核内チロシンキナーゼによる KAP1 のチロシンリン酸化を介 - 千葉大学

核内チロシンキナーゼによる
KAP1 のチロシンリン酸化を介した
クロマチン構造制御メカニズムの解析
2014 年
千葉大学大学院 医学薬学府 先端生命科学専攻
ゲノム機能学講座 分子細胞生物学研究室
久保田 翔
Contents
Introduction ····················································································································· 2
Results ···························································································································· 3
Discussion ························································································································ 7
Materials and Methods ········································································································ 9
References ······················································································································ 11
Figures··························································································································· 16
List of Publications, Examiners ····························································································· 17
Acknowledgements············································································································ 18
1
Introduction
チロシンキナーゼは、細胞の増殖・接着・分化などに関わる様々なシグナル伝達において重要な役割
を担っている (Hubbard and Till, 2000; Hunter, 2009)。非受容体型のチロシンキナーゼは主に細胞膜近傍に
局在しており重要な機能を果たしていることが知られているが、核内における機能についてはわかって
いないことが多い (Cans et al., 2000; Moorhead et al., 2007)。当研究室では、非受容体チロシンキナーゼで
あるSrc 型チロシンキナーゼ (SFK) の一部が核内に局在していることを報告している (Ikeda et al., 2008;
Takahashi et al., 2009)。また、非受容体型チロシンキナーゼの c-Abl は細胞質と核を行き来していること
が知られており (Taagepera et al., 1998)、受容体型チロシンキナーゼの ErbB4 はリガンドからの刺激によ
って、細胞質内領域が切断され細胞質と核に局在することが知られている(Ni et al., 2001)。
クロマチンは DNA とヒストンからなる複合体であり、主にユークロマチンとヘテロクロマチンとい
う2つの構造からなっている (Lamond and Earnshaw, 1998)。ユークロマチン領域ではクロマチン同士が
ゆるく結合しており、転写が活性化されている。逆にヘテロクロマチン領域ではクロマチン同士が密に
結合しており、転写が不活性化されている。クロマチンの構造を制御することは、転写の制御などを介
して細胞の機能を調整する上で、非常に重要である。
当研究室では核内におけるチロシンキナーゼの機能について研究を行っており、SFK や c-Abl, ErbB4
などのチロシンキナーゼの活性化がクロマチン構造の変化やヒストン修飾などに影響を与えることを見
出してきた (Yamaguchi et al., 2001; Nakayama and Yamaguchi 2005; Takahashi et al., 2009; Aoyama et al.,
2011; Ishibashi et al., 2013)。これらのチロシンキナーゼに核局在シグナルを付加すると、クロマチンの構
造が大きく変化する。しかし、核内においてチロシンキナーゼがどういったタンパク質のチロシンリン
酸化を行なうことで、クロマチン構造の制御に関わっているのかその詳細な分子メカニズムについては
未だわかっていない(図 1)。
そこで、私は核内チロシンリン酸化シグナルによるクロマチン構造制御のメカニズムを解明するため
に、核内チロシンリン酸化基質の探索をおこなった。そして、様々な核内チロシンリン酸化基質を同定
することができた。その中でも私は、ヘテロクロマチン構造に関わるタンパク質として KAP1 というタ
ンパク質に着目した。そして、KAP1 のチロシンリン酸化部位を同定し、KAP1 のチロシンリン酸化に
よる機能の変化について解析した。
2
Results
核内チロシンリン酸化基質の同定
核内に存在する Lyn によって起こるクロマチンの構造制御の分子メカニズムの解明のために、当研究
室で作成した HeLa S3/NLS-Lyn-wt の安定発現株を用いて、基質のチロシンリン酸化をウェスタンブロッ
ティングで検出した。脱リン酸化酵素阻害剤である Na3VO4 を用いて、リン酸化を保存した状態で回収
したところ、親株である HeLa S3 と比べてチロシンリン酸化のバンドのパターンに違いがあった (参考
文献:Fig. 1C)。さらに、質量解析のために浮遊培養によって、細胞の大量培養を行った。そして、抗
チロシンリン酸化抗体による免疫沈降にてタンパク質を精製し、CBB 染色で見える程度のタンパク質を
集め、in gel digestion 法によってタンパク質を抽出し質量解析を行なった 。その結果、KAP1 という
タンパク質を同定することができた (参考文献:Supplemetal Table S2)。KAP1 はヘテロクロマチンの
構造制御や転写の抑制に関わるタンパク質として知られている (Iyenger and Farnham, 2011)。
KAP1 のチロシンリン酸化
NLS-Lyn の安定発現細胞において Na3VO4 を処理した後、内在性の KAP-1 を免疫沈降したところ、
KAP-1 のチロシンリン酸化を検出することができた (参考文献:Fig. 1D)。 また、COS-1 細胞に NLS-Lyn
と KAP-1 を共発現させ、抗 Flag 抗体を用いて免疫沈降し、抗チロシンリン酸化抗体を用いてウェスタ
ンブロッティングを行なったところ、KAP-1 のチロシンリン酸化を検出することができた (参考文献:
Fig. 1E)。しかし、KAP-1 と NLS-Lyn の kinase 活性の無い変異体である NLS-Lyn-Kinase Dead(KD)を
cotransfection してもチロシンリン酸化は検出されず、Src 型チロシンキナーゼの阻害剤である SU6656 を
処理したところ、チロシンリン酸化の減少が見られた (参考文献:Fig. 1E)。このことから、KAP1 は核
内 SFK によってチロシンリン酸化されることがわかった。さらに、NLS を付加していない SFK によっ
てKAP1のチロシンリン酸化が誘導されているかどうかを調べた。KAP1とSFKのメンバーであるc-Src,
