中国人民元の動向を占う

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アジア
2016年8月9日
中国人民元の動向を占う
外貨準備高の動向等を見ても、中国からの資本逃避懸念が残ると見られる中、中国当局は人民元安に伴う市場の
混乱回避を優先し、人民元市場の安定化を目指す政策を採用する可能性もあると思われます。
中国7月の貿易統計:輸出入共に軟調な動き、
輸入は市場予想より大幅にマイナスが拡大
中国税関総署が2016年8月8日に発表した7月の貿易統計
(ドルベース)によると、輸出は前年同月比マイナス4.4%で、
前月(同マイナス4.8%)からは改善したものの、市場予想(同マ
イナス3.5%)を下回りました(図表1参照)。
輸入は前年同月比マイナス12.5%となり、市場予想(同マイナ
ス7.0%)、前月(同マイナス8.4%)を下回りました。
どこに注目すべきか:
貿易統計、サミット、預金準備率、流動性
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:中国輸出入(ドル建)の動向と原油価格の推移
(日次、期間:2013年8月8日~2016年8月8日、輸出入は月次)
50
120 ドル/バレル
前年比,% 40
100
30
20
80
10
0
60
-10
-20
WTI原油先物(左軸)
40
中国輸入(右軸)
-30
中国輸出(右軸)
20
-40
13年8月
14年8月
15年8月
16年8月
※WTI原油先物:ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引される
原油先物(軽質スイート原油先物)の期近物で構成
図表2:中国人民元(対ドル)の推移
(日次、期間:2014年8月8日~2016年8月8日)
6.7
人民元/ドル
6.6
2015年9月
6.5
米中首脳会談
6.4
6.3
6.2
6.1
人民元
6.0
14年8月
15年2月
15年8月
2016年3月
核安全保障
サミット
16年2月
安 人民元 高
中国7月の貿易統計は輸出入とも予想を下回りました。こう
した中、中国当局の為替政策を占うと、輸出拡大に通貨安
というよりは、人民元の安定化を模索していると見られます。
まず、貿易統計を振り返ると、輸出は予想を下回ったとはい
え小幅で、輸出の合計で2割程度を占める欧州連合(EU)と
日本の経済が軟調であったことなどが背景と見られます。
輸入の下落幅は市場予想より大きくなりました。中国政府版
の製造業購買担当者景気指数(PMI)が低下傾向であること
から国内需要の減少が反映されていると見られます。ただ、
輸入の減少には足元輸入との相関が見られる原油価格の
下落も影響した可能性も考えられます(図表1参照)。
通貨を見ると人民元は対ドルで人民元安が進行しており、ラ
グ(遅れ)を伴い輸出の回復を下支えする期待もあります。こ
のような中、中国当局は次の点で、人民元の安定を志向し
ている様子がうかがえます。
まず、目先の話として9月4、5日に主要20ヵ国・地域(G20)浙
江省杭州・サミットを控え、過去同様に為替安政策とみなさ
れることへの回避に努めると見られます(図表2参照)。
2点目は、中国人民銀行(中央銀行、人民銀)などが人民元
の安定性を優先させる意向を表明していることです。中国は
2016年の成長目標を確保するためにも金融緩和姿勢を維
持すると見られますが、人民銀が先日公表した金融報告で
市中銀行の預金準備率引下げは人民元の下落につながる
と懸念を表明しています。では、金融緩和はあきらめるのか?
報道などによると、論説の中で金融緩和手段として中期貸出
制度(MLF)や常設貸出制度(SLF)を活用して流動性の供給を
行う政策を紹介しています。報道の目的は観測気球で、市場
の反応をうかがっているだけなのかもしれませんが、背景には
当局の通貨安定への志向が想定されます。
外貨準備高の動向等を見ても、中国からの資本逃避懸念が残
ると見られる中、中国当局は人民元安に伴う市場の混乱回避
を優先、市場の安定化を目指す可能性もあると思われます。
16年8月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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