発性腫癌 と誤診 きれ た腎癌症例 京都大学医学部放射線医学教室 ( 教授 助 手 京都大学結核研究所 副 手 井 今 じ め 正) 昭 内藤 益-) 準 井 (昭和 4 0 年 は 重 内科第 Ⅰ ( 教授 中 福田 6月 1 4日受付) は 第 1表 の如 く蛋 白陽 性 で 赤 血 球 が見 られ た。 に 表1 尿 検 査 成 績 1 884年 Ⅴ.Gr awi t z に よ り報 告 され現 在 一 般 色 awi t z腫 癖 , Hyper nephr om, あ るい は に Gr 蛋 黄色透 明 白 定性 煮 定量 0. 3r o o 副 腎腫 と呼 ば れ て い る腎 の悪 性 腫 癌 は 臨床 診 断 ウ ロ ビ リノーゲ ン H 川 沈 赤血球 糖 状 の方 が 目 に付 き易 い と され て い る。 我 々 も最 近 胸 部 レ線 写 真 に よ って肺 の異 常 陰 影 を指 摘 され ,肺 癌 と考 え て種 々の 治 療 を行 な 査 白血球 った が 剖 検 で 原 発 巣 は 腎 癌 と分 った 2症 例 を経 験 した ので , これ につ い て考 案 を加 え て み た。 症例 主 例 1:杉 ○ 字○美 48才。 男 子 。 24才 的 1 0 / 視野 1 / 視野 細 菌 H 塩 類 H 円 柱 H PSP検 査 で は 1 5分 値 1 9% と排 浬 機 能 の低 下 が あ 訴 :咳 ,腰 痛 , 頭 痛 , 堰 吐。 既 往症 :2 2才 H ズ ル フ ォサ リチ ル酸 が 難 し く原 発 巣 で あ る腎 の症 状 よ り転 移 巣 の症 症 沸 軟性下狩 。 8mg/dlで 正 常 。 ツ反 陽 性 。 った。 残 余 窒 素 は 2 腸 チ フ ス, 虫 垂 炎 。 胸 部 レ線 写 真 は 写 真 1及 び 2の 如 くで ,両 側 肺 家 族 歴 :特 記 す べ き もの な し。 門 部 に小 鶏 卵 大 の腫 膚 陰影 が あ り, 又 中隔 右 に 現 症 :昭 和 〇年 3月 頃 よ り咳 が 続 き, 治 療 を も腰 痛 陰 影 が あ る。 これ に よ り肺 癌 , 脳 転 移 の 受 け た が 止 ま らな か った。 この 間 レ線 撮 影 は行 8日以 後 頑 痛 は な くな り, 疑 あ りと診 断 した 。1 な わ な か った。 9月 にな って 強 い便 秘 に悩 む様 それ と共 に堰 気 , 堰 吐 もな くな り, 時 に咳 と軽 にな った。 又 同 じ頃 か ら腰 痛 , 曝 気 , 唱 吐 を来 い腰 痛 が あ るの み で あ った。 そ こで 9月 30日よ た し 9月 1 5日に は突 然 強 い 頭 痛 , 弦 牽 , 唱 吐 が り両 側 肺 門 を 含 む あ っ た。 この時 胸 部 レ線 撮 影 を行 な い両 側 肺 門 ル ト6 0に よ る遠 隔 固定 購 射 を始 め た 。 1 200 γ照 部 に異 常 陰 影 が あ るの を指 摘 され た。 0月 1 2日に は この腰 膚 陰 影 は全 く縮 少 せ 射 した 1 6日入 院 , な お 唱 吐 が続 入 院 中 の所 見 :9月 1 1 5×1 5c m の照 射 野 で コバ ず , む しろや や 大 き くな った (写 真 3). き頭 痛 を訴 え た。 頚 部 硬 直 ,異 常反 射 は な く血 この 頃 よ り 38. 5o C に及 ぶ 発 熱 が あ り抗 生 物 圧 正 常 で あ った。 