Lyn, Fyn をそれぞれ細胞に共発現させ、参考文献:Fig. 1E と同様に解析したところ、NLS を付加してい
ない SFK によって KAP1 のチロシンリン酸化が検出された (参考文献:Fig. 1J)。さらに、SFK のメンバ
ーの中では c-Src によって強くチロシンリン酸化誘導され、Fyn ではまったくチロシンリン酸化が誘導さ
れなかった (参考文献:Fig. 1J)。
我々は SFK 以外のチロシンキナーゼによっても、クロマチンの構造変換が起こることを報告している
(Aoyama et al., 2011; Ishibashi et al., 2013)。
そこで、
NLSを付加したErbB4 のIntracelluar domain (NLS-4ICD)、
Abl チロシンキナーゼ(NLS-c-Abl)、Syk チロシンキナーゼ(NLS-Syk) と KAP1 を共発現させ、参考文献:
Fig. 1E と同様に解析したところ、それぞれのチロシンキナーゼで KAP1 のチロシンリン酸化が起こるこ
とがわかった (参考文献:Fig. 1I)。その中でも特に SFK と Abl によって KAP1 のチロシンリン酸化が強
く誘導されることがわかった。
3
KAP1 のチロシンリン酸化部位の同定
次に KAP1 のチロシンリン酸化部位の同定するために、KAP1 の部分欠損変異体の作製を行なった。
KAP1-N1 (1-469 a.a.), KAP1-N2(1-380 a.a.), KAP1-C(470-835)の3つの変異体を用いた。
細胞にNLS-Lyn-HA
と 3 つの変異体それぞれを共発現させ、抗 FLAG 抗体を用いて KAP1 を免疫沈降し、チロシンリン酸化
を解析したところ KAP1-N1 のみで強いチロシンリン酸化が検出することができた。さらに、質量解析
の結果から、Tyr-517 のチロシンリン酸化が起きていることが同定できていた(参考文献:Supplemetal
Table S2)。このことから、Tyr-449, Tyr-458, Tyr-517 の3箇所が主要なチロシンリン酸化部位であるこ
とが考えられた。そのため、この 3 つのチロシン残基をフェニルアラニンに置換した KAP1-3YF 変異体
を作製し、(参考文献:Fig. 2A)同様にチロシンリン酸化を解析したところ、KAP1 のチロシンリン酸化
が消失した (参考文献:Fig. 2H)。また、参考文献:Fig. 1I で調べたほかのチロシンキナーゼによるチロ
シンリン酸化部位も同様であるかどうか調べた。Fig. 1I の複数のチロシンキナーゼを KAP1-3YF と共発
現させ、参考文献:Fig. 2A と同様に解析した。その結果、ほかのチロシンキナーゼによるチロシンリン
酸化も KAP1-3YF 変異体では消失していた。以上の結果から、Tyr-449, Tyr-458, Tyr-517 が、複数のチロ
シンキナーゼよってリン酸化される KAP1 の主要なチロシンリン酸化部位であることがわかった (参考
文献:Fig. 2I)。
KAP1, HP1α のヘテロクロマチン領域への結合阻害
KAP1 は HP1α を含むヘテロクロマチンタンパク質と結合し、それらの足場となっていることが知ら
れている (Lechner et al., 2000; Schultz et al., 2002; Zeng et al., 2010)。KAP1 のチロシンリン酸化によってど
のような変化が細胞内に起こるのかを解析するために、まず KAP1 および KAP1 と結合するタンパク質
である HP1α の局在を解析した。クロマチンに強く結合しているタンパク質の局在を解析するために、
方法の項で述べる方法にて細胞を抽出してから、固定し染色を行なった。DNA の濃い染色領域であるヘ
テロクロマチン領域を解析したところ、KAP1, HP1α が主にヘテロクロマチン領域において共局在して
いることが観察できた。また、KAP1 をノックダウンしたところ HP1α がヘテロクロマチン領域から減
少していることが観察された。このことから、HP1α がヘテロクロマチンに局在するために KAP1 が必
要なことが示唆された (参考文献:Fig. 3A)。
次にチロシンリン酸化シグナルによる KAP1 の機能変化を解析した。細胞内に NLS-Lyn を発現させ
たところ、KAP1 のヘテロクロマチン領域への局在が減少していることが観察された。また、HP1α の
局在についても KAP1 と同様にヘテロクロマチン領域から減少していた (参考文献:Fig. 3B, C)。これ
らの結果から、核内チロシンリン酸化シグナルによって、KAP1, HP1α のヘテロクロマチンへの局在が
4
阻害されることが示唆された。
顕微鏡で観察された結果を確かめるために、細胞を分画しそれぞれの画分のタンパク質を解析した。
今回行なった細胞分画では、細胞質および核質のタンパク質画分である Low salt 画分、クロマチンにゆ
るく結合しているタンパク質画分である High salt 画分、クロマチンや核マトリクスに強く結合している
タンパク質画分である Insoluble 画分の 3 つに分け、解析を行なった (参考文献:Fig. 3D)。この方法にて
分画すると、KAP1 の一部がヘテロクロマチンに強く結合しており、HP1α と同じ画分に検出されること
がわかった (参考文献:Fig. 3D)。KAP1 の一部が強く密集しているヘテロクロマチンに結合することは、
以前の報告とも一致している (Thruman et al., 2012)。この分画法にて KAP1 のヘテロクロマチンへの結合
を解析したところ、
NLS-Lyn の発現によって Insoluble 画分でのKAP1 の量が減少した (参考文献:Fig. 3E)。
また、Insoluble 画分での KAP1 の減少は NLS-Lyn(KD)では起きず、SFK の阻害剤である PP2 によって阻
害されることから Kinase 活性依存的であることがわかった(参考文献:Fig. 3I)。さらに、HP1α について
同様に解析したところ、KAP1 と同様の変化を示すことがわかった (参考文献:Fig. 3I)。これらの結果
から、核内にチロシンリン酸化シグナルが伝達されることで、KAP1 と HP1α のヘテロクロマチンへの
結合が減少することがわかった。KAP1 とヘテロクロマチンタンパク質との結合が減少しているかどう
か確認するために、共免疫沈降によって KAP1 と HP1α およびヘテロクロマチンのマーカーであるトリ
メチル化ヒストン H3 (H3K9trime)との結合を解析したところ、
チロシンリン酸化によって KAP1 と HP1α,
H3K9trime との結合が減少していた(参考文献:Fig. 3L)。これらのことから、KAP1 がチロシンリン酸
化されることによって、ヘテロクロマチンタンパク質との結合が減少し、ヘテロクロマチン構造が緩む
可能性が示唆された。
KAP1 の Y449,Y458,Y517 のチロシンリン酸化と機能
KAP1 のチロシンリン酸化による細胞への影響を詳しく調べるために、チロシンリン酸化を受けない
KAP1-3YF 変異体を用いて解析を行なった。内在性に発現している KAP1 をノックダウンした後、野生
型の KAP1 (KAP1-WT) とチロシンリン酸化を受けない KAP1-3YF を、それぞれ発現するレスキュー細
胞株を作製した (参考文献:Fig. 4A)。KAP1-WT と KAP-3YF の細胞株で、刺激を加えていない状態で
ヘテロクロマチンに結合している HP1α の量を比較したところ、KAP1-3YF の細胞株で HP1α の結合量
が増加していることがわかった (参考文献:Fig. 4B)。
参考文献:Fig. 3C で示したとおり NLS-Lyn の発現によって HP1α のヘテロクロマチンへの結合が減少
していた。KAP1-WT の細胞株と KAP1-3YF の細胞株に NLS-Lyn を発現させ、参考文献:Fig. 3C と同様
に解析したところ、KAP1-WT の細胞株では HP1α の量が親株の細胞と同様に減少するが、KAP1-3YF
の細胞株では NLS-Lyn の発現による HP1α の減少が一部阻害されていることがわかった (参考文献:Fig.
