広報委員 の一言

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広報委員
の一言
医療における安全の問題や倫理的な問題などは
能性もあることなどの問題があります。一方、
「提
一般社会の注目度も高く、解決すべき喫緊の課題
供胚(あるいは提供卵子、
提供精子)による妊娠」
が多くあります。本会報の編集委員会でも話題に
は、子宮はあるものの卵子あるいは精子のない夫
なることが多い状況ですが、私が専門としている
婦が他人の卵子、精子、受精卵などを譲り受け妊
生殖医療の分野では解決が難しい多くの倫理的問
娠するというものです。この場合には出生した子
題が存在しています。
どもと夫婦いずれかとは遺伝的な血縁関係がない
1978年に世界で最初の体外受精 - 胚移植を成功
こととなり、親子関係が複雑化し、子どもが成長
させた英国の R. G. Edwards 博士は2010年にノー
した際に自分の親を知りたくなった場合の問題
ベル医学・生理学賞を授与されました。また現在
(出自を知る権利の問題)など倫理的な問題があ
わが国で誕生する新生児の約4%が体外受精 - 胚
ります。
移植により妊娠した女性から出生しており、生殖
欧米では生殖医療の倫理的問題について法律に
医療の進歩は出産を切望する夫婦はじめ社会に大
より規定している国が多いのですが、わが国では
きな福音をもたらしています。
産婦人科医師の学術団体である日本産科婦人科学
一方で、生命の始まりともいえる受精卵などを
会がガイドライン(会告)を示し、いわば紳士協
操作することにより様々な倫理的な問題が生じて
定として、産婦人科医師にガイドラインの遵守を
います。重要なものとして「代理懐胎」と「提供
求めている現状です。
この問題の法制化について、
胚(あるいは提供卵子、提供精子)による妊娠」
一昨年国会議員によるプロジェクトチームが議員
の問題があります。
「代理懐胎」
とは、
一般的には、
立法を目指すという報道がなされましたが、現在
様々な理由で子宮のない女性(卵巣はあり卵子は
のところ立法化はされていないようです。倫理的
得られます)が夫婦の受精卵を別の女性の子宮に
問題を含んだ生殖医療の実施についてその良し悪
移植し妊娠・出産をしてもらうことを言います。
しを論ずることは難しいと思われますが、親子関
この場合出生した子どもは遺伝的にはその夫婦の
係の明確化、出生してきた子どもの権利の保護な
子どもですが、法律的には出産した女性が母親と
どについて法整備を行っておくことも必要ではな
なります。出産は女性にとって時に生命の危険を
いかと思われます。
伴うこともあること、依頼されて出産した女性が
(高桑好一 記)
子どもに愛情を持ち引き渡しを拒否するような可
広報委員会委員:恩田晃・山内春夫・勝井豊・佐藤雄一郎・高桑好一・永井博子・橋立英樹・高橋暁・上野光博・山村倉一郎・永井雅昭
新 潟 県 医 師 会 報・第 797 号〔平成28年8月〕
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新潟県医師会報 H28.8 № 797