現代社会において、私たちは、国、都道府県、市町村等の行政活動と密接

法学部 140 回講演会
2016 年 10 月 14 日
法治主義についてー行政法における法治主義—
法学部教授 平田和一
現代社会において、私たちは、国、都道府県、市町村等の行政活動と密接な関
わりを持ちながら生活しています。例えば、日常的に道路を利用していますが、
その道路は、国、都道府県、市町村が管理していますし、管理が悪くて事故が起
きれば、国等に賠償してもらうということになります。終のすみかとしての家を
建てるなら建築確認を受けなければなりませんし、飲食店を営業するなら、許可
を受けなければなりません。行政活動の存在を意識するかどうかにかかわらず
行政活動は、日常的に私たち国民の生活を規制したり、助成・誘導しています。
こうした行政活動は、行政によって恣意的に行われてはならず、法(上の例で言
えば、道路法、建築基準法、食品衛生法)の定めに従って客観的合理的に行われ
なければなりません。
法治主義は、法によって国家権力の客観的合理的行使を確保し、国民の権利利
益を確保することを目的とします。法治主義の一つの形態として「法律による行
政の原理」という概念も存在します。ここで留意すべきことは、法治主義の内容
は、憲法体制に大きく左右されるということです。この講義では、明治憲法(大
日本国憲法)のもとでの(行政法における)法治主義と、現行憲法のもとでの(行
政法における)法治主義を比較することで、我が国の行政法における法治主義の
基本的理解を目指します。