4C)。また、核局在シグナルを付加していないが KAP1 のチロシンリン酸化を強く誘導する c-Src を発現
させると、NLS-Lyn の結果と同様に、KAP1-WT の細胞株では HP1α の量が減少するが、KAP1-3YF の
5
細胞株では一部阻害されていた (参考文献:Fig. 4D)。しかし、KAP1 のチロシンリン酸化を誘導しない
Fyn ではヘテロクロマチンと結合している HP1α の量は変化がなかった(参考文献:Fig. 4E)。
KAP1 は DNA 損傷応答の際に S473, S824 がリン酸化され、クロマチンとの結合が変化することによ
って p21 の転写を制御している (Ziv et al., 2006; Goordarzi et al., 2008; Lee et al., 2012)。また、SFK や c-Abl
は DNA 損傷応答において活性化していることが知られている (Kharbanda et al., 1996; Baskaran et al.,
1997)。そこで私は、DNA 損傷応答における KAP1 のチロシンリン酸化の影響に着目し、解析を行なっ
た。細胞に DNA 損傷を引き起こす試薬であるアドリアマイシンを処理すると、KAP1-3YF 発現細胞で
は KAP1-WT 発現細胞に比較して S473, S824 のリン酸化が十分に起こらず、p21 の転写量が減少してい
ることがわかった。このことから、KAP1 のチロシンリン酸化によるクロマチン構造の変化が DNA 損傷
応答に関わっていることが示唆された。
6
Discussion
本研究によって、SFK や c-Abl などの複数のチロシンキナーゼが KAP1 の Tyr-449, Tyr-458, Tyr-517 と
いう 3 つの共通のチロシン残基をリン酸化することがわかった。さらに、KAP1 のチロシンリン酸化が
誘導されることで、HP1α のヘテロクロマチンへの結合が減少することがわかった (図 2)。
KAP1 の翻訳後修飾については、
Ser-473 や Ser-824 のリン酸化や SUMO 化などがすでに知られている。
チロシンリン酸化についても PDGF 刺激で誘導されることや c-Fes によってチロシンリン酸化されるこ
とがわかっていたが、どの部位が主要なチロシンリン酸化部位でどのような機能を持っているかまった
く未解明であった。当研究室では以前からクロマチン構造の変化と核内チロシンリン酸化シグナルの研
究を行なっており、本研究ではその分子メカニズムを詳細にしらべるために、基質の同定を試みた。そ
の結果、KAP1 のチロシンリン酸化の同定に成功した (参考文献:Fig. 1)。
KAP1 のチロシンリン酸化部位を推定するために網羅的な翻訳後修飾のデータベースである
Phosphosite plus を参考にした。Phosphosite plus のデータベースでは主要なチロシンリン酸化部位として
Tyr-458, Tyr-517 が挙げられているが、Tyr-449 についてはあまりチロシンリン酸化が検出されていなか
った。本研究では、欠損変異体や点変異を用いた方法で Tyr-449 も主要なチロシンリン酸化部位の一つ
であることを示した (参考文献:Fig. 2)。
KAP1 はクロマチン構造を維持するタンパク質である。我々は核内チロシンキナーゼが KAP1 をチロ
シンリン酸化することでヘテロクロマチンとの結合が減少することを示し、HP1α もそれに伴ってヘテ
ロクロマチンから減少することを示した (参考文献:Fig. 3)。以前の報告では、KAP1 のノックダウンに
よって HP1α の結合部位であるヒストン H3K9 のトリメチル化が減少することが報告されているが、
我々の結果では、
KAP1 のノックダウンによって H3K9trime の減少は見られなかった (参考文献:Fig. 5A)。
このことから、KAP1 は HP1α のヘテロクロマチンへの結合を直接結合することで補助していると考え
られる。
本研究で、HP1α とヘテロクロマチンとの結合が KAP1 の Tyr-449, Tyr-458, Tyr-517 のリン酸化によっ
て減少することを示した (参考文献:Fig. 4)。 KAP1 は HP1α と HP1-binding-motif (PxVxL, 486-490)を介
して結合していることが知られており、今回同定したチロシンリン酸化部位がは HP1-binding-motif に近
くに位置している。KAP1 と HP1α の結合は Ser-473 のリン酸化によっても制御されていることが知られ
ているため (Chnag et al., 2008)、チロシンリン酸化されることでセリンのリン酸化が誘導されるのではな
いかと考えられたが、DNA 損傷応答がないときにはセリンのリン酸化には影響を与えなかった (参考文
献:Fig. 4G)。そのため、HP1α との結合の減少はチロシンリン酸化自体によるものだと推測される。
HP1α とチロシンリン酸化との関係については、Jak2 がヒストンの Tyr-41 を直接チロシンリン酸化す
ることで、クロマチンとの結合が減少することが知られているが (Dawson et al., 2009)、我々は今回その
7
モデルとは異なる KAP1 のチロシンリン酸化を介したモデルを提示することが出来た。今回、KAP1 の
チロシンリン酸化による機能変化については、すでに分化した細胞においてそのメカニズム解析を行な
ったが、KAP1 は転写の抑制やヘテロクロマチンの構成を通して、分化において非常に重要な役割を持
つことが知られている。KAP1 のノックアウトは胎生致死になることや、卵母細胞が胚へと分化してい
く過程でも必要なことが知られている (Cammas et al., 2000; Messerschmidt et al., 2012)。KAP1 による転写
制御には HP1 との結合が寄与していることが知られていることから(Cammas et al., 2004)、今回見つけた
チロシンリン酸化が細胞の分化過程において転写の制御に関わっていることも考える。KAP1-3YF のノ
ックインマウスを作製することができれば、個体発生の分化過程における KAP1 のチロシンリン酸化の
意義を調べることができると考えている。
私は KAP1 のチロシンリン酸化部位を同定し、チロシンリン酸化によって KAP1 とヘテロクロマチン
タンパク質との結合が減少することを見出した。本研究では特に KAP1 のチロシンリン酸化にのみター
ゲットを絞ったが、他にも核内チロシンキナーゼの基質候補と考えられるタンパク質は他にも同定され
ている。さらなる研究によって、核内チロシンリン酸化シグナルとクロマチン構造の制御メカニズムへ
の理解が進めていきたいと考えている。
8
Materials and Methods
プラスミド, RT-PCR
参考文献の EXPERIMENTAL PROCEDURES を参照
抗体
以下のような抗体を用いた: phosphotyrosine (pTyr) (4G10 and polyclonal antibody; Upstate Biotechnology,
Inc; provided by T. Tamura and T. Yoshimoto [Tamura et al., 2000]), Lyn (Lyn9; Wako Pure Chemical Industries,
Osaka, and Lyn44; Santa Cruz Biotechnology), Flag (M2 and polyclonal antibody; Sigma), HA (Y11; Santa Cruz
Biotechnology), actin (clone C4; CHEMICON International), α-tubulin (MCA78G; Serotec), Src phosphorylated
on Y416 (Cell Signaling Technology), KAP1 (ab10484; Abcam, and Bethyl Laboratories), HP1α (05-689;
Millipore), histone H3 trimethylated on lysine 9 (H3K9me3) (ab8898; Abcam), Syk (4D10; Santa Cruz
Biotechnology), Brk (C-18; Santa Cruz Biotechnology), Abl (8E9; BD-Pharmingen), Fyn (Fyn3; Santa Cruz
