固体物質全般を対象とした磁気回転振動の観測による磁場配向機能の一般性の

第 9 回(平成 18 年度)選定 宇宙環境利用に関する公募地上研究 研究成果報告書(概要版)
1.題名
2.研究期間
平成 18年度〜21年度
3.研究分野
物理・化学分野
4.研究区分
次期宇宙利用区分
5.研究テーマ名
固体物質全般を対象とした磁気回転振動の観測による磁場配向機能の一般性の検証
6.研究者名
植田千秋
7.所属機関
大阪大学大学院理学研究科
8.研究成果概要
本提案では、物質の大多数を占める反磁性体が、低磁場で顕著な運動を引き起こすという新規特性の
全体像を、μGで浮遊させた粒子の観測により明らかにした。すなわち、単調減少する磁場勾配中に開
放した粒子は、物質固有の磁化率χに依存する速度で磁場外へ放出された。一方、均一磁場中に開
放した結晶の安定軸は反磁性異方性Δχのため、磁場に対して回転振動を引き起こした。運動方程式
から、これらの2つの運動は、いずれも質量非依存であると予想される。回転振動の観測では MGLAB
のμG 持続時間と同程度の長周期の観測を達成し、Δχ測定に関して10-10emu/g という前例のない
高感度を達成した。この感度により、検出可能な物質の範囲が大きく拡大し、例えばウルツ鉱型酸化結
晶であるZnOにおいて、従来のランジュバン反磁性以外の機構に起因すると考えられる異方性を初め
て見出した。本研究により、落下カプセルを用いたΔχ測定は、この施設で達成しうる性能の上限に近
づきつつある。一方、磁気的ポテンシャル-½mχB2 を利用してμG空間に浮遊する物体の位置を、長時
間にわたって制御できる可能性を示した。このような反磁性体の挙動は、磁気的性質に関する現行の
一般認識と異なるものであり、その一般性が確定すれば物質全体が磁気材料として広く検討される契
機となる。上記の特性を利用して、宇宙実験では、従来は困難だった単一の微小粒子の磁化測定が実
現できると期待される。即ち 200秒以上のμG時間の導入により、粒子サイズφ1000~10μmの範囲で
-1
4
χ≧5x10-8emu/g
、Δχ≧5x10
emu/gの感度を達成できる(この感度で全ての反磁性体の磁化測定
が可能である)。これらの測定技術は基礎研究のみならず、高密度・記憶素子の開発など、ナノ磁性材
料の開発でも威力を発揮すると期待される。
9.論文・特許等
研究業績
[1]. Hisayoshi K., Kano S. and Uyeda C. (2009) Diamagnetic Susceptibility of Single Micro- Particles Detected
by Free Translational Motions in Field Gradient. J. Phys. Conf. Ser. 156, 012021.
[2]. Kano K., Uyeda C. and Kisayoshi K. (2009) Attempt to Detect Diamagnetic Anisotropy of Oxides with
Isotropic Crystal Structure by Measuring Its Rotational Oscillation in Strong Magnetic Field. J. Phys. Conf.
Ser. 156, 012023
[3]. Uyeda C., Kano S. and Hisayoshi K. (2009) Attempt to improve sensitivity in measuring diamagnetic
anisotropy by increasing duration of rotational oscillation microgravity. J. Phys. Conf. Ser. 156, 012024.
[4]. Uyeda C., Kano S. and Hisayoshi K. (2009) Magnetic Alignment of Nonmagnetic Silicates Caused by
Paramagnetic Anisotropy: Origin of Polarization Observed in Planetary Formation Region. EPS, in press.
[5].C. Uyeda, R. Takashimaa and T. Abe(2007) Efficiency of Magnetic Alignemnt Founf in Various
Paramagnetic and Diamagnetic Solids Detected by Simple Rotational Oscillation of Sample in Microgravity.
Materials transactions 48, 2893-2897.
[6]. C. Uyeda, R. Takashimaa and T. Abe (2007) Magnetic oscillation of crystal without spontaneous moment
caused by single-ion anisotropy achieved by a horseshoe magnet above 1000 K. J.Magn. Magn. 310 536-538
[7]. 植田千秋 (2007) 3 次元反磁性結晶における異方性と磁場配向性 日本物理学会誌 62-4 245-249.
[8].C Uyeda and T Abe (2007) Alignment of nonmagnetic solid grains that essentially require high magnetic
field; alignment of hexagonal ice Ih、 Journal of Physics,51 464-466
10.備考