翌 日腰 椎 穿 刺 を行 な っ たが 液 質 , ス テ ロイ ドホル モ ンの 使 用 に よ り 下 熟 し 20mmH20 で 水 様 透 明 , 頭 蓋 レ線 単 純 撮 圧は 1 た。 ス テ ロイ ドホル モ ンは そ の ま ま使 用 を続 け 影 で は異 常 な く,眼 底 正 常 ,末 杓血 液 検 査 も正 常 0mg 使 用 した が腰 痛 陰影 プ レ ドニ ンで 総 量 30 で あ った。 血 沈 値 は平 均 値 91と促 進 し, 尿 検 査 には影 響 を与 え な か った。 この 間 週 2回 の検 尿 - 1 4- ー 1 5- 昭和40. 9 骨 上 部 及 び下 部 , 胃小 轡 ,横 隔 膜 上面 を続 け たが , 蛋 白 は いつ も陽性 ,赤血 球 昼 0数 個 で あ った。 11月初 め にな って右 鎖 骨 上 筒 に 3. 化 膿 性 腎 孟 腎炎 , 畷朕 炎 ,前 立腺 炎 。 曙 癖 が あ るの に気 付 き, 11月 1 2日腫 癖 を別 出 し 4. 牒月 光周 囲 膿 癌 , 汎発 性 化 膿 性 腹 膜 炎 。 た。 拍 指 頭 大 の腰 痛 で 表 面 凹 凸 ,硬 ,組 織 像 は 5. 感 染 牌 。 undi f f er e nc i at e dmedul l ar yc ar c i noma,腺 癌 6. 全 身臓 器 萎 縮 及 び貧 血 。 原 発 と考 え られ る転 移癌 で あ った。 そ こで再 び 7. 気 管支 肺 炎 ,陳 旧性 肺 結 核 ,前 立 腺 肥 大 。 両 側 肺 門 - の コバ ル ト照 射 を始 め た が ,病 巣 線 剖 検 に よ り左 腎 門部 に起 鶏卵 大 の腫 癌 を認 め γ に達 した時 ,右 下 肺 野 に陸 橋 陰影 を 量 3200 た。 割 面 で は腫 療 内部 の一 部 は壊 死 軟 化 傾 向 を 発見 し,又脳 血 管 撮 影 を行 な った結 果 ,右 側 頭 示 し,又一 部 は黄 色 調 が 著 明で あ った。 腎 実 質 葉 に転 移 あ りと診 断 され コバ ル ト照 射 を 中止 し との境 は比 較 的 明 瞭 で あ り, 腎 門部 に あ りな が γの コバ ル ト照 射 で は肺 門 郡 た。 病 巣 線 量 3200 ら腎 副 室の変 形 は ほ とん どな く又 潰 癌 化 も見 ら 陣 痛 陰影 に は全 く変 化 が な か った ( 写 真 4)0 れ な い。 第 1 2胸 椎 の骨 質 は完 全 に破壊 され ,上 1 2月 8日急 に強 い腹 痛 を訴 え右 李肋 下 に鶏 卵 下 の椎 間板 が互 に接 して お り, これ を 中 心 に脊 大 の腫 癖 を触 れ 急 性 胆 嚢 炎 の診 断 にて胆 嚢 切 除 椎 の左 右 に超 鶏 卵 大 の腰 痛 転 移 を認 め た。 左 右 2月 1 5日頃 よ り下 半 身 の し び れ を行 な った。 1 肺 門 部 に は主 気 管支 の 周 囲 に大 豆 大 か らクル ミ 感 ,運 動 障 碍 ,発 作 的 に起 る強 い腰 痛 を来 たす 大 の晒 病 が あ り,一 部 は癒 合 し割面 は 白色 で あ 様 にな り レ線 撮 影 に よ り第 1 2胸 椎 の骨 破 壊 像 及 った。 そ の他 に も前 述 の如 く多数 の転 移 を認 め び左 大腿 骨 の骨 破 壊 像 を認 め た。 1 2月初 め よ た。 00mg を毎 り化 学 療 法 を開 始 しエ ン ドキ サ ン 1 組織 所 見 : 日静 注 した。 