Biotechnology), Src (GD11; Upstate Biotechnology, Inc), Ku70 (C-19; Santa Cruz Biotechnology), ErbB4 (C-18;
Santa Cruz Biotechnology), Chk2 (DCS-273; Medical and Biological Laboratories), Chk2-pT68 (Cell
Signaling Technology), KAP1-pS473 (BioLegend), KAP1-pS824 (Bethyl Laboratories), lamin A/C (N-18; Santa
Cruz Biotechnology)
ホースラディッシュペルオキシダーゼ - フラグメント (HRP)-F(ab’)2 をウェスタンブロッティングの
二次抗体として使用した(Amersham Biosciences)。FITC-IgG, TRITC-IgG, and Alexa Fluor 488-, Alexa Fluor
546-, および Alexa Fluor 647-labeled IgG (invitrogen) を染色の二次抗体として使用した。
細胞とトランスフェクション
COS-1 細胞と HeLa S3 細胞 (Japanese Collection of Research Bioresources, Osaka) は 5% bovine serum (BS)
を含む Iscove's modified Dulbecco's medium (IMDM) で細胞培養した。一過性のトランスフェクションは
直鎖状の polyethylenimine (25 kDa; Polysciences) [Fukumoto et al., 2010]または Lipofectamine 2000
(Invitrogen) を使用して行なった。NLS-Lyn の安定発現細胞はレトロウィルスを用いた方法にて作製した
(Nakatani et al., 2003)。DNA 損傷応答はアドリアマイシン (ADR) を 100 ng/ml で一時間処理し、誘導
した。SFK の阻害剤として SU6656 を 5-10 µM または PP2 を 10 µM で処理した。
ウェスタンブロッティング
ラ イ セ ー ト は SDS- サ ン プ ル バ ッ フ ァ ー に 溶 解 し て 作 成 し 、 SDS-PAGE で 分 離 し 、
polyvinylide-nedifluoride (PVDF) メンブレン(Millipore) にトランスファーした。検出方法は過去の報告に
従った (Kasahara et al., 2004; Matsuda et al., 2006; Kuga et al., 2008)。多くの抗体を用いて検出するため、一
次抗体、二次抗体それぞれを除去し、次のブロットを行った。一次抗体はストリッピングバッファーを
9
用い、二次抗体は HRP の不活化を 0.1% NaN3 を用いて行った。結果は、イメージアナライザーである
LAS-1000plus (Fujifilm, Tokyo, Japan) と ChemiDoc XRSplus (Bio-Rad) を用いて解析した。化学発光のイ
ンテンシティー測定は Quantity One software (Bio-Rad) を用いた。
免疫沈降法
細胞を Tirton X-100 lysis buffer (30 mM HEPES (pH7.4), 100 mM NaCl, 0.5% Triton X-100, 4 mM EDTA, 10
mM NaF, 50 µg/ml aprotinin, 100 µM leupeptin, 25 µM pepstatin A, and 2 mM PMSF) にて suspend し、
sonication を用いて溶解した。protein G beads に適切な抗体を付加したもので免疫沈降を行なった。
細胞分画
細胞をPBSでwashしてから200 gで遠心する。
細胞のペレットを Low salt buffer (10 mM HEPES, pH 7.4,
10 mM KCl, 0.1% Triton X-100, 0.34 M sucrose, 10% glycerol, 1.7 mM MgCl2, 10 mM NaF, 4 mM
β-glycerophosphate, 2 mM Na3VO4, 50 µg/ml aprotinin, 100 µM leupeptin, 25 µM pepstatin A, and 2 mM PMSF)
でサスペンドし、氷上で 10 min インキュベーションした。その後、遠心分離を 2,000 g で 5 min 行ない、
上清を Low salt 画分とする。遠心分離にて落ちてきたペレットを High salt buffer (50 mM HEPES, pH 7.4,
300 mM KCl, 1.0% Triton X-100, 20% glycerol, 50 mM NaF, 10 mM β-glycerophosphate, 10 mM Na3VO4, 1 mM
EDTA, 50 µg/ml aprotinin, 100 µM leupeptin, 25 µM pepstatin A, and 2 mM PMSF)でサスペンドし、氷上で 20
min インキュベーションする。その後、遠心分離を 17,900 g で 10 min 行ない、上清を High salt 画分と
する。残ったペレットを High salt buffer でもう一度 wash した後、SDS sample buffer と sonication にて溶
解し Insoluble 画分とした (Mendez et al., 2000; Goodarzi et al., 2008; Herkret et al., 2010)。
免疫蛍光顕微鏡観察
免疫蛍光染色は過去に報告した方法に従った (Nakayama and Yamaguchi, 2005; Nakayama et al., 2012)。
クロマチンに結合している KAP1 と HP1α の染色は、細胞を High salt buffer にて氷上で 3 min 抽出した
後、100% MeOH にて-20℃で 5 min 固定した。細胞固定後、0.1%サポニン 3% bovine serum albumin で抽
出及びブロッキングを行い、一次抗体、二次抗体をそれぞれ 1 時間インキュベーションした。 DNA 染
色は、200 µg/ml RNaseA を 30 分間処理した後、20–50 µg/ml propidium iodide (PI) , 20 nM TO-PRO-3
(Molecular Probes), 0.1 µg /ml 4',6-diamidino-2-phenylindole dihydrochlo-ride (DAPI, Sigma)で行なった。共焦
点、ノマルスキー微分干渉イメージは Fv500 レーザースキャン顕微鏡を使って画像取得した。40×1.00 ド
ライレンズと 60×1.00 水浸レンズ (Olympus)を使用した。
10
References
Amanchy, R., Zhong, J., Hong, R., Kim, J. H., Gucek, M., Cole, R. N., Molina, H., and Pandey, A. (2009)
Identification of c-Src tyrosine kinase substrates in platelet-derived growth factor receptor signaling. Mol. Oncol. 3,
439–350
Aoyama, K., Fukumoto, Y., Ishibashi, K., Kubota, S., Morinaga, T., Horiike, Y., Yuki, R., Takahashi, A.,
Nakayama, Y., and Yamaguchi, N. (2011) Nuclear c-Abl-mediated tyrosine phosphorylation induces chromatin
structural changes through histone modifications that include H4K16 hypoacetylation. Exp. Cell Res. 317,
2874–2903
Baskaran, R., Wood, L. D., Whitaker, L. L., Canman, C. E., Morgan, S. E., Xu, Y., Barlow, C., Baltimore,
