中国の設備投資に底入れの動き - 三菱UFJモルガン・スタンレー証券

景気循環研究所レポート
中国の設備投資に底入れの動き
2016 年 9 月 14 日
8 月の固定資産投資が反
発
中国の設備投資は、足元で持ち直しの動きを見せている。8月の固定資
産投資は、前年比8.2%と、前月の同3.9%から改善した(図1、公表の
年初累計の前月差を便宜的に単月として前年比を求めた)。
ここ数年の中国の固定資産投資(設備投資と公共投資と不動産投資等
から成る)を振り返ると、15年末にかけて減速感を強めた後、16年に入
ると、一旦、盛り返したが、その後、再び低迷した。16年1-3月期の持ち
直しは、景気減速に危機感を強めた中国政府が、インフラ投資を積極化
したためとみられる。図1では、16年に入ってから、国営企業の固定資産
投資の伸びが大きく加速している。
15年の景気対策は、投資計画の承認前倒しに止まっていたが、16年に
入ると、中国政府は、鉄道や高速道路の具体的な投資目標に言及した上、
銀行貸出の促進など資金面のサポートを強化し、固定資産投資のテコ入
れを図った。結果として、1-3月期の固定資産投資の伸びは、16年通年
民間設備投資の減速は、
一部、国営企業の受注増
のあおりを受けたもの
の政府目標である10.5%を達成した。
ところが、その後夏場にかけて、政府主導の投資が一服感をみせる中、
民間部門の設備投資の減速が目立つようになり、固定資産投資全体も低
迷した。この民間部門の固定資産投資低迷の背景には、ひとつには、公
嶋中 雄二
景気循環研究所長
共投資を国営企業が受注し、民間部門が押し出された可能性がある(次
鹿野 達史
景気循環研究所副所長
シニアエコノミスト
れない。
頁図2、3)
。とはいえ、この要因だけでは、民間投資の減速は説明しき
(%)
図1.中国の固定資産投資の推移
(前年比)
30.0
宮嵜 浩
シニアエコノミスト
03-6627-5132
25.0
miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp
20.0
福田 圭亮
15.0
シニアエコノミスト
03-6627-5133
10.0
fukuda-keisuke@sc.mufg.jp
5.0
本レポートは、嶋中雄二の見方に基づ
き、宮嵜・福田が執筆を担当しています。
0.0
景気循環研究所
全体
16/8
8.2
民間
-5.0
45678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 2123456789
東京都千代田区大手町 1-9-2
大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ
国営企業
13
14
15
16
(注)公表の年初累計の前月差を便宜的に単月として前年比を算出。
(年/月、月)
(出所)中国国家統計局
1
2016 年 9 月 14 日
民間部門の設備投資
民間部門の固定資産投資が減速した大きな要因は、企業利益が減速したこ
減速の主因は、企業
とにあるとみられる。図4は、中国の工業利益の推移を見たものである。15
利益の低迷
年の工業利益は、年間を通じて、前年割れを記録した。工業利益の低迷は、
人件費の上昇も影響したとみられるが、基本的には、売上高の低迷によるも
のだろう。15 年の工業利益がさえなかったことから、企業は 16 年前半の設備
投資を控えたと考えられる。
16 年に入り企業利益
ただし、工業利益は、16 年に入ってから、売上高の回復に歩調を合わせて、
は回復しており、設
急速に改善している。足元では、既に固定資産投資に底入れの動きがみえて
備投資は年後半にか
おり、今後は、企業利益の改善を背景として、設備投資は一段と加速すると
けて改善へ
考えられる。
図3.中国の鉄道・高速道路の固定資産投資
図2.中国の灌漑の固定資産投資
(%)
(前年比) 60.0
(%)
70.0
60.0
(前年比)
50.0
民間
50.0
40.0
40.0
30.0
30.0
20.0
20.0
民間
10.0
10.0
0.0
全体
0.0
全体
-10.0
-10.0
45678910
11 212345678910
11 212345678910
11 212345678910
11 2123456789
11 212345678910
11 2123456789
45678910
11 212345678910
11 212345678910
13
14
15
13
16
(注)1.公表の年初累計の前月差を便宜的に単月として前年比を算出。
2.国営企業のみの灌漑投資のデータは取得できず。
(年/月、月)
(出所)中国国家統計局
14
15
16
(注)1.公表の年初累計の前月差を便宜的に単月として前年比を算出。
2.国営企業のみの鉄道・高速道路投資のデータは取得できず。
(年/月、月)
(出所)中国国家統計局
図4.中国の企業利益と売上高の推移
(前年比)
(%)
35.0
30.0
25.0
20.0
工業利益
15.0
10.0
5.0
0.0
-5.0
売上高
-10.0
11
12
13
14
(出所)CEIC
15
16
17
(年、月)
(以
(16.9.14
巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。
2
上)
福田)
2016 年 9 月 14 日
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