1 2月下 旬 に左 大腿 骨 の非 常 に強 左 腎腫 療 ( 写 真 5及 び 6) :腫 場 細胞 は一 部 腎 い疹 痛 を訴 え る為 左 大 腿 骨 の転 移 部 に対 して 6 腫 を形 成 し又一 部 は乳 頭 状 に増 生 して い るO 細 日間 に 3000 γの コバ ル ト照 射 を行 な いや や有 効 胞 も脂肪 を持 つ 淡 明 細胞 と胞 体 の暗 い細胞 とが で あ った。 翌 年 1月下 旬 に エ ン ドキ サ ン使 用 総 混在 して い る。 問質 の毛 細 管組 織 増 生 が 著 明 に 計 5000 mgに達 したが 全 身状 態 ,肺 の腰 痛 に対 且 られ ,腫 疫 は一 部 壊 死 に陥 って い る。 周 囲 腎 して は有 効 とは思 わ れ な か った。 翌 年 2月初 句 組 織 は一 部で圧 迫 変 性 を受 け ,結 合 繊 の増二 生充 には高 熱 を 発 し抗 生 物 質 の使 用 に よ り一 時 下 熟 血 が見 られ る。 血 管 内 に腫 癌 細 胞 が つ ま って い したが 全 身衰 弱 ます ます 強 く,時 には痘 轡 を来 る所 もあ る た し 3月 5日昇 天 され た。 腎 炎 の像 は 見 られ な か った。 臨床 診 断 : 。 又 膿 抱 が 散 在 して い る。 な お慢 性 左 肺 ,肺 門 部 ,左 鎖 骨上 下 リンパ 節等 の腫 疫 1. 肺 癌 。 転 移巣 :淡 明 細胞 構 造 を示 す 部 分 と乳 頭 状 に増 2. 脂 ,第 1 2胸 椎 ,左 大腿 骨 転 移。 年 す る部 分 とが 混在 して い る( 写 真 7及 び 8)0 3. 慢 性 腎炎 。 4. 化 膿 性 勝 朕 炎 。 病理解 剖 : 即 ち ,主 病 巣 ,転 移 巣共 に 副 腎腫 の組 織 像 を 示 して い る 。 0 50才 。 男 子。 症例 2: 岸 ○彦 1. 左 腎 癌 ( 左 腎 腎 門部) 主 訴 : 精 密検 査 を希 望O 2. 転 移 既 往 症 : 35才 ( 1 ) 左 肺 下 葉小 転 移巣 散 在 ( 2) 右 肺 下 葉 に示 指 頭 大 1伸 上 下 葉 に小 豆 大 数 個 。 ( 3) 脳 右 前 頭 葉 ,左 側 頭 葉 ,′ 」 Ⅵl l g ' 虫部。 3 7 才 マ ラ リヤ。 癌 の疑 あ りと して 直 腸 切 除 術 を 受 け た。 45才 頃 よ り后 桃 腺 炎 にか か り易 く な った。 ( 4 ) 第1 2胸 椎 ,左 大腿 骨 。 家 族 歴 :特 記 す べ き もの な し。 ■ ( 5 ) リンパ 節 :両 側 肺 門 気 管 分 岐部 ,右 鎖 現 症 : 昭和 〇 年 11月 集 団 検 診 で肺 に異 常 陰 - 1 6- 京大結研紀要 第1 4巻 第 1号 影 を発見 され精密検査 を受 け た結 果肺 浸潤 と診 肩 甲骨 切 断術 を行 い,第 5肋 骨位 縦 隔 洞側 の膿 断 され た。 当時軽 い咳が あ ったが煙 草 をや め た 胸壁 に癌様 の膨 隆 を認 めたが切除 出 来 な か っ 所 な くな り,その他 には 自覚症 状 はなか ったが た。 12月 1 3日 も う一 度精 密検査 を受 け る為入院 した。 季肋 下 に疹痛 を訴 え同部 に半 球状 ,硬 の呼 吸性 Ma l i gno l i p i n (±)0 12月20日左 入 院 中の所見 :異 常陰影 発見 の翌 年 1月22日 移動 を示 さぬ腫 癖 を触 れ た。 この 頃 よ り全 身浮 に入 院。 顔 色がやや蒼 い以外全 身状態 は良好 で 腫 ,尿 量減少 , 呼 吸 困難 を来 た し1 2月28日昇 天 あ った。