景気循環研究所レポート 景気循環研究所の 金融政策展望(9/20・21、日銀決定会合) 2016 年 9 月 16 日 追加緩和の予想 日本銀行は、9 月 20-21 日の金融政策決定会合において、「量的・質的 金融緩和(QQE)」および「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の総括 的な検証を行う。当研究所は、同検証の結果を踏まえ、日銀が本会合ない しは次回 10 月会合において、量的・質的金融緩和を強化すると予想する。 但し、マイナス金利の深堀りに踏み切る可能性も完全には排除できない。 日本銀行は、物価上昇率の決定要因として、①マクロ的な需給バランス (GDP ギャップ)、②予想物価上昇率(期待インフレ率)、③輸入物価の 3 つを挙げている(日本銀行「『物価の安定』についての考え方に関する付 属資料」、2013 年 1 月 23 日)。GDP ギャップについては、日銀が独自に試 算している「需給ギャップ」および「短観加重平均 DI」が、過去の物価 上昇率 2%の局面と遜色ない水準に達している。半面、期待インフレ率お よび輸入物価については、主に原油安の影響で大幅に下振れた。原油安に 伴う現実の物価上昇率の低下が、期待インフレ率を下押しした点について は、日銀も「予想物価上昇率に対する『適合的な形成メカニズム』」と明 確に認めている(「経済・物価情勢の展望」、2016 年 7 月)。変動の激しい エネルギー価格を含んだ消費者物価指数(コア CPI)の上昇率を、2 年と 嶋中 雄二 景気循環研究所長 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 シニアエコノミスト 宮嵜 浩 シニアエコノミスト 03-6627-5132 いう短期間に 2%へと引き上げると多くの人々に受け取られた点が、期待 インフレ率の下振れを助長した可能性がある。 一方、日銀は、物価と賃金の連動性を重視している。中長期的には、時 間当たり名目賃金の上昇率は、GDP デフレーターの上昇率に潜在労働生産 性の上昇率を加えた水準に一致するという認識である(「展望レポート」、 16 年 7 月)。このうち GDP デフレーターの上昇率は 14 年、15 年と 2 年連 続でプラスを記録しており、16 年 1-3 月期、4-6 月期も引き続きプラスに miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp なっている。GDP デフレーターが 2 年連続のプラスを記録したのは、93-94 福田 圭亮 年以降 21 年ぶりであり、QQE による GDP デフレーターの押し上げ効果は シニアエコノミスト 03-6627-5133 明らかだ。半面、マイナス金利政策は、金融機関の収益悪化懸念を通じて、 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 株価の下落という副作用を招いた。 「資産価格のプレミアムに働きかける」 という QQE の政策効果が弱まった格好である。日銀は、金融機関の収益悪 本レポートは、嶋中雄二の見方に 基づき、宮嵜・福田が執筆を担当 しています。 化懸念の主因である長短金利差の逆転を解消するべく、買入国債の平均残 存期間の見直し(短期化)に踏み切る可能性が高い。 なお、金融緩和の具体的な内容としては、マネタリーベースの増額目標 景気循環研究所 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティ を『年間 80~100 兆円』に変更すると予想する。さらに日銀は、財投機関 債、地方債、社債、持ち合い株などを新たに買い入れる可能性がある。 (以 グランキューブ (16.9.16 1 みやざき 上) ひろし 嶋中 雄二・宮嵜 浩 ) 2016 年 9 月 16 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、カブドットコム証券、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-8127 東京都千代田区大手町 1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循 環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 巻末に重要なお知らせを記載していますので、ご参照ください。 2
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