D., Wynshaw-Boris, A., Kastan, M. B., and Wang, J. Y. (1997) Ataxia telangiectasia mutant protein activates c-Abl
tyrosine kinase in response to ionizing radiation. Nature 387, 516–519
Baldeyron, C., Soria, G., Roche, D., Cook, A.J., and Almouzni, G. (2011) HP1alpha recruitment to DNA damage
by p150CAF-1 promotes homologous recombination repair. J. Cell Biol. 193, 81–95
Cammas, F., Mark, M., Dolle, P., Dierich, A., Chambon, P., and Losson, R. (2000) Mice lacking the transcriptional
corepressor TIF1beta are defective in early postimplantation development. Development 127, 2955–2963
Cammas, F., Herzog, M., Lerouge, T., Chambon, P., and Losson, R. (2004) Association of the transcriptional
corepressor TIF1beta with heterochromatin protein 1 (HP1): an essential role for progression through differentiation.
Genes Dev. 18, 2147–2160
Chang, C. W., Chou H. Y., Lin, Y. S., Huang, K. H., Chang, C. J., Hsu, T. C., and Lee, S. C. (2008)
Phosphorylation at Ser473 regulates heterochromatin protein 1 binding and corepressor function of TIF1beta/KAP1.
BMC Mol. Biol. 9, 61
Cloos, P. A., Christensen, J., Agger, K., Maiolica, A., Rappsilber, J., Antal, T., Hausen, K. H., and Helin, K. The
putative oncogene GASC1 demethylates tri- and dimethylated lysine 9 on histone H3. Nature 442, 307–311
Dawson, M. A., Bannister, A. J., Göttgens, B., Foster, S. D., Bartke, T., Green, A. R., and Kouzarides, T. (2009)
JAK2 phosphorylates histone H3Y41 and excludes HP1α from chromatin. Nature 461, 819–822
Delfino, F. J., Shaffer, J. M., and Smithgall, T. E. (2000) The KRAB-associated co-repressor KAP-1 is a coiled-coil
binding partner, substrate and activator of the c-Fes protein tyrosine kinase. Biochem. J. 399, 141–150
Derry, J. J., Richard, S., Valderrama, C. H., Ye, X., Vasioukhin, V., Cochrane, A. W., Chen, T., and Tyner, A. L.
(2000) Sik (BRK) phosphorylates Sam68 in the nucleus and negatively regulates its RNA binding ability. Mol. Cell
Biol. 20, 6114-6126
Fukumoto, Y., Obata, Y., Ishibashi, K., Tamura, N., Kikuchi, I., Aoyama, K., Hottori, Y., Tsuda, K., Nakayama, Y.,
and Yamaguchi, N. (2010) Cost-effective gene transfection by DNA compaction at pH 4.0 using acidified, long
shelf-life polyethylenimine. Cytotechnology 62, 73–82
Goodarzi, A. A., Noon, A. T., Deckbar, D., Ziv, Y., Shiloh, Y., Löbrich, M., and Jeggo, P. A. (2008) ATM
signaling facilitates repair of DNA double-strand breaks associated with heterochromatin. Mol. Cell 31, 167–77
Herkert, B., Dwertmann, A., Herold, S., Abed, M., Naud, J., Finkernagel, F., Harms, G. S., Orian, A., Wanzel,
M., and Eilers, M. (2010) The Arf tumor suppressor protein inhibits Miz1 to suppress cell adhesion and induce
apoptosis. J. Cell Biol. 188, 905–918
11
Goodarzi, A. A., Kurka, T., and Jeggo, P. A. (2011) KAP-1 phosphorylation regulates heterochromatic CHD3
nucleosome remodeling during the DNA double strand break response. Nat. Struct. Mol. Biol. 18, 831–839
Hirao, A., Hamaguchi, I., Suda, T., and Yamaguchi, N. (1997) Translocation of the Csk homologous kinase
(Chk/Hyl) controls activity of CD36-anchored Lyn tyrosine kinase in thrombin-stimulated platelets. EMBO J. 16,
2342–2351
Hubbard, S. R., and Till, J. H. (2000) Protein tyrosine kinase structure and function. Annu. Rev. Biochem. 69,
373-398
Hunter, T. (2009) Tyrosine phosphorylation: thirty years and counting. Curr. Opin. Cell Biol. 21, 140-146
Cans, C., Mangano, R., Barilá, D., Neubauer, G. and Superti-Furga, G. (2000) Nuclear tyrosine phosphorylation:
the beginning of a map. Biochem. Pharmacol. 60, 1203-1215
Ishibashi, K., Fukumoto, Y., Hasegawa, H., Abe, K., Kubota, S.-i., Aoyama, K., Kubota, S., Nakayama, Y., and
Yamaguchi, N. (2013) Nuclear ErbB4 signaling through H3K9me3 is antagonized by EGFR-activated c-Src. J. Cell
Sci.