末 梢血 液検査 で は 中等 度 の貧血 ( 381× され た。 104) の他異 常な く血 沈値 は平 均値で 25,尿所見 臨床 診 断 : 異 常 な し,胸 部 レ線 写 真 は写真 9の如 く右肺 門 1. 右 肺癌。 や や下 にほぼ 円形 の陰影 が あ る。気 管支 鏡検査 2. 右肋膜 及 び肝転 移。 で は,右 主 気 管支上 中下 葉 ロに夫 々狭窄 が あ っ 3. 右肺 切除 術 後膿 胸。 たが粘膜 には異 常 な く,擦過 標本 で も悪性 細胞 4. 腹 部腫 癖。 は検 出され なか った。 2月 1 0日にな って右 側胸 病理解剖 : 部 に疹 痛 を訴 え咳 ,吃逆 を来 した。 この時 の レ 1. 左 腎癌 ( 左 腎上 半)0 線 写真 は写 真 1 0の 如 く右 横 隔膜 の挙上 が あ り, 2. 転 移。 腫 癖陰影 は前 回撮影 の もの と変 らな か った。 暗 1. 肝右 葉小 児 東大 及 び多数 の小転 移巣 。 疾結核 菌検査 は陰性 ,右 季肋下 に抵 抗 を 触 れ 共 に テ スパ ミンを使用 した。 3月 中旬 にな り啄 横 隔膜 欠損部 を通 じて胸 腔 術 創 に 至 る。 2. 左 肺下 葉 ,魂 豆 大以下 。 嬢 の塗 抹 標本 に悪性 細胞 を発見 し,手術 を行 な 3. 右 肺全 易r j l 術 後 の胸腔 壁。 うこ とに決定 した。 この頃の検 査 で は軽度 の貧 4. 腹 部大 動脈 周 囲 リンパ 節 ( 大戻 大)0 た。 この頃 か ら SM,PAS,I NH,を使用 す る と 血( 赤血 球数 404×1 04,ザ - リー 60%) の あ る 他特 に異 常 はなか った。 4月 1日右 肺全 易U 術 を行 な ったが右肺 肺 門部 中下 葉気 管支 分 岐部 に不 規則 ,楕 円形 ,直径約 3. 右 肺 全 易り 術 後膿 胸。 4. 左 溶 出性 癒着性 胸膜 炎。 5. 慢性勝 炎 ,心 肥 大 , 内分 泌臓 器萎 縮 ,坐 身臓 器 うっ血。 5cm,硬 ,の腫 癖 が あ った。 腫 疫 は周 囲肺 組織 剖検 に よ り左 腎及 び肝 の腫 癖 を認 め た。左 腎 及 び縦 隔 との癒着軽度 で 浸潤性 で はなか った。 は上 半 が直 径 約 11 cm の腰 痛 をな し,割面 には 又粘膜 面 の潰 場形成 も認 めなか った。 この時 の 病 理組織所見 は腺 癌 で あ った。 壊死 ,軟化 , 出血 巣 が混在 す る。 腎実質 との境 術 後 3日目よ り肺水腫 を来 た し気 管切開。 そ る。 潰癌化 はな い。肝腰 痛 は約 1 4cm の直経 を の後右 胸腔 内に血 液貯 留 し胸腔 穿刺 を数 回行 な 持 ち,後上 部が壊 死軟 化 して膿胸 腔 につ なが っ ったが貯 留液 は次第 に膿 血性 とな った。 6月 中 て い る。 割面 は腎 と同様 の所見 で非腫 疲 部 との 旬左 季肋下 に抵抗 を触 れ ,右 季肋下 で は肝 を 4 境 は明瞭で あ った。 横 指触 れ る様 にな り,貧 血 は高度 とな った。 7 は明瞭で ,腎孟 内に膨 隆 して腔 を圧 迫 し て い 組織 所見 : 1日膿 胸腔 廓清術 。SM,CM を使用 したが, 左 腎腫 療 ( 写真 11,12,1 3及 び 1 4)は小 型線 管 その後 も 38o C 程度 の発 熱 ,胸 部圧迫 感が続 く 状 の部分が 殆ん どで ,一 部乳頭状 発育 を して い ので , 9月 1 3日再 び膿胸腔 廓清 と Ⅲ∼ Ⅳ及 び Ⅸ る。 