景気循環研究所レポート 実質輸出が示す外需回復とデフレ圧力の増大 2016 年 7 月 25 日 4-6 月期の財輸出は実質 ベースで増加の見通し 財務省が 25 日に発表した貿易統計(6 月速報)によると、4-6 月期の輸 出金額(季節調整値)は前期比 2.4%減少し、15 年 4-6 月期以降 5 四半期 連続の前期比減少となった。しかし、輸出価格の変動を除いた実質ベース でみると、輸出は直近まで 4 四半期連続の増加である(当研究所季節調整 値、図 1)。円高による輸出価格の下落にも関わらず、世界景気の回復が 実質ベースの輸出を押し上げた可能性が高い。4-6 月期の GDP1 次速報(8 月 15 日発表)では、財輸出が実質 GDP の増加に寄与するとみられる。 インバウンド消費も実質 一方、訪日外国人観光客による国内消費、いわゆるインバウンド消費は ベースでは増加の見込み GDP 統計の輸出に計上される。インバウンド消費の指標となる全国百貨店 の免税総売上高をみると、直近 6 月まで 3 ヵ月連続の前年割れを記録する など、インバンド消費の低迷が鮮明となっている。ただ、物価変動要因を 除いた実質ベースでみると、インバウンド消費は直近 4-6 月期に持ち直し ている。インバウンド消費分を合算した実質輸出(当研究所季節調整値) デフレ圧力の増大が実質 輸出をかさ上げ は、4-6 月期の実質 GDP をさらに押し上げる見込みである(図 1)。 もっとも、財輸出およびインバウンド消費の実質化に用いた物価指数 (輸出物価指数、持家の帰属家賃を除く消費者物価指数)はともに足元で 嶋中 雄二 景気循環研究所長 前年比マイナスであり、企業が輸出環境の回復を実感しているとは言い難 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 の増大が確認されることになりそうだ。日銀は、実質輸出の回復を楽観視 い。4-6 月期の GDP1 次速報では、海外需要の回復と同時に、デフレ圧力 せず、早期の追加金融緩和に踏み切る必要がある。 シニアエコノミスト 宮嵜 浩 (年率・兆円) シニアエコノミスト 03-6627-5132 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 図 1. 4-6 月期の輸出は実質ベースで増加が見込まれるが… (年率・兆円) 78 実質輸出(インバウンド消費を含む、左目盛) GDP実質輸出 (右目盛) 76 74 96 92 72 圭亮 シニアエコノミスト 03-6627-5133 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ 100 88 70 84 68 80 66 64 76 実質財輸出(左目盛) 62 72 14 15 16 (年、四半期) (注)実質財輸出は貿易統計の輸出額(季節調整値)を当研究所が輸出物価指数で実質化。 インバウンド消費は訪日外国人旅行消費額(当研究所季節調整値)を当研究所が輸出物 価指数で実質化。GDP実質輸出はサービス輸出及びインバウンド消費を含む。 (資料)財務省「貿易統計」、観光庁「訪日外国人消費動向調査」、内閣府「四半期別GDP 速報」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 グランキューブ (以 上) みやざき ひろし (16.7.25 宮嵜 1 浩) 2016 年 7 月 25 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2
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