Bjorge, J. D., Bellagamba, C., Cheng, H. C., Tanaka, A., Wang, J. H., and Fujita, D. J. (1995) Characterization of
two activated mutants of human pp60c-src that escape c-Src kinase regulation by distinct mechanisms. J. Biol. Chem.
270, 24222–24228
Iwama, A., Yamaguchi, N., and Suda, T. (1996) STK/RON receptor tyrosine kinase mediates both apoptotic and
growth signals via the multifunctional docking sites conserved among the HGF receptor family. EMBO J. 15,
5866–5875
Ivanov, A. V., Peng, H., Yurchenko, V., Yap, K. L., Negorev, D. G., Schultz, D. C., Psulkowski, E., Fredericks, W.
J., White, D. E., Maul, G. G., Sadofsky, M. J., Zhou M. M., and Rauscher, F. J. 3rd. (2007) PHD domain-mediated
E3 ligase activity directs intramolecular sumoylation of an adjacent bromodomain required for gene silencing. Mol.
Cell 28, 823–827
Iyenger, S. and Farnham, P. J. (2011) KAP1 protein: an enigmatic master regulator of the genome. J. Biol. Chem.
286, 26267–26276
Kasahara, K., Nakayama, Y., Ikeda, K., Fukushima, Y., Matsuda, D., Horimoto, S., and Yamaguchi, N. (2004)
Trafficking of Lyn through the Golgi caveolin involves the charged residues on αE and αI helices in the kinase
domain. J. Cell Biol. 165, 641–652
Kharbanda, S., Saleem, A., Yuan, Z., Kraeft, S., Weichselbaum, R., Chen, L. B., and Kufe, D. (1996) Nuclear
signaling induced by ionizing radiation involves colocalization of the activated p56/p53lyn tyrosine kinase with
p34cdc2. Cancer Res. 56, 3617–3621
Kuga, T., Hoshino, M., Nakayama, Y., Kasahara, K., Ikeda, K., Obata, Y., Takahashi, A., Higashiyama, Y.,
Fukumoto, Y., and Yamaguchi, N. (2008) Role of Src-family kinases in formation of the cortical actin cap at the
dorsal cell surface. Exp. Cell Res. 314, 2040–2054
Lachner, M., O'Carroll, D., Rea, S., Mechtler, K., and Jenuwein, T. (2001) Methylation of histone H3 lysine 9
creates a binding site for HP1 proteins. Nature 410 116–120
Lamond A. I., W.C. Earnshaw, Structure and function in the nucleus, Science 280 (1998) 547–553.
12
Law, C. L., Sidorenko, S. P., Chandran, K. A., Draves, K. E., Chan, A. C., Weiss, A., Edelhoff, S., Disteche, C. M.,
and Clark, E. A. (1994) Molecular cloning of human Syk. A B cell protein-tyrosine kinase associated with the
surface immunoglobulin M-B cell receptor complex. J. Biol. Chem. 269, 12310–12319
Lechner, M. S., Begg, G. E., Speicher, D. W., and Rauscher, F. J. 3rd. (2000) Molecular determinants for targeting
heterochromatin protein 1-mediated gene silencing: direct chromoshadow domain-KAP-1 corepressor interaction is
essential. Mol. Cell Biol. 20, 6449–6465
Lee, D. H, Goodarzi, A. A., Adelmant, G. O., Pan, Y., Jeggo, P. A., Marto, J. A., Chowdhury, D. (2012)
Phosphoproteomic analysis reveals that PP4 dephosphorylates KAP-1 impacting the DNA damage response.
EMBO J. 31, 2403–2415
Manning, G., Whyte, D. B., Martinez, R., Hunter, T., and Sudarsanam, S. (2002) The protein kinase complement of
the human genome. Science 298, 1912–1934
Ikeda, K., Nakayama, Y., Togashi, Y., Obata, Y., Kuga, T., Kasahara, K., Fukumoto, Y., and Yamaguchi, N. (2008)
Nuclear localization of Lyn tyrosine kinase mediated by inhibition of its kinase activity. Exp. Cell Res. 314,
3392–3404
Matsuda, D., Nakayama, Y., Horimoto, S., Kuga, T., Ikeda, K., Kasahara, K. and Yamaguchi, N. (2006)
Involvement of Golgi-associated Lyn tyrosine kinase in the translocation of annexin II to the endoplasmic reticulum
under oxidative stress. Exp. Cell Res. 312, 1205–1217
Méndez, J., and Stillman, B. (2000) Chromatin association of human origin recognition complex, cdc6, and
minichromosome maintenance proteins during the cell cycle: assembly of prereplication complexes in late mitosis.
Mol. Cell. Biol. 20, 8602–8612
Mera, A., Suga, M., Ando, M., Suda, T., and Yamaguchi, N. (1999) Induction of cell shape changes through
activation of the interleukin-3 common α chain receptor by the RON receptor-type tyrosine kinase. J. Biol. Chem.
274, 15766–15774
Messerschmidt, D. M., de Vries, W., Ito, M., Solter, D., Ferguson-Smith, A., and Knowles, B. B. (2012) Trim28 is
required for epigenetic stability during mouse oocyte to embryo transition. Science 335, 1499–1502
Moorhead, G. B., Trinkle-Mulcahy, L., and Ulke-Lemée, A. (2007) Emerging roles of nuclear protein phosphatases.
Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 8, 234–244
Nakatani, Y., and Ogryzko, V. (2003) Immunoaffinity purification of mammalian protein complexes. Methods
Enzymol. 370, 430–444
Nakayama, Y., Kawana, A., Igarashi, A., and Yamaguchi, N. (2006) Involvement of the N-terminal unique domain
of Chk tyrosine kinase in Chk-induced tyrosine phosphorylation in the nucleus. Exp. Cell Res. 312, 2252–2263
Nakayama, Y., Igarashi, A., Kikuchi, I., Obata, Y., Fukumoto, Y., and Yamaguchi, N. (2009) Bleomycin-induced
over-replication involves sustained inhibition of mitotic entry through the ATM/ATR pathway. Exp. Cell Res. 315,
2515–2528
Nakayama, Y., Matsui, Y., Takeda, Y., Okamoto, M., Abe, K., Fukumoto, Y., and Yamaguchi, N. (2012) c-Src but
not Fyn promotes proper spindle orientation in early prometaphase. J. Biol. Chem. 287, 24905–24915
Nakayama, Y., and Yamaguchi, N. (2005) Multi-lobulation of the nucleus in prolonged S phase by nuclear
expression of Chk tyrosine kinase. Exp. Cell Res. 304, 570–581
13
Noon, A. T., Shibata, A., Rief, N., Löbrich, M., Stewart, G. S., Jeggo, P. A., and Goodarzi, A. A. (2010)
53BP1-dependent robust localized KAP-1 phosphorylation is essential for heterochromatic DNA double-strand
break repair. Nat. Cell Biol. 12, 177–184
Obata, Y., Fukumoto, Y., Nakayama, Y., Kuga, T., Dohmae, N., and Yamaguchi, N. (2011) The Lyn kinase C-lobe
mediates Golgi export of Lyn through conformation-dependent ACSL3 association. J. Cell Sci. 123, 2649–2662
Ogiso, H., Ishitani, R., Nureki, O., Fukai, S., Yamanaka, M., Kim, J.H., Saito, K., Sakamoto, A., Inoue, M.,
Shirouzu, M., and Yokoyama, S. (2002). Crystal structure of the complex of human epidermal growth factor and
receptor extracellular domains. Cell 110, 775–787
Resh, M. D. (1994) Myristylation and palmitylation of Src family members: the fats of the matter. Cell 76, 411–413.