肉眼 的 に黄 色 を した部分 の胞体 は脂肪 の豊 肋 骨切除 に よ る胸成 術 を行 った。 この時得 た胸 富 な淡 明細胞 で あ るが症 例 1ほ ど多 くな い。壊 腔 内の塊 の組 織検査 で は壊 死 が 強 く判 定不能 で 死 が強 く部位 に よ って石 灰沈 着が 強 い。 月 あ った。 1 0月 1 8日再 び膿 胸腔 廓 清 を行 い開放創 肝 ,左肺 ( 写真1 5,1 6)の腫 蕩 組織 像 は腎腫 癌 と した。 その後 も発 熱が続 き, 11月中旬 には頻 と同 じで あ るが淡 明細胞 が少 い. 割 出肺腫 濠 も 尿 を来 たす様 に った 。11月29日再 び補正成 形 術, 同様 の所見 で あ るが淡 明細胞 部 が殆 ん ど見 られ 昭 和4 0. 9 - 1 7- ぬ もので あ った。 組織 学 的所 見 は いずれ も副腎腫 の像で あ る。 考 察 側腹部痛 ,腫 樽 触 知 が あげ られ て い るが これ等 の症 状 を持 たな い ものが 4 0 % もあ る 1 7 ㌔ Me 7), 1 icow 16) に よれ ば 自覚症 状 と して 1 83例 中体 重減 少 が最 も多 く 6 9例 , 疹痛 45例 , 発 熱 38例 で あ 以 上 の 2症 例 は共 に最 初 原発性 肺 癌 と考 え ら り,疲 労 , 食欲不振 ,腹 部曙 橋 感 ,Pr os t at i s m, れ 剖検 に よ り腎癌 で あ るこ とが分 った もので あ Pol ycyt hemi a が これ に次 ぎ, 健 康診 断で 偶然 る。 第 1例 は右 鎖 骨上 嵩 リンパ 節 ,第 2例 は右 発見 され る もの も多 い。 これ等 の症 状 は全 く非 肺腰 痛 の組織検 査 が行 なわ れ , 2例共腺 癌 叉は 特 異 的な もので あ り,診 断 の 困難 さを示 して い その転 移 との診 断が下 され て い る。 る。 我 々の症 例 につ い て反 省 してみ る と,第 1 副 腎陸 は稀 な もので はな いが その淡 明細胞 型 が あ ま りに特 徴 的で あ る為腺 癌 との 区別 を困難 例 は初発症 状 と して咳 ,.便秘 ,腰痛 ,頭痛 が あ ったが , これ等 は全 てお そ ら く転 移巣 に よ り引 にす る。 実 際淡 明細胞 像 を示 す型 が 多 いが その 起 され た症 状で あ った. 又入 院 時 朗徽鏡 的血 尿 他 腺 管状 , 乳頭状 に発育 す る ものや 肉腫 様 所見 を発見 したが ,尿 中赤 血 球 は認 め られ な い こ と を呈 す る もの, あ るいは これ等 の型 の混在 す る もあ り,又 あ って も少 数 で 腎機能 の低下 , c on- ),6), 7 ) 。 この時 多糖 類 染 ものが あ り多様 で あ る1 色法 や 脂肪 染色法 を行 えば鑑 別 に役 立つ と言 わ れ て い る。 s t ant な尿蛋 白陽性 等 が 腎腫 慶 と血 尿 とを結 び つ け る ことを困難 に した。 叉肺 転 移腰 痛が肺 門 郡 にの み認 め られ ,後 口肺 野 に も認 め られ る株 副 腎腫 は全 悪性 腫 療 中 の 2- 3% ,腎 腫 顔 中 にな ったが孤立性 で あ った事 も転 移癌 と診 断 し で は最 も多 く見 られ , その40-70% を 占めて い 得 な か った理 由で あ る。 第 2例 で は Tr i asの 内 3 ) ・ 4 ),5)・ 7),8)。 