1. ECBの金融緩和政策 161

2016年11月10日
ご参考資料
161
今回のテーマ
岐路に立つECBの金融緩和政策
「2017年3月末」の期限が迫るECB(欧州中央銀行)の量的金融
新人くん
日興アセットマネジメント
の新人。営業推進部門に
配属され、投信や経済に
ついて勉強中。
緩和。今後、テーパリング(量的金融緩和の縮小)に動くとの見
方も一部で浮上しており、ECBの政策判断に注目が集まります。
今回は、ECBの金融緩和とテーパリングについて調べました。
1.ECBの金融緩和政策
ECBは、ユーロ圏における中央銀行の役割を担う機関です。定
期的に開催する理事会で、政策金利などの金融政策の決定や、政
策をどう行なうかなどの指針の作成を行ないます。
ECBの金融政策では、「物価の安定」を最も重要な目的としてい
ます。近年、ECBはユーロ圏のインフレ率(消費者物価指数、前年
比)が「2%未満でその近辺」となることを「物価の安定」と定義し、こ
れに沿うよう、様々な政策や調整に取り組んでいます。
2013年半ば以降、ユーロ圏では、欧州債務危機に伴なう景気低
迷や緊縮財政などの影響で、内需が大幅に落ち込んだことなどか
ら、インフレ率が下落傾向となり、「2%未満でその近辺」を大きく下
回る水準が続きました。
マイナス金利の導入により、
民間銀行はECBに余剰資
金を預ける際に、金利を受
け取るのではなく、支払うこ
ととなりました。これは、銀
行内に滞留する資金が、
企業への融資などに回るよ
うに促すことが狙いとされて
います。
こうした状況を受け、ECBは2014年6月に包括的な金融緩和の
導入を決定しました。具体的には、主要政策金利の引き下げを実
施したほか、民間銀行へ長期資金を供給する措置や、民間銀行が
ECBへ預ける準備預金の一部に対する金利を引き下げ、マイナス
金利とすることを決定しました。
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□当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料
ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料
作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス
クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に
は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
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ECBは、こうした金融緩和を通じ、社会に出回るお金を増やすこ
とで、物価の回復をめざしました。しかし、景気低迷の長期化に加
え、原油価格の下落なども下押し圧力となり、インフレ率の低下傾
向は続き、2014年12月には、インフレ率がマイナスに転じました。
そこで、2015年1月、ECBは量的金融緩和の導入を決定しました。
具体的には、それまで一部の証券に限っていた資産買入れの対象
を、域内各国の国債などに拡げたほか、買入れ額を月600億ユー
ロに拡大し、2016年9月末まで買入れを継続するとしました。
その後も、金融緩和の拡大・調整は度々実施され、2015年12月
には資産買入れの期限を2017年3月末までに延長、2016年3月に
は、買入れ額を月800億ユーロに拡大することを決定しました。
積極的な金融緩和政策が奏功したこともあり、現在では、インフレ
率はマイナス圏を脱し、徐々に持ち直しつつあります。ただし、依然
として「2%未満でその近辺」を大きく下回る0.5%近辺での推移と
なっており、市場では金融緩和の長期化が予想されています。
2.テーパリング
テーパリング(tapering)は、日本語で「量的金融緩和の縮小」を
意味する用語です。”taper”が「先細り」という意味の英語である通
り、直ちに量的金融緩和を取り止めるのではなく、資産の買入れ額
を漸次減らしていく手法をとることで、市場や経済への影響を抑え
つつ、量的金融緩和から撤退する「出口戦略」とされます。
ECBは、今年12月の理事会で、2017年3月末となっている資産
買入れの期限の延長について判断する考えを示しています。市場
では延長が見込まれているものの、緩和の長期化に伴ない資産買
入れの対象となる債券が枯渇することや、金利の過度な低下によ
る金融機関の収益圧迫などに対する懸念が拡がっています。こうし
た懸念から、市場関係者の一部では、ECBがテーパリングに踏み
切るのではとの観測が台頭しています。
金融機関の収益圧迫は、
日銀の金融緩和でも問題
視されています。日銀は9
月に実施した金融緩和の
枠組変更において、こうし
た問題に配慮した政策方
針を示すことで、長期的に
金融緩和を継続していく体
制を整えたと言えます。
ただし、テーパリングについて、ドラギECB総裁は10月の理事会
後の会見で否定的な姿勢をみせており、直ちにテーパリングに踏
み切る可能性は低いと考えられます。一方、買入れ対象の枯渇は
将来的な課題としてECB理事会でも議論されており、中長期的に
は、テーパリングを含め、ECBは金融緩和政策の見直しを検討し
ていくとの見方が強まっています。
「長期戦」が見込まれるなか、ECBも、日銀と同様に政策
の見直しが必要になりそうです。12月のECB理事会をはじ
めとして、今後の政策判断に注目が集まります。
□当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料
ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料
作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス
クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に
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