Resh, M. D. (1999). Fatty acylation of proteins: new insights into membrane targeting of myristoylated and
palmitoylated proteins. Biochim. Biophys. Acta 1451, 1–16
Ryan, R. F., Schultz, D. C., Ayyanathan, K., Singh, P. B., Friedman, J. R., Fredericks, W. J., and Rauscher, F. J., 3rd.
(1999) KAP-1 corepressor protein interacts and colocalizes with heterochromatic and euchromatic HP1 proteins:
a potential role for Krüppel-associated box-zinc finger proteins in heterochromatin-mediated gene silencing. Mol.
Cell. Biol. 19, 4366–4378
Sato, I., Obata, Y., Kasahara, K., Nakayama, Y., Fukumoto, Y., Yamasaki, T., Yokoyama, K. K., Saito, T., and
Yamaguchi, N. (2009) Differential trafficking of Src, Lyn, Yes and Fyn is specified by the state of palmitoylation in
the SH4 domain. J. Cell Sci. 122, 965–975
Satou, A., Taira, T., Iguchi-Ariga, S.M., and Ariga, H. (2001) A novel transrepression pathway of c-Myc.
Recruitment of a transcriptional corepressor complex to c-Myc by MM-1, a c-Myc- binding protein. J. Biol. Chem.
276, 46562–46567
Shtivelman, E., Lifshitz, B., Gale, R. P., and Canaani, E. (1985) Fused transcript of abl and bcr genes in chronic
myelogenous leukaemia. Nature 315, 550–554
Schultz, D. C., Ayyanathan, K., Negorev, D., Maul, G. G., and Rauscher, F. J. 3rd. (2002) SETDB1: a novel
KAP-1-associated histone H3, lysine 9-specific methyltransferase that contributes to HP1-mediated silencing of
euchromatic genes by KRAB zinc-finger proteins. Genes Dev. 16, 919–932
Taagepera, S., McDonald, D., Loeb, J. E., Whitaker, L. L., McElroy, A. K., Wang, J. Y., and Hope, T. J. (1998)
Nuclear-cytoplasmic shuttling of c-Abl tyrosine kinase. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 7457–7462
Ni, C. Y., Murphy, M. P., Golde, T. E., and Carpenter, G. (2001) γ-Secretase cleavage and nuclear localization of
ErbB-4 receptor tyrosine kinase. Science 294, 2179–2181
Takahashi, A., Obata, Y., Fukumoto, Y., Nakayama, Y., Kasahara, K., Kuga, T., Higashiyama, Y., Saito, T.,
Yokoyama, K. K., and Yamaguchi, N. (2009) Nuclear localization of Src-family tyrosine kinases is required for
growth factor-induced euchromatinization. Exp. Cell Res. 315, 1117–1141
Tada, J., Omine, M., Suda, T., and Yamaguchi, N. (1999) A common signaling pathway via Syk and Lyn tyrosine
kinases generated from capping of the sialomucins CD34 and CD43 in immature hematopoietic cells. Blood 93,
3723–3735
Tamura, T., Kunimatsu, T., Yee, S. T., Igarashi, O., Utsuyama, M., Tanaka, S., Miyazaki, S., Hirokawa, K., and
Nariuchi, H. (2000) Molecular mechanism of the impairment in activation signal transduction in CD4+ T cells from
14
old mice. Int. Immunol. 12, 205–1215
Tezuka, T., Umemori, H., Akiyama, T., Nakanishi, S., and Yamamoto, T. (1999) PSD-95 promotes Fyn-mediated
tyrosine phosphorylation of the N-methyl-D-aspartate receptor subunit NR2A. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96,
435–440
Thurman, R. E., Rynes, E., Humbert, R., Vierstra, J., Maurano, M. T., Haugen, E., Sheffield, N. C., Stergachis, A.
B., Wang, H., Vernot, B., Garg, K., John, S., Sandstrom, R., Bates, D., Boatman, L., Canfield, T. K., Diegel,
M., Dunn, D., Ebersol, A. K., Frum, T., Giste, E., Johnson, A. K., Johnson, E. M., Kutyavin, T., Lajoie, B., Lee, B.
K., Lee, K., London, D., Lotakis, D., Neph, S., Neri, F., Nguyen, E. D., Qu, H., Reynolds, A. P., Roach, V., Safi,
A., Sanchez, M. E., Sanyal, A., Shafer, A., Simon, J. M., Song, L., Vong, S., Weaver, M., Yan, Y., Zhang,
Z., Zhang, Z., Lenhard, B., Tewari, M., Dorschner, M. O., Hansen, R. S., Navas, P.A., Stamatoyannopoulos,
G., Iyer, V. R., Lieb, J. D., Sunyaev, S. R., Akey, J. M., Sabo, P. J., Kaul, R., Furey, T. S., Dekker, J., Crawford, G.
E., and Stamatoyannopoulos, J. A. (2012) The accessible chromatin landscape of the human genome. Nature 488,
75–82
White, D., Rafalska-Metcalf, I. U., Ivanov, A. V., Corsinotti, A., Peng, H., Lee, S. C., Trono, D., Janicki, S. M., and
Rauscher, F. J. 3rd. (2012) The ATM substrate KAP1 controls DNA repair in heterochromatin: regulation by HP1
proteins and serine 473/824 phosphorylation. Mol. Cancer Res. 10, 401–414
Yamaguchi, N., Nakayama, Y., Urakami, T., Suzuki, S., Nakamura, T., Suda, T., and Oku, N. (2001)
Overexpression of the Csk homologous kinase (Chk tyrosine kinase) induces multinucleation: a possible role for
chromosome-associated Chk in chromosome dynamics. J. Cell Sci. 114, 1631–1641
Yamanashi, Y., Fukushige, S., Semba, K., Sukegawa, J., Miyajima, N., Matsubara, K., Yamamoto, T., and
Toyoshima, K. (1987) The yes-related cellular gene lyn encodes a possible tyrosine kinase similar to p56 lck. Mol.