好 発年 令 は40-70才で 50才台 る2), の側 腹部柘 及 び腰 痛触知 が死 亡の 直前 迄 なか っ に最 も多 く,次 いで 40才台 とされ ,男子 が女 子 た こと,最 初 に発見 され た肺腫 癖 が肺 癌 の好 発 に比 して 多 くほぼ 2 :1で あ る。一 般 に偏側 性 部 位で あ る肺 門部 にあ り弧 立性 で あ った事が 原 で左右 差 はな く,両 側 発生 は稀 で あ る。 腎上 極 発性肺 癌 と誤 った理 由で あ る。 叉原 発巣 を誤 っ と下 極 とで は発生頻 度 に差 はな い。 我 々の症 例 た理 由 の も う一 つ は前 述 の 如 く 2例共 組織 的 に 。 腎癌 は一 般 に血 管 に富 み ,比 較 的容易 に血 管 は48才 と50才。共 に男子 で左 腎 に発生 した 壁 を破 って早期 に血 行性 転 移 を示 し, この為 原 発性 の肺腫 疾 ,骨腫 疾 ,肝陸湯 等 と間違 え られ る こ とが 多い。 この 内で も肺転 移が最 も多 く45 -70% に見 られ ,次 いで リンパ 節 ( 40-50%), 摘 闇 重湯 が 腎癌特有 の淡 明細胞 型 で な く肺 癌 に もよ くあ る腺癌 の像 を呈 してい た ことで あ る。 腎 癌 の診 断 と して は臨床症 状 の他 ,排泄 性 , 逆 行性 の腎 孟造 影 が有 力 な 手段 で あ るが ,腎動 脈造 影 に よ り小 さい腫 癖 も診 断 し得 る12)0 治療 は一般 に腎摘 出術 が行 なわ れ ,摘 出を受 骨 (10-30%),肝,腎,肋 膜 , 腹 膜 ,脳 の 順で け た ものの 5年年存率 は約 50% 1 2 ) , 1 3 'で あ る。 その他 甲状腺 ,牌 ,勝 ,卵巣 ,腸 ,皮 膚等 に も 組織 像 と生 存 率 との間 には一 定 の関係 が あ る と 転 移す る7),8)・15)。 言 わ れ て い る。 放 射線 治療 は一般 に有 効 で な 一方 原 発性 肺 癌 の如 く見 え た転 移癌 の原 発巣 い とされ ,我 々の第 1例 も全 く効 果 が な か った i idad ( m 1 963)9) に よれ につ いて調 べ る と, Tr が , 原 発巣 に対 す る術前 ,術 後照射 が有 効 で あ ば 10例 中藤 原 発 4例 ,腎原 発 3例 , 副 腎原 発 2 るとい う報 告 もあ る1 2 ) 。 抗 癌 物質 も現 段 階で は 例 , リンパ 肉腫 1例 とな り,原発巣 の発見 が 困 無効 で あ り,第 1例 で は エ ン ドキサ ンを大 量 , 難 な場 合が ほ とん どで あ るが ,腎原 発 の ものが 第 2例 で は テ スパ ミンを使用 したが無 効 で あ っ かな りの高率 を 占 めて い る。 我 々の症 例 は 2例 た。 腎腫痘 摘 出 に よ り転 移巣 も消失 した例 が か 共 肺 転移 に よ り発見 され , その他 に リンパ 節 , 1 ) ・ 1 4 ) 。 な り報 告 され て い る1 肝 ,育 ,脳 等 に転 移 を起 して い た。 i as と して 血 尿 , 症 状 と して は, 本症 の Tr - 1 8- 京大結研紀要 結 語 1. 原 発性肺 癌 で あ ると診 断 し剖検 に よ り腎癌 及 びその転 移 と判 明 した 2症 例 につ いて報 告 し,文献 との比 較 を行 った。 2. 両 例共 腎癌 と しての臨床 的症 状 に乏 しく転 移巣 の症 状 が主 で あ り (いわ ゆ る Si l ent nephr om),転 移巣 の病理 組織 検査 で は線 癌 と診 断 され た。 