1.ノーベル経済学賞 160

2016年10月20日
ご参考資料
160
今回のテーマ
人類への貢献、ノーベル経済学賞
ノーベルの遺言により、「人類のために最も偉大な貢献をした人」
新人くん
日興アセットマネジメント
の新人。営業推進部門に
配属され、投信や経済に
ついて勉強中。
に授与されるノーベル賞。先日、受賞者が発表されました。今回
は、その中の一つであるノーベル経済学賞と今年の受賞者の研
究テーマについて、調べてみました。
1.ノーベル経済学賞
ノーベル経済学賞は、正式には「アルフレッド・ノーベル記念経済
学スウェーデン国立銀行賞」といい、1968年にスウェーデン国立銀
行(中央銀行)が創立300周年を記念して、ノーベル財団に寄託し
た基金で創設されました。
同賞は、経済学の分野で傑出した重要研究を達成した人物に授
与するとされており、過去には数学者や心理学者など経済学以外
の専門分野からも受賞者が出ています。1969年に第1回の受賞者
が選定された後、受賞者の多くは米国出身者が占めており、今ま
で日本人の受賞者はいません。受賞には有名な経済誌に多数の
論文が掲載され、他の学者の論文に多数引用される必要がある
ほか、研究や理論の革新性が重要とされています。
かつては、マネタリスト(基本的に経済は自由な市場に委ねるべ
きで、物価や経済の安定のためには貨幣政策をコントロールする
ことが最重要とする考え)といわれる学者が多く受賞する傾向にあ
りました。しかし、近年では、積極的な財政政策や金融政策によ
り、需要を創出すべきとするケインズ学派などの学者も受賞する
ケースが増えています。
ノーベル経済学賞の授賞
式は、他の5部門(物理学、
化学、医学・生理学、文学、
平和)と同様に、ノーベルの
命日の12月10日に行なわ
れます。
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□当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料
ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料
作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス
クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に
は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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過去の受賞者には、デリバティブの価格決定に用いられるブラッ
ク=ショールズ方程式を共同開発したマイロン・ショールズや、日本
に大規模な金融緩和を提言したポール・クルーグマン、経済におい
て、アニマルスピリット(野心的意欲)の重要性を訴えたジョージ・ア
カロフやロバート・シラーなど、著名な学者が名を連ねています。
2.契約理論
2016年のノーベル経済学賞は、「契約理論への功績」を理由に、
ハート教授とホルムストロム教授が受賞しました。社会の様々な契
約やそれに伴なう問題に関する分析が評価されました。
契約理論は、人々の利害が異なる中で、契約を通じてどのように
協力し、利益を得るかについて分析しています。契約には、予めす
べてのことを取り決めして、責任と報酬を割り振るやり方(完備契
約)と、契約にすべてのことが書かれず、ある程度融通を効かせる
やり方(不完備契約)があります。
人々が完全な情報を持っていない中では、将来起きることをすべ
て事前に契約に書けない(不完備契約)ため、契約によらない部分
を決定する権利を誰が持つかが重要になるとしています。
例えば、研究開発では、新しい技術の開発を契約できる訳ではな
いことから、研究開発が促進されるようなインセンティブが必要とな
ります。研究者は固定給で、企業が新技術の知的財産権を保有す
るやり方を採用する場合、企業は研究開発投資に積極的になりま
すが、研究者のインセンティブは小さくなります。一方、研究者が新
技術の知的財産権を保有するというやり方を採用する場合、研究
者のインセンティブは大きくなりますが、企業にとって必要な研究が
行なわれるとは限らず、企業のインセンティブが小さくなります。
2013年の経済学賞では、
資産価格の実証分析にお
いて、ファーマ教授が、市
場は効率的とし、リスクとリ
ターンなどを重視する理論
で受賞した一方、シラー教
授が、市場は非効率的で、
市場参加者の心理的要因
を重視する理論で受賞しま
した。2つの相反する理論
が同時に受賞対象となっ
たことで話題になりました。
この場合、契約ですべてを縛れない以上、利益の配分をバランス
よく行なうことで、利害関係者のインセンティブをうまく引き出して、
成果を引き出すことが重要となります。人々の利害が異なる中で、
契約を通じてどう協力して、利益を受けるかについて契約理論は分
析しています。
今回の契約理論のように、現実社会の問題解決につながるよう
な研究が、近年、ノーベル経済学賞の対象となる傾向にあり、受賞
を契機にして実社会へ更に応用されることが期待されます。
日本人の学者の中から、長くデフレに苦しんだ日本経済の
復活を促すような研究成果が生まれ、日本人がノーベル経
済学賞を受賞する日が来るといいですね。
□当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料
ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料
作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス
クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に
は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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