Cell. Biol. 7, 237–243
Zeng, W., Ball, A. R. Jr, and Yokomori, K. (2010) HP1: heterochromatin binding proteins working the genome.
Epigenetics 5, 287–292
Ziv, Y., Bielopolski, D., Galanty, Y., Lukas, C., Taya, Y., Schultz, D. C., Lukas, J., BekkerJensen, S., Bartek, J., and
Shiloh, Y. (2006) Chromatin relaxation in response to DNA double-strand breaks is modulated by a novel ATMand KAP-1 dependent pathway. Nat. Cell Biol. 8, 870–876
15
図1 核内チロシンキナーゼとクロマチン構造変換
SFK, 4ICD, c-Abl などのチロシンキナーゼの一部が核移行し、核内でチロシンリン酸化誘導することで、クロ
マチンの構造変換が誘導される。
図 2 KAP1 のチロシンリン酸化とその機能変化のモデル図
核内で様々なチロシンキナーゼによって KAP1 の Tyr-449, 458, 517 のチロシンリン酸化を誘導し、KAP1 と
HP1α のヘテロクロマチンとの結合を阻害する。また、この変化は DNA 損傷応答における転写の変化と関わ
っている可能性が示唆された。
16
本学位論文内容は下記の発表論文による
参考文献
Sho Kubota, Yasunori Fukumoto, Kazumasa Aoyama, Kenichi Ishibashi, Ryuzaburo Yuki, Takao Morinaga,
Takuya Honda, Noritaka Yamaguchi, Takahisa Kuga, Takeshi Tomonaga, and Naoto Yamaguchi: Phosphorylation
of KRAB-associated protein 1 (KAP1) at Tyr-449, Tyr-458, and Tyr-517 by nuclear tyrosine kinases inhibits the
association of KAP1 and heterochromatin protein 1α (HP1α) with heterochromatin. J. Biol. Chem., 288:
17871-17883, 2013.
List of Publications
1. Sho Kubota, Yasunori Fukumoto, Kazumasa Aoyama, Kenichi Ishibashi, Ryuzaburo Yuki, Takao Morinaga,
Takuya Honda, Noritaka Yamaguchi, Takahisa Kuga, Takeshi Tomonaga, and Naoto Yamaguchi:
Phosphorylation of KRAB-associated protein 1 (KAP1) at Tyr-449, Tyr-458, and Tyr-517 by nuclear tyrosine
kinases inhibits the association of KAP1 and heterochromatin protein 1α (HP1α) with heterochromatin.
J. Biol. Chem., 288: 17871-17883, 2013.
2. Kazumasa Aoyama, Ryuzaburo Yuki, Yasuyoshi Horiike, Sho Kubota, Noritaka Yamaguchi, Mariko Morii,
Kenichi Ishibashi, Yuji Nakayama, Takahisa Kuga, Yuuki Hashimoto, Takeshi Tomonaga and Naoto
Yamaguchi: Formation of long and winding nuclear F-actin bundles by nuclear c-Abl tyrosine kinase.
Exp. Cell Res., 319: 3251-3268, 2013.
3. Kenichi Ishibashi, Yasunori Fukumoto, Hitomi Hasegawa, Kohei Abe, Shoichi Kubota, Kazumasa Aoyama,
Sho Kubota, Yuji Nakayama, and Naoto Yamaguchi: Nuclear ErbB4 signaling through H3K9me3 is
antagonized by EGFR-activated c-Src. J. Cell Sci., 126:625-637, 2013.
4. Kazumasa Aoyama, Yasunori Fukumoto, Kenichi Ishibashi, Sho Kubota, Takao Morinaga, Yasuyoshi Horiike,
Ryuzaburo Yuki, Akinori Takahashi, Yuji Nakayama, and Naoto Yamaguchi: Nuclear c-Abl-mediated tyrosine
phosphorylation induces chromatin structural changes through histone modifications that include H4K16
hypoacetylation. Exp. Cell Res., 317: 2874-2903, 2011.
Examiners
本学位論文の審査は千葉大学大学院薬学研究院で指名された下記の審査委員により行われた。
主査 千葉大学大学院教授(薬学研究院) 薬学博士
村山俊彦
副査 千葉大学大学院教授(医学研究院) 医学博士
岩間厚志
副査 千葉大学大学院教授(薬学研究院) 薬学博士
伊藤素行
17
Acknowledgements
本研究に際し、御指導、御鞭撻を賜りました指導教官の千葉大学大学院薬学研究院 山口直人
教授に厚く御礼申し上げます。また、多くの御助言を賜りました 准教授 中山祐治博士 (現京
都薬科大学教授)、講師 福本泰典博士、助教 山口憲孝博士に心から御礼申し上げます。山口教
授をはじめとした諸先生方のご指導のおかげで、本研究を論文へと完成することが出来ました。
本学位論文の審査をして下さった 教授 村山俊彦博士、教授 岩間厚志博士、教授 伊藤素行博
士に心から御礼申し上げます。
研究を進めるに際して、様々なアドバイスをして下さり、ともに励まし合いながら研究をここ
まで一緒に進めてくれた諸先輩方や同輩、後輩の皆様方に深く感謝申し上げます。皆様と同じ
ラボで6年間の研究生活を送ることが出来たことを非常に感謝しております。
貴重な研究試料を提供してくださった、Dr. Hiroyoshi Ariga (Hokkaido University), Dr. Donald J.
Fujita (University of Calgary), Dr. Tadashi Yamamoto (University of Tokyo), Dr. Eli Canaani
(Weizmann Institute of Science), Dr. Toshiki Tamura (National Institute of Infectious Diseases), Dr.
Takayuki Yoshimoto (Tokyo Medical University), Dr. Edward A. Clark (University of Washington),
Atsushi Iwama (Chiba University), Dr. Shigeyuki Yokoyama (RIKEN), and Dr. Hiroyuki Miyoshi
(RIKEN BRC)、諸先生方のご協力に御礼申し上げます。
18