3. 転 移巣 に対 す る放射線 治療 ,及 び抗 癌剤 の 理学 的所見 につ いてい ろい ろ御指導下 さ った京 都 大学 医学 部病理学 教 室沢 田真治先生 ,森川茂 先生 に謝意 を表 します。 文 1 ) 1 ) 3 ) 4 ) 5 ) 6 ) 7 ) 第 1号 l l ) 宮川光生他 :泌尿器科紀要,9:3 1 5 ,1 9 6 3 1 2 ) Robs on,C. ∫.:∫.Ur ol oggy,8 9: 3 7 0 ,1 9 6 3 1 3 ) Fet t er ,T. 良.:Sur g.Gynec.& Obs t . ,1 1 7: 7,1 9 6 3 1 4 ) Pr e nt i s,R. J∴ Cal i f or ni aMed. ,9 7:2 3 5 , 1 9 6 2 1 5 ) 山 口与市他 :最新 医学,1 6:2 9 6 9 ,1 9 6 1 1 6 ) Mel i cow,M. M.:∫. A. M. Aり2 1 7:1 4 6 ,1 9 6 0 1 7 ) Os t r um,W . 0.etal:∫ .Urol ogy,4 3: 3 9 , 1 9 4 0 使用 を行 な ったが無効 で あ った。 摘 筆 にあた り病 理解剖 を して下 さ り, また病 第1 4巻 写 真 説 明 0日) 写真 1 症例 1 入院時 (9月3 写真 2 症例 1 入院時 (9月3 0日)側面 写真 3 症例 1 コバ ル ト照 射 1 2 0 0 γ ( 1 0 月1 2日) 写真 4 症例 1 コバ ル ト照 射 3 2 0 0 γ ( 1 2 月2 1日) 写真 5 症例 1 左 腎腫療主 として胞体 の暗い細胞を 献 中川小 四郎,大 道直- :日泌誌 ,1 7:4 8 9, 1 9 2 8 見る 写真 6 症例 1 左 腎腫癌淡明細胞 を見 る 西 嚢 :日外誌 ,3 6:1 1 1 7 ,1 9 3 5 写真 7 症例 1 右肺 門部 リンパ節転移 赤坂 裕 :日泌 誌 ,3 5:1 5 3 ,1 9 4 3 写真 8 症例 1 右肺門部 リンパ節転移淡明細胞部 佐谷有言, 山本弘 :日泌誌 ,3 5:2 2 ,1 9 4 3 Sol oway,M. H.:∫. Ur ol ogy,4 0 : 4 7 7 ,1 9 3 8 安河 内秀幸他 :神戸医大紀要 ,1 3:9 1 .1 9 5 7 中平正美 :甘泌 誌 ,4 5:3 3 6, 1 9 5 4 8) Luba r s c h, 0.:Handbuch d. spez i el l . .Anat omi eu.Hi s t . ,ⅤⅠ /Ⅰ:6 0 7 , 1 9 2 5 pat hol 9 ) Tr i ni dad,S. :Canc er ,1 6:1 5 2 1 ,1 9 6 3 1 0 ) 絹川義久他 :日本臨床,21:3 7 1 ,1 9 6 3 写真 9 症例 2 入院時 (1月2 2日) 写真 1 0 症例 2 2月 1 0日 写真 1 1 症例 2 腎腫病 弱拡 写真 1 2 症例 2 腎腫療 強拡 写真 1 3 症例 2 腎腫療 淡明細胞 の部 写真 1 4 症例 2 腎腫蕩 石灰沈着のあ る部 写真 1 5 症例 2 則 出右肺腫療 写真 1 6 症例 2 Sudan I I I染色 昭 和4 0. 9 -1 9- 一・20- 京大結研紀要 第1 4 巻 第 1号 昭和4 0. 9 -2 1- - 22- 京大結研紀要 第1 